もう演じなくて結構です

梨丸

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21 僕と仲良くなろう

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 ルーカスがセリーヌを庇うように立ち上がる。

 「おい!ラウドーリ」
 「ごめんごめん、

 ラウドーリはさほど謝っているようには見えない態度で笑う。
 
 ──どういうこと?

 セリーヌは状況を整理しようとした。

 ルーカス様から弟の話を聞いたことなんてなかったし、レーフクヴィスト公爵に挨拶に行った時にも会うことはなかった。

 セリーヌが考え込んでいるとラウドーリは自慢げにシルバーブロンドの髪を揺らした。

 「君、可愛いね。兄さんには勿体無いんじゃない」

 セリーヌの髪を撫でようとする。
 それをルーカスが阻止し、ラウドーリを睨みつける。

 「奪おうとしているのか」

 ラウドーリは鬼の形相のルーカスを鼻で笑い、セリーヌに手を差し出した。

 「僕と仲良くなろう」

 日の光がシルバーブロンドに当たり、輝いている。
 その姿はさながら物語のヒロインに手を差し伸べる勇者のようだった。




 「……すまない、セリーヌ」
 
 ルーカスは項垂れていた。
 
 「いや、あれは私が悪かったです……」



 ラウドーリに手を差し出されたたセリーヌはその手をじっと見つめていた。
 傷ひとつない真っ白な綺麗な手。

 「どうしたんだい?」とラウドーリが優しく笑う。
 その美しい彫刻のような姿に、セリーヌは得体の知れない気持ちの悪さを覚えていた。

 ぱちん。
 庭に単調な音が響き渡る。

 気づけば、セリーヌはラウドーリの差し出した手を弾いていた。
 
 「先程からルーカス様を無視して話をしていて、婚約者として不快です」

 ラウドーリの表情が一瞬固まった。
 何を言っているのか理解できない、というかのように。

 「いや、兄さんは僕の引き立て役だから」

 当然のように兄を蔑み、貶める。
 
 セリーヌはそんな様子のラウドーリに怒りを覚え、ルーカスの腕を引っ張った。

 「ルーカス様、参りましょう」

 


 「本当にごめんなさい。弟さんにあんなことをしてしまって……」
 「いや、俺が何も言わなかったからだ……」

 ラウドーリを庭に放置し、ルーカスの部屋で二人の反省会が始まった。


 二人の反省会も終盤に差し掛かった頃、セリーヌがあっと思い出したように尋ねた。

 「そういえば、奪うとはどういった意味なのですか?」

 ラウドーリに何を奪われたのだろうか。

 ルーカスは黙り込んでいる。
 
 「ごめんなさい。無神経、でしたよね」
 「いや、いつかは話さなければと思っていた。ラウドーリのことを……」

 ルーカスは苦々しい顔をしながら語り始めた。
 


 
 
 

 

 
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