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第1章・それぞれの転生
22・もう一人の希望
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食事のあとは、シュルケンが表で焚火を焚いた。ダックスの出現に驚きを隠せなかったのは、彼も同じくだった。
「では、ずっとヒフミ殿の屋敷に?」
「ええ――。成り行きで」
小声の会話の中、「たまに喋るんですが」とは言わなかった。
これといって誰かが会話をすることもなく、ユルエが『たまごっぴ』に勤しむ姿だけがあった。
そんな中、一二三がゆるゆると立ち上がる。
「あの――僕、そろそろ帰らなきゃいけないんで」
巌流が頷く。
「そうだな。お前は家族が心配するだろうから。夜道には気をつけて帰れ」
「ありがとうございます。じゃあ皆さん、明日も来ますんで」
ベルモットが一二三へ向けて、無言で右手を上げた時だった。香月が間に割って入った。
「すみません皆さん。どうしても私から話しておきたいことがあるんです」
「話でござるか?」
「はい――ここにいる皆さんで、大転生者の老人にお会いしたのは、ヒフミさんとシュルケンさんと、私だけのようです。けれど、そういった夢を別人が共有するというのは……。確かに私が住んでいた世界では、そういう重ね合いを人工的に作り出すこともできました。けれど、この世界では稀なことだと思うんです」
香月の言葉が止まる。次は順番として、一二三が継がなければならない。
「僕も……。異世界転生とか、作り話の中だけのことだと思ってました。でも、皆さんはこうやって、違う世界から確かにやって来てる。それを現実として考えるなら、もしかしたら――皆が元にいた世界に帰れる可能性もあるってことだと思うんです」
その言葉に、息を詰まらせたような香月が口を開いた。
「大転生者は仰いました。私はこの世界で、六つの希望に出会わなければならないと。でも、ここにいるのは私の他に五人――。もう一人が足りないんです」
一二三は一瞬ダックスを思い浮かべて、その考えはすぐに捨てた。あれを人としては数えられないだろうと。
「私は、大転生者に六つの名前を聞きました。ヒフミ、ユルエ、ガンリュウ、ベルモット、そしてシュリ……。だから、おかしいんです! もう一人……。もう一人が揃わなければ、私たちは、このままなのかもしれません……」
巌流は、ベルモットに冷やしてもらった缶ビールを手にして、香月へと問いかけた。当たり前の流れとしての話だ。
「それで、お前が聞いたという、もう一人の名前は何というんだ。これだけの数が集まれば、手掛かりも見つかるかも知れん」
「その――拙者は戦闘には向いていない忍びでござるが、隠密行動には自信があるでござる。して、その名というのは……」
香月・フォーミュラは、祈りを捧げる目で、夏の夜空を見上げた。
「カノン……。そう、聞きました」
誰もが首をひねる中で、たった一人だけ、その足を震わせる者がいた。彼は、こう思った。
(なんで……。どうしてここで、その名前が出てくるんだ。カノン――僕の妹の名前が……)
沢渡一二三だけが、頭を混乱させていた。
「では、ずっとヒフミ殿の屋敷に?」
「ええ――。成り行きで」
小声の会話の中、「たまに喋るんですが」とは言わなかった。
これといって誰かが会話をすることもなく、ユルエが『たまごっぴ』に勤しむ姿だけがあった。
そんな中、一二三がゆるゆると立ち上がる。
「あの――僕、そろそろ帰らなきゃいけないんで」
巌流が頷く。
「そうだな。お前は家族が心配するだろうから。夜道には気をつけて帰れ」
「ありがとうございます。じゃあ皆さん、明日も来ますんで」
ベルモットが一二三へ向けて、無言で右手を上げた時だった。香月が間に割って入った。
「すみません皆さん。どうしても私から話しておきたいことがあるんです」
「話でござるか?」
「はい――ここにいる皆さんで、大転生者の老人にお会いしたのは、ヒフミさんとシュルケンさんと、私だけのようです。けれど、そういった夢を別人が共有するというのは……。確かに私が住んでいた世界では、そういう重ね合いを人工的に作り出すこともできました。けれど、この世界では稀なことだと思うんです」
香月の言葉が止まる。次は順番として、一二三が継がなければならない。
「僕も……。異世界転生とか、作り話の中だけのことだと思ってました。でも、皆さんはこうやって、違う世界から確かにやって来てる。それを現実として考えるなら、もしかしたら――皆が元にいた世界に帰れる可能性もあるってことだと思うんです」
その言葉に、息を詰まらせたような香月が口を開いた。
「大転生者は仰いました。私はこの世界で、六つの希望に出会わなければならないと。でも、ここにいるのは私の他に五人――。もう一人が足りないんです」
一二三は一瞬ダックスを思い浮かべて、その考えはすぐに捨てた。あれを人としては数えられないだろうと。
「私は、大転生者に六つの名前を聞きました。ヒフミ、ユルエ、ガンリュウ、ベルモット、そしてシュリ……。だから、おかしいんです! もう一人……。もう一人が揃わなければ、私たちは、このままなのかもしれません……」
巌流は、ベルモットに冷やしてもらった缶ビールを手にして、香月へと問いかけた。当たり前の流れとしての話だ。
「それで、お前が聞いたという、もう一人の名前は何というんだ。これだけの数が集まれば、手掛かりも見つかるかも知れん」
「その――拙者は戦闘には向いていない忍びでござるが、隠密行動には自信があるでござる。して、その名というのは……」
香月・フォーミュラは、祈りを捧げる目で、夏の夜空を見上げた。
「カノン……。そう、聞きました」
誰もが首をひねる中で、たった一人だけ、その足を震わせる者がいた。彼は、こう思った。
(なんで……。どうしてここで、その名前が出てくるんだ。カノン――僕の妹の名前が……)
沢渡一二三だけが、頭を混乱させていた。
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