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番外編~St. Valentine's Day ★
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最近、碧の様子がおかしい。唯一、一緒にいられる下校時間も先に帰るし会う回数もここ最近何故か減っているような・・・。
浮気・・・なんて頭をよぎるも碧に限ってそれはないとは確信できる・・・と思う。
“ごめんね、今日も早く帰んなきゃいけないからそのまま帰るね”
“わかった。俺もちょっと寄り道して帰るつもりだったから。気を付けてね”
そんな連絡ばかりが俺のメッセージ画面を埋め尽くし現在も同じメッセージを送る。
(跡をつける?・・・いやいやそれは流石にないな)
俺は、“脳内の俺”との会話で小さく頭を振り軽く溜息を吐いた。周りに気付かれぬよう碧とこっそりそんなやりとりをしていた休み時間、俺の前にある席の椅子に友人の一人が乱暴に勢いよく座ってきた。俺の方へ向くように座ると俺の机に突っ伏し此方を軽く羨むように睨んできた。
「今日はバレンタインデーなのにいまだに朝、母ちゃんしかもらってねー!!しかもニヤニヤしながら憐れんだ目で渡してきやがった!!」
「チョコなんて貰って嬉しいかよ。大体好きでもない女の子にもらっても本命にもらえなきゃ意味ないだろ?」
「くそーっ!!お前みたいに不特定多数の女子に貰えるモテ男に俺の気持ちがわかるかよーっ」
「いや、俺貰ってないから」
「断ってるだけだろっ!?」
休み時間になるたび学年問わずチョコを渡しに来られるも全て断っているからか今年は机の中がすっきりしたものだ。今までは断るのも一々面倒臭くて貰ってたけど、今年は碧がいるからそういった類は一切断っていた。
「もうこの際、地味子でもなんでもいいから欲しいーっ!こうなったら貴斗が断った女子のチョコでもいいっ!!」
「こえーよ」
友人の言葉に半ば呆れながらふと今までのことを思い返した。特に去年の俺は、碧の存在は感じるものの姿は見つからず只管腐りきっていた。
しかもバレンタインデーに好きな女から貰ったことはない。でも、今年は・・・。
(にしても、去年の俺のあんな醜態・・・あっちには気付かれていたと思うと今でも居た堪れないな)
小さく自嘲しているとクラスメイトの一人と自席で楽しく喋っている碧にふと視線を向け思わずにやけそうになった。
(今年は・・・期待して・・・いいよね?)
――――――――――
「バレンタインデーか・・・」
友人たちとカラオケに行った後、一人虚しく家路に帰りながらチラつく雪が降る薄暗い空を見上げながら白い息を吐いた。本日バレンタインデーなのに碧からは・・・貰えなかった。カラオケボックスでも何度かスマホ画面をチェックするも彼女からの連絡は入ってこなかった。
(いや、別にいいけど。俺甘いものそんなに好きじゃないし・・・)
なんて自身の心に強がりを纏わせ肩を落としながら家路へと向かっていると外の玄関前で誰かが立っている姿が目に入った。
「碧っ!?何で」
「ご、ごめんね。連絡もせず。寄り道してくって言ってたから邪魔しちゃ悪いなと思って勝手に待ってた」
鼻の頭を赤くし寒そうに白い息を吐いた碧に駆け寄ると俺はそのまま彼女を抱き締めた。
「そんなの気にしないで連絡くれればいいのに。それよりも体冷たい、このままじゃ風邪引いちゃうよ・・・とりあえず入って」
何時からいたんだ?と思う程、碧のコートは冷たくすぐさま母屋の方へ彼女を連れて行った。
「はい。ホットココア淹れてきたからこれで体温めて」
「ありがとう。ほんといきなり来た上にご迷惑を・・・」
申し訳なさそうにソファへちょこんと小さく座り、俺が渡したココアを美味しそうに飲む碧に一瞬、ムラつきを覚えながらも小さく咳ばらいをし気を散らした。
(そういや最近、碧に触れてないからこの状況は・・・)
「ってかさ、ほんとどうしたの?そっちも用あるって言ってなかったっけ?」
気を紛らわせるように俺もココアを啜りながら敢えて少し離れたデスクチェアに座り碧に訊ねた。
「うん・・・・・実はね」
碧はいそいそと自身のリュックからラッピングされた袋と小さな箱を取り出し照れ臭そうに俺に渡してきた。
「・・・重いとは思ったんだけど」
受け取った俺は、丁寧に中身を取り出すと手作りと思われるダークグレーのマフラーが入っていた。もう一つの小さな箱を開けると、中には四方に分けられた一口サイズの四つの丸いチョコがチョコペンで可愛くデコレーションされたのが入っていた。
「これって・・・もしかして両方とも手作り?」
「やっぱ重いよね!?手作りチョコだけでも重いのにマフラーまでっ!!弟にも白い目で見られてたし渡すのギリギリまで迷ったの。一応ね、既製品のチョコも買って今日持って来てはいたんだけど・・・でもやっぱり渡したくて家まで取りに帰ったんだ」
「・・・もしかして作るのに最近先帰ったり会えなかったりしたの?」
碧は、ばつが悪い表情を浮かべながら小さく頷いた。俺は、あまりの嬉しさで身体中が熱くなり言葉が出ず綻ぶ口元を押さえた。
「え、えっと、チョコも何度も味見したし多分食べられる物になってると思うからっ!あ、あと中に色んな味楽しめるようになってるから・・・じゃ、じゃあ私、これで帰るね」
「え!?あ、ちょっと待って」
照れ臭そうな表情を隠すようにそそくさと帰る準備を始めた碧を俺は引き留め再びソファに座らせ身体を引き寄せた。
「ありがとう。本当に嬉しい。これくらいで重いなんて思わないよ。それに俺の気持ちの方がヤバいくらい重いの碧が一番知ってるでしょ?」
「ふふ、あ・・・た、か・・・んん、ふ・・・ッん」
可愛らしく笑う姿に我慢できず俺は、碧の唇に自身の唇を重ね彼女が何か言おうとした言葉を塞いだ。仄かにココアの味が口の中に広がり俺を更に興奮させた。
(これは・・・ヤバいな)
チラッと視線を時計に向けると既に針が18時を差し窓越しから見る外は暗闇に包まれていた。早く送り帰さなきゃという思いとそれとは別にこのままもう少し・・・という気持ちが葛藤し俺はテーブルに置いてあった箱を手に取り中身を一粒取り出した。
「コレ、碧が俺に食べさせて中に何入ってるか当てさせてよ。ほら、早くー」
「ふえっ?」
俺は意地悪な笑みを浮かべ碧の口にボンボンショコラを咥えさせ急かすように小さく口を開けた。
俺に言われた通り碧は、唇に挟んだチョコを半開きになった俺の唇へと押し当て中へと入れた。俺は口の中に転がり入ってくるチョコと一緒に碧の舌を絡めとりながら貪った。口内で溶けたチョコの中からとろりとした液が咥内へと染み渡り互いの唾液と混ざり合う。
(これって・・・)
鼻から抜けるアルコール臭が俺の脳内の思考を停止させ現実と虚構の狭間で朧げにさせる。
☆☆☆
「・・・ふふっ・・・、わ・・・い・・・かーわいい♡」
首元に何かが当たる感触に気付いた俺は、意識がまだ朧げな状態の中、ゆっくりと瞼を開き視界を広げた。気付けば碧が俺のシャツを開けさせ首元や鎖骨周辺に舌を這わせ舐め吸い上げた。
「ちょっ、待っ・・・碧、何してっ!?」
意識朦朧の中、俺は上に覆い被さる碧の両肩を押さえ自分の身体から少し遠ざけた。
「えー、何って言われてもー・・・んー・・・ふふふ・・・」
様子がおかしい・・・その想いと同時に先ほどのチョコレートを思い出した。
(あのチョコかなりアルコールの味したし・・・もしかしてそれで酔っ払って・・・)
「ふふ・・・たーたとー、あーーそぼー♡」
ヤバい・・・完全に酔っ払ってんなこれ・・・。そう思いながら俺は少し残った理性と戻りつつある意識をフル回転させ起き上がろうとすると身体の力が入らず再び碧に押し倒され唇を塞がれた。
「あお・・・待っ・・・んッ!ん」
17年間生きてきて今まで女に迫られたことはあるが、襲われたのは初めてだった。しかも、普段の碧からは全く想像つかない程の力で押さえつけられ唇を離そうとしない。しかし所詮は女の子の力、抵抗しようと思えば出来るはずなのにこの普段起こりえない状況に俺は無意識に身体の力を弛めていた。
(ヤバ・・・勃ってきた)
厭らしい程の碧の舌使いに下半身がムクムクと意志を持ち出してしまった。ただ、どう考えても今の碧とセックスしても素面になった時の彼女の感情を想うとやはり手を出すわけにはいかない。俺は、少しでも早く心身を正常に戻すべく定番の数式を頭の中で構築していた。
「っは、はぁ、はぁ・・・碧ちゃん、たまにこういうのもいいけど続きはまた今度にしようねー」
やっとのことで唇を放した碧を俺は甘く優しい声色を使って宥め、まるで赤ん坊をあやすかのように彼女の背中を優しく手でリズムよく叩いた。
「・・・・・・」
無言のまま碧はゆっくり起き上がり俺の腹部に跨ったままとろんとした表情で俺を見下ろしてきた。次の瞬間、口角を上げ自身の上唇を舐め妖艶な表情の彼女に心臓がギュッと締め付けられ治まりつつあった下半身へダイレクトに響いた。
「いつもー貴斗にぃーいーっぱいキモチよくしてもらってりゅからー今日はーあーたしがシてあげるぅねー♡」
「あ、こらっ・・・んッ・・・うァッ・・・んはッ・・・イッ」
カミカミの口調で話すと碧の両手が俺のシャツの釦を全て外し胸元を開かせ再び覆い被さると肩口に先ほどよりも強めに吸い上げられた・・・というより噛まれたという表現の方が正しい。痕がついたのがよほど嬉しかったのか碧は何度もその周辺を吸い上げるも肩口以上の痕が残せないでいた。
「んーー、やっぱ難しいなー。あたしぃもいっぱい痕つけちゃいのにー」
不満そうにぶつぶつと呟きながら彼女の指先は俺の胸元を滑り先端へと掠めた。不意の擽ったさに小さくビクつくとその瞬間、俺の反応が嬉しかったのか彼女の指先は俺の小さな尖りを執拗に摘まみ捏ね繰り回した。
(正直俺、乳首弄られても擽ったいだけでそれ以上の快感は生まれないんだけどなー)
暫く擽ったいの我慢すれば碧も飽きてくるだろう・・・と思い、俺は小さく息を吐き歯を食い縛った。先ほどより反応の薄い俺に面白くなかったのか、未だ座った目の碧の指先は胸元から腹部へと滑り脇腹をすり抜けた。
「ふふふ・・・たきゃとが一番ヒモチいいことしてあげりゅねー♡」
碧は不敵な笑みを浮かべたかと思うと俺の腹部から身体を移動し俺の下肢の間に身体を埋めベルトのバックルに手を掛けた。
「わーわーっ!!それは駄目っ!!」
手元が覚束なかったのかなかなか外せずに手古摺る碧の手を既の所で掴み阻止した。
「えーでもおっきくなってるよー?苦しそうだよ?」
さわさわとスラックス越しに彼女の指先が形に沿って触れてきたせいで、先ほどとは比べ物にならないくらい身体をビクつかせてしまった。
(これはマジでマズい・・・)
そう頭では思いながらも最近碧に触れられなかった餓えた下半身は正直で、更に生地を引っ張り上げていた。再び小悪魔のような笑みを俺に向けた碧は甘えたような声色で迫ってきた。
「・・・ねえ、触ってもいい?」
とろんとした視線で見つめてくる碧に俺の喉仏が大きく波打った。俺は、大きく深呼吸し腕で目元を隠し“好きにしてくれ”と言わんばかりに半ば諦めモードで小さく了承し頷いた。
俺の返事に更にテンションを上げ意気揚々の碧は、いそいそとベルトを外しスラックスを脱がせトランクスだけにさせられてしまう。
俺は、目元を隠した腕の隙間から一瞥すると喜々とした碧の表情に何となく複雑な心境になり再び深呼吸をした。
「ん?え、碧さん?これは一体・・・?」
次の瞬間、碧は俺の両手を持ち上げ纏めた両手首をカチャカチャと抜き取ったベルトで束ね縛り上げてきた。焦る俺を後目に碧は「だって抵抗されたくないもーん♡」とか言い出し再び俺の下半身へと移動した。
盛り上がりに上がった状態の部分を緊張しているのか碧は、恐る恐る指先で触れ撫で上げてきた。声が出そうになり必死に奥歯を噛み締め我慢する。生地越しにヒクヒクと小刻みに動く陰茎をまじまじと眺めながら先端部分をまるで頭を撫でるように触れてきた。
直接ではないたったそれだけの接触だが、久々の快感が身体中を駆け巡った俺は、更に歯を食い縛りナニかを逃がすように両手で握り拳を作った。
「下ろすね」
「わっ!、ば、だめだっ、」
両手で俺のウエスト部分の生地を掴むと躊躇うことなく勢いよく碧に下ろされてしまった。ぶんっと屹立した陰茎が飛び出し何故か罪悪感が生まれ居た堪れない気持ちで一杯だった。明るいところで晒されてしまった俺を穴が開くんじゃないかって程観察し見つめる碧の姿に更なる罪悪感が圧し掛かった。
「・・・おっきぃ・・・こんなのが私の・・・」
(あーもう、お願いだから言わないでー)
初めて物珍しい玩具を見つけたかのように碧の視線は釘付けで・・・そんな様子に俺の気持ちとは裏腹に馬鹿な下半身は更に興奮し痛いくらい硬く張り詰めていた。
「・・・ちっちゃい穴空いてるとこから何か透明な液出てきてる・・・コレって所謂がま「言わなくていいから」
咄嗟に碧の言葉を遮り情けなく辛い気持ちを少しでも和らげようとした。しかし馬鹿正直な俺の下半身は、碧に見られていることでなお一層敏感に感受する。
(直に触られてもないのに即完勃ちかよ・・・)
気まずい想いで黄昏ていると碧の指先の腹が俺の竿にそっと触れ優しく撫でられると俺は無意識に薄っすら声を漏れ出してしまった。この短時間で神経が削がれ情けなさが込み上げた。
今までだってこういった状況下に遭遇したことは何度かある。俺自身、こういった行為をされるのは嫌ではないが・・・何と言うかこういう行為は“男のエゴ”のような気がして・・・。だからこそ、碧とは彼女のペースに合わせ段階をゆっくり踏んでそういったタイミングが来たら進んでいければと思っていた。
正直、シて欲しい・・・なんて思ったりもしているが、今はその状況ではないことは紛うことなく重々理解できる。
「もういいだろ?もうしまってほし・・・うはっ、も、う、あお・・・」
「こうしたらキモチいい?」
彼女の温かい掌が俺の陰茎を優しく包み上下に扱いた。唐突な動きに驚嘆した俺は、鼻から何度も息を漏らした。
ふーふーと息を漏らしながら苦しむ俺とは対照的な碧は、物珍しそうな表情で俺のを扱くのに集中していた。
「おちんちんってあったかくてすべすべしてるんだね」
あーもうお願いだからそんな感想言わないで・・・なんて心の中で叫ぶも彼女に伝わることはなく成すがままになっていた。
「はあ、んっ・・・ほ、ら・・・もういいでしょ。そろそろ手はな、って、ちょっとマジで駄目だっ・・・んン・・ふゥッ・・・っく」
不意に濡れた温かいモノが俺の陰茎に触れ身体をビクつかせた。あまりの衝撃に目を細め下肢に視線を動かすと碧が小さく蹲り竿を手で握りながら裏スジに舌を這わせていた。何も知らないはずなのにピンポイントで強い鋭敏度に触れてきたせいか予想だにせず思わず嬌声を漏らしてしまった。
亀頭部分にちゅっ、ちゅっとキスしたかと思うとチロチロと舐め上げチュウチュウと吸い上げる。ぎこちない動きにもどかしさを感じつつも慣れていない舌使いの碧に嬉しさが込み上げ口元が歪む。
「碧・・・ほんと、もういい・・・から。汚い・・・か、ら」
碧の頭を撫でながら途切れ途切れになる言葉を発し可能な限り理性が崩壊しないよう懸命に踏ん張った。
「んーでも・・・ここからいっぱい出てるよ?綺麗にしてあげるね♡」
「ふァッ!はっ、くっ・・・」
「へへ、ちょっとしょっぱい味がする♡」
鈴口から溢れる先走りを舌先でチロチロと舐め上げ口を窄み再び吸い上げてきた。刹那、大きく口を開けた碧は徐に咥内奥へと俺を含み舌を小刻みに動かしながら頭を上下へ律動させ全体を刺激してくる。時折、歯があたり痛みを覚えるもそれ以上に恍惚感に襲われそれどころではなかった。
「あ・・・お・・・」
温かな咥内に包まれた陰茎は碧の唾液と舌の動きで厭らしい水音を下肢で響き疼かせた。
初めての行為に苦しいのか時折顔を歪ませながら頭を上下に揺らし俺のを愛撫してくれる。
射精したい気持ちとは裏腹にもう少し甘美なこの状況を味わっていたい・・・俺の下半身は激情に熱く滾らせた。
何度も繰り返す律動に陰茎が碧の口の中でどんどん膨張し同時に頭が呆け意識が遠のく感覚に襲われる。
(あーマジでヤバい、ヤバいから・・・このままだと碧の口ん中にぶちまけそう。・・・でも、どうせ止めてって言ったって無理だろうし・・・・・・仕方ないよな・・・碧には申し訳ないけど・・・)
あっさり諦めモードになった俺は、碧の不慣れな舌と口の動きに翻弄されながら流されることに覚悟を決めていると遠くから何故か俺の名を呼ぶ碧の声が聞こえた。夢見心地の俺は、そんなことはお構い無しに瞼を閉じこの淫靡な状態に浸っていた。
「・・・かと・・・た・・・・・・と・・・・・・たか・・・貴斗っ!」
あと数秒遅かったら口内に・・・というギリギリのところで意識がはっきりした俺は、目を見開き飛び跳ねるように勢いよく上半身を起こした。
「あ・・・れ?俺・・・」
「ごめんっ!!間違ってお父さんにあげる“ウイスキーボンボン”の方入れてたみたい」
まだ思考が戻り切らない頭を軽く振り、時計を見ると先程見た時刻からそんなに経ってはいないことに気付いた。
「お酒のせいで二人していつの間にか寝ちゃってたみたいだね」
困ったように照れ笑いを浮かべた碧に俺は、ぽかんとした表情のまま身動きが出来なかった。
「夢・・・・・・?」
「ん?」
「あ、いや。何でもない」
先程の出来事は全て夢だと気付かされた俺は、恥ずかしさと同時に・・・いやそれ以上に碧に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
(夢とは言え、碧に対してあんなことさせるなんて・・・やっぱたまってんのかなー)
心の中で懺悔と自嘲を繰り返しながら俺は、まだふわふわする頭を軽く振り碧に視線を向けた。
「外も暗いし家まで送るよ。マフラーとチョコほんとありがとな」
「今度はちゃんと貴斗にあげる分作り直して渡すから!!」
「うん。楽しみに待ってる」
俺は立ち上がると早速碧からもらったマフラーを巻き送る準備を始めた。
アルコールのせいでちゃんと覚醒していなかったのかこの時俺は全く気付いていなかった。碧が少しだけ顔を赤らめ俺への視線を逸らしたことに。・・・そして、肩口に薄っすらついた歯型の鬱血痕に・・・。
浮気・・・なんて頭をよぎるも碧に限ってそれはないとは確信できる・・・と思う。
“ごめんね、今日も早く帰んなきゃいけないからそのまま帰るね”
“わかった。俺もちょっと寄り道して帰るつもりだったから。気を付けてね”
そんな連絡ばかりが俺のメッセージ画面を埋め尽くし現在も同じメッセージを送る。
(跡をつける?・・・いやいやそれは流石にないな)
俺は、“脳内の俺”との会話で小さく頭を振り軽く溜息を吐いた。周りに気付かれぬよう碧とこっそりそんなやりとりをしていた休み時間、俺の前にある席の椅子に友人の一人が乱暴に勢いよく座ってきた。俺の方へ向くように座ると俺の机に突っ伏し此方を軽く羨むように睨んできた。
「今日はバレンタインデーなのにいまだに朝、母ちゃんしかもらってねー!!しかもニヤニヤしながら憐れんだ目で渡してきやがった!!」
「チョコなんて貰って嬉しいかよ。大体好きでもない女の子にもらっても本命にもらえなきゃ意味ないだろ?」
「くそーっ!!お前みたいに不特定多数の女子に貰えるモテ男に俺の気持ちがわかるかよーっ」
「いや、俺貰ってないから」
「断ってるだけだろっ!?」
休み時間になるたび学年問わずチョコを渡しに来られるも全て断っているからか今年は机の中がすっきりしたものだ。今までは断るのも一々面倒臭くて貰ってたけど、今年は碧がいるからそういった類は一切断っていた。
「もうこの際、地味子でもなんでもいいから欲しいーっ!こうなったら貴斗が断った女子のチョコでもいいっ!!」
「こえーよ」
友人の言葉に半ば呆れながらふと今までのことを思い返した。特に去年の俺は、碧の存在は感じるものの姿は見つからず只管腐りきっていた。
しかもバレンタインデーに好きな女から貰ったことはない。でも、今年は・・・。
(にしても、去年の俺のあんな醜態・・・あっちには気付かれていたと思うと今でも居た堪れないな)
小さく自嘲しているとクラスメイトの一人と自席で楽しく喋っている碧にふと視線を向け思わずにやけそうになった。
(今年は・・・期待して・・・いいよね?)
――――――――――
「バレンタインデーか・・・」
友人たちとカラオケに行った後、一人虚しく家路に帰りながらチラつく雪が降る薄暗い空を見上げながら白い息を吐いた。本日バレンタインデーなのに碧からは・・・貰えなかった。カラオケボックスでも何度かスマホ画面をチェックするも彼女からの連絡は入ってこなかった。
(いや、別にいいけど。俺甘いものそんなに好きじゃないし・・・)
なんて自身の心に強がりを纏わせ肩を落としながら家路へと向かっていると外の玄関前で誰かが立っている姿が目に入った。
「碧っ!?何で」
「ご、ごめんね。連絡もせず。寄り道してくって言ってたから邪魔しちゃ悪いなと思って勝手に待ってた」
鼻の頭を赤くし寒そうに白い息を吐いた碧に駆け寄ると俺はそのまま彼女を抱き締めた。
「そんなの気にしないで連絡くれればいいのに。それよりも体冷たい、このままじゃ風邪引いちゃうよ・・・とりあえず入って」
何時からいたんだ?と思う程、碧のコートは冷たくすぐさま母屋の方へ彼女を連れて行った。
「はい。ホットココア淹れてきたからこれで体温めて」
「ありがとう。ほんといきなり来た上にご迷惑を・・・」
申し訳なさそうにソファへちょこんと小さく座り、俺が渡したココアを美味しそうに飲む碧に一瞬、ムラつきを覚えながらも小さく咳ばらいをし気を散らした。
(そういや最近、碧に触れてないからこの状況は・・・)
「ってかさ、ほんとどうしたの?そっちも用あるって言ってなかったっけ?」
気を紛らわせるように俺もココアを啜りながら敢えて少し離れたデスクチェアに座り碧に訊ねた。
「うん・・・・・実はね」
碧はいそいそと自身のリュックからラッピングされた袋と小さな箱を取り出し照れ臭そうに俺に渡してきた。
「・・・重いとは思ったんだけど」
受け取った俺は、丁寧に中身を取り出すと手作りと思われるダークグレーのマフラーが入っていた。もう一つの小さな箱を開けると、中には四方に分けられた一口サイズの四つの丸いチョコがチョコペンで可愛くデコレーションされたのが入っていた。
「これって・・・もしかして両方とも手作り?」
「やっぱ重いよね!?手作りチョコだけでも重いのにマフラーまでっ!!弟にも白い目で見られてたし渡すのギリギリまで迷ったの。一応ね、既製品のチョコも買って今日持って来てはいたんだけど・・・でもやっぱり渡したくて家まで取りに帰ったんだ」
「・・・もしかして作るのに最近先帰ったり会えなかったりしたの?」
碧は、ばつが悪い表情を浮かべながら小さく頷いた。俺は、あまりの嬉しさで身体中が熱くなり言葉が出ず綻ぶ口元を押さえた。
「え、えっと、チョコも何度も味見したし多分食べられる物になってると思うからっ!あ、あと中に色んな味楽しめるようになってるから・・・じゃ、じゃあ私、これで帰るね」
「え!?あ、ちょっと待って」
照れ臭そうな表情を隠すようにそそくさと帰る準備を始めた碧を俺は引き留め再びソファに座らせ身体を引き寄せた。
「ありがとう。本当に嬉しい。これくらいで重いなんて思わないよ。それに俺の気持ちの方がヤバいくらい重いの碧が一番知ってるでしょ?」
「ふふ、あ・・・た、か・・・んん、ふ・・・ッん」
可愛らしく笑う姿に我慢できず俺は、碧の唇に自身の唇を重ね彼女が何か言おうとした言葉を塞いだ。仄かにココアの味が口の中に広がり俺を更に興奮させた。
(これは・・・ヤバいな)
チラッと視線を時計に向けると既に針が18時を差し窓越しから見る外は暗闇に包まれていた。早く送り帰さなきゃという思いとそれとは別にこのままもう少し・・・という気持ちが葛藤し俺はテーブルに置いてあった箱を手に取り中身を一粒取り出した。
「コレ、碧が俺に食べさせて中に何入ってるか当てさせてよ。ほら、早くー」
「ふえっ?」
俺は意地悪な笑みを浮かべ碧の口にボンボンショコラを咥えさせ急かすように小さく口を開けた。
俺に言われた通り碧は、唇に挟んだチョコを半開きになった俺の唇へと押し当て中へと入れた。俺は口の中に転がり入ってくるチョコと一緒に碧の舌を絡めとりながら貪った。口内で溶けたチョコの中からとろりとした液が咥内へと染み渡り互いの唾液と混ざり合う。
(これって・・・)
鼻から抜けるアルコール臭が俺の脳内の思考を停止させ現実と虚構の狭間で朧げにさせる。
☆☆☆
「・・・ふふっ・・・、わ・・・い・・・かーわいい♡」
首元に何かが当たる感触に気付いた俺は、意識がまだ朧げな状態の中、ゆっくりと瞼を開き視界を広げた。気付けば碧が俺のシャツを開けさせ首元や鎖骨周辺に舌を這わせ舐め吸い上げた。
「ちょっ、待っ・・・碧、何してっ!?」
意識朦朧の中、俺は上に覆い被さる碧の両肩を押さえ自分の身体から少し遠ざけた。
「えー、何って言われてもー・・・んー・・・ふふふ・・・」
様子がおかしい・・・その想いと同時に先ほどのチョコレートを思い出した。
(あのチョコかなりアルコールの味したし・・・もしかしてそれで酔っ払って・・・)
「ふふ・・・たーたとー、あーーそぼー♡」
ヤバい・・・完全に酔っ払ってんなこれ・・・。そう思いながら俺は少し残った理性と戻りつつある意識をフル回転させ起き上がろうとすると身体の力が入らず再び碧に押し倒され唇を塞がれた。
「あお・・・待っ・・・んッ!ん」
17年間生きてきて今まで女に迫られたことはあるが、襲われたのは初めてだった。しかも、普段の碧からは全く想像つかない程の力で押さえつけられ唇を離そうとしない。しかし所詮は女の子の力、抵抗しようと思えば出来るはずなのにこの普段起こりえない状況に俺は無意識に身体の力を弛めていた。
(ヤバ・・・勃ってきた)
厭らしい程の碧の舌使いに下半身がムクムクと意志を持ち出してしまった。ただ、どう考えても今の碧とセックスしても素面になった時の彼女の感情を想うとやはり手を出すわけにはいかない。俺は、少しでも早く心身を正常に戻すべく定番の数式を頭の中で構築していた。
「っは、はぁ、はぁ・・・碧ちゃん、たまにこういうのもいいけど続きはまた今度にしようねー」
やっとのことで唇を放した碧を俺は甘く優しい声色を使って宥め、まるで赤ん坊をあやすかのように彼女の背中を優しく手でリズムよく叩いた。
「・・・・・・」
無言のまま碧はゆっくり起き上がり俺の腹部に跨ったままとろんとした表情で俺を見下ろしてきた。次の瞬間、口角を上げ自身の上唇を舐め妖艶な表情の彼女に心臓がギュッと締め付けられ治まりつつあった下半身へダイレクトに響いた。
「いつもー貴斗にぃーいーっぱいキモチよくしてもらってりゅからー今日はーあーたしがシてあげるぅねー♡」
「あ、こらっ・・・んッ・・・うァッ・・・んはッ・・・イッ」
カミカミの口調で話すと碧の両手が俺のシャツの釦を全て外し胸元を開かせ再び覆い被さると肩口に先ほどよりも強めに吸い上げられた・・・というより噛まれたという表現の方が正しい。痕がついたのがよほど嬉しかったのか碧は何度もその周辺を吸い上げるも肩口以上の痕が残せないでいた。
「んーー、やっぱ難しいなー。あたしぃもいっぱい痕つけちゃいのにー」
不満そうにぶつぶつと呟きながら彼女の指先は俺の胸元を滑り先端へと掠めた。不意の擽ったさに小さくビクつくとその瞬間、俺の反応が嬉しかったのか彼女の指先は俺の小さな尖りを執拗に摘まみ捏ね繰り回した。
(正直俺、乳首弄られても擽ったいだけでそれ以上の快感は生まれないんだけどなー)
暫く擽ったいの我慢すれば碧も飽きてくるだろう・・・と思い、俺は小さく息を吐き歯を食い縛った。先ほどより反応の薄い俺に面白くなかったのか、未だ座った目の碧の指先は胸元から腹部へと滑り脇腹をすり抜けた。
「ふふふ・・・たきゃとが一番ヒモチいいことしてあげりゅねー♡」
碧は不敵な笑みを浮かべたかと思うと俺の腹部から身体を移動し俺の下肢の間に身体を埋めベルトのバックルに手を掛けた。
「わーわーっ!!それは駄目っ!!」
手元が覚束なかったのかなかなか外せずに手古摺る碧の手を既の所で掴み阻止した。
「えーでもおっきくなってるよー?苦しそうだよ?」
さわさわとスラックス越しに彼女の指先が形に沿って触れてきたせいで、先ほどとは比べ物にならないくらい身体をビクつかせてしまった。
(これはマジでマズい・・・)
そう頭では思いながらも最近碧に触れられなかった餓えた下半身は正直で、更に生地を引っ張り上げていた。再び小悪魔のような笑みを俺に向けた碧は甘えたような声色で迫ってきた。
「・・・ねえ、触ってもいい?」
とろんとした視線で見つめてくる碧に俺の喉仏が大きく波打った。俺は、大きく深呼吸し腕で目元を隠し“好きにしてくれ”と言わんばかりに半ば諦めモードで小さく了承し頷いた。
俺の返事に更にテンションを上げ意気揚々の碧は、いそいそとベルトを外しスラックスを脱がせトランクスだけにさせられてしまう。
俺は、目元を隠した腕の隙間から一瞥すると喜々とした碧の表情に何となく複雑な心境になり再び深呼吸をした。
「ん?え、碧さん?これは一体・・・?」
次の瞬間、碧は俺の両手を持ち上げ纏めた両手首をカチャカチャと抜き取ったベルトで束ね縛り上げてきた。焦る俺を後目に碧は「だって抵抗されたくないもーん♡」とか言い出し再び俺の下半身へと移動した。
盛り上がりに上がった状態の部分を緊張しているのか碧は、恐る恐る指先で触れ撫で上げてきた。声が出そうになり必死に奥歯を噛み締め我慢する。生地越しにヒクヒクと小刻みに動く陰茎をまじまじと眺めながら先端部分をまるで頭を撫でるように触れてきた。
直接ではないたったそれだけの接触だが、久々の快感が身体中を駆け巡った俺は、更に歯を食い縛りナニかを逃がすように両手で握り拳を作った。
「下ろすね」
「わっ!、ば、だめだっ、」
両手で俺のウエスト部分の生地を掴むと躊躇うことなく勢いよく碧に下ろされてしまった。ぶんっと屹立した陰茎が飛び出し何故か罪悪感が生まれ居た堪れない気持ちで一杯だった。明るいところで晒されてしまった俺を穴が開くんじゃないかって程観察し見つめる碧の姿に更なる罪悪感が圧し掛かった。
「・・・おっきぃ・・・こんなのが私の・・・」
(あーもう、お願いだから言わないでー)
初めて物珍しい玩具を見つけたかのように碧の視線は釘付けで・・・そんな様子に俺の気持ちとは裏腹に馬鹿な下半身は更に興奮し痛いくらい硬く張り詰めていた。
「・・・ちっちゃい穴空いてるとこから何か透明な液出てきてる・・・コレって所謂がま「言わなくていいから」
咄嗟に碧の言葉を遮り情けなく辛い気持ちを少しでも和らげようとした。しかし馬鹿正直な俺の下半身は、碧に見られていることでなお一層敏感に感受する。
(直に触られてもないのに即完勃ちかよ・・・)
気まずい想いで黄昏ていると碧の指先の腹が俺の竿にそっと触れ優しく撫でられると俺は無意識に薄っすら声を漏れ出してしまった。この短時間で神経が削がれ情けなさが込み上げた。
今までだってこういった状況下に遭遇したことは何度かある。俺自身、こういった行為をされるのは嫌ではないが・・・何と言うかこういう行為は“男のエゴ”のような気がして・・・。だからこそ、碧とは彼女のペースに合わせ段階をゆっくり踏んでそういったタイミングが来たら進んでいければと思っていた。
正直、シて欲しい・・・なんて思ったりもしているが、今はその状況ではないことは紛うことなく重々理解できる。
「もういいだろ?もうしまってほし・・・うはっ、も、う、あお・・・」
「こうしたらキモチいい?」
彼女の温かい掌が俺の陰茎を優しく包み上下に扱いた。唐突な動きに驚嘆した俺は、鼻から何度も息を漏らした。
ふーふーと息を漏らしながら苦しむ俺とは対照的な碧は、物珍しそうな表情で俺のを扱くのに集中していた。
「おちんちんってあったかくてすべすべしてるんだね」
あーもうお願いだからそんな感想言わないで・・・なんて心の中で叫ぶも彼女に伝わることはなく成すがままになっていた。
「はあ、んっ・・・ほ、ら・・・もういいでしょ。そろそろ手はな、って、ちょっとマジで駄目だっ・・・んン・・ふゥッ・・・っく」
不意に濡れた温かいモノが俺の陰茎に触れ身体をビクつかせた。あまりの衝撃に目を細め下肢に視線を動かすと碧が小さく蹲り竿を手で握りながら裏スジに舌を這わせていた。何も知らないはずなのにピンポイントで強い鋭敏度に触れてきたせいか予想だにせず思わず嬌声を漏らしてしまった。
亀頭部分にちゅっ、ちゅっとキスしたかと思うとチロチロと舐め上げチュウチュウと吸い上げる。ぎこちない動きにもどかしさを感じつつも慣れていない舌使いの碧に嬉しさが込み上げ口元が歪む。
「碧・・・ほんと、もういい・・・から。汚い・・・か、ら」
碧の頭を撫でながら途切れ途切れになる言葉を発し可能な限り理性が崩壊しないよう懸命に踏ん張った。
「んーでも・・・ここからいっぱい出てるよ?綺麗にしてあげるね♡」
「ふァッ!はっ、くっ・・・」
「へへ、ちょっとしょっぱい味がする♡」
鈴口から溢れる先走りを舌先でチロチロと舐め上げ口を窄み再び吸い上げてきた。刹那、大きく口を開けた碧は徐に咥内奥へと俺を含み舌を小刻みに動かしながら頭を上下へ律動させ全体を刺激してくる。時折、歯があたり痛みを覚えるもそれ以上に恍惚感に襲われそれどころではなかった。
「あ・・・お・・・」
温かな咥内に包まれた陰茎は碧の唾液と舌の動きで厭らしい水音を下肢で響き疼かせた。
初めての行為に苦しいのか時折顔を歪ませながら頭を上下に揺らし俺のを愛撫してくれる。
射精したい気持ちとは裏腹にもう少し甘美なこの状況を味わっていたい・・・俺の下半身は激情に熱く滾らせた。
何度も繰り返す律動に陰茎が碧の口の中でどんどん膨張し同時に頭が呆け意識が遠のく感覚に襲われる。
(あーマジでヤバい、ヤバいから・・・このままだと碧の口ん中にぶちまけそう。・・・でも、どうせ止めてって言ったって無理だろうし・・・・・・仕方ないよな・・・碧には申し訳ないけど・・・)
あっさり諦めモードになった俺は、碧の不慣れな舌と口の動きに翻弄されながら流されることに覚悟を決めていると遠くから何故か俺の名を呼ぶ碧の声が聞こえた。夢見心地の俺は、そんなことはお構い無しに瞼を閉じこの淫靡な状態に浸っていた。
「・・・かと・・・た・・・・・・と・・・・・・たか・・・貴斗っ!」
あと数秒遅かったら口内に・・・というギリギリのところで意識がはっきりした俺は、目を見開き飛び跳ねるように勢いよく上半身を起こした。
「あ・・・れ?俺・・・」
「ごめんっ!!間違ってお父さんにあげる“ウイスキーボンボン”の方入れてたみたい」
まだ思考が戻り切らない頭を軽く振り、時計を見ると先程見た時刻からそんなに経ってはいないことに気付いた。
「お酒のせいで二人していつの間にか寝ちゃってたみたいだね」
困ったように照れ笑いを浮かべた碧に俺は、ぽかんとした表情のまま身動きが出来なかった。
「夢・・・・・・?」
「ん?」
「あ、いや。何でもない」
先程の出来事は全て夢だと気付かされた俺は、恥ずかしさと同時に・・・いやそれ以上に碧に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
(夢とは言え、碧に対してあんなことさせるなんて・・・やっぱたまってんのかなー)
心の中で懺悔と自嘲を繰り返しながら俺は、まだふわふわする頭を軽く振り碧に視線を向けた。
「外も暗いし家まで送るよ。マフラーとチョコほんとありがとな」
「今度はちゃんと貴斗にあげる分作り直して渡すから!!」
「うん。楽しみに待ってる」
俺は立ち上がると早速碧からもらったマフラーを巻き送る準備を始めた。
アルコールのせいでちゃんと覚醒していなかったのかこの時俺は全く気付いていなかった。碧が少しだけ顔を赤らめ俺への視線を逸らしたことに。・・・そして、肩口に薄っすらついた歯型の鬱血痕に・・・。
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