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第一〇三話 シャルロッタ 一五歳 王都脱出 一三
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「……で、君たちは何者だね?」
「答える必要もあるまい?」
クレメント・インテリペリが馬車より降りる……邸宅に戻る最中で襲撃を受けるとはな、と内心腹立たしい気分になりながらも腰に指している剣の柄に手を当てて油断なく相手の数を確認していく。
味方の騎士たちも応戦しているが、それでも数が多くクレメント本人の前に四人の男たちが立ちはだかっており、手には不気味な色合いの液体が付着した小剣を構えている。
服装は黒づくめで明らかに暗殺を目的とした、裏社会の人間たちだろう……クレメントが剣を引き抜くと、それを合図にしたのか一気に四人が彼を囲むように襲いかかってくる。
「……問答無用かっ!」
クレメントの一撃が正面から飛びかかった男を切り裂く……だが、それには怯まずに小剣を突き出してくるが、クレメントからすると相当に遅く感じる攻撃だったため彼はひらりとその攻撃を躱しつつ、男たちから距離をとっていく。
囲まれないように木を背にしながら、襲いかかってくる男たちをあしらい、反撃しつつ増援が来るのを待っている、周りを横目で見ているとインテリペリ辺境伯家の騎士は負傷者も出ているが、他の襲撃犯を切り倒し優勢になりつつある。
こんな荒っぽいやり方で自分が倒せると思っているのだろうか?
「……くそっ! 一斉に襲い掛かれ!」
「随分雑な襲撃だな……」
クレメントは左から飛びかかってきた男を切り伏せると、剣を回転させて真正面から来た男の顔面に柄を叩き込む。
あまりに洗練された動きにもう一人の男があっけに取られたような表情を浮かべるが、それを見てにっこりと微笑むと彼は左拳を顔面へとブチ込み、一撃で男を昏倒させた。
戦争貴族、武闘派など様々な蔑称があるインテリペリ辺境伯家だが、その家に生まれた男児は徹底的に戦士として鍛え上げられる。
若い頃から魔物狩りなどで立ち回りを覚えさせられることで戦士として育ち、そして最も強い戦士が家名を継いで残していく……それ故にインテリペリ家当主は戦士として一流なのだ。
「この程度で私を殺せると思っていたのか? それは難しいな……」
「閣下! 申し訳ありません!」
地面に倒れた男が気を失っているのを確認していると、敵を倒し終わった騎士たちが彼の元へと駆けてくるのが見える。
まあこの程度の強さであれば自分一人でも問題なかったな……と考えつつ、呻き声をあげている男たちを送り込んできた黒幕について思案を巡らせる。
第一王子派が直接的な行動に出てくる……まさかとは思ったが、圧倒的優勢であるはずの彼らが態々このような手段に出てくるというのは想定外だった。
いや正確に言うのであれば、このタイミングで行動してくることに違和感を感じてしまう。
自分への攻撃は何らかの陽動で、別の標的があるのではないか? と考える……ただクレメントを排除したとして混乱は起きるだろうが、長男に実権を移行させている段階なのでインテリペリ辺境伯家が崩壊することは考えにくい。
戦力の低下もそれほど起きないだろう……すると王都にいる娘を狙う? ユルがいる以上この程度の敵で襲撃しても返り討ちに遭うだけ……戦力を過小評価しすぎているのか?
「……いいえ、辺境伯が標的ですよ」
「……なっ!?」
考え込みすぎて辺りへの警戒が疎かになっていたところに、突然後背から声をかけられクレメントは咄嗟に手に持った剣を振るう……だがそこには誰もいない。
一瞬だが思考が混乱し、左右に視線を動かすがそこにも声をかけてきた気配がない……だが彼の戦士としての感覚が足元から迫る殺気を感知し、地面を蹴って後ろへと飛ぶ。
影の中からグレーの肌をした腕と怪しい色合いの液体が付着した小剣がクレメントがそれまでいた空間を掠める。
「……これを避けるか……」
「お前は何者だ?」
影の中からずるりと一人の男が姿を表す……歪んだ笑みを浮かべたその男は金色の目に尖った耳、そしてグレーを基調とした肌を持つ黒づくめの衣装を纏った不気味な存在。
ダークエルフ……神話時代にエルフの部族が苦しみの果てに混沌神へと忠誠を誓い、その信徒となったことで女神の寵愛を失ったという伝承があり、その存在がダークエルフの祖先であると伝えられている。
大陸ではあまり姿を見せない……と言うのも彼らは忌み嫌われる存在であり、人前に姿を表すことはほとんどないと言われているからだ。
そのダークエルフはクレメントの問いにぐにゃりと歪んだ笑顔を浮かべて咲う。
「牙と呼ばれております……辺境伯の命をいただきに参りました」
「私の命……そうか、すんなりと殺されるわけにはいかないな」
「そうでしょう、そうでしょう……ですが戦士を殺すにはこう言うやり方もあるんですよ?」
その言葉と共に牙の影がまるで生き物のように伸びると、数メートル範囲を暗闇で覆っていく……これは、とクレメントが薄暗い幕に覆われた空間内を見渡して眉を顰める。
こんな魔法など聞いたことがない……戦争などで魔法使いが操る結界魔法と似たような感じにも見えるが、濃密な不快感が肌にまとわりつくようなそんな気持ち悪さを感じる。
「これは……ダークエルフが操る魔法なのか?」
「いえいえ、私はエンカシェ神の信徒でございますので……種族は関係ございません」
いきなり背後から小剣が伸びる……かろうじて周りの風景などは見えているが、漆黒に近いグレーの肌を持つ牙が視認しにくくなっている。
その攻撃をギリギリで回避すると返す刀で剣を振るうが、そこにダークエルフの姿はない……舌打ちをしながら大きく横へと体を投げだすと、それまでクレメントの首があった場所を横薙ぎの斬撃が通過していく。
体を回転させるようにクレメントが立ち上がると、暗闇の中へと再び姿を消していく牙。
「……くっ……」
「さすが武闘派貴族……いや一流の戦士として名高いインテリペリ辺境伯閣下、これは面白い死合でございますね」
暗闇の中を移動する息遣いが聞こえる……クレメントはふうっ、と大きく息を吐くとこめかみに流れる汗を片手で拭う。
確かに剣の腕には自信があるが、本質的には指揮官として振る舞ってきているため、このように直接剣を振るうという機会はあまり多いわけではない。
再び死角から鋭い斬撃や突きが繰り出される……紙一重、少し重く感じる体に鞭を打って、何とかその攻撃を回避して反撃を繰り出すが、ほんの少しだけ反応が鈍いのかクレメントの攻撃は空を切る。
「ああ、体が鈍いな……全く……」
「若い頃の閣下と殺し合いたかったですなあ……ッ!」
躱しきれない牙の斬撃が腕を掠める……ピリッとした痛みとともに、鮮血が宙を舞う。
そういえば寝屋で妻に「少しだけ腹にたるみが出てますよ、もう少し鍛えてくださいませ」と言われたなあ、と美しくも淑やかな妻の顔を思い返す。
そして身を翻した際に、胸元から溢れた小さなペンダント……それを見た瞬間、妻の血を受け継いだ絶世の美女である愛娘シャルロッタの顔が脳裏に浮かぶ。
思えば不思議な娘だった、貴族の子女にありがちな我儘や気位の高さなどは微塵も感じさせず、小さな頃から恐ろしく聞き分けが良かった。
『……これお父様の為に買ったの、気に入っていただけると嬉しいですわ』
一三歳になったある日シャルロッタが市井で探してきたと話していたペンダント……それは精巧な銀細工が取り付けられたもので、インテリペリ辺境伯領では珍しい作りのもので後で調べた時に、隣国マカパイン王国でしか流通していない特殊なものであることがわかった。
ほとんど領内から出ることのなかった娘が態々探してきたもの、と言うことで喜んで受け取っていたが、報告を受けた際に本当は娘が何かを隠しているのではないか? とほんの少しだけ疑った時期もあった。
クリストフェル殿下との婚約でもそうだ……貴族の子女であれば普通殿下との婚約を喜ぶものだろうと考えていたが、まるで殿下との婚約では足枷をつけられた、とでも言わんばかりの表情になっていた。
最近ようやくクリストフェル殿下との仲に進展があったようで、彼の話題を聞いてみるとほんの少しだけ頬を染めて話すようにもなったが、それでも数年間まるで婚約者などいないかのように、億劫そうな表情を浮かべた娘のことが不思議で仕方がなかった。
ただあの二人であれば、美しい孫が生まれるだろうしクリストフェル殿下は最近メキメキと成長を遂げている……願わくは、この国を引っ張るような夫婦になってほしい、と思うのだ。
「反応が鈍いですねッ!」
「……いいや? これで捕まえられる」
「……なっ……ぶべらあっ!」
鋭い痛みと共に牙の小剣が腹部へと突き刺さる……だがその瞬間クレメントはダークエルフの少し華奢な腕を無理やり掴む。
クレメントがわざと自分を誘ったと理解した牙の顔色が変わるが、次の瞬間剣の柄がダークエルフの顔面へと叩き込まれた。
だがクレメントは掴んだ腕を離さずにそのまま何度も牙の顔面へと攻撃を叩き込む……腹部にじんわりとした熱が広がっていく、毒が彼の身を蝕み始めても大貴族中最強の地方軍を指揮するクレメント・インテリペリは表情を崩さずにダークエルフの顔面を破壊していく。
何度か攻撃を繰り返すと牙が気を失ったのか死んだのかわからないが、結界自体がボロボロと崩れ落ちていく……そして薄い幕の向こうには護衛の騎士たちが自分を見て絶叫をしながら走ってくる姿が見え、そこでクレメントの意識が真っ暗闇へと落ちていった。
「閣……インテリペリ辺境伯閣下ーッ! おい、急ぎ治療院へとお運びしろ! まだ息がある……何としてでも助けるんだ!」
「答える必要もあるまい?」
クレメント・インテリペリが馬車より降りる……邸宅に戻る最中で襲撃を受けるとはな、と内心腹立たしい気分になりながらも腰に指している剣の柄に手を当てて油断なく相手の数を確認していく。
味方の騎士たちも応戦しているが、それでも数が多くクレメント本人の前に四人の男たちが立ちはだかっており、手には不気味な色合いの液体が付着した小剣を構えている。
服装は黒づくめで明らかに暗殺を目的とした、裏社会の人間たちだろう……クレメントが剣を引き抜くと、それを合図にしたのか一気に四人が彼を囲むように襲いかかってくる。
「……問答無用かっ!」
クレメントの一撃が正面から飛びかかった男を切り裂く……だが、それには怯まずに小剣を突き出してくるが、クレメントからすると相当に遅く感じる攻撃だったため彼はひらりとその攻撃を躱しつつ、男たちから距離をとっていく。
囲まれないように木を背にしながら、襲いかかってくる男たちをあしらい、反撃しつつ増援が来るのを待っている、周りを横目で見ているとインテリペリ辺境伯家の騎士は負傷者も出ているが、他の襲撃犯を切り倒し優勢になりつつある。
こんな荒っぽいやり方で自分が倒せると思っているのだろうか?
「……くそっ! 一斉に襲い掛かれ!」
「随分雑な襲撃だな……」
クレメントは左から飛びかかってきた男を切り伏せると、剣を回転させて真正面から来た男の顔面に柄を叩き込む。
あまりに洗練された動きにもう一人の男があっけに取られたような表情を浮かべるが、それを見てにっこりと微笑むと彼は左拳を顔面へとブチ込み、一撃で男を昏倒させた。
戦争貴族、武闘派など様々な蔑称があるインテリペリ辺境伯家だが、その家に生まれた男児は徹底的に戦士として鍛え上げられる。
若い頃から魔物狩りなどで立ち回りを覚えさせられることで戦士として育ち、そして最も強い戦士が家名を継いで残していく……それ故にインテリペリ家当主は戦士として一流なのだ。
「この程度で私を殺せると思っていたのか? それは難しいな……」
「閣下! 申し訳ありません!」
地面に倒れた男が気を失っているのを確認していると、敵を倒し終わった騎士たちが彼の元へと駆けてくるのが見える。
まあこの程度の強さであれば自分一人でも問題なかったな……と考えつつ、呻き声をあげている男たちを送り込んできた黒幕について思案を巡らせる。
第一王子派が直接的な行動に出てくる……まさかとは思ったが、圧倒的優勢であるはずの彼らが態々このような手段に出てくるというのは想定外だった。
いや正確に言うのであれば、このタイミングで行動してくることに違和感を感じてしまう。
自分への攻撃は何らかの陽動で、別の標的があるのではないか? と考える……ただクレメントを排除したとして混乱は起きるだろうが、長男に実権を移行させている段階なのでインテリペリ辺境伯家が崩壊することは考えにくい。
戦力の低下もそれほど起きないだろう……すると王都にいる娘を狙う? ユルがいる以上この程度の敵で襲撃しても返り討ちに遭うだけ……戦力を過小評価しすぎているのか?
「……いいえ、辺境伯が標的ですよ」
「……なっ!?」
考え込みすぎて辺りへの警戒が疎かになっていたところに、突然後背から声をかけられクレメントは咄嗟に手に持った剣を振るう……だがそこには誰もいない。
一瞬だが思考が混乱し、左右に視線を動かすがそこにも声をかけてきた気配がない……だが彼の戦士としての感覚が足元から迫る殺気を感知し、地面を蹴って後ろへと飛ぶ。
影の中からグレーの肌をした腕と怪しい色合いの液体が付着した小剣がクレメントがそれまでいた空間を掠める。
「……これを避けるか……」
「お前は何者だ?」
影の中からずるりと一人の男が姿を表す……歪んだ笑みを浮かべたその男は金色の目に尖った耳、そしてグレーを基調とした肌を持つ黒づくめの衣装を纏った不気味な存在。
ダークエルフ……神話時代にエルフの部族が苦しみの果てに混沌神へと忠誠を誓い、その信徒となったことで女神の寵愛を失ったという伝承があり、その存在がダークエルフの祖先であると伝えられている。
大陸ではあまり姿を見せない……と言うのも彼らは忌み嫌われる存在であり、人前に姿を表すことはほとんどないと言われているからだ。
そのダークエルフはクレメントの問いにぐにゃりと歪んだ笑顔を浮かべて咲う。
「牙と呼ばれております……辺境伯の命をいただきに参りました」
「私の命……そうか、すんなりと殺されるわけにはいかないな」
「そうでしょう、そうでしょう……ですが戦士を殺すにはこう言うやり方もあるんですよ?」
その言葉と共に牙の影がまるで生き物のように伸びると、数メートル範囲を暗闇で覆っていく……これは、とクレメントが薄暗い幕に覆われた空間内を見渡して眉を顰める。
こんな魔法など聞いたことがない……戦争などで魔法使いが操る結界魔法と似たような感じにも見えるが、濃密な不快感が肌にまとわりつくようなそんな気持ち悪さを感じる。
「これは……ダークエルフが操る魔法なのか?」
「いえいえ、私はエンカシェ神の信徒でございますので……種族は関係ございません」
いきなり背後から小剣が伸びる……かろうじて周りの風景などは見えているが、漆黒に近いグレーの肌を持つ牙が視認しにくくなっている。
その攻撃をギリギリで回避すると返す刀で剣を振るうが、そこにダークエルフの姿はない……舌打ちをしながら大きく横へと体を投げだすと、それまでクレメントの首があった場所を横薙ぎの斬撃が通過していく。
体を回転させるようにクレメントが立ち上がると、暗闇の中へと再び姿を消していく牙。
「……くっ……」
「さすが武闘派貴族……いや一流の戦士として名高いインテリペリ辺境伯閣下、これは面白い死合でございますね」
暗闇の中を移動する息遣いが聞こえる……クレメントはふうっ、と大きく息を吐くとこめかみに流れる汗を片手で拭う。
確かに剣の腕には自信があるが、本質的には指揮官として振る舞ってきているため、このように直接剣を振るうという機会はあまり多いわけではない。
再び死角から鋭い斬撃や突きが繰り出される……紙一重、少し重く感じる体に鞭を打って、何とかその攻撃を回避して反撃を繰り出すが、ほんの少しだけ反応が鈍いのかクレメントの攻撃は空を切る。
「ああ、体が鈍いな……全く……」
「若い頃の閣下と殺し合いたかったですなあ……ッ!」
躱しきれない牙の斬撃が腕を掠める……ピリッとした痛みとともに、鮮血が宙を舞う。
そういえば寝屋で妻に「少しだけ腹にたるみが出てますよ、もう少し鍛えてくださいませ」と言われたなあ、と美しくも淑やかな妻の顔を思い返す。
そして身を翻した際に、胸元から溢れた小さなペンダント……それを見た瞬間、妻の血を受け継いだ絶世の美女である愛娘シャルロッタの顔が脳裏に浮かぶ。
思えば不思議な娘だった、貴族の子女にありがちな我儘や気位の高さなどは微塵も感じさせず、小さな頃から恐ろしく聞き分けが良かった。
『……これお父様の為に買ったの、気に入っていただけると嬉しいですわ』
一三歳になったある日シャルロッタが市井で探してきたと話していたペンダント……それは精巧な銀細工が取り付けられたもので、インテリペリ辺境伯領では珍しい作りのもので後で調べた時に、隣国マカパイン王国でしか流通していない特殊なものであることがわかった。
ほとんど領内から出ることのなかった娘が態々探してきたもの、と言うことで喜んで受け取っていたが、報告を受けた際に本当は娘が何かを隠しているのではないか? とほんの少しだけ疑った時期もあった。
クリストフェル殿下との婚約でもそうだ……貴族の子女であれば普通殿下との婚約を喜ぶものだろうと考えていたが、まるで殿下との婚約では足枷をつけられた、とでも言わんばかりの表情になっていた。
最近ようやくクリストフェル殿下との仲に進展があったようで、彼の話題を聞いてみるとほんの少しだけ頬を染めて話すようにもなったが、それでも数年間まるで婚約者などいないかのように、億劫そうな表情を浮かべた娘のことが不思議で仕方がなかった。
ただあの二人であれば、美しい孫が生まれるだろうしクリストフェル殿下は最近メキメキと成長を遂げている……願わくは、この国を引っ張るような夫婦になってほしい、と思うのだ。
「反応が鈍いですねッ!」
「……いいや? これで捕まえられる」
「……なっ……ぶべらあっ!」
鋭い痛みと共に牙の小剣が腹部へと突き刺さる……だがその瞬間クレメントはダークエルフの少し華奢な腕を無理やり掴む。
クレメントがわざと自分を誘ったと理解した牙の顔色が変わるが、次の瞬間剣の柄がダークエルフの顔面へと叩き込まれた。
だがクレメントは掴んだ腕を離さずにそのまま何度も牙の顔面へと攻撃を叩き込む……腹部にじんわりとした熱が広がっていく、毒が彼の身を蝕み始めても大貴族中最強の地方軍を指揮するクレメント・インテリペリは表情を崩さずにダークエルフの顔面を破壊していく。
何度か攻撃を繰り返すと牙が気を失ったのか死んだのかわからないが、結界自体がボロボロと崩れ落ちていく……そして薄い幕の向こうには護衛の騎士たちが自分を見て絶叫をしながら走ってくる姿が見え、そこでクレメントの意識が真っ暗闇へと落ちていった。
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