18 / 52
第18話 下着と普段着を買いたい
しおりを挟む
店の奥には、衝立で仕切られた空間があるだけで、試着室のような個室はなかった。
まあ、他に客もいないし、いっか。
さっさと着替えて出ていこう。
宮殿の使用人の制服――ボタンダウンの白シャツにノーカラーの茶色いジャケットとピタッとしたカーキ色のパンツ――を脱ごうとして、服を置くところがないことに気がついた。
卵は床に直においても平気だけど――もともと地面に埋まってたんだし――、さすがに服は抵抗がある。
いくら異世界でもちょっとね。
うーん。ん? そうだ。
「キュウ。いいか、声を出しちゃだめだぞ。そうっと出てきて、大きくなってくれるかな」
そう言ってキュウをポケットから出すと、キュウは嬉しそうに、ぼよんと一回弾んでから大きくなった。
「キュウは変形できるのかな。俺のこの手みたいに、うにゅっと体から出てくるといいんだけど。まあそれは無理か。じゃ、悪いけど、脱いだ服を頭に乗せてくね」
「キュ」
「しいーーっ!」
キュウはしまったと言うように口をへこませて、クルッと回った。
ジャケットから順番に脱いで、キュウの上に乗せようとしたら、出た!
キュウが体の両脇から、手らしきものを、うにゅって出してきた!
うわー。キュウのぷにゅっと出した手が可愛い。
「キュウ! できるんだね! すごいぞ! じゃ、そのまま両手を前に出して。そうそう。そこに乗せていくからね」
キュウはお利口さんだから、ここで「キュウ」と声を出して返事したりしない。
俺とは大違いだ。
口を可愛くすぼめて、「了解っ」と伝えてきた。
それにしても、使用人にしては、まあまあ整った格好をさせられているよな。
やっぱり、宮殿内をうろつくから、身分の高い人に見られても見苦しくないように、ってことかな。
脱いだ服でキュウが隠れてしまった。ごめん。
あれ? この服、結構ヨレヨレ……。
うわあっ!!
ちょっと!!
お、俺、俺、俺って――汚くない?
もうずっと風呂に入ってないじゃん!
着替えてもないし!
今日なんて、死ぬほど走った上に、恐怖で汗びっちょりになったし。
ヤバい。臭ってたらどうしよう!
宮殿って風呂場があるのかな?
いや、あったとしても使用人に使わせる訳ないか。
そもそも宮殿に住んでいる使用人なんていないんだし。
俺は今だけ特別扱いされているにすぎない。
えー! えー! どうすりゃあいいの!?
ああ水道がないって超不便だなー。温水なんて贅沢は言わないから、シャワーを使いたい!
あ、キュウ。
キュウに水をかけてもらって――いやいやいやいやいや。
バカか俺は。
キュウは見た目と違うんだって。
チャプチャプっと水遊びをして、あははは、っていうイメージは捨てなきゃ。
キュウに水をかけられた途端に、ジュッて溶けていく光景しか目に浮かばない。
「キュッ?」
いや! キュウ、違う。違うんだ。
何にもしなくていいからね。
あっぶなっ!
とりあえず、風呂問題は今夜考えるとして、この最高級防具を身に付ける前に、とにかく下着だけでも変えたい。
あとTシャツと短パン、スエットくらいは欲しいな。
いやいや、裸のまま考えることじゃない。
とりあえず下着だ。
まずは下着を買えるアプリをダウンロードしよう。
「ステータスオープン」
――となると、何がいいかなあ。
最初に頭に浮かんだのは、えんじ色のロゴの「無地」だ。
俺は別に無地派って訳じゃないけど、帰り道にあったから寄りやすくて、ちょくちょく買ってたんだよな。
「無地」を検索してみたら、なんと、魔力50,000!
え? 何で?!
いったい何に比例して魔力数が上がるの? 品数じゃないはず。それならコミックの方が多いから。
デリバリー館やコミックの魔力数から考えて、扱う商品の平均価格のだいたい十分の一くらいだと思ったんだけどな。違うのかな。
うおおっ! そういえば、無地って家具だけじゃなくて家もあった。
うっそーん。
落ち着け。
じゃあ、やっぱ赤に白字のアレだな。
「ユニーク」で検索すると、1,200。
そうそう。そうこなっくっちゃ。
でも思ったよりするな。
やっぱり商品の平均価格じゃなくて、一人当たりの購買単価?
あ、物価の高い海外の分まで反映されてるとか?
うーん。分からん。
おっと! 待てよ。慌てるな。
最近よく使ってたあっちはどうかな。
ガテン系御用達のとこで、ちょっとおしゃれになった「ワークプラス」。
確か、釘を踏んでも大丈夫なインソールとか売ってたよね。
こっちの世界にはワークプラスの方が向いているかも。
「へっくしゅん!」
本当にバカか俺は。だから、今は考えないの。
急いで「ユニーク」をダウンロード。
おっほ! 全然ぐわんってなんなかった
おっと、魔力もポーションを飲んで回復しておこう。
二本を一気飲みすると、13,350まで回復した。
じゃ、今着る分の下着をまず買おう。
ふっふー。
真っさらな下着――本当は洗濯してから着たかったけど、どうせ風呂にも入ってないんだし――と、買ったばかりの最高級防具を身に付けて、最後に制服を着た。
よっし。あとは一刻も早く部屋に戻るだけだ。
「それでは失礼します」
着替えを済ませた俺は、店主の顔をろくに見もせず外へ飛び出した。
「ふう。なんか焦ったー」
でも、これで、「死ぬかも」リスクは相当下がったんじゃないかな。
もう今日はこれで大満足だ。
帰ったら風呂に入って一杯やりたい。
<俺のステータス>
Lv:16
魔力:13,350/14,800
体力:4,800/4,800
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、魔力ポーション(2)、体力ポーション(2)、75,352ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム
まあ、他に客もいないし、いっか。
さっさと着替えて出ていこう。
宮殿の使用人の制服――ボタンダウンの白シャツにノーカラーの茶色いジャケットとピタッとしたカーキ色のパンツ――を脱ごうとして、服を置くところがないことに気がついた。
卵は床に直においても平気だけど――もともと地面に埋まってたんだし――、さすがに服は抵抗がある。
いくら異世界でもちょっとね。
うーん。ん? そうだ。
「キュウ。いいか、声を出しちゃだめだぞ。そうっと出てきて、大きくなってくれるかな」
そう言ってキュウをポケットから出すと、キュウは嬉しそうに、ぼよんと一回弾んでから大きくなった。
「キュウは変形できるのかな。俺のこの手みたいに、うにゅっと体から出てくるといいんだけど。まあそれは無理か。じゃ、悪いけど、脱いだ服を頭に乗せてくね」
「キュ」
「しいーーっ!」
キュウはしまったと言うように口をへこませて、クルッと回った。
ジャケットから順番に脱いで、キュウの上に乗せようとしたら、出た!
キュウが体の両脇から、手らしきものを、うにゅって出してきた!
うわー。キュウのぷにゅっと出した手が可愛い。
「キュウ! できるんだね! すごいぞ! じゃ、そのまま両手を前に出して。そうそう。そこに乗せていくからね」
キュウはお利口さんだから、ここで「キュウ」と声を出して返事したりしない。
俺とは大違いだ。
口を可愛くすぼめて、「了解っ」と伝えてきた。
それにしても、使用人にしては、まあまあ整った格好をさせられているよな。
やっぱり、宮殿内をうろつくから、身分の高い人に見られても見苦しくないように、ってことかな。
脱いだ服でキュウが隠れてしまった。ごめん。
あれ? この服、結構ヨレヨレ……。
うわあっ!!
ちょっと!!
お、俺、俺、俺って――汚くない?
もうずっと風呂に入ってないじゃん!
着替えてもないし!
今日なんて、死ぬほど走った上に、恐怖で汗びっちょりになったし。
ヤバい。臭ってたらどうしよう!
宮殿って風呂場があるのかな?
いや、あったとしても使用人に使わせる訳ないか。
そもそも宮殿に住んでいる使用人なんていないんだし。
俺は今だけ特別扱いされているにすぎない。
えー! えー! どうすりゃあいいの!?
ああ水道がないって超不便だなー。温水なんて贅沢は言わないから、シャワーを使いたい!
あ、キュウ。
キュウに水をかけてもらって――いやいやいやいやいや。
バカか俺は。
キュウは見た目と違うんだって。
チャプチャプっと水遊びをして、あははは、っていうイメージは捨てなきゃ。
キュウに水をかけられた途端に、ジュッて溶けていく光景しか目に浮かばない。
「キュッ?」
いや! キュウ、違う。違うんだ。
何にもしなくていいからね。
あっぶなっ!
とりあえず、風呂問題は今夜考えるとして、この最高級防具を身に付ける前に、とにかく下着だけでも変えたい。
あとTシャツと短パン、スエットくらいは欲しいな。
いやいや、裸のまま考えることじゃない。
とりあえず下着だ。
まずは下着を買えるアプリをダウンロードしよう。
「ステータスオープン」
――となると、何がいいかなあ。
最初に頭に浮かんだのは、えんじ色のロゴの「無地」だ。
俺は別に無地派って訳じゃないけど、帰り道にあったから寄りやすくて、ちょくちょく買ってたんだよな。
「無地」を検索してみたら、なんと、魔力50,000!
え? 何で?!
いったい何に比例して魔力数が上がるの? 品数じゃないはず。それならコミックの方が多いから。
デリバリー館やコミックの魔力数から考えて、扱う商品の平均価格のだいたい十分の一くらいだと思ったんだけどな。違うのかな。
うおおっ! そういえば、無地って家具だけじゃなくて家もあった。
うっそーん。
落ち着け。
じゃあ、やっぱ赤に白字のアレだな。
「ユニーク」で検索すると、1,200。
そうそう。そうこなっくっちゃ。
でも思ったよりするな。
やっぱり商品の平均価格じゃなくて、一人当たりの購買単価?
あ、物価の高い海外の分まで反映されてるとか?
うーん。分からん。
おっと! 待てよ。慌てるな。
最近よく使ってたあっちはどうかな。
ガテン系御用達のとこで、ちょっとおしゃれになった「ワークプラス」。
確か、釘を踏んでも大丈夫なインソールとか売ってたよね。
こっちの世界にはワークプラスの方が向いているかも。
「へっくしゅん!」
本当にバカか俺は。だから、今は考えないの。
急いで「ユニーク」をダウンロード。
おっほ! 全然ぐわんってなんなかった
おっと、魔力もポーションを飲んで回復しておこう。
二本を一気飲みすると、13,350まで回復した。
じゃ、今着る分の下着をまず買おう。
ふっふー。
真っさらな下着――本当は洗濯してから着たかったけど、どうせ風呂にも入ってないんだし――と、買ったばかりの最高級防具を身に付けて、最後に制服を着た。
よっし。あとは一刻も早く部屋に戻るだけだ。
「それでは失礼します」
着替えを済ませた俺は、店主の顔をろくに見もせず外へ飛び出した。
「ふう。なんか焦ったー」
でも、これで、「死ぬかも」リスクは相当下がったんじゃないかな。
もう今日はこれで大満足だ。
帰ったら風呂に入って一杯やりたい。
<俺のステータス>
Lv:16
魔力:13,350/14,800
体力:4,800/4,800
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、魔力ポーション(2)、体力ポーション(2)、75,352ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム
301
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!
向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。
とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。
こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。
土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど!
一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる