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第30話 キュウと一緒にレベル上げ
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「……はあ」
詰んだ。俺、完全に終わった。
俺の愛してやまないゴロゴロ食っちゃ寝生活があっという間に終わった。
バシン!
老婆が振った杖が俺の尻をヒット。
いたいけな金髪幼女の姿と、やっていることとがアンバランス過ぎて、頭が変になりそう。
「いい加減にやめんか! さっきから、『はあはあ』と、うるさいんじゃ!」
どれだけ金髪幼女に叩かれようと、もうろくに痛みも感じない。
ついさっきまで、衣食住が確保されて、ゴロゴロ食っちゃ寝の生活があったのに。
確かに、この異世界に、あったのに。
それが今じゃ宿無し。さしずめ、住所不定の無職。
そりゃあ、ため息くらいでるでしょ。
俺、野宿なんて無理だからね。地面の上になんか寝られないから。
「腑抜けた面をしおって」
そう言われましてもねー。
ん? あれ? あれれ?
「ちょっ。お婆さん。さっきの綺麗な杖はどうしたんですか? また枝に戻ってるじゃないですか」
「ふん。余計な世話じゃ」
「え? もしかして、ただの見せかけ? じゃあ、やっぱり大賢者の力って残ってないんですか?」
「やかましいっ!」
バン! バン!
「痛っ!」
枝でもそんなに思いっきり叩かれたら痛いんですからね!
「ちょっ、ちょっと! お婆さん――じゃないか。ええと。あのう。お名前は?」
「はあん?」
いや、普通に名前を聞いただけなんですけど。どうして、そう、いちいち突っかかるんです?
「ワシは大賢者シモーネ様じゃ」
自分で「様」って……。
「じゃあ、今日からシモーネでいいですよ――」
「シモーネ様じゃ!」
「――ね?」
俺が言い終わる前に被せてきた。
まあ、別に。「様」って言うくらいいいですけど。タダだし。
「じゃあ、シモーネ様って呼びますね。俺のことはよしつねでいいですよ」
「ふん。お主なんぞの名前は聞いておらんわ」
はいはい。そうですか。好きにしてください。
「よしつねー。あっちに何かいるでしゅ」
「キュウ。今はなんにもする気になれないんだ」
「一緒に行くでしゅー」
キュウのイヤイヤが始まった。
目をうるうるさせて、ぼよん、ぼよん、と弾みながら俺に体当たりしてくる。
「キュウ。あのね。本当に何にもやる気がしないの。俺はもう、何一つ頑張りたくないの」
「よしつねー! キュッキュウー!」
あのね、キュウ。人間はね、安心安全な暮らしが確保できて初めて、他のことを考える余裕ができるわけ。
この先、馬車の荷台で寝泊まりするのかと思ったら、もう……。
――おう? おうおうおう。
ちょっと待てよ、俺!
寝泊まりできるところを探せばいいじゃん!
スーパー銭湯がダウンロードできたんだから、どっかのホテルのアプリくらいダウンロードできるんじゃない?
絶対できるはずー!
「うひひひ。ステータスオープン!」
ええっと。普通に有名なホテルから検索していこうかな。さすがにツアーの検索とは違うから――いや、違わないかも。
特定のホテルとかじゃなくて、ホテルを探して予約できるアプリなら……?
旅行会社のアプリはいらないよね。電車も飛行機も使わないから。
むふふふ。
じゃ、アレだな。どれくらい魔力いるんだろう。
確か、「一休み」のアプリがあったはず。
これがダウンロードできれば、一流ホテルとか高級旅館に泊まり放題。
どれどれ。――あった! あったぞー!
ええと。魔力は、68,000。
あっはー。そうだよねー。そりゃそれくらいするかー。
はあ。
どうしよう。
うーん。
今の俺の魔力は、最大14,800。ふう。
いやいや。これってトリケラトプスもどきを倒して、一気にバーンって上がったんじゃなかったっけ?
キュウと一緒にやっつけていけば、なんとかなるんじゃない?
「キュウ! お利口さんだね! よっし。一緒に魔物をバンバンやっつけて、レベルを上げようか」
「キュウ! キュウ! やるでしゅ! よしつねと一緒にやるでしゅ!」
「それで? どこに何がいるって?」
「こっちでしゅ。こっちに大きいのがいるでしゅ」
「よーし! 見つけたら問答無用でシュパッとやっつけていいからね」
嬉しそうに弾むキュウについて行くと、何か大きなものが木々を揺らしながら、のっそのっそと近づいていくる気配がした。
「どーれ。どんなやつかな――うわっ。ひいっ」
あ、あのね。キュウさんや。いくらなんでも無茶が過ぎるでしょ。
あんな、ゆっさゆっさと大木をなぎ倒して来るようなやつ、相手にしちゃいけませーん!
「キュウ! 危ない! 逃げ――」
あっはーん!
キュウさん。もう、そんな愛くるしい顔して、なんて無慈悲な攻撃。
キュウは、「キュッ!」っと短く叫んで踏ん張ると、トリケラトプスの三倍はあろうかという巨体の魔物に向かって氷刃を放った。
それは、コモドドラゴンみたいなトカゲの魔物の手足の付け根に命中すると、あっという間に真っ白に凍って砕けた。
地面にグロい手足の残骸が四つと、細長い胴体がズデンと転がっている。
なんというシュールな光景……。
「キュッキュウ!」
え? 俺もなんかやれって? あ、そっか。
「えいっ」と、短剣を振るって竜巻を胴体にぶつけると、胴体に裂け目ができた。
おっほ!
俺もなかなかやるじゃん!
キュウは仕上げとばかりに、手足と胴体の五つのパーツをそれぞれ水球で包み込んだ。
そんな小さな体で、よくそこまで大量の液体を出せるね……。
ジュワーっと溶けていくところは、やっぱりまだ慣れない。こ、怖い。
「キュウー!!」
キュウが勝利の雄叫びを上げて飛び跳ねている。
よっし。とりあえず確認しておこう。
「ステータスオープン」
うわっ。
レベルが一気に19に上がった。魔力も25,440。
一匹で魔力が10,000もアップ!
あれ? これなら、70,000くらい楽勝じゃない?
全部キュウのお陰だけど。
「よしつねー。キュウ、やったでしゅ」
「おおっ! やったな! 偉いぞキュウ! よく頑張ったな。よっし。この調子でどんどんいこう!」
「はいでしゅ」
すご過ぎる。なんかもう、キュウがすご過ぎる。
それにしても。
国を出て気がついたんですけど、外にいる魔物って結構巨大で、見た目も恐ろしいやつが多いね。
キュウがいてくれてよかったー!
「よしつね。あそこにもう一匹いるでしゅ」
キュウは遊び相手に会いにいくみたいに、喜び勇んで、ぼよん、ぼよん、と駆け寄っていく。
ヤバい。ヤバい。
キュウが一人でやっつけてしまう前に、俺も攻撃を当てておかないと。
そうやって、キュウにおんぶに抱っこで、俺のレベルは25に、魔力は75,960に。
キュウもレベルが28まで上がった。
ふっふー。これでダウンロードできるぞ。
<俺のステータス>
Lv:25
魔力:12,550/75,960
体力:4,800/22,600
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、武将の湯、魔力ポーション(2)、体力ポーション(2)、72,102ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム
<キュウのステータス>
Lv:28
魔力:120/47,560
体力:400/1,090
属性:水
スキル:感知、水球、氷刃、水結界、???
詰んだ。俺、完全に終わった。
俺の愛してやまないゴロゴロ食っちゃ寝生活があっという間に終わった。
バシン!
老婆が振った杖が俺の尻をヒット。
いたいけな金髪幼女の姿と、やっていることとがアンバランス過ぎて、頭が変になりそう。
「いい加減にやめんか! さっきから、『はあはあ』と、うるさいんじゃ!」
どれだけ金髪幼女に叩かれようと、もうろくに痛みも感じない。
ついさっきまで、衣食住が確保されて、ゴロゴロ食っちゃ寝の生活があったのに。
確かに、この異世界に、あったのに。
それが今じゃ宿無し。さしずめ、住所不定の無職。
そりゃあ、ため息くらいでるでしょ。
俺、野宿なんて無理だからね。地面の上になんか寝られないから。
「腑抜けた面をしおって」
そう言われましてもねー。
ん? あれ? あれれ?
「ちょっ。お婆さん。さっきの綺麗な杖はどうしたんですか? また枝に戻ってるじゃないですか」
「ふん。余計な世話じゃ」
「え? もしかして、ただの見せかけ? じゃあ、やっぱり大賢者の力って残ってないんですか?」
「やかましいっ!」
バン! バン!
「痛っ!」
枝でもそんなに思いっきり叩かれたら痛いんですからね!
「ちょっ、ちょっと! お婆さん――じゃないか。ええと。あのう。お名前は?」
「はあん?」
いや、普通に名前を聞いただけなんですけど。どうして、そう、いちいち突っかかるんです?
「ワシは大賢者シモーネ様じゃ」
自分で「様」って……。
「じゃあ、今日からシモーネでいいですよ――」
「シモーネ様じゃ!」
「――ね?」
俺が言い終わる前に被せてきた。
まあ、別に。「様」って言うくらいいいですけど。タダだし。
「じゃあ、シモーネ様って呼びますね。俺のことはよしつねでいいですよ」
「ふん。お主なんぞの名前は聞いておらんわ」
はいはい。そうですか。好きにしてください。
「よしつねー。あっちに何かいるでしゅ」
「キュウ。今はなんにもする気になれないんだ」
「一緒に行くでしゅー」
キュウのイヤイヤが始まった。
目をうるうるさせて、ぼよん、ぼよん、と弾みながら俺に体当たりしてくる。
「キュウ。あのね。本当に何にもやる気がしないの。俺はもう、何一つ頑張りたくないの」
「よしつねー! キュッキュウー!」
あのね、キュウ。人間はね、安心安全な暮らしが確保できて初めて、他のことを考える余裕ができるわけ。
この先、馬車の荷台で寝泊まりするのかと思ったら、もう……。
――おう? おうおうおう。
ちょっと待てよ、俺!
寝泊まりできるところを探せばいいじゃん!
スーパー銭湯がダウンロードできたんだから、どっかのホテルのアプリくらいダウンロードできるんじゃない?
絶対できるはずー!
「うひひひ。ステータスオープン!」
ええっと。普通に有名なホテルから検索していこうかな。さすがにツアーの検索とは違うから――いや、違わないかも。
特定のホテルとかじゃなくて、ホテルを探して予約できるアプリなら……?
旅行会社のアプリはいらないよね。電車も飛行機も使わないから。
むふふふ。
じゃ、アレだな。どれくらい魔力いるんだろう。
確か、「一休み」のアプリがあったはず。
これがダウンロードできれば、一流ホテルとか高級旅館に泊まり放題。
どれどれ。――あった! あったぞー!
ええと。魔力は、68,000。
あっはー。そうだよねー。そりゃそれくらいするかー。
はあ。
どうしよう。
うーん。
今の俺の魔力は、最大14,800。ふう。
いやいや。これってトリケラトプスもどきを倒して、一気にバーンって上がったんじゃなかったっけ?
キュウと一緒にやっつけていけば、なんとかなるんじゃない?
「キュウ! お利口さんだね! よっし。一緒に魔物をバンバンやっつけて、レベルを上げようか」
「キュウ! キュウ! やるでしゅ! よしつねと一緒にやるでしゅ!」
「それで? どこに何がいるって?」
「こっちでしゅ。こっちに大きいのがいるでしゅ」
「よーし! 見つけたら問答無用でシュパッとやっつけていいからね」
嬉しそうに弾むキュウについて行くと、何か大きなものが木々を揺らしながら、のっそのっそと近づいていくる気配がした。
「どーれ。どんなやつかな――うわっ。ひいっ」
あ、あのね。キュウさんや。いくらなんでも無茶が過ぎるでしょ。
あんな、ゆっさゆっさと大木をなぎ倒して来るようなやつ、相手にしちゃいけませーん!
「キュウ! 危ない! 逃げ――」
あっはーん!
キュウさん。もう、そんな愛くるしい顔して、なんて無慈悲な攻撃。
キュウは、「キュッ!」っと短く叫んで踏ん張ると、トリケラトプスの三倍はあろうかという巨体の魔物に向かって氷刃を放った。
それは、コモドドラゴンみたいなトカゲの魔物の手足の付け根に命中すると、あっという間に真っ白に凍って砕けた。
地面にグロい手足の残骸が四つと、細長い胴体がズデンと転がっている。
なんというシュールな光景……。
「キュッキュウ!」
え? 俺もなんかやれって? あ、そっか。
「えいっ」と、短剣を振るって竜巻を胴体にぶつけると、胴体に裂け目ができた。
おっほ!
俺もなかなかやるじゃん!
キュウは仕上げとばかりに、手足と胴体の五つのパーツをそれぞれ水球で包み込んだ。
そんな小さな体で、よくそこまで大量の液体を出せるね……。
ジュワーっと溶けていくところは、やっぱりまだ慣れない。こ、怖い。
「キュウー!!」
キュウが勝利の雄叫びを上げて飛び跳ねている。
よっし。とりあえず確認しておこう。
「ステータスオープン」
うわっ。
レベルが一気に19に上がった。魔力も25,440。
一匹で魔力が10,000もアップ!
あれ? これなら、70,000くらい楽勝じゃない?
全部キュウのお陰だけど。
「よしつねー。キュウ、やったでしゅ」
「おおっ! やったな! 偉いぞキュウ! よく頑張ったな。よっし。この調子でどんどんいこう!」
「はいでしゅ」
すご過ぎる。なんかもう、キュウがすご過ぎる。
それにしても。
国を出て気がついたんですけど、外にいる魔物って結構巨大で、見た目も恐ろしいやつが多いね。
キュウがいてくれてよかったー!
「よしつね。あそこにもう一匹いるでしゅ」
キュウは遊び相手に会いにいくみたいに、喜び勇んで、ぼよん、ぼよん、と駆け寄っていく。
ヤバい。ヤバい。
キュウが一人でやっつけてしまう前に、俺も攻撃を当てておかないと。
そうやって、キュウにおんぶに抱っこで、俺のレベルは25に、魔力は75,960に。
キュウもレベルが28まで上がった。
ふっふー。これでダウンロードできるぞ。
<俺のステータス>
Lv:25
魔力:12,550/75,960
体力:4,800/22,600
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、武将の湯、魔力ポーション(2)、体力ポーション(2)、72,102ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム
<キュウのステータス>
Lv:28
魔力:120/47,560
体力:400/1,090
属性:水
スキル:感知、水球、氷刃、水結界、???
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