イセカイセブン~僕だけ転生できなかった世界に、異世界人がなだれこんできました~

テヅカミユーキ

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第1章・それぞれの転生

5・戦場医師

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 その世界では、とある特殊能力の奪い合いで戦場と化していた。

 本来であれば命を救うべくして発生したその能力は今や、戦乱の現場で成す術もなく消え去ろうとしている。

 国際法により、核兵器を含む世界中の大型破壊殺戮さつりく兵器が数千の輸送ロケットで次元系から遠く亜空間へ葬り去られた時から、人々がただ生々しく殺し合うという原始的な争いが始まった。一人の天才理学医学博士がその生涯を終える間際に生み出した、『神の力』の奪い合いの始まりだった。

 あらゆる権力者や大富豪のみならず、すべての人間が究極的に求めること。不老不死の【神秘】を与えられてしまった16歳の少女は、シェルターの中で、まだ不完全な力をもってして、病床人たちの手当てに全身から汗を流して奔走ほんそうしていた。
香月かづきフォーミュラ』。少女の名前である。

「ゴメンなさい! 私一人では手が回りません! 蘇生の必要に迫られた方を優先にして、医療従事者の皆さんは、可能であれば旧式のAEDで対応してください! あとすみません! 周囲の方は私の半径2メートル以内に入らないでください!」

 声も枯れ果てた彼女は、息絶えたと思われる幼い少年を前にして、ひたすら手のひらに精神を集中していた。精一杯の距離で涙ながらに見守る少年の母を視界に入れながら、(生きて――生きて――)、そう繰り返しながら、ありったけの思いを集中させていた。


Aオーセント.Eエレクトリカル.Dディレクション.)!」


 ドーム状の、100人以上がひしめき合うシェルターに、まだうら若い少女の決死の声が響く。その度に、彼女の手に触れられた少年の身体が大きく跳ね上がる。彼女の声は、何度となくシェルターにこだまする。

 やがて、見えないオーラを纏ったような少女の手のひらが、横たわった少年の右胸からゆっくりと離れる。


「大丈夫です。息は吹き返しました――」

 死の川の縁から戻ってきた幼い命に、女性が息子の元へ駆けよっては抱きかかえる。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 そんな女性に笑顔で応えることもできず、少女は、もはや手遅れになった人々の、そして、それを囲んでは嗚咽おえつする姿に心を痛めた。


(父はなぜ、私にこんな酷い運命を背負わせたんだろう……)


  彼女の力は治癒の能力だ。壊れた細胞の復元から、傷んだ臓器の回復。そして最終的にたどり着く能力が――不老不死を『与える』力だったのだ。決して彼女が不老不死という訳ではない。


 そして、悪夢の瞬間が訪れた。
 著名な理学博士だった父の、優し気な面影を彼女が思い返す間もなく――


 誰も気づかぬ時間の流れの中で、慰安所であるシェルタードームが一瞬で消え去った――――。

 某国が地下深く隠し持っていた大型核兵器がその上空で、炸裂さくれつしたのだった。

 人類は半数を一瞬で失い、青く美しい世界がこの世から消えた。
 その独立国家にとって、多勢の生き死になどは関係がなかった。その力を持った『誰か』を見極めるためだけの、ただの無慈悲むじひな行為だったのだ。
 焼けて吹き飛び焦土しょうどと化した国々をくまなく探し、まだ生きながらえている者がいるならば、それこそをターゲットとした。事実が曲げられていたのだ。その者自信が『不老不死』であるのだと――。
 彼女は不老不死ではない。彼女はただ、その能力を『与える』だけの存在だ。


 何もかも――大地も空も消滅したかのような爆撃を受けた荒野で、少女が体感した時間は数秒間。と、同時に、自らのすべての役目が終わりを告げたことも感じて涙を流した。
 少女=『香月・フォーミュラ』は、自分の死を悟ったのだ。それが、また新たな使命を自分が授かった瞬間だとも知らず。

 ただひとつ、今だけは彼女の心を誰かが慰めてあげてもよかったかもしれない。その『誰か』が、もうどこにも、ただの一人すら見えなかったとしても。








 ~あとがき~
 キャラクターの画像設定を考えています。
『キャラ紹介』の画像から、「このキャラのシーン、もっと画像で欲しい!」とかあったら、どうぞ!!!
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