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ミヤの報告
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1、ライル様(コン•ブリオ家の嫡男、14歳、騎士団長の甥)がお嬢様に弟子入りしました。お嬢様が大岩を割る姿などを目撃し、身体強化術を学びたいそうです(※前回報告3の魔力測定の噂も後押ししたと思われます)
2、男性と二人にするわけにはいかないため、毎日、朝食前の一時間、裏山でライル様とお嬢様の修行に付き合っています。
お嬢様は師匠ぶっていますが、子どもなのでおままごとにしか見えません。
ただ、ライル様は着実に強くなっているようです。次回、武闘会での優勝の可能性もあります。
その場合、単純なライル様がお嬢様を師匠だと明言する恐れがあります。
3、入学式前日以来、ポチを目撃していません。グラント領に戻っていないというのは確実でしょうか?
4、歴史の授業について、宿題は終了しました。
5、お嬢様に友人はできていません。クラスではイアン様から暖かい言葉を、ジョセフィン様から小言をかけられるだけです。
6、おかしな相手からの手紙、面会は全てブロックしています。
ミヤからの報告書をバサリと放り投げて、ヴィオラの父のハイラムと母のマドラはため息をついた。
「弟子をとって、しかも、指導の成功なんて。あの子らしい」
マドラは頭を抱える。
「入学試験の算術で首位。入学式に遅刻して、王太子にエスコートされる。決闘を百ます計算で行い、勝利。魔力測定で水晶玉をつぶす。そして、先輩を弟子にとる。あの子のことだから、学園に行ったら、何かしでかすとは思っていたけど、やり過ぎじゃない?」
「だから、ヴィオラの望み通り、グラント領から出さなければよかったのに」
ぼそりと言ったハイラムをマドラは睨みつけた。
「私、ヴィオラに普通の子供のような経験をさせたいんです。わかっているでしょう。いつも、何を焦っているのか、必死で人のためになることばかりして」
「確かに」
まだ、12歳ということを忘れそうになる。それほど、ヴィオラは幼い頃からグラント領のために尽くしてきた。
マヨネーズという不思議でおいしいソースを作っただけでない。お菓子もヴィオラが考案するものは全て画期的に美味しい。近隣に販売することでグラント領は豊かになった。
その豊かさを子供の教育や治水に使用しているため、ますます豊かになる一方だ。
どこから知識を得たのか、衛生という概念を普及させ、そのおかげで流行病もグラント領では広まらなかった。
神から遣わされた子ではないかと思ったこともハイラムにはある。ただ、神の子なら、誘拐しようとした悪党を殴り倒したりはしないだろうと思い直した。
「ここから離れ、知らない人の中では自由になるかと思ったんだけど」
マドラにヴィオラが年相応に甘えてくることがある。抱きしめて、頭を撫でてあげると、幸せそうにすうすうと寝息を立て始める。それでも、うなされることがある。助けてと涙を流すことがある。そんな時、起こしても、ヴィオラは見ていた夢の内容を絶対に言わない。親なのにヴィオラに守られてしまったからか、頼ってはもらえない。
「友人はできていません。……か」
ハイラムは顎を撫でた。貴族にとって、裏を探らなくていい友人は貴重だ。学園では派閥とは関係のない付き合いができる唯一の場所だ。もちろん、そこでもややこしい社交術を駆使している者もいるが。
ヴィオラはグラント領では活躍し過ぎて、友人ではなく、すぐに信者ができてしまう。メイドのミヤはその意味で貴重だ。ミヤにとってはヴィオラは「面白い子ども」、ただ、それだけらしい。
「学園で生活する内に友人ができてくれたらとは思っているんだけど、ねえ」
テーブルの上には手紙が積み上げられている。ヴィオラとの交流許可や婚約を願うたくさんの手紙。
「本当にヴィオラを愛し、守ってくれる人が見つからないかな」
「何を馬鹿なことを。ヴィオラはまだ12歳だぞ。早い。早すぎる」
ハイラムが声を上げた。
ヴィオラが領の発展に寄与していると聞きつけ、王家から婚約の話が来たことがある。遠くても王族を当てがっておこうという態度が嫌で、早すぎると断った。
早いというのをマドラはただの言い訳だと思っていたが、ハイラムは本気だったのかもしれない。
「いい人は早く婚約が決まりますからね。焦って変な人を捕まえてはダメですけど、いい人がいないかと意識することは大事です」
「いや、早い。別に恋愛に興味も無いようだし、ヴィオラはしばらく今のままでいいじゃないか」
ハイラムはそう主張するが、今のままでいいというと、ヴィオラが次はどんな事件を起こすのだろうとマドラは不安になった。
2、男性と二人にするわけにはいかないため、毎日、朝食前の一時間、裏山でライル様とお嬢様の修行に付き合っています。
お嬢様は師匠ぶっていますが、子どもなのでおままごとにしか見えません。
ただ、ライル様は着実に強くなっているようです。次回、武闘会での優勝の可能性もあります。
その場合、単純なライル様がお嬢様を師匠だと明言する恐れがあります。
3、入学式前日以来、ポチを目撃していません。グラント領に戻っていないというのは確実でしょうか?
4、歴史の授業について、宿題は終了しました。
5、お嬢様に友人はできていません。クラスではイアン様から暖かい言葉を、ジョセフィン様から小言をかけられるだけです。
6、おかしな相手からの手紙、面会は全てブロックしています。
ミヤからの報告書をバサリと放り投げて、ヴィオラの父のハイラムと母のマドラはため息をついた。
「弟子をとって、しかも、指導の成功なんて。あの子らしい」
マドラは頭を抱える。
「入学試験の算術で首位。入学式に遅刻して、王太子にエスコートされる。決闘を百ます計算で行い、勝利。魔力測定で水晶玉をつぶす。そして、先輩を弟子にとる。あの子のことだから、学園に行ったら、何かしでかすとは思っていたけど、やり過ぎじゃない?」
「だから、ヴィオラの望み通り、グラント領から出さなければよかったのに」
ぼそりと言ったハイラムをマドラは睨みつけた。
「私、ヴィオラに普通の子供のような経験をさせたいんです。わかっているでしょう。いつも、何を焦っているのか、必死で人のためになることばかりして」
「確かに」
まだ、12歳ということを忘れそうになる。それほど、ヴィオラは幼い頃からグラント領のために尽くしてきた。
マヨネーズという不思議でおいしいソースを作っただけでない。お菓子もヴィオラが考案するものは全て画期的に美味しい。近隣に販売することでグラント領は豊かになった。
その豊かさを子供の教育や治水に使用しているため、ますます豊かになる一方だ。
どこから知識を得たのか、衛生という概念を普及させ、そのおかげで流行病もグラント領では広まらなかった。
神から遣わされた子ではないかと思ったこともハイラムにはある。ただ、神の子なら、誘拐しようとした悪党を殴り倒したりはしないだろうと思い直した。
「ここから離れ、知らない人の中では自由になるかと思ったんだけど」
マドラにヴィオラが年相応に甘えてくることがある。抱きしめて、頭を撫でてあげると、幸せそうにすうすうと寝息を立て始める。それでも、うなされることがある。助けてと涙を流すことがある。そんな時、起こしても、ヴィオラは見ていた夢の内容を絶対に言わない。親なのにヴィオラに守られてしまったからか、頼ってはもらえない。
「友人はできていません。……か」
ハイラムは顎を撫でた。貴族にとって、裏を探らなくていい友人は貴重だ。学園では派閥とは関係のない付き合いができる唯一の場所だ。もちろん、そこでもややこしい社交術を駆使している者もいるが。
ヴィオラはグラント領では活躍し過ぎて、友人ではなく、すぐに信者ができてしまう。メイドのミヤはその意味で貴重だ。ミヤにとってはヴィオラは「面白い子ども」、ただ、それだけらしい。
「学園で生活する内に友人ができてくれたらとは思っているんだけど、ねえ」
テーブルの上には手紙が積み上げられている。ヴィオラとの交流許可や婚約を願うたくさんの手紙。
「本当にヴィオラを愛し、守ってくれる人が見つからないかな」
「何を馬鹿なことを。ヴィオラはまだ12歳だぞ。早い。早すぎる」
ハイラムが声を上げた。
ヴィオラが領の発展に寄与していると聞きつけ、王家から婚約の話が来たことがある。遠くても王族を当てがっておこうという態度が嫌で、早すぎると断った。
早いというのをマドラはただの言い訳だと思っていたが、ハイラムは本気だったのかもしれない。
「いい人は早く婚約が決まりますからね。焦って変な人を捕まえてはダメですけど、いい人がいないかと意識することは大事です」
「いや、早い。別に恋愛に興味も無いようだし、ヴィオラはしばらく今のままでいいじゃないか」
ハイラムはそう主張するが、今のままでいいというと、ヴィオラが次はどんな事件を起こすのだろうとマドラは不安になった。
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