スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも

文字の大きさ
42 / 52

第42話 「無地」アプリでお買い物

しおりを挟む
 森の中へ消えて行くキュウとタツの後ろ姿を見ていたら、どっと疲れがやってきた。
 まだ一日は始まったばかりなのに。

 あ。忘れてた……。
 馬車で移動しなきゃいけないんだった。俺、レベル上げしてきていいよって、二匹を行かせちゃった。

 来るっ、と思って身構えたけど、いつものバシンは来なかった。あれ? いいの?

「シモーネさん。なんかすみません。あいつら森へ入っちゃったんですけど。昼には帰ってきますかね? 戻ったらすぐに出発しましょう!」

 できるだけ明るく声をかけたのに、シモーネさんは無言でジロリとにらんでから、「昼じゃと?」と一言だけ返して、馬を連れてどこかへ行ってしまった。
 馬は、自分より小さなシモーネさんのいうことを大人しく聞いている。すごっ。
 そうだよね。馬の面倒も見なきゃだよね。

 ……はあ。こんな調子で無事に隣国まで行けるのかな。
 あいつらが昼に戻る保証はないし。俺は何をしようかな。
 あっ! 昨日は浮かれてはしゃいで洗濯もしてないんだった。

 どうしよっかなー。
 武将の湯に行って洗うか。あそこでゴロゴロしてキュウたちが帰ってくる頃まで待てばいいし。
 あ。でもいい加減、洗剤とか、その他もろもろ買い物したいんだよね。
 なんかいいアプリないかな。

 ……。
 ……。

 うおおっ! あるじゃん! あるじゃん!
 確か、「無地」アプリが魔力50,000だったはず!
 今の俺ならダウンロードできる!

「うっひゃっひゃっ」

 ああ、変な笑い声が漏れるほどに、アドレナリンが体を駆け巡っているよ。
 無地って、生活用品が結構揃っていたよね。タオルとか食器とか文具とか色々。
 もう買いまくってやるぜ!

「いっひっひっ」



 ドラえもんがポケットから道具を出す時の音が、効果音として脳内に響いた。

「ステータスオープン!」

 早速、「無地」を検索すると、やっぱり50,000だった。
 いくぞ。いくぞ。ポチッ。

 ふぁっ。今回はちょっとだけぐいんときたな。

 でもでも。
 あったー。「無地」アイコンゲットだぜー!


「やったー! これで一通りの物は買えるー!」

 ああまた俺、飛び跳ねてそこら中を周ってる。バカみたいだけど、テンションが上がってやめられない!

「ふー!」

 あ、なんかフラフラする。バカみたいにクルクル回ったせいかな。



 ――で。

 まずは商品が地面の上に落ちないように、馬車の荷台に移動する。
 それから思いつく限りの物をポチポチ買っていくんだ。

「まずは、忘れないうちに洗濯洗剤と。あ、やっぱりあった! となるとハンガーとかも欲しいな。うーん。あるある。うわあ。すごい品揃え」

 もう目につくものは買ってしまえ。


 荷台に敷くラグ。体を包んでくれそうなビーズクッションと、もう一個普通のクッション。薄いクッションも。それに膝掛け。ティッシュ。飴にクッキーにチョコバウム。

 それとドリンク! いちいち注文するの面倒なんだよね。
 あー無地だとボトル飲料になるのか。とりあえずお茶を10本。

 でへへへ。
 ついついニヤけちゃう。ま、一旦終了。わー。荷台の上がすごいことになってる。


 まずはラグを敷いて、クッションを置く。俺用の大きなやつと、キュウのための薄いやつ。タツはなんとなくいらない気がして買ってない。拗ねるかな? ま、拗ねたら買ってやればいっか。

 ティッシュも使うから横に置いて。お菓子もいるな。
 膝掛けは今はいいか――となると。どこにしまう?


 俺、アイテムボックスとか持ってないんだよね。でも、武器みたいにそのまま保管できないかな?

「ステータスオープン」

 試しに飴を押し込んでみた。――入らない。
 うーん。
 ……ん?

 おっほ! いいこと思いついた。
 食べ終わったゴミを捨てるみたいに、「ゴミ箱」に飴を押し込むと、入った。

「やったー」

 ゴミ箱を見ると、飴が入ってる。その飴をタップして、「元に戻す」をタップ。
 ぽとんと、飴がラグの上に落ちた。

 やっぱり! ゴミ箱に捨てたファイルを復活させるのと同じだ。
 俺、いっつもゴミ箱がパンパンになるくらいファイルを入れちゃってたんだよな。そっから、もういらないと思って捨てたやつを、たまに復活させて使ってたんだよね。

 ま、ゴミと一緒に保管しちゃうことになるけど。たまに持ち物を取り出してから、「空にする」をタップすればいいだけだもんね。

 ふっふー。解決。解決。すぐに取り出せるから、使わない物はひとまずしまっちゃえ。

 それで。次は洗濯か。
 前に調べたっけ? まだだっけ?
 ま、いっか。コインランドリーを検索してみよう。


 おっほ!
 「洗濯屋」なるアプリを発見! 魔力900だ。じゃ、早速。ポチッ。
 今度はヒュンって感じで、体感はほぼなし。

 どうやって使うんだろ? 
 試しに下着を洗濯屋アプリに押し当ててみると、吸い込まれるように消えた。

 ええっと? 洗濯が開始されたってこと? コースも選んでないし、乾燥の要否も選んでないんだけど。
 ま、待つしかないか。

 ……あ。 コインランドリーが使えるなら、洗濯洗剤いらなかったなー。ああ無駄遣いしちゃった。




 ドーン!

 突然、地響きと共に大きな音が聞こえた。

「ちょっ、今度は何?」

 荷台から降りて辺りを見回すと、遠くの木々が土埃に包まれている。
 あそこで戦ってるってこと?
 ――え?


「おいおいおいおいおい。何してる? 何してるんだ?」

 木々や土埃もろとも、ぐるりと数十メートル四方を丸ごと覆ったシャボン玉のような膜が現れた。
 あれって――キュウの技? 大きさが異常だけど、前に見たやつに似てる。

 い、いつの間にあんな巨大なものを出せるようになってんの!
 さっき森に入ったばっかなのに、どこまで成長してんの!?


「キュウが面倒見るでしゅ」

 あんな可愛いこと言って、ぷにょん、ぷにょん、って飛び跳ねていた子が!


 ……!!!! なんじゃありゃー!

「――ひ」

 あの、木々の上を飛んでるやつって。あれって――。

「ぅおいっ!」

 どうツッコんでいいのやら。


 タツのやつ――!
 朝見送った時は、っていうか、生まれた時はほんの三十センチほどだったのに。


 どうして今は、ドラゴンの子どもって分かるくらい大きくなってんの!!


<俺のステータス>
Lv:25
魔力:25,060/75,960
体力:21,980/22,600
属性:
スキル:虫眼鏡アイコン
アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、ユニーク、武将の湯、一休み、無地、洗濯屋、魔力ポーション(10)、体力ポーション(4)、72,102ギッフェ
装備品:短剣
契約魔獣:スライム、レッドドラゴン
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...