後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第二話 五年後、元妓女は動き出す

04-3.

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「陛下。陛下の命令はなによりも尊いものです」

 可馨は冷や汗をかく。

 怒りの矛先が可馨に向けられていないのにもかかわらず、恐怖の中に立たされていた。本当は座り込んで泣いてしまいたいほどに恐ろしかった。

 ……麒麟の加護。

 我が子たちに受け継がれているだろう加護が、もっとも強いのは、梓豪だ。

 ……それがこれほどにまで強いとは。

 音繰は加護の力が弱かったのだろう。

 そうでなければ、小麦アレルギーで命を落とすのに時間がかかるはずだ。

「ですが、充媛宮は第三公子と第一公主を育てる重要な拠点でございます。そこを血で汚されるのは嫌にございます」

「今日ははっきりと言うのだな」

「そこまで言わなければ、陛下は、私の声に耳を傾けてくださらないでしょう?」

 可馨は息を吸う。

 恐怖で倒れそうになるが、それを悟られてはならない。

「想像しただけでも恐ろしゅうございます」

 可馨は梓豪の隣に立った。

 そして、涙を流す。

「人の命を奪わないでくださいませ」

「なぜだ」

「恐ろしいことをしてほしくはないからでございます」

 可馨はゆっくりと頭を下げた。

 命乞いをしているように見えるだろう。

「なぜだ」

 梓豪には理解ができなかった。

 機嫌が悪く、宦官を罰したことなど数えきれないほどにあった。宦官は元は罪人であることが多く、その地位は限りなく低いものだ。その命は妃賓よりも軽い。

「こいつはそなたをバカにしたのだぞ、可馨」

「疑われるような真似をした私がいけないのです」

「そなたが疑われるようなことはなにもない! それなのに庇うというのか!」

 梓豪は可馨のために怒っていた。

 そのことを理解すると、可馨はゆっくりと姿勢を元に戻した。

 ……まだ騙されているのね。かわいい人。

 月日が経っても見破れない。

 それをかわいいという感情で表現をする。

 可馨はまさに悪女だった。しかし、宦官にとっては天女のように見えたことだろう。
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