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(幕間) 着せ替え人形
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「痛いっ……痛いよ……こんなの……こんなのいやぁっ!」
「我慢してください! これも大人の嗜みなのですから……!」
白い素肌が跳ね、長く美しい銀色の髪が窓から差し込む陽の光に照らされ、キラキラと輝いている。
たわわに実った果実とも思える、年頃の娘よりもふくよかな胸が揺れる……そして細い腕、細い腰……全てが完璧なのではないか、と思える優れた容姿……こんな美しい少女を好きなように出来てしまう、これは地上の楽園だろうか?
ぐいっと彼女と自分を繋ぐ革紐を引くと、その動きに合わせて彼女が顔を歪めて悲鳴をあげ、ガクガクと腰砕けるように細い体が揺れ動く。
「い、いやっ……こんな、こんなことされたらわたくし壊れちゃう……っ! うぐうっ……も、もう許してえッ!」
「いい声で鳴きますね……さあ、これでおしまいですよぉ……これがラストです」
彼女の美しい顔が苦痛に歪む……ああ、苦しさから彼女の白い肌、細いうなじに汗が浮かんでいる……その汗すら輝きを見せている。
王国で一番美しい辺境の翡翠姫と呼称される少女は今自分にあられも無い姿を曝け出している……苦しさから少し荒い息を吐き、その艶やかな唇から小さな舌が覗き……そして堪えられないのか口の端から唾液が筋を作ってこぼれ出す。
ああ、自分の手で彼女にこんな苦しい想いをさせてしまうなんて……あられも無い姿を曝け出してしまう彼女を見て、思わず力を込めてグイグイと革紐を引いてしまう……その動きに合わせて彼女の口から掠れるような悲鳴が漏れ出す。
「いやああっ……痛いってほんと、もう無理ぃぃぃぃ……ひぎいッ……こ、壊れるっ……」
「大丈夫、大丈夫ですよ、痛いのは今だけですから……」
「こ、こんなの本当に無理なのぉ……いやああぁ……」
今私の前で目にいっぱいの涙を溜めて、私に向かって懇願するような顔を向けているのは、幼少期からずっと私が磨き続けてきた大事なお嬢様……そう、インテリペリ辺境伯家のご令嬢シャルロッタ・インテリペリ様。
辺境の翡翠姫と呼称されるイングウェイ王国随一の美姫に新しいドレスを着用してもらう準備を進めているのだ。
今お嬢様と私は……彼女の細い腰にコルセットを巻くために必死に格闘をしている、そんな状況であり何か別のことを想像して良からぬ想いを抱いた者がいたら、その不埒ものは私マーサ・オアシスが天誅する所存なのです。
お嬢様はゼエゼエと喘ぎながら、少し上気した頬を手で軽く仰ぎ、私に不満そうな目を向けている……ああ、そんなところも可愛いっ!
「はあっ……いつ……やっても……これ、無理よ……」
「シャルロッタ様、淑女とは我慢すること……先生も仰っていたではありませんか……」
「……仰ってましたけど、これはまた話が違うのでは……」
シャルロッタ様は不満そうな顔で、カチカチに固められたコルセットをコンコンと指で叩いている。
彼女はここ一年ほどで急激に体型が変わった……それまで体型としては非常にスリムで、一応胸の膨らみなどはあったが年相応な体型だったのだ。
だが、今は違う……すでに大人の女性としても十分に見えてしまうくらいボリュームのあるスタイルへと変化しつつあり、以前試着したドレス類などは全く入らなくなってきているのだ。
「もう昔のお洋服は入らないのですよ、ですから今あるものを仕立て直す……それとコルセットを巻いて骨盤の周りを安定させた方がドレス着用の際は楽ですよ」
「その割にはマーサ……顔が怖かったですわ……」
ちょっと途中から内心気持ちよくなっちゃって頑張りすぎたのは言わないでおこう。
シャルロッタ様は幼少期から侍女に辛く当たったり、我儘をぶつけるような方ではなく、私たちの言うことを真剣に聞いてくれたり、お優しくしてくれるとても貴族とは思えないくらい、まさに聖女とも言えるようなお優しい方なのだが、「シャルロッタ様の顔見てたら気持ちよくなっちゃいました」って言ったら私のことをドン引きした目で見る可能性もあるのだから。
「さあ、シャルロッタ様今日はどのドレスにしましょうか?」
「え、え……? コルセット巻けるかどうかの確認ではないの? 何ですの、その手に持ったドレスは……」
私が下ろしたての青色のドレスを手に声をかけるとシャルロッタ様はうわぁ……と明らかに引いた表情を浮かべる。
なぜお嬢様がこれほどまでにドン引きした表情を浮かべているのかというと、私の手にあるドレスだけではなく背後にはまだまだ数多くの下ろしたてドレスが鎮座しているからだ。
さすがインテリペリ辺境伯家、戦争貴族とか武闘派貴族とか揶揄されがちな貴族ではあるのだけど、それにしても庶民とは比べ物にならないレベルの財産を持っている。
私は笑顔でシャルロッタ様へと微笑むと、完全にドン引きしている彼女へとジリジリと躙り寄る。
「ではでは……まずはこちらのドレスを着用なさってからぁ、次はこちらの黄色いドレスをですね……」
「お、終わった……ですわ……」
完全に燃え尽きた顔で机に突っ伏しているシャルロッタ様だが、先日軽く計測していた頃よりも体型が少し変わっている……成長期の少女は毎日大人の階段を登っていっているのだな、と感心してしまう。
毎日私たち侍女がお風呂に、湯浴みにと彼女の肌を磨き、髪の毛を漉き、日々美しく見えるように努力をすることを彼女は喜んで受け入れてくれるようになった。
幼少期、一時期シャルロッタ様はそういった身だしなみを人にされることに遠慮のようなものを見せる時期があった、あんな時期もあったのは懐かしい、とさえ今では思える。
「汗をかいてしまいましたねシャルロッタ様、今お湯で拭きあげますからそのままでいてくださいね」
「はーい……辛かったですわ……」
彼女の白い肌がしっとりと濡れている……さすがに三〇着近いドレスを着せては脱がし、微調整や計測などを行なったのは疲れてしまったのか、柔らかい布で体を拭かれても動こうとしない。
本当に疲れたのだな、と少し申し訳ない気分になって心の中でシャルロッタ様にお疲れ様、と声をかける……毎日彼女の体を拭き上げ磨いていくが、あまりに艶やかな肌と柔らかい感触に同性として多少なりとも嫉妬に近い感情を覚えてしまいそうになる、この少女は女神か何かなのだろうか?
だが、私は知っている……初めて「月のもの」を迎えたシャルロッタ様は大いに取り乱し、泣き叫んで私に縋りついて怯えた表情を見せていた……あの時それまで不思議と大人びた表情を見せる目の前のご令嬢が、同じ人間なのだと心なしか安心したことも今となっては良い思い出だ。
「シャルロッタ様は王子殿下と婚約なされたのですよねえ……」
「……そういうことになっていますわね……」
「お輿入れの後、床入りを迎えられる際に殿下が驚くくらい、このマーサがシャルロッタ様のお肌を磨き上げますね」
「と、床入りって……まだ早すぎますわよ!? 婚約を行ったとはいえ、いつでも破棄される可能性もあるのですし!」
床入り、という言葉に反応したのかシャルロッタ様はそれまで静かに座っていたのが嘘のように、背筋をピン! と伸ばし慌てたように私に向かって捲し立てた。
ああ、そうだこのご令嬢は非常に初心で、恥ずかしがり屋で……そして誰よりも美しい少女なのだ……顔を真っ赤にして必死に何か反論じみたものを言おうとするシャルロッタ様の口を、そっと指を当てて黙らせると私はにっこり笑って彼女に囁いた。
「大丈夫です、シャルロッタ様……まだまだ先なのは私もちゃんと理解してます、でも……今からちゃんと準備しないとだめですよ?」
「マーサ殿……もう遅いですぞ、あなたもお眠りください」
シャルロッタ様が眠りにつき、規則正しい寝息を立て始めたのを見計らってか、部屋の片隅にある影の中からぬるりと巨大な黒い狼が姿を現す。
幻獣ガルム、名前はユル……シャルロッタ様が契約したと言われる太古より伝説となっている幻獣界の生物、そして人によっては夜の闇に紛れて獲物を狙うとされている地獄の番犬。
「ユル……シャルロッタ様を護衛するのですか?」
「ええ、契約者が寝込みを襲われる……などという間抜けな失態は犯したくありませんので」
不気味な赤い眼は寝台で眠りについているシャルロッタへと向けられるが、恐ろしい姿のガルムがシャルロッタ様を見る眼は本当に優しい光を帯びている。
契約した幻獣であると家中でも彼女に近しい人間へと公表されたのは一年ほど前……最初に見たときは恐ろしさで身が竦む思いであったが、一度会話をしてみるとこの巨大な幻獣は真面目だが気さくな一面もあり、そして大のオヤツ好きな犬にしか見えなくなった。
「もう寝る前ですからオヤツは出しませんよ?」
「シャルの寝床で食べていたら五月蝿いと怒られてしまいますな……明日の朝でお願いします」
「はいはい、じゃあ私も部屋に戻りますね……良い夜を」
私の言葉に頭を下げるとユルはシャルロッタ様を起こさないように慎重な足取りで彼女の寝台へと登る。
そっと音を立てないように扉を閉め、私は暗い廊下を自分の部屋へとゆっくりと歩いていく……明日もあの美しいシャルロッタ様のお世話をするのだ。
最初はお給金が良いことだけで応募をした仕事のはずだった、いつの間にか美しいお嬢様の世話をしていくうちに……私はあのシャルロッタ様の虜になってしまったかのよう。
少女の頃も人形のようで可愛いな、と思っていたのに成長するに従って美の女神のようにも思える気品なども備えており、そんな彼女の身の回りの世話をすることが今では楽しみとなっている。
軽くあくびをしながら私は部屋へと戻ると、寝台の中へと潜り込み魔導ランプの灯りを消してそっと呟いた。
「……おやすみなさい、シャルロッタ様良い夢を見てくださいね、また明日二〇着のドレスが待っておりますよ……」
「我慢してください! これも大人の嗜みなのですから……!」
白い素肌が跳ね、長く美しい銀色の髪が窓から差し込む陽の光に照らされ、キラキラと輝いている。
たわわに実った果実とも思える、年頃の娘よりもふくよかな胸が揺れる……そして細い腕、細い腰……全てが完璧なのではないか、と思える優れた容姿……こんな美しい少女を好きなように出来てしまう、これは地上の楽園だろうか?
ぐいっと彼女と自分を繋ぐ革紐を引くと、その動きに合わせて彼女が顔を歪めて悲鳴をあげ、ガクガクと腰砕けるように細い体が揺れ動く。
「い、いやっ……こんな、こんなことされたらわたくし壊れちゃう……っ! うぐうっ……も、もう許してえッ!」
「いい声で鳴きますね……さあ、これでおしまいですよぉ……これがラストです」
彼女の美しい顔が苦痛に歪む……ああ、苦しさから彼女の白い肌、細いうなじに汗が浮かんでいる……その汗すら輝きを見せている。
王国で一番美しい辺境の翡翠姫と呼称される少女は今自分にあられも無い姿を曝け出している……苦しさから少し荒い息を吐き、その艶やかな唇から小さな舌が覗き……そして堪えられないのか口の端から唾液が筋を作ってこぼれ出す。
ああ、自分の手で彼女にこんな苦しい想いをさせてしまうなんて……あられも無い姿を曝け出してしまう彼女を見て、思わず力を込めてグイグイと革紐を引いてしまう……その動きに合わせて彼女の口から掠れるような悲鳴が漏れ出す。
「いやああっ……痛いってほんと、もう無理ぃぃぃぃ……ひぎいッ……こ、壊れるっ……」
「大丈夫、大丈夫ですよ、痛いのは今だけですから……」
「こ、こんなの本当に無理なのぉ……いやああぁ……」
今私の前で目にいっぱいの涙を溜めて、私に向かって懇願するような顔を向けているのは、幼少期からずっと私が磨き続けてきた大事なお嬢様……そう、インテリペリ辺境伯家のご令嬢シャルロッタ・インテリペリ様。
辺境の翡翠姫と呼称されるイングウェイ王国随一の美姫に新しいドレスを着用してもらう準備を進めているのだ。
今お嬢様と私は……彼女の細い腰にコルセットを巻くために必死に格闘をしている、そんな状況であり何か別のことを想像して良からぬ想いを抱いた者がいたら、その不埒ものは私マーサ・オアシスが天誅する所存なのです。
お嬢様はゼエゼエと喘ぎながら、少し上気した頬を手で軽く仰ぎ、私に不満そうな目を向けている……ああ、そんなところも可愛いっ!
「はあっ……いつ……やっても……これ、無理よ……」
「シャルロッタ様、淑女とは我慢すること……先生も仰っていたではありませんか……」
「……仰ってましたけど、これはまた話が違うのでは……」
シャルロッタ様は不満そうな顔で、カチカチに固められたコルセットをコンコンと指で叩いている。
彼女はここ一年ほどで急激に体型が変わった……それまで体型としては非常にスリムで、一応胸の膨らみなどはあったが年相応な体型だったのだ。
だが、今は違う……すでに大人の女性としても十分に見えてしまうくらいボリュームのあるスタイルへと変化しつつあり、以前試着したドレス類などは全く入らなくなってきているのだ。
「もう昔のお洋服は入らないのですよ、ですから今あるものを仕立て直す……それとコルセットを巻いて骨盤の周りを安定させた方がドレス着用の際は楽ですよ」
「その割にはマーサ……顔が怖かったですわ……」
ちょっと途中から内心気持ちよくなっちゃって頑張りすぎたのは言わないでおこう。
シャルロッタ様は幼少期から侍女に辛く当たったり、我儘をぶつけるような方ではなく、私たちの言うことを真剣に聞いてくれたり、お優しくしてくれるとても貴族とは思えないくらい、まさに聖女とも言えるようなお優しい方なのだが、「シャルロッタ様の顔見てたら気持ちよくなっちゃいました」って言ったら私のことをドン引きした目で見る可能性もあるのだから。
「さあ、シャルロッタ様今日はどのドレスにしましょうか?」
「え、え……? コルセット巻けるかどうかの確認ではないの? 何ですの、その手に持ったドレスは……」
私が下ろしたての青色のドレスを手に声をかけるとシャルロッタ様はうわぁ……と明らかに引いた表情を浮かべる。
なぜお嬢様がこれほどまでにドン引きした表情を浮かべているのかというと、私の手にあるドレスだけではなく背後にはまだまだ数多くの下ろしたてドレスが鎮座しているからだ。
さすがインテリペリ辺境伯家、戦争貴族とか武闘派貴族とか揶揄されがちな貴族ではあるのだけど、それにしても庶民とは比べ物にならないレベルの財産を持っている。
私は笑顔でシャルロッタ様へと微笑むと、完全にドン引きしている彼女へとジリジリと躙り寄る。
「ではでは……まずはこちらのドレスを着用なさってからぁ、次はこちらの黄色いドレスをですね……」
「お、終わった……ですわ……」
完全に燃え尽きた顔で机に突っ伏しているシャルロッタ様だが、先日軽く計測していた頃よりも体型が少し変わっている……成長期の少女は毎日大人の階段を登っていっているのだな、と感心してしまう。
毎日私たち侍女がお風呂に、湯浴みにと彼女の肌を磨き、髪の毛を漉き、日々美しく見えるように努力をすることを彼女は喜んで受け入れてくれるようになった。
幼少期、一時期シャルロッタ様はそういった身だしなみを人にされることに遠慮のようなものを見せる時期があった、あんな時期もあったのは懐かしい、とさえ今では思える。
「汗をかいてしまいましたねシャルロッタ様、今お湯で拭きあげますからそのままでいてくださいね」
「はーい……辛かったですわ……」
彼女の白い肌がしっとりと濡れている……さすがに三〇着近いドレスを着せては脱がし、微調整や計測などを行なったのは疲れてしまったのか、柔らかい布で体を拭かれても動こうとしない。
本当に疲れたのだな、と少し申し訳ない気分になって心の中でシャルロッタ様にお疲れ様、と声をかける……毎日彼女の体を拭き上げ磨いていくが、あまりに艶やかな肌と柔らかい感触に同性として多少なりとも嫉妬に近い感情を覚えてしまいそうになる、この少女は女神か何かなのだろうか?
だが、私は知っている……初めて「月のもの」を迎えたシャルロッタ様は大いに取り乱し、泣き叫んで私に縋りついて怯えた表情を見せていた……あの時それまで不思議と大人びた表情を見せる目の前のご令嬢が、同じ人間なのだと心なしか安心したことも今となっては良い思い出だ。
「シャルロッタ様は王子殿下と婚約なされたのですよねえ……」
「……そういうことになっていますわね……」
「お輿入れの後、床入りを迎えられる際に殿下が驚くくらい、このマーサがシャルロッタ様のお肌を磨き上げますね」
「と、床入りって……まだ早すぎますわよ!? 婚約を行ったとはいえ、いつでも破棄される可能性もあるのですし!」
床入り、という言葉に反応したのかシャルロッタ様はそれまで静かに座っていたのが嘘のように、背筋をピン! と伸ばし慌てたように私に向かって捲し立てた。
ああ、そうだこのご令嬢は非常に初心で、恥ずかしがり屋で……そして誰よりも美しい少女なのだ……顔を真っ赤にして必死に何か反論じみたものを言おうとするシャルロッタ様の口を、そっと指を当てて黙らせると私はにっこり笑って彼女に囁いた。
「大丈夫です、シャルロッタ様……まだまだ先なのは私もちゃんと理解してます、でも……今からちゃんと準備しないとだめですよ?」
「マーサ殿……もう遅いですぞ、あなたもお眠りください」
シャルロッタ様が眠りにつき、規則正しい寝息を立て始めたのを見計らってか、部屋の片隅にある影の中からぬるりと巨大な黒い狼が姿を現す。
幻獣ガルム、名前はユル……シャルロッタ様が契約したと言われる太古より伝説となっている幻獣界の生物、そして人によっては夜の闇に紛れて獲物を狙うとされている地獄の番犬。
「ユル……シャルロッタ様を護衛するのですか?」
「ええ、契約者が寝込みを襲われる……などという間抜けな失態は犯したくありませんので」
不気味な赤い眼は寝台で眠りについているシャルロッタへと向けられるが、恐ろしい姿のガルムがシャルロッタ様を見る眼は本当に優しい光を帯びている。
契約した幻獣であると家中でも彼女に近しい人間へと公表されたのは一年ほど前……最初に見たときは恐ろしさで身が竦む思いであったが、一度会話をしてみるとこの巨大な幻獣は真面目だが気さくな一面もあり、そして大のオヤツ好きな犬にしか見えなくなった。
「もう寝る前ですからオヤツは出しませんよ?」
「シャルの寝床で食べていたら五月蝿いと怒られてしまいますな……明日の朝でお願いします」
「はいはい、じゃあ私も部屋に戻りますね……良い夜を」
私の言葉に頭を下げるとユルはシャルロッタ様を起こさないように慎重な足取りで彼女の寝台へと登る。
そっと音を立てないように扉を閉め、私は暗い廊下を自分の部屋へとゆっくりと歩いていく……明日もあの美しいシャルロッタ様のお世話をするのだ。
最初はお給金が良いことだけで応募をした仕事のはずだった、いつの間にか美しいお嬢様の世話をしていくうちに……私はあのシャルロッタ様の虜になってしまったかのよう。
少女の頃も人形のようで可愛いな、と思っていたのに成長するに従って美の女神のようにも思える気品なども備えており、そんな彼女の身の回りの世話をすることが今では楽しみとなっている。
軽くあくびをしながら私は部屋へと戻ると、寝台の中へと潜り込み魔導ランプの灯りを消してそっと呟いた。
「……おやすみなさい、シャルロッタ様良い夢を見てくださいね、また明日二〇着のドレスが待っておりますよ……」
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