後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第二話 五年後、元妓女は動き出す

05―1.楊 可馨は涙を流す

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 可馨は涙を流した。

 自然と零れてくる。それは恐怖によるものだった。

 しかし、涙は可馨を可憐な少女に見せる武器でもあった。20歳を超えた可馨ではあったものの、まだまだ10代の少女のような可憐さを武器に後宮で戦っていた。

 それは梓豪にとって効果的な武器であった。

「人が死ぬところを見たくはございません……」

 可馨は困ってしまったというかのように泣きながら訴えた、

 頭の悪い女に見せるのだ。

 裏ではなにも考えることができない正直な女を演じる。

「可馨」

 梓豪はまんまと騙されてしまった。

 剣を鞘に戻し、宦官に預ける。

 そして、可馨の涙を指で拭った。

「そなたがそこまでいうのならば、死刑はなしにしよう」

「ありがとうございます、陛下」

「代わりに杖刑とする。文句は聞かないからな」

 梓豪は譲歩した。

 杖刑も回数が多ければ死に至ることがある。それを可馨は知っていた。知っていたが、知らないふりをした。

 人が死なないことを素直に喜んだ。

 抱き心地が良いのか。再び寝始めた雹華に視線を落とす。

「ありがとうございます、陛下」

 可馨は梓豪に礼を伝えた。

 それに対し、梓豪は居心地が悪そうな顔をした。

 ……罪悪感かしら。

 可馨がなにも知らないと思っているのだろう。

「杖刑は――。いや、なんでもない。そなたはなにも知らないままでいい」

「はい、陛下」

「そなたは純粋なままでいてくれ」

 梓豪は可馨が純粋だと信じている。

 可馨の頭を軽く撫でると、宦官から剣を受け取り、腰に付けた。

 仕事に戻るのだろう。

 ……今日の夜、来なければ失敗ね。

 寵愛を賭けた。

 それがどちらに転ぶか、わからない。
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