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第一一三話 シャルロッタ 一五歳 知恵ある者 〇三
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「……大丈夫マーサ? ……足元に気をつけてね」
わたくしは荒い息を吐いてフラフラと歩くマーサを支えながら、少し険しい丘を登りおえると、眼前に広がる広場を見てホッと息を吐く。
凶暴化した兵士たちを無力化した後わたくし達は街道を避けた場所を進んでおり、もともと野外生活に慣れている「赤竜の息吹」とわたくしはともかく、マーサは今まで侍女以外の生活をしたことがなかったようで、すでに歩くのもままならない状況になってきている。
そりゃ仕方ないだろうな、とは思うけど今は我慢してもらうしかない……マーサは疲れ切った顔で私を見ると、ほんの少しだけ不思議そうな表情を浮かべる。
「……ありがとうございますシャルロッタ様……で、でもシャルロッタ様が大丈夫そうなのに私がへばっていては申し訳ありません……」
「あ、うん……わたくしも疲れてますわよ? でも学園の冒険者体験で慣れてるから……」
言い訳としてはまあこれでいいだろう、その冒険者体験授業も大したことやっていないんだけどね、いきなり襲われたりしたからなんだけど。
ああ、なるほど……とマーサは呟くと、少しおぼつかない足元ながらもなんとか前に歩こうとしている……わたくしは彼女を支えながら広場へと進んでいくが、先ほどから不気味なくらい当たりは静まり返っている。
虫の音や小動物の息遣いすら聞こえない、まるでもっと強大な何かに怯えているかのような、そんな張り詰めた空気を感じる。
ふとわたくしの記憶の中に似たような状況があったことを思い出した……あれはいつだったか、前世で辛く厳しい冒険を続けている時だ。
魔王の手下に複数の幹部がいてその中の一人に待ち伏せ攻撃を得意としている者がいた。
ちょうど今のように周囲を沈黙と静寂に包み、自分の狩場へと徐々に誘い込んでいくという実に陰湿な性格をしたやつで、本当に苦労させられた相手だった。
見た目は豪快な悪魔のように見えるが、やることなすこと実に細やかで繊細な戦術を好む誇り高い魔族で、前世の世界であそこまで苦戦したのは当時のわたくしがそこまで成長しきっていなかったことにも原因があるのだけどね。
既視感というか……今進んでいる方向は誘い込まれているのではないか? という危機感がほんの少しだけ心の中に芽生える。
「ちっ……リリーナさん……」
「ええ、わかっている……もうここは戦場ね……」
ほんの少しだけ離れた場所を歩いていたリリーナさんの表情が恐ろしく引き締まったものであることに気がつき、わたくしは軽く舌打ちをする。
リリーナさんだけでなくエルネットさん達も今の状況に気がついたのだろう、手に武器を持って回りに油断なく視線を配っている。
ふと、広場の中心に何もない場所からどろり、と黒いシミのような液体がこぼれ出す……濃厚な魔力と、怖気立つような不気味さを感じて一斉に「赤竜の息吹」はわたくしとマーサを守るように陣形を組み直す。
「……クフフッ……やあ、会いに来てやったぞ……勇者の残り滓よ」
「知恵ある者……」
ゴボゴボと音を立てて液体の中からヒキガエルのような顔を持つ怪物が姿を見せる……混沌の訓戒者たる異形の魔人知恵ある者がニタリとわたくし達を濁った瞳で見て笑う。
以前会った時と同じように、彼はでっぷりとした腹を太い指でボリボリと掻くと、口元から紫色の舌をべろりと伸ばす。
こいつ……わざわざ待ち伏せを……わたくしはユルにマーサを預けるために軽く影を足裏でトントンと叩くと、影の中で休んでいたユルがずるり、と影の中から出現する。
「……我も十分休憩を取れました、戦闘に参加しましょうか?」
「お願い……みんなを守って」
「承知……マーサ殿我に掴まってください」
「……シャ……ルロッタ様……いけません……犠牲になるのであれば私が……」
不安そうな表情を浮かべるマーサをユルに預けると、彼女は立っていられなかったのか幻獣ガルムにもたれ掛かってずるずると腰を落としてしまう。
マーサは目の前に現れた怪物にわたくしが身を投げ出すとでも思ったのかもしれないけど、そうじゃない。
わたくしは相手をブチ殺すために本気で戦う覚悟を決めただけだ……だが「赤竜の息吹」と違ってマーサはわたくしの本当の能力を知らない、教えてもないし話す気もなかった。
だから彼女にとってこれからわたくしが見せるものはどう映るのか、もはや判断がつかない……でもやるしかない。
「……ごめんねマーサ……わたくし貴女に沢山嘘をついてきたの……ごめんね」
「ど、どういうことですか? 私にとってシャルロッタ様は大事なお嬢様で……王子様と結ばれて……だから私が身代わりになれば……」
「違うの、わたくし本当は誰よりも強いのですわ……だからあなたのことも全力で守るの、だから何も言わないでくれる?」
わたくしの言葉が何を言っているのか、彼女はさっぱりわからなかったのだろう……呆然とした表情でわたくしのことをじっと見ている。
あいつが来た、ということはわたくしだけが狙いであって、他の人達はわたくしが負けたり、逃げ出したりしなければ仲間に直接危害を加えるようなことは一切ないだろう。
それはあの濁り切った瞳がそう物語っている、一対一で力を競おうとでもいいたげな笑みと、鈍い光を湛えているのがわかるからだ。
エルネットさん達も不安そうな表情でわたくしを見ているが、彼らに最大限の笑顔でそっと微笑む。
「……マーサを頼みます、本当は彼女に知られたくなかったけど……そう言ってられませんものね」
「シャルロッタ様……負けないでください……」
エルネットさんの言葉に、わたくしは軽く微笑んでから頷きマーサの顔を一度じっと見つめる……彼女はわたくしがなぜ自分を見つめているのか理解していなかったようだが、わたくしが一度軽く頭を下げたことで何かを悟ったのだろう。
何かを言いかけて彼女は手を伸ばすが、わたくしは黙って知恵ある者へと視線を向けると、そのまま虚空へと手を突っ込み中から不滅を引き抜く。
空間を引き裂いて勇者スコット・アンスラックスより受け継いだ不滅の魔剣が姿を表す……まるで全身から相手を切り裂くことができる喜びを表しているかのように等身が小刻みに揺れているような気がした。
その光景を見たマーサが息を呑む声が背後から聞こえた……そりゃそうだ、わたくしが剣を振るうのもお稽古程度だと思っていたのだろうし、いつもそれに対して苦言を呈していたのは彼女だからだ。
違うんだよマーサ、わたくし多分この世界で一番強い元勇者なんだ……だから目の前にいる敵を全力で滅ぼすのがわたくしの使命でもあるのだ。
「待たせたわね知恵ある者……シャルロッタ・インテリペリの名前を持ってあなたをブチ殺して差し上げますわ」
「……随分と感傷的なお別れのようだな、心が揺れているぞ?」
そんなわたくしを見て、知恵ある者はニタニタと笑って再び腹を掻きむしるが、腫瘍の一つがグシャリと潰れて粘液のようなものが地面へと滴るのが見える。
こいつは混沌神ターベンディッシュの訓戒者……魔法と秘密を司る神の僕なのだ、だからこそ魔法、広範囲を殲滅するような強力な魔法をぶち込まれた時のためにユルを味方の防御に回している。
わたくしが右手で不滅を正眼に構えたのを見て、知恵ある者は顎に手をやってから、ぐにゃりと歪んだ笑みを浮かべた。
「……もしかして私が超強力な魔法で辺り一体を焼き尽くすとか、そういうことを好むと思っているのか?」
「ターベンディッシュの眷属なんでしょ? だったら……」
「クハハハッ! それは固定化された概念というやつだ辺境の翡翠姫、魔道の深淵は深くそして一寸先も見えぬもの、貴様もそれは感じているだろう?」
「そうね、どこまでも終わりがない道を一歩一歩進むような思いをして……真理を求める、だったかしら?」
「よくわかっているな良き生徒になれるぞアバズレ……私はその道すがら素晴らしい力を見出した……これはその最高傑作の一つである」
彼の宣言と共に辺り一体に凄まじい振動が巻き起こる……地の底から地面を割り、辺りを破壊しながら巨大な何かが出現していく……知恵ある者はその巨大な何かの上に立ったままニヤニヤと笑いを浮かべて空へと持ち上がっていく。
土煙と砂埃が濛々とあたりへと立ち込める中、ズシンと凄まじく重い何かが地面に食い込む音が響き渡る……その大きさは一〇メートルを優に超えた巨大な人形の巨人だった。
ぱっと見の外見は巨大な鎧を着込んだ騎士のようにすら見えるが、恐ろしく無骨な金属とも石材ともつかない不思議な物体をブロックのように組み合わせた体を人型のように見せている。
そして体のあちこちを構成しているブロックを繋ぎ止めているのは、人の筋肉のように脈動する不気味な体組織で構成されており、柔軟な動きを見せている。
「な、何これ……」
「……驚いてくれたかな? これが私の魔道研究の結晶にして最高傑作、命なきものにして命を刈り取るもの」
わたくしが絶句してその巨人を見上げると、その肩の上にヒキガエル面の魔人がニタニタと笑いを浮かべてこちらを見下ろしているのが見えた。
彼は口元をその長い紫色の舌で拭うと、両手を広げその身に魔力を集約させていく……それは敬虔なる神の信徒が愛する神へと祈りを捧げるようなそんな神々しい仕草にも見える。
巨人がブルブルと痙攣すると、ゆっくりと全身がガタガタと震えるように動き出す……それはまるで作り物のマリオネットが無理やりに動かされているかのような不自然な動きでゆっくりと一歩を踏み出した。
「……さあ、刮目するがいい……魔道と神秘の結晶、混沌の力と生命をつなぎ合わせて作った我が最高傑作たる操り人形……七国魔道騎をな!」
わたくしは荒い息を吐いてフラフラと歩くマーサを支えながら、少し険しい丘を登りおえると、眼前に広がる広場を見てホッと息を吐く。
凶暴化した兵士たちを無力化した後わたくし達は街道を避けた場所を進んでおり、もともと野外生活に慣れている「赤竜の息吹」とわたくしはともかく、マーサは今まで侍女以外の生活をしたことがなかったようで、すでに歩くのもままならない状況になってきている。
そりゃ仕方ないだろうな、とは思うけど今は我慢してもらうしかない……マーサは疲れ切った顔で私を見ると、ほんの少しだけ不思議そうな表情を浮かべる。
「……ありがとうございますシャルロッタ様……で、でもシャルロッタ様が大丈夫そうなのに私がへばっていては申し訳ありません……」
「あ、うん……わたくしも疲れてますわよ? でも学園の冒険者体験で慣れてるから……」
言い訳としてはまあこれでいいだろう、その冒険者体験授業も大したことやっていないんだけどね、いきなり襲われたりしたからなんだけど。
ああ、なるほど……とマーサは呟くと、少しおぼつかない足元ながらもなんとか前に歩こうとしている……わたくしは彼女を支えながら広場へと進んでいくが、先ほどから不気味なくらい当たりは静まり返っている。
虫の音や小動物の息遣いすら聞こえない、まるでもっと強大な何かに怯えているかのような、そんな張り詰めた空気を感じる。
ふとわたくしの記憶の中に似たような状況があったことを思い出した……あれはいつだったか、前世で辛く厳しい冒険を続けている時だ。
魔王の手下に複数の幹部がいてその中の一人に待ち伏せ攻撃を得意としている者がいた。
ちょうど今のように周囲を沈黙と静寂に包み、自分の狩場へと徐々に誘い込んでいくという実に陰湿な性格をしたやつで、本当に苦労させられた相手だった。
見た目は豪快な悪魔のように見えるが、やることなすこと実に細やかで繊細な戦術を好む誇り高い魔族で、前世の世界であそこまで苦戦したのは当時のわたくしがそこまで成長しきっていなかったことにも原因があるのだけどね。
既視感というか……今進んでいる方向は誘い込まれているのではないか? という危機感がほんの少しだけ心の中に芽生える。
「ちっ……リリーナさん……」
「ええ、わかっている……もうここは戦場ね……」
ほんの少しだけ離れた場所を歩いていたリリーナさんの表情が恐ろしく引き締まったものであることに気がつき、わたくしは軽く舌打ちをする。
リリーナさんだけでなくエルネットさん達も今の状況に気がついたのだろう、手に武器を持って回りに油断なく視線を配っている。
ふと、広場の中心に何もない場所からどろり、と黒いシミのような液体がこぼれ出す……濃厚な魔力と、怖気立つような不気味さを感じて一斉に「赤竜の息吹」はわたくしとマーサを守るように陣形を組み直す。
「……クフフッ……やあ、会いに来てやったぞ……勇者の残り滓よ」
「知恵ある者……」
ゴボゴボと音を立てて液体の中からヒキガエルのような顔を持つ怪物が姿を見せる……混沌の訓戒者たる異形の魔人知恵ある者がニタリとわたくし達を濁った瞳で見て笑う。
以前会った時と同じように、彼はでっぷりとした腹を太い指でボリボリと掻くと、口元から紫色の舌をべろりと伸ばす。
こいつ……わざわざ待ち伏せを……わたくしはユルにマーサを預けるために軽く影を足裏でトントンと叩くと、影の中で休んでいたユルがずるり、と影の中から出現する。
「……我も十分休憩を取れました、戦闘に参加しましょうか?」
「お願い……みんなを守って」
「承知……マーサ殿我に掴まってください」
「……シャ……ルロッタ様……いけません……犠牲になるのであれば私が……」
不安そうな表情を浮かべるマーサをユルに預けると、彼女は立っていられなかったのか幻獣ガルムにもたれ掛かってずるずると腰を落としてしまう。
マーサは目の前に現れた怪物にわたくしが身を投げ出すとでも思ったのかもしれないけど、そうじゃない。
わたくしは相手をブチ殺すために本気で戦う覚悟を決めただけだ……だが「赤竜の息吹」と違ってマーサはわたくしの本当の能力を知らない、教えてもないし話す気もなかった。
だから彼女にとってこれからわたくしが見せるものはどう映るのか、もはや判断がつかない……でもやるしかない。
「……ごめんねマーサ……わたくし貴女に沢山嘘をついてきたの……ごめんね」
「ど、どういうことですか? 私にとってシャルロッタ様は大事なお嬢様で……王子様と結ばれて……だから私が身代わりになれば……」
「違うの、わたくし本当は誰よりも強いのですわ……だからあなたのことも全力で守るの、だから何も言わないでくれる?」
わたくしの言葉が何を言っているのか、彼女はさっぱりわからなかったのだろう……呆然とした表情でわたくしのことをじっと見ている。
あいつが来た、ということはわたくしだけが狙いであって、他の人達はわたくしが負けたり、逃げ出したりしなければ仲間に直接危害を加えるようなことは一切ないだろう。
それはあの濁り切った瞳がそう物語っている、一対一で力を競おうとでもいいたげな笑みと、鈍い光を湛えているのがわかるからだ。
エルネットさん達も不安そうな表情でわたくしを見ているが、彼らに最大限の笑顔でそっと微笑む。
「……マーサを頼みます、本当は彼女に知られたくなかったけど……そう言ってられませんものね」
「シャルロッタ様……負けないでください……」
エルネットさんの言葉に、わたくしは軽く微笑んでから頷きマーサの顔を一度じっと見つめる……彼女はわたくしがなぜ自分を見つめているのか理解していなかったようだが、わたくしが一度軽く頭を下げたことで何かを悟ったのだろう。
何かを言いかけて彼女は手を伸ばすが、わたくしは黙って知恵ある者へと視線を向けると、そのまま虚空へと手を突っ込み中から不滅を引き抜く。
空間を引き裂いて勇者スコット・アンスラックスより受け継いだ不滅の魔剣が姿を表す……まるで全身から相手を切り裂くことができる喜びを表しているかのように等身が小刻みに揺れているような気がした。
その光景を見たマーサが息を呑む声が背後から聞こえた……そりゃそうだ、わたくしが剣を振るうのもお稽古程度だと思っていたのだろうし、いつもそれに対して苦言を呈していたのは彼女だからだ。
違うんだよマーサ、わたくし多分この世界で一番強い元勇者なんだ……だから目の前にいる敵を全力で滅ぼすのがわたくしの使命でもあるのだ。
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そんなわたくしを見て、知恵ある者はニタニタと笑って再び腹を掻きむしるが、腫瘍の一つがグシャリと潰れて粘液のようなものが地面へと滴るのが見える。
こいつは混沌神ターベンディッシュの訓戒者……魔法と秘密を司る神の僕なのだ、だからこそ魔法、広範囲を殲滅するような強力な魔法をぶち込まれた時のためにユルを味方の防御に回している。
わたくしが右手で不滅を正眼に構えたのを見て、知恵ある者は顎に手をやってから、ぐにゃりと歪んだ笑みを浮かべた。
「……もしかして私が超強力な魔法で辺り一体を焼き尽くすとか、そういうことを好むと思っているのか?」
「ターベンディッシュの眷属なんでしょ? だったら……」
「クハハハッ! それは固定化された概念というやつだ辺境の翡翠姫、魔道の深淵は深くそして一寸先も見えぬもの、貴様もそれは感じているだろう?」
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土煙と砂埃が濛々とあたりへと立ち込める中、ズシンと凄まじく重い何かが地面に食い込む音が響き渡る……その大きさは一〇メートルを優に超えた巨大な人形の巨人だった。
ぱっと見の外見は巨大な鎧を着込んだ騎士のようにすら見えるが、恐ろしく無骨な金属とも石材ともつかない不思議な物体をブロックのように組み合わせた体を人型のように見せている。
そして体のあちこちを構成しているブロックを繋ぎ止めているのは、人の筋肉のように脈動する不気味な体組織で構成されており、柔軟な動きを見せている。
「な、何これ……」
「……驚いてくれたかな? これが私の魔道研究の結晶にして最高傑作、命なきものにして命を刈り取るもの」
わたくしが絶句してその巨人を見上げると、その肩の上にヒキガエル面の魔人がニタニタと笑いを浮かべてこちらを見下ろしているのが見えた。
彼は口元をその長い紫色の舌で拭うと、両手を広げその身に魔力を集約させていく……それは敬虔なる神の信徒が愛する神へと祈りを捧げるようなそんな神々しい仕草にも見える。
巨人がブルブルと痙攣すると、ゆっくりと全身がガタガタと震えるように動き出す……それはまるで作り物のマリオネットが無理やりに動かされているかのような不自然な動きでゆっくりと一歩を踏み出した。
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