今日でお別れします

なかな悠桃

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15-Past 10-

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『...ごめん、何言ってるのかよくわかんないや』

貴斗は碧の言葉にいつものような口調で話すがどこかしら震えているのが受話口越しに感じ取られた。

「別れたいの」

碧は一度深呼吸し再度貴斗に心無い言葉を告げるとしばし会話が止まり貴斗は沈黙を破るように口を開いた。

『なんで?会わなかった数週間で何があった?理由がわからないうちは納得できないよ』

「...何もないよ、ただ貴斗とは生活環境も違うし何となく疲れちゃっただけ、それに受験に影響するの嫌だったしそれなら一層離れた方がいいかなって」

『ちゃんと顔見て話したい』

「会っても会わなくても私の気持ちは変わらないよ」

『それでもいいから...今度の土曜にいつもの図書館にいつもの時間で待ってるから』

「...行かな『来てくれるまでずっと待ってるから』


貴斗との会話はここで終わった。
碧は通話が切れたスマホを見ながら苦笑し頬に涙が伝った。


―――――――――
貴斗が勝手に取り付けた約束の日になったが碧はベッドから動けず布団に包まっていた。
貴斗に会いたい、でも会いたくない...自分の中で彼の存在がどんどんと大きくなりつつあった矢先だっただけに顏を見ると決心が鈍りそうで行動に移せなかった。

初めこそ、貴斗の口から真相を聞きたかったがあの学校での皆の反応を見て聞かずとも核心へと繋がった。そんな状況で貴斗の口から聞くことは今の碧にはもう出来なかった。

そうこうしている内に時計の針は待ち合わせの時間を少し回っていた。碧は重い腰を上げベッドから出ると顔を洗い軽く朝食をとり部屋着に着替え気を紛らわせるため受験勉強を始めた。

両親は親戚の家に行き虹志もいないため静かな部屋には時計の針の動く音が普段より大きく聞こえていた。集中が途切れた頃、部屋のドアをノックする音が聞こえ返事をするといつの間にか帰宅していた母親が昼食の準備ができたことを伝えに来た。部屋の掛け時計を見ると正午過ぎになり、碧は釈然としない想いを振り払うように昼食をとりにリビングへと向かった。


☆☆☆
学校で渡されていた宿題のプリントが終わりふいにカーテンの開いた窓を見ると徐々に冬が近づいてきているためか時間にしてみればまだ早いが明るかった空が気付くと少しずつ柔らかな色合いになっていた。


(さすがにもういないよね)

ほぼ毎日のようにかかっていた貴斗からの連絡はあの日を境にパタリとなくなり今現在もかかってはいなかった。碧は鞄に仕舞ってあった参考書類を出すと前に貴斗から借りていた参考書が紛れていたのを見つけた。それは初めて家に行った時、碧の学力に合うものを何冊かピックアップしてくれたものの一冊だった。

あの頃の記憶が甦りしばらくそれを見つめていると思い立ったように碧は姉の部屋にあるメイク道具を持ち出しいつも貴斗と会う時の格好の準備を黙々とし始めた。

これで貴斗とは最後になる、なら少しでも貴斗が後悔してくれるような自分になろう...しかし時計を見ると17時近くになり待ち合わせの時間から数時間以上経とうとしていた。

(もうさすがにいないかもしれないけど...)

碧は貴斗の参考書を鞄に入れ約束の場所へと向かった。思い付きで飛び出したこともあり薄着だったため夕方になるにつれ肌寒くなっていた。片腕を擦りながら緊張の面持ちでいつもの待ち合わせ場所に着き辺りを見渡すが貴斗らしき人物はすでにいなかった。

(そりゃそうだよね)

碧は落胆とも安堵とも取れるような複雑な笑みを浮かべ踵を返すと長身の男の子が立ちつくし此方を見ていた。

「...やっと会えた」

そう言うと貴斗は碧の元へ一直進に歩みそのまま抱き締め、碧も抵抗することなく身を任せた。

「受験生なんだからこんな薄着で来たら駄目だよ、また風邪ひいたらどうすんの。あの後心配してたんだよ...それにその...身体も大丈夫だったかなとか」

顔を赤らめ諌める貴斗自身も心なしか身体が冷えているように感じ碧は気遣ってくれる嬉しさと申し訳なさを感じ複雑な心境になっていた。

「...まだ待ってるとは思わなかった」

「待ってないと思ってたのに来てくれたんだ...それに“ 来てくれるまで待つ”って言ったでしょ」

貴斗の嬉しそうな声に碧は胸が苦しくそっと貴斗の胸元を手で押し身体を離した。

「コレ返したくて来ただけだから...今までありがとう」

碧は鞄から先ほどの参考書を貴斗の前に出した。貴斗は先ほどと打って変わって感情が消えたような表情で受け取り碧を見つめ返していた。

「僕は別れるつもりなんてないから」

(あんな可愛らしくて想ってくれる婚約者がいながら...最低なひと


碧は先日目撃した二人の仲睦ましい光景を思い出し視線を落とした瞬間、貴斗を纏う空気が更に冷えていくのがわかった。

「首...」

はじめ貴斗の呟きの意味が理解出来ずにいたが貴斗が目を開き碧の首筋の一点を見つめていたのがわかりその時初めて理解した。

「...それってキスマークだよね」

碧自身、思い出したくなかったため気にしないようにしていたが貴斗に痕が見られ焦りを感じた。がその直後、碧の口から溢れるように言葉が出て貴斗を更に喪心させた。


「...そういうこと、前言ってた幼馴染の人とね付き合うことになったの。私ね、彼の事小さい時から好きだったし一度は諦めもしたけど向こうから告白してくれて.....年上だから包容力もあるしそれに私が知らないこと...教えてくれるんだ、だから...」

「もういいっ!!」

貴斗の荒げた声を初めて聞き碧は驚き身体が硬直した。貴斗は碧の両肩を掴み怒りからか夏樹に付けられた痕に上から思いっきり噛みついた。

「痛っ!!」

赤く歯形が付き薄ら血が滲んでいた。碧は貴斗の身体を突き飛ばし噛まれた首筋を押さえた。貴斗は俯き目を細めながら前髪がかかった横目で碧を見つめていた。その瞳は恐ろしい程冷たく妖艶で碧は引きずり込まれそうになった。


「...嫌だから、そんなの認めないから」

「とっ、とにかく今日でお終い、貴斗が私のことどういう風に見てたか知らないけど私はあの時色んなことが重なって辛かった時にたまたま貴斗が傍にいたから付き合っただけ...それだけの感情だから、私のことは忘れて......さようなら」

何かをブツブツと呟き俯き動かない貴斗を置いて碧は走るようにその場から離れた。

(これでいいんだ...これで)

涙をいっぱい溜め拭いながら駅へと向かった。貴斗の表情を想い出すと心が締めつけられたが同時に琴花たちの言葉が脳裏をぎり未練を残さないようにとった自分の言動を肯定するように頭の中で何度も納得させた。


碧は15歳という年齢でずっと想いを寄せていた夏樹と初めて自分に想いを告げてくれた貴斗を同時に失い、そして同時に碧の心も深く深く暗闇に堕ちていった。



――――――――――
『あおー、合格おめでとー!あおが私の母校の後輩になるなんてお姉ちゃん嬉しいよー、今まだ立て込んでて忙しいからそっち帰れないけど時間見て近々絶対帰るからお祝いし...あっ、はい!今戻りますっ、ごめん今撮影中だから切るね、ほんと良かった...おめでと』

「うん、ありがと」

部屋で寝転がりながら姉の紅音と高校合格の報告し通話を切った。受験勉強と合否がわかるまでのストレスからやっと解放され抜け殻のようになっていた。

貴斗に別れを告げた翌日、碧はスマホの番号を変更した。そもそもそれ以外の情報を伝えてなかったことや本当の名前も結局言えずに終わったこともあり貴斗が自分を探し出すことは不可能だった。あれから彼がどうなったのか、何事もなく琴花と上手くいっているのか今の碧にはどうでもよかった。


“コンコン”

部屋のドアからノック音が聞こえドアが開いた。

「碧に会いになっちゃん来てるから下いらっしゃい」

母親は碧に伝えるとそのまま階段を降りていってしまった。夏樹ともあの日以来会うことはなくニアミスが起こりそうになったこともあったがなんとか回避し会うことはなかった。

溜息をつき階段を降りると玄関に制服姿の夏樹が待っていた。

「母さんから聞いてさ...高校おめでとう。スマホもLINEも繋がんなくなってたから直接言いに来た、コレ...女の子に何あげていいかわかんなくて...」

「綺麗...ありがと」

赤やピンク、黄色、白など淡い色合いのコンパクトに纏められた可愛らしい小さな花束を夏樹は照れ臭そうに碧に渡した。

「ちょっと話さない?」

碧の言葉に夏樹は承諾し二人は近所の公園へと向かった。空はすでに茜色に染まり遊んでいた小学生たちはいつの間にか家路へと帰って行き辺りは静かになっていた。

「...碧あのさ、「なっちゃん」

しばし沈黙の後、夏樹が口を開いた瞬間被せるように碧が遮り、碧は昔となんら変わらない表情を夏樹に向けた。

「私、もう気にしてないから...じゃなきゃなっちゃんがいる高校受けないよ、だからそんな思い詰めた表情しないで」

「あお...」

緊張した面持ちでいた夏樹の表情が少し安堵し緩んだところで碧は笑顔で夏樹に告げた。

「ただね、その代わり明日からは私に会っても金輪際話しかけないで見ないで、勿論登下校も学校内も...話はそれだけだから、じゃあ」

「えっ...」
固まる夏樹に碧は横をすり抜けた。ハッと気づき夏樹は碧の腕を掴み此方に身体ごと向かせると涙を溜め睨みつける碧の表情に絶句した。

「...私ね、小さい頃からなっちゃんが好きだった。勿論お兄ちゃんとしてじゃない異性として...でも私のことなんて眼中にないのもわかってた、お姉ちゃんが好きなことも...あの同級生の人とのショックだったけど.......紅姉に間違えられた時に比べたらマシだった」

夏樹は何も言えずそのまま碧の腕を放した。「...ごめん」夏樹の呟きが聞こえたが碧は何も言わずその場を離れた。


――――――――――
中学を無事卒業し仲の良い友人らと遊んだり高校から出された課題に追われあっという間に入学式を迎えた。髪は肩くらいまで伸びメイクをすればウィッグを付けていた時の雰囲気になっていた。恋はもうすることはないだろうが自分磨き位はしていこうと碧は考えていた。

制服は姉の物があったためそのままお古で使うことになっていたが割と状態良く仕舞われていたためみすぼらしく見えずにすんだ。


入学式当日、碧は眠い目を擦りながら廊下でぼーっと外を眺めていると、

「ねー、あの人めちゃめちゃかっこよくなーい?」

「ほんとー、どこ中なんだろー」

教室の廊下では碧の周りでちらほらと誰かに対して話す声が聞こえ皆が見る方向に視線を移すが既に後ろ姿だけしか見れず少し残念に思った。

入学式の時間になり厳かな雰囲気の中粛々と進み、新入生代表の言葉となった。碧は前夜夜更かしをしたため手で欠伸を隠していると新入生の読み上げる声にハッとし顔を上げた。

「...............と協力し合い助け合いながら乗り越えていき良い刺激をし合える関係になります。そして何事にも積極的に取り組み、不撓不屈の精神を持ち勉学に励み、部活動等頑張っていきたいと思います。校長先生をはじめ、先生方、先輩方、厳しくも暖かいご指導よろしくお願いいたします。新入生代表、阿部貴斗」

辺りから拍手が沸き貴斗は壇上を降り自席へと戻った。碧は混迷状態に陥り入学式どころではなくなっていた。

(なんで?!なんで?!)

その言葉だけが繰り返し脳内を駆け巡っていた。一貫校の在籍のはずなのに何故外部入学してきたのか...。


(確かに最初の時行きたい高校の名前あげたけど...だからってもし私がここに行かなかったら...って私を追ってとは限んないけど...にしても、あの能海さんとはどうなったんだろう、あの人の話では高校上がったら結婚の話がとか言ってたはずだけど)

碧の頭の中は解答のない疑問と憶測がぐるぐると走り式どころではなくなってしまった。案の定、気づけばとっくに式は終わり教室へ向かうため皆席から立ち上がり一組から順番に退場していった。碧はなるべく目立たないよう俯き髪で隠しながら体育館を出た。

不幸中の幸いで貴斗とは教室の階が違うため会いに行かない限り鉢会うことはなさそうだったので碧は胸を撫で下ろした。

碧は式が終わり即効家に戻るとすぐ美容室を予約しピアスホールが見えない程度の長さまでばっさりカットしてもらった。視力は悪くない為、伊達眼鏡を着用しなるべく顔が見えないよう前髪で隠し兎に角目立たないように努めることにした。

貴斗は外見も然る事乍ら入試トップの成績、同学年は勿論、二、三年生の女子生徒からも入学早々人気があり女子たちの群がりがあるところには彼がそこにいるんだなとわかるほどだった。



☆☆☆
少しずつ高校生活に慣れた頃、食堂で偶然貴斗を見つけると今まで知っていた貴斗ではなく制服は着崩し髪を染めピアスをし碧が知っている貴斗の面影は既にもうなかった。隣に座る肉感的な女生徒と何やら親密そうに身体を密着させ楽しそうに話していた。

碧の高校は生徒の自主性を尊重してくれるためよっぽどのことがない限りは割と自由にさせてくれた。貴斗は成績も優秀なため派手な格好をしても教諭たちから何か言われることはなかった。

碧はその場からすぐ離れ教室に向かおうと廊下を歩いていると食堂に向かうのか数名の男子グループの中に夏樹の姿を見つけた。彼とも階が違うこともあり貴斗以上に会うことはなかった。

夏樹の「あっ」という口元の動きが見えたが碧は無言のまま夏樹の横を通り過ぎた。夏樹は沈鬱な表情で振り向き後ろ姿の碧を見つめた。

碧は兎に角目立たないよう学校生活を過ごし上手い具合貴斗とも夏樹とも接点を持つことなく平穏な日々を過ごした。三月になり夏樹は高校を卒業し、実家から距離のある大学へ進学したため一人暮らしをすることとなった。残りあと二年、碧は波風立てず目立つ行動もせずひたすら貴斗が自分に気づかないように細心の注意を払った。

それがまさか、クラスが一緒になり二年の秋に急接近してしまうこととはこの時思いもしなかった。

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