龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業

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竜人国の王は騎士団長のサンムーンと仕事の話をする。
それから気になったように聞いてくる。

「どうだ?あの子は」
「皆からの愛情を受けて感情豊かになりました」
「うんうん」

戸籍上、養父であり、従兄弟である王が嬉しそうに笑う。
サンムーンは先代王の王弟の四男坊である。
一番上の姉と一番下の妹は人族ではない他国へ嫁ぎ、長男は跡継ぎで既に妻子が。
次男は竜人族にしては魔力が高いため魔道士として。
そして騎士となった。
実力で功績を立て、一代限りの爵位をもらった。
そこに王族の末端という要因はあったかもしれないがそれでも恥じない手柄は立てている。

ただ、従兄弟と言っても兄たちぐらいしか殆ど顔を合わせたことない。
騎士団長になったとき爵位を貰って始めてこれが噂の従兄弟かぁ。ぐらいにしか思っていない。

むしろ、騎士団長と王以外の関わりを持つなど一生ないと思っていた。
何せ王都に屋敷を持つぐらいで、領地を持っているわけではない、騎士団長になった者へのご褒美の一つが爵位である。
アレクサンドラがいなければ王家の血筋であることも忘れていたぐらいなほど。
アレクサンドラを王族の一員にした上に、サンムーンに嫁がせたのは王の血を引いていると擁護しやすいからだろう。


何せアレクサンドラは竜人族が一生恨みを持つ人間である。
来た時期にはすでに関係は悪化。
今の孤児たちもほとんどが人との戦争で親を失った子たちだ。
いくら精霊の愛し子だとしても、怪我をしていたとしても。
ある程度体調が戻れば人族へと戻す予定だった。

たが、アレクサンドラの持つ体質と、勇者によって人から迫害されたと知ったリザベスが息子を戻さないでください。と土下座してきた。
当時からリザベスの夫が兵士であり、サンムーンの部下だった。
戦争の後遺症で意識を失い昏睡状態だったのと女手一つでは子育てが大変だからと、部下を守れなかったお詫びに城の従者として働いてもらっていた女性。
ただそれ以外は受け取ってくれなかった。

アレクサンドラの世話は当時彼女が希望してくれたことで助かった部分が大きい。
仕方無しで置くこととなっていたからか他に名乗りを上げてくれなかった。
だが、リザベスの献身からか徐々に笑うようになった。
サンムーンもリザベスと彼が気になり訪ねたことが度々あり、居心地悪さに飴玉を渡していた。

他とは違い特に気にかけていたのは彼の保護を精霊に請われて渋々向かい、その状況を目の当たりにしたのが理由だろう。
飴玉を宝石のように扱い、口に入れるものだと説明して、口に放り込んだ。
始めて瞳を輝かせて笑ってくれた。


リザベスは更に息子たちを連れてきた。
ルーカスは父親のことがあって人を嫌っていたが、正義感の強さは父親譲りである。
気づけば彼に対しては友人のように接するようになった。


そしてそんな彼女らに応えるようにある日彼はいなくなり、発見時病院で歌を歌っていた。
子供がいないとなったリザベスの取り乱し様はなんとも言えなかった。
その後、重病者の怪我が良くなり、意識不明だった者たちが目を覚まし始めた。
どうやら歌を代価に精霊の祝福が与えられたらしい。
その怪我人に商工会の会長を務める普段は野菜を販売していた男の息子も、大怪我を負ってその場にいた。

意識不明だった彼いわく闇の中で、歌声が聞こえた。
そちらに行くと目を覚したのだと言う。

本人は無自覚にも多数の竜人族を救っていた。
ただ本人はリザベスに怒られて、ごめんなさいと恐怖にプルプル震えていた。
そんな体験をしたせいか現在、病院に行くのはヤダ。となってる。
怒ったのはそこじゃないとそんな様子をルーカスに突っ込まれていた。
「全く。人族には返せんな」
「返しません。必要なら支度金ぐらい用意します」
ただ、当然いきなり人の子が王族の養子になったことに貴族の反発も少なくないが一目見れば彼らは気づく。
彼は愛し子であり、歴代でもトップを飾るほどの愛され具合。
無自覚に龍神族が崇拝する精霊を何十匹も連れている姿を見てしまえば反骨精神があるものほど
従うしかないと、頭を下げるだろう。
それだけアレクサンドラが頼めば、精霊はこの国を滅ぼしかねないほどの脅威になる。
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