未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

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まだ未熟な

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イネスは家に帰ってすぐ、母の顔を見て飛びつく。
「ははうえぇ」
腕の中に迎えられて、緊張の糸が切れたのか再び泣きじゃくる。
数年分は泣いたと思っていたイネスだがそれでも涙は溢れて止まらない。
「どうした?っていうかびしょ濡れじゃないか」
「母上。アーケロンがイネスを突き飛ばしたんだ」
長兄が泣きじゃくるイネスの事情を話し、母はイネスの頭を撫でる。
「安心した?」
「も、もう、母上にも兄上たちにも、会えないかと思った」
ぼろぼろと泣きながら怖かったを繰り返すイネス。
母は落ち着くまで背中を擦りつつ使用人にタオルを持って来させる。

落ち着いたところで、頑張ったと褒めつつも告げる。
「イネス。王妃になったらこうやって命のやり取りをすることだってあるんだ。辛いことも苦しいこともある。王に愛されるだけじゃあないってことを覚えておくように」
「どうしたら、怖くなくなるの?」
しゃっくりをしながら告げたイネスに母は優しい笑顔を向けて、兄たちもよくやったと褒めて頭を撫でる。

「怖いということは悪いことじゃない。でも、怖いに対して、対処や対策を練るんだ。紙一枚の、それこそすぐに切れるような糸の薄さでもいい。ぎりぎりでも命が助かる方法を探すんだ」
「がんばります」
「それに王様でなくとも結婚した相手を大切にして守りたいと思えば、勇気が湧いてくるよ」
よしよしとくすぐったそうな兄たちを見て、いいなぁと、母を見上げれば撫でられる。

母は土下座しそうなリーマンを見る。
「リーマン先生もありがとうございます」
「いや。目を放してはいけなかったのに」
「こればっかりは、イスキロス家が悪い。あそこは話を聞かないからなぁ。とりあえずお湯を沸かすから皆でお湯に浸かって、体を温めようか」
使用人に訴えて、水を沸かしに向かわせる。
持ってきたタオルで体を拭いてからゆっくりと歩いて、浴場に来る。
使用人も入れそうな広い浴場。
領主の息子とはいえ、そう簡単には入れないお風呂にやったー。と三人が機嫌良く向かう。

「そういえばこの領主館って意外と他国の魔導具揃ってますよね」
お湯が出る蛇口を見ながら不思議そうに眺める。
本来、魔法使いや魔導具は高い。
そして魔法使いも国に一人か二人でそうそう居ない。
隣国はその辺りは進んでいるので、輸入するのもそこそこな値段になる。
「ここは国境が近いからですよ」
父がいつの間にか現れ、服を脱いでいる。
そして軽く体を洗うと、お湯に浸かる。
「それは知っておりますが」
「昔は、戦争が起こっていたので隣国から逃げてくる職人やら魔力持ちやらの人々が流れて来て、その子孫が技術や知恵を受け継ぐっていう約束で居着いたんです」
そういえば、朝の裁縫師を拾ったとも言っていたのはその名残かと納得してしまう。

「うちはそういう領地なんだよ。魔力持ちがいてね。彼ら彼女らにお願いしているけど負担が大きいからあまり贅沢はしないようにしているんだ」
「十分贅沢なんですけどね」
ゆっくり湯船にて心地よさ気なイネスに、水への恐怖は大丈夫そうだと安堵するリーマン。


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