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「今日からテスト期間に入るから寄り道せずちゃんと帰れよー」
終礼時、担任の話が終わると生徒たちは散らばるように教室から出て行った。碧も同じく鞄を担ぎ、工藤と共に他愛もない会話をしながら一緒に生徒玄関へと向かった。
「桐野さん、帰るとこ申し訳ないけど先生に呼んで来いって言われて...なんか今日までのプリントの提出してないとかなんとか」
「え?あー...うん、教えてくれてありがとう。工藤さんごめんね、先帰ってもらっていい?」
「うん、わかったよーじゃあまた明日ね」
靴を履き替えようと下駄箱から取り出そうとした時、背後から聞き覚えのある人物から声を掛けられた。見慣れた風貌の徳田に話しかけられた碧は、工藤に先に帰ってもらうよう伝えると徳田と共に職員室の方へと向かう...と見せかけ逆方向の茶道室へと向かった。
「徳田くんて茶道部だったんだね、知らなかった」
「うん、まぁ最近は幽霊部員に落ちちゃったけど。今ならテスト期間で部活も休みだしここなら誰にもバレずに話せると思って」
徳田はポケットから茶道室の鍵を出しドアを開錠すると二人は中へと入った。
「そういえば今日は阿部と一緒じゃないんだね。まっ、いたらどうしようかと思ってたから桐野さんだけでホッとしたけど」
「いやいや、いつも一緒にいるわけじゃないよ。それになんか今日は用事があるみたいで早々に帰ったよ」
徳田は何もない畳の上に鞄を置き中から紙を取り出した。
「これスケジュール表、渡しといてって言われて」
碧は徳田から手渡されたスケジュール表を見ると衣装やヘアなどの打ち合わせ等それぞれの集合の日時などが書かれていた。
「私、意外とそんなに行かなくていいんだね」
「そうだね、桐野さんの場合は俺らと違うからほんとに必要最低限のことだけで大丈夫みたい。その分俺がちゃんとサポートするし。でね、できれば今後はメッセージでやりとりした方がお互い都合いいと思うから交換しない?」
徳田の申し出に了承すると碧がスマホを出す間に徳田がアプリを開きQRコードを見せ互いの登録を済ませた。
「これなら会わずに連絡取れるから阿部にも気づかれないし」
「うーん...まぁそうだね」
状況が状況だけに仕方ないとはわかっているものの貴斗に黙っていることで後ろめたい気持ちになり少し心が痛んだ。
「じゃあそろそろ出よっか、実はこっそり部の鍵持ってきたから顧問にバレると面倒なんだよね」
碧は徳田からもらったスケジュール表を鞄に片付け二人は周りに人がいないことを確認し、徳田はそのまま職員室へ碧は玄関へと向かいその場で別れた。
☆☆☆
駅を出て自身の家へと向かっていると家の玄関先で見慣れた制服姿の男子がスマホを弄る姿が目に映った。
「なんでここに...ってか、連絡くれればよかったのに」
碧は小走りでその人物のとこへと向かうと此方に気づいたのか嬉しそうな笑みを浮かべ碧を見つめた。
貴斗と視線が合った瞬間、何か物言いたげな雰囲気を纏わせていたがすぐさまいつもの貴斗の表情に戻ったため気のせいだと思い特に触れることはしなかった。
「うーん、用があって帰りが遅いなら急かす感じになっちゃうなと思って。まぁ色んな意味で待つのには慣れてるからこれくらい大したことじゃないよ」
とはいっても日が暮れだすと外の気温は低くなり貴斗の顔も風に晒され心なしか薄っすら頬の辺りが赤くなっているようにも見受けられた。
「と、とにかくうちに入っ...って、ん?」
貴斗を招き入れようと玄関のドアに手をかけようとした瞬間、左手を掴まれドアノブを触ろうとした右手の動きを止めた。
「碧の顔見たくて勝手に来ちゃっただけだから、今日は帰るよ...今週末さ、あの図書館で試験勉強しない?」
「え、あ、うん...いいよ。貴斗...どうし」
問う間もなく貴斗は碧を抱き締め言葉を遮った。
「こんなとこ碧の家族に見られたらヤバいよな、特に弟くんには」
「はは、“近所迷惑”とか言われそう」
碧は貴斗の背中をポンポンと軽く叩き苦笑いを浮かべた。貴斗の行動に若干違和感を覚えつつも互いの冷えた身体を温めるように碧は貴斗を抱き締めた。
終礼時、担任の話が終わると生徒たちは散らばるように教室から出て行った。碧も同じく鞄を担ぎ、工藤と共に他愛もない会話をしながら一緒に生徒玄関へと向かった。
「桐野さん、帰るとこ申し訳ないけど先生に呼んで来いって言われて...なんか今日までのプリントの提出してないとかなんとか」
「え?あー...うん、教えてくれてありがとう。工藤さんごめんね、先帰ってもらっていい?」
「うん、わかったよーじゃあまた明日ね」
靴を履き替えようと下駄箱から取り出そうとした時、背後から聞き覚えのある人物から声を掛けられた。見慣れた風貌の徳田に話しかけられた碧は、工藤に先に帰ってもらうよう伝えると徳田と共に職員室の方へと向かう...と見せかけ逆方向の茶道室へと向かった。
「徳田くんて茶道部だったんだね、知らなかった」
「うん、まぁ最近は幽霊部員に落ちちゃったけど。今ならテスト期間で部活も休みだしここなら誰にもバレずに話せると思って」
徳田はポケットから茶道室の鍵を出しドアを開錠すると二人は中へと入った。
「そういえば今日は阿部と一緒じゃないんだね。まっ、いたらどうしようかと思ってたから桐野さんだけでホッとしたけど」
「いやいや、いつも一緒にいるわけじゃないよ。それになんか今日は用事があるみたいで早々に帰ったよ」
徳田は何もない畳の上に鞄を置き中から紙を取り出した。
「これスケジュール表、渡しといてって言われて」
碧は徳田から手渡されたスケジュール表を見ると衣装やヘアなどの打ち合わせ等それぞれの集合の日時などが書かれていた。
「私、意外とそんなに行かなくていいんだね」
「そうだね、桐野さんの場合は俺らと違うからほんとに必要最低限のことだけで大丈夫みたい。その分俺がちゃんとサポートするし。でね、できれば今後はメッセージでやりとりした方がお互い都合いいと思うから交換しない?」
徳田の申し出に了承すると碧がスマホを出す間に徳田がアプリを開きQRコードを見せ互いの登録を済ませた。
「これなら会わずに連絡取れるから阿部にも気づかれないし」
「うーん...まぁそうだね」
状況が状況だけに仕方ないとはわかっているものの貴斗に黙っていることで後ろめたい気持ちになり少し心が痛んだ。
「じゃあそろそろ出よっか、実はこっそり部の鍵持ってきたから顧問にバレると面倒なんだよね」
碧は徳田からもらったスケジュール表を鞄に片付け二人は周りに人がいないことを確認し、徳田はそのまま職員室へ碧は玄関へと向かいその場で別れた。
☆☆☆
駅を出て自身の家へと向かっていると家の玄関先で見慣れた制服姿の男子がスマホを弄る姿が目に映った。
「なんでここに...ってか、連絡くれればよかったのに」
碧は小走りでその人物のとこへと向かうと此方に気づいたのか嬉しそうな笑みを浮かべ碧を見つめた。
貴斗と視線が合った瞬間、何か物言いたげな雰囲気を纏わせていたがすぐさまいつもの貴斗の表情に戻ったため気のせいだと思い特に触れることはしなかった。
「うーん、用があって帰りが遅いなら急かす感じになっちゃうなと思って。まぁ色んな意味で待つのには慣れてるからこれくらい大したことじゃないよ」
とはいっても日が暮れだすと外の気温は低くなり貴斗の顔も風に晒され心なしか薄っすら頬の辺りが赤くなっているようにも見受けられた。
「と、とにかくうちに入っ...って、ん?」
貴斗を招き入れようと玄関のドアに手をかけようとした瞬間、左手を掴まれドアノブを触ろうとした右手の動きを止めた。
「碧の顔見たくて勝手に来ちゃっただけだから、今日は帰るよ...今週末さ、あの図書館で試験勉強しない?」
「え、あ、うん...いいよ。貴斗...どうし」
問う間もなく貴斗は碧を抱き締め言葉を遮った。
「こんなとこ碧の家族に見られたらヤバいよな、特に弟くんには」
「はは、“近所迷惑”とか言われそう」
碧は貴斗の背中をポンポンと軽く叩き苦笑いを浮かべた。貴斗の行動に若干違和感を覚えつつも互いの冷えた身体を温めるように碧は貴斗を抱き締めた。
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