後宮の元妓女は寵愛を受ける

佐倉海斗

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第三話 手段は選ばない

06-3.

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「楊武官だけは可馨は無実だと訴えてきた」

「兄上ですか?」

「そうだ。さすがは兄妹だな。妹のことをよくわかっている」

 梓豪は笑った。

 抱きしめるのをやめる。

 ……兄上らしい。

 兄は嘘が得意だ。

 寵妃を疑うのは得にならないと判断したのだろう。楊家の人間は無実だというかのようなことを皇帝に訴えたのに違いない。

 ……誰も私の本性を見ようとしない。

 可馨は空しかった。

 か弱く、人見知りで大人しい女性。梓豪の理想を演じ続けることに嫌気がさしていた。

「仲が良かったそうだな」

 梓豪は会話を懐かしむかのように言った。

 そのような事実はない。

 楊家では男女別々で生活をしている。兄が複数人いることや、弟がいることは知っていたものの、関わったことは一度もなかった。

 ……嘘ばかり。

 いつの日か嘘がばれてしまわないか、怖くないのだろうか。

「はい。兄上にはよくしてもらいました」

 可馨は嘘をついた。

 そのような事実はないのにもかかわらず、懐かしそうな顔をしてみせる。

 ……兄上は私の本性を知っている。

 楊家の人々は可馨の性格を知っている。

 その上で可馨は引きこもりがちな大人しい女性だと言っているのだ。

 嘘ばかりの一族に嫌気がした。

「兄に会いたいか?」

「いいえ。後宮に入った以上は会えないものとわかっております」

「そうか。可馨は頭が良くて助かる」

 梓豪は笑った。

 可馨が会いたいといえば、お気に入りの武官であったとしても宦官にするつもりだったのだろう。

 ……楊家から宦官がでるのは恥じよ。

 宦官は罪を犯した人間だけではない。

 時には皇帝の意思で宦官にされる哀れな人間もいる。その哀れな人間に兄をしたくはなかった。
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