親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi

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 せっかくの自由時間。
 何をしようかは決めていなかったけれど――王道はやっぱり探索だと思った。

 天使たちの街なだけあって、花がたくさん咲いている。
 白い建物と金の装飾に、色とりどりの花が映えて、眩しいくらい綺麗だった。

 ……現実では、花を見上げる余裕なんてなかったな。

 「どこ行こうかな」

 気分が浮き立って、私は軽い足取りで歩き出す。

 ――その時。

 ひそひそ、と声が聞こえた。

 「……あの子かな?」
 「未熟天使って……?」
 「身元不明らしいよ」

 胸の奥が、きゅっと縮む。

 私は聞こえないふりをして、視線を前に固定した。
 気にしてない。気にしてない――そう自分に言い聞かせながら、雑貨屋に入る。

 初期装備のお金はある。
 旅に出るなら、何か揃えておきたいと思っていた。

 店の中には小物や日用品、旅道具がずらりと並んでいる。

 「すごい……」

 棚を見ているだけで、心が躍る。

 「卒業したら、旅道具も揃えないとね」

 そう呟いたところで、店員が近づいてきた。

 「いらっしゃいませ。お買い物ですか?」

 にこっと笑われ、私はつられて頷く。

 「そうなんです!」

 すると店員は、私の背後を一度だけ確認してから、優しい声で聞いた。

 「保護者の方はご一緒ですか?」

 「いませんけど……お金ならあります」

 言った瞬間、自分でも少し子どもっぽく聞こえた気がした。

 店員は困ったように微笑む。

 「もちろん、分かっております。ただルールとして、保護者同伴でしかお買い物ができないんです」

 ――また、ルール。

 胸の奥が冷える。
 丁寧な言い方なのに、“私は一人じゃ何もできない”と言われたみたいだった。

 「……そうなんですね」

 悔しい。
 でも、ここで泣きそうな顔はしたくない。

 「今は見ているだけなので」

 精一杯の意地でそう返し、私は棚から目を逸らした。

 急に、街の花の綺麗さまで遠く感じる。

 ……帰ろう。

 私は店を出て、カシエルの家へ向かった。

 *

 「ただいま、カシエルさん」

 扉を開けると、すぐに声が返ってきた。

 「おかえり、ココ」

 “おかえり”なんて、久しぶりに言われた気がする。
 胸が少しだけ温かくなった。

 カシエルは私の表情を見て、分かったように尋ねる。

 「どうだった?」

 ……意地悪だ。

 「ルールで買えなかった。知ってたでしょ?」

 カシエルは悪びれずに頷いた。

 「ああ。社会勉強になると思ってな」

 私はむっとする。
 でも、反論する前にカシエルが言った。

 「悔しかっただろ」

 その一言で、喉の奥が詰まった。

 「……うん」

 カシエルは軽く肩をすくめる。

 「さ。夕飯にしよう」

 そう言ってダイニングへ向かう背中を見て、私は思い出した。

 ――私、料理スキル取ったんだった。

 せっかくなら、活かしたい。
 ただ守られてるだけじゃなくて、自分でできることを増やしたい。

 私は勇気を出して口を開く。

 「カシエルさん。私も料理したいです。一緒に……だめですか?」

 不安になって、目を見られない。

 でもカシエルは、あっさり言った。

 「もちろんいい。エプロン、いるか?」

 「……はい!」

 私はぱっと顔を上げて、ダイニングへ駆け込んだ。
 手を洗って、準備万端。

 何を作ろう。
 考えるだけで、胸がわくわくしてくる。
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