『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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12章

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第139話『君の名前を考える夜』

 夜。

 窓の外には月が浮かび、星の瞬きが静かに町を包んでいた。
 寝室のベッドでは、リィナがふわふわのクッションに背を預けて、ノートを開いていた。
 その隣には、寝巻姿のレオがぴたりと寄り添っている。

「候補、いくつかあるの。聞いてくれる?」

「もちろん。どんな名前も、君が考えたなら素敵だと思う」

 レオは、寝ているピノに毛布をかけながら、リィナの方へ視線を戻した。



「まずは、女の子だった場合──」

 リィナは書き記していた名前を指でなぞる。

「“フィーネ”。意味は『終わりではなく、新しい始まり』。
 それから、“リアナ”。これは、私の名前に少し似てるけど、“光を守る”って意味があるの」

「どちらも優しくて、芯がある……君らしい選び方だね」

 レオは微笑みながら、彼女の手をそっと包む。



「じゃあ、男の子だった場合は?」

「“ノエル”。これは、“恵み”って意味があるの。
 もう一つ、“アルセ”。これは『世界』って意味があって──」

 レオはふと、目を細めて彼女の横顔を見つめた。

「どれもいい名前だ。だけど、僕がどれかを選ぶとしたら──」

 彼は指先で、そっと“リアナ”の文字に触れた。

「この名前を、子どもが女の子だったら贈ってあげたい。君のように、光を灯す子になる気がするから」

 リィナの目に、うっすらと涙が浮かぶ。
 やさしい、あたたかい気持ちに包まれていた。



 その夜、ふたりは眠りにつくまで、たくさんの名前を語り合った。
 子どもがどんな風に笑うのか。
 どんな声で、どんな足取りで歩いてくるのか。

 どれもまだ見ぬ未来。
 でも確かにそこにあって、二人の胸を優しく照らしていた。
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