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ログインした直後、目の前に広がったのは一面の白だった。
床も、壁も、空も――どこまでも真っ白で、距離感すら掴めない。
「……何、ここ」
呟いた瞬間、すっと足音が近づいてきた。
振り向くと、ひとりの女性がこちらへ歩いてくる。
整った顔立ちに、きっちりした事務服。
現実の会社にいそうなくらい“ちゃんとした人”なのに、どこか人形みたいに綺麗だった。
「初めまして。RuneSphere Online(ルーンスフィア・オンライン)へようこそ。私はナビゲーターです」
丁寧で、淡々とした声。
「初めまして。瑞希です。よろしくお願いします。えっと……お名前は……?」
疑問が口から滑り出た。
すると彼女は一拍置いて、淡々と答える。
「私はナビゲーターですので、名前はありません」
「あ……そうなんですね。ごめんなさい、失礼なこと聞いちゃって……」
気まずくなって、視線を逸らしかけた。
でも、このまま黙るのも落ち着かなくて、私は思い切って続ける。
「あの、少しの間でいいので……“ナビさん”って呼んでもいいですか? ネーミングセンスないんですけど……嫌じゃなければ」
彼女の表情が、ほんの少しだけ揺れた。
「……ナビさん。初めて名前をつけられました」
小さく笑って、柔らかい声になる。
「ふふ。では、ナビさんでいきましょう。ここはキャラクターメイクをする場所です。外見、種族、職業、スキルなどを決められます。そのため、何もない空間になっています」
「なるほど……」
白い空間が、急に“特別な場所”に見えてきた。
「まずはメニューの出し方から説明しますね。手を目の前で軽く振ってください」
言われた通りに手を振ると、ふわりと光の板が現れた。
「……出た!」
「はい。そこからキャラメイクできますので、心ゆくまでどうぞ。分からないことがあれば遠慮なく聞いてくださいね」
優しい目でそう言われて、胸の奥が少し温かくなる。
「……はい。ありがとうございます」
メニューを開くと、最初に表示されたのは“名前”だった。
瑞希――そのままでもいい。
でも、せっかく親の干渉から離れられる世界に来たのに、ここでも同じ名前を背負うのは嫌だった。
少し悩んで、私は入力する。
「……ココ」
決めた瞬間、肩の力が抜けた気がした。
次は種族選択。
人間、エルフ、獣人……王道が並ぶ中で、私は指を止める。
――自由を探しに来たんだ。
だったら、いつも通りじゃなくていい。
「天使……」
選択した瞬間、背中にぞくりとした感覚が走った。
白い羽がふわりと現れ、ゆっくりと広がる。
「……うわ、すご……!」
羽は出し入れが可能らしい。実用的で助かる。
……でも。
「え、ちょっと待って」
視線が下がった。
いや、違う。世界が大きくなったのかと思ったけれど――私が小さくなっている。
「ナビさん! 身長が……縮んでるんですけど!?」
焦って早口になってしまう。
ナビさんは落ち着いたまま答えた。
「天使を選んだ方の特権です。あなたは“未熟な天使”として始まりますので」
「未熟……」
ざっと見て、145cmくらい。
身長が低いのは、正直コンプレックスだった。
でも、羽は可愛い。
それに――空を飛びたい。
「……天使は、変えたくないな」
私は気持ちを切り替え、外見を決めていく。
髪はセミロング。少し癖のあるブロンズ。
瞳は蒼。現実の自分とは違う色を選んだ。
「……うん。これなら、“いつもの私”じゃない」
最後はスキル構成だ。
「ナビさん。スキルって、いくつまで取れますか?」
「初期スキルは、種族スキルを除いて五つまでです。慎重に選んでくださいね」
「分かりました!」
まず種族スキルを見ると、《浮遊》と《聖魔法》があった。
天使らしくて、ちょっと嬉しい。
そして私は、初期スキルを選んでいく。
《双剣》――速い武器が好きだから。
《体術》――ソロなら、自分の身は自分で守りたい。
《料理》――この世界で“暮らす”ことも楽しみたい。
《鑑定》――知らない世界では、情報が命。
……残りひとつ。
決めきれなくて、私はナビさんを見る。
「ナビさん。おすすめのスキル、ありますか?」
「おすすめですか……そうですね。ソロで動くなら《結界魔法》はいかがでしょう。自分を守れますよ」
守る、という言葉が胸に引っかかった。
現実でも、私はずっと守りたかったのかもしれない。自分の心を。
「……結界魔法にします」
こうしてスキルを決め、決定ボタンを押す。
光が走り、選択したものが全て反映された。
ナビさんが微笑む。
「ココさん。これでキャラメイクは終了です」
「はい……!」
「あなたがどんな自由を手にするのか、見守っていますから」
そして、柔らかく告げた。
「いってらっしゃい」
目の前に扉が現れる。
私は一度だけ深呼吸をして、駆け出した。
――ここからが、本当の始まりだ。
床も、壁も、空も――どこまでも真っ白で、距離感すら掴めない。
「……何、ここ」
呟いた瞬間、すっと足音が近づいてきた。
振り向くと、ひとりの女性がこちらへ歩いてくる。
整った顔立ちに、きっちりした事務服。
現実の会社にいそうなくらい“ちゃんとした人”なのに、どこか人形みたいに綺麗だった。
「初めまして。RuneSphere Online(ルーンスフィア・オンライン)へようこそ。私はナビゲーターです」
丁寧で、淡々とした声。
「初めまして。瑞希です。よろしくお願いします。えっと……お名前は……?」
疑問が口から滑り出た。
すると彼女は一拍置いて、淡々と答える。
「私はナビゲーターですので、名前はありません」
「あ……そうなんですね。ごめんなさい、失礼なこと聞いちゃって……」
気まずくなって、視線を逸らしかけた。
でも、このまま黙るのも落ち着かなくて、私は思い切って続ける。
「あの、少しの間でいいので……“ナビさん”って呼んでもいいですか? ネーミングセンスないんですけど……嫌じゃなければ」
彼女の表情が、ほんの少しだけ揺れた。
「……ナビさん。初めて名前をつけられました」
小さく笑って、柔らかい声になる。
「ふふ。では、ナビさんでいきましょう。ここはキャラクターメイクをする場所です。外見、種族、職業、スキルなどを決められます。そのため、何もない空間になっています」
「なるほど……」
白い空間が、急に“特別な場所”に見えてきた。
「まずはメニューの出し方から説明しますね。手を目の前で軽く振ってください」
言われた通りに手を振ると、ふわりと光の板が現れた。
「……出た!」
「はい。そこからキャラメイクできますので、心ゆくまでどうぞ。分からないことがあれば遠慮なく聞いてくださいね」
優しい目でそう言われて、胸の奥が少し温かくなる。
「……はい。ありがとうございます」
メニューを開くと、最初に表示されたのは“名前”だった。
瑞希――そのままでもいい。
でも、せっかく親の干渉から離れられる世界に来たのに、ここでも同じ名前を背負うのは嫌だった。
少し悩んで、私は入力する。
「……ココ」
決めた瞬間、肩の力が抜けた気がした。
次は種族選択。
人間、エルフ、獣人……王道が並ぶ中で、私は指を止める。
――自由を探しに来たんだ。
だったら、いつも通りじゃなくていい。
「天使……」
選択した瞬間、背中にぞくりとした感覚が走った。
白い羽がふわりと現れ、ゆっくりと広がる。
「……うわ、すご……!」
羽は出し入れが可能らしい。実用的で助かる。
……でも。
「え、ちょっと待って」
視線が下がった。
いや、違う。世界が大きくなったのかと思ったけれど――私が小さくなっている。
「ナビさん! 身長が……縮んでるんですけど!?」
焦って早口になってしまう。
ナビさんは落ち着いたまま答えた。
「天使を選んだ方の特権です。あなたは“未熟な天使”として始まりますので」
「未熟……」
ざっと見て、145cmくらい。
身長が低いのは、正直コンプレックスだった。
でも、羽は可愛い。
それに――空を飛びたい。
「……天使は、変えたくないな」
私は気持ちを切り替え、外見を決めていく。
髪はセミロング。少し癖のあるブロンズ。
瞳は蒼。現実の自分とは違う色を選んだ。
「……うん。これなら、“いつもの私”じゃない」
最後はスキル構成だ。
「ナビさん。スキルって、いくつまで取れますか?」
「初期スキルは、種族スキルを除いて五つまでです。慎重に選んでくださいね」
「分かりました!」
まず種族スキルを見ると、《浮遊》と《聖魔法》があった。
天使らしくて、ちょっと嬉しい。
そして私は、初期スキルを選んでいく。
《双剣》――速い武器が好きだから。
《体術》――ソロなら、自分の身は自分で守りたい。
《料理》――この世界で“暮らす”ことも楽しみたい。
《鑑定》――知らない世界では、情報が命。
……残りひとつ。
決めきれなくて、私はナビさんを見る。
「ナビさん。おすすめのスキル、ありますか?」
「おすすめですか……そうですね。ソロで動くなら《結界魔法》はいかがでしょう。自分を守れますよ」
守る、という言葉が胸に引っかかった。
現実でも、私はずっと守りたかったのかもしれない。自分の心を。
「……結界魔法にします」
こうしてスキルを決め、決定ボタンを押す。
光が走り、選択したものが全て反映された。
ナビさんが微笑む。
「ココさん。これでキャラメイクは終了です」
「はい……!」
「あなたがどんな自由を手にするのか、見守っていますから」
そして、柔らかく告げた。
「いってらっしゃい」
目の前に扉が現れる。
私は一度だけ深呼吸をして、駆け出した。
――ここからが、本当の始まりだ。
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