イセカイセブン~僕だけ転生できなかった世界に、異世界人がなだれこんできました~

テヅカミユーキ

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第2章・七人の侍編

40・陣取り合戦

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 日中の電車は、コスプレ侍の独擅場どくせんじょうだった。周囲の乗客も2メートルは距離を保っている。

 ――「まあ卜伝さん。その渋谷ってとこの残骸でも見に行きませんか?」

 一刀斎の軽い言葉だった。昨日の渋谷での怪物出現事件。ケガ人は多数いたが、運よく死者は出ていないという。ビルを10件壊して、ミミズは地中に帰ったとも。

 卜伝も悩みどころだった。が、ある種の確信もあった。魔物を倒せなかった土地は、魔物たちに支配されてゆくのではないかと。
 もしも実際、地球そのものの転移により星を奪われたとするなら、魔物たちにすれば生きる世界をいきなり奪われたようなものだ。ならば、向こうにも理はある。奪われた土地を取り戻すための、いわば陣取り合戦が始まっているのだ。


 センター街は規制線を張られて、立ち入り禁止になっていた。7人の侍に同行したのは、一二三、巌流、香月の3人だ。

「どうすんだよこれ。入れそうにないぜ――」

 一刀斎が口先を尖らせていると、予期しない人物が現れた。

「拙者が、様子を窺ってくるでござる」

 まさかのシュルケンが、五階建てビルの上から飛び降りてきたのだ。
 巌流も驚く。

「シュルケン。いつからいた」
「電車の上にしがみついていたでござるよ。拙者、皆の動向はすべて知り申している故に」

 唖然とする周囲に、一刀斎だけが、

「キモっ。ストーカーかよ」

 意外と現代の言葉使いに慣れているようだった。

「あの、ともかく。シュルケンさんは『こういうのだけ』は得意なんで、任せてみましょう」

 褒めたつもりの一二三の言葉に、シュルケンの心が挫けそうになる。

「で、では拙者。見回りに向かうことにしますゆえ。失敬!」

 言うと、影のように姿を消した。

「ヒョウっ。忍者ってのはこういうふうに頼れる訳だ。廃虚で火事場泥棒かじばどろぼうでもすりゃ、生活費には困らねえだろうから」

 またしても一刀斎の減らず口が出る。香月がたまらず、

「そんなこと、シュルケンさんはしません! 拾ったバッグはきちんと警察に届ける人なんですから(返すまでに、いろいろ使わせてもらったんですけど)」

 そこに卜伝が、

「まあ、のんびり待つとしましょう。おい信綱、お前が勘定方かんじょうがただからのお。お茶でも買ってきてくれるか。もちろん、こなたらの分もじゃ」
「はい。では、しばしコンビニへ向かってきます」

 その背中には、エベレストに登山ができそうな荷物で紙幣が詰まっているという。まあ、質の悪い人物に見られたとして、返り討ちは必須だ。

 と、そこへ焦った顔のシュルケンが戻ってくる。

「大変でござる! 魔物の巣から、何やら影が這い出てきてござる! こちらへ向かって――」
 いう間もなく、世界がモノクロに変わり始める。

「おーい、通行人の皆さん。魔物が来てるぞ。動画撮影もいいが、まずは逃げた方が賢明だぞー」と、一刀斎。

 最近ではニュースの拡散も多く、ほとんどの人間が周囲から去った。しかし、そこへ向かってくるのは巡回の警官たちだ。巌流もいつか見た顔だ。

「またアンタら――って、なんか増えてるのか? とにかく機動隊も向かってる。巻き込まれないよう、外に下がって――うわあっ!」

 すでに警官の足を地中から握る者がいた。握る手があるということは、ミミズではない。

「ひ! ひいっ!」

 しかし侍たちは、その様子を何事もせず、眺めている。
 巌流が先に立つ。

「お主ら、放っておく気か――」
「いえいえ、巌流殿。まずは見極めですじゃ。相手がどのような魔物なのか――」
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