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第二三一話 シャルロッタ 一六歳 内戦 〇一
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「クハハハッ! 見よこの軍勢を……!」
両手を広げ城内の広場に集結した凄まじい数の兵士を見つめながら、アンダース・マルムスティーンは狂気を孕んだ笑顔で両手を広げながら高笑いを響かせる。
錚々たる軍勢……イングウェイ王国の主力とも言える第一王子派に所属する貴族連合軍総勢数万の兵士たちが一糸乱れぬ隊列を組み行進している。
冬が明け、王国には少しだけ早い春が訪れており、王都は次第に暖かな陽射しが訪れるようになってくると次第に貴族達の目はそれまで目を背けてきた辺境の地へと向き始めた。
「殿……いや陛下代理、この軍勢さえあればあの小癪な辺境伯家など一撃の元に屠れますな」
「そうですぞ、今こそ正義の鉄槌を!」
「陛下に勝利を!」
「戦争の時は近い!」
「そうだ、クリストフェルと辺境の翡翠姫の生首を城門に晒してやるぞ!」
取り巻きの貴族達はアンダース国王代理に媚を売るような目つきや仕草で勝利の戦を求めるが、少し離れた場所にいる第一王子派の中でも主戦派ではない貴族達はこの先に予想されている激しい内戦による国土荒廃の未来を予想し、表情が曇っている。
確かに第一王子派の戦力は大きく、インテリペリ辺境伯家がいくら精強とはいえ本来は対抗しようもない戦力差となっている。
これは王家と筆頭の高位貴族に与えられた特権のようなものだが、地方での反乱などを防ぐためにある程度軍勢の数が法律によって制限されていることにも起因している。
過去にも数回内戦となった歴史もあるが、ほとんどが辺境もしくは小勢による地域反乱程度の戦さにしかならず、結果的には王国全てに戦禍が波及したことはない。
だが……第二王子にして勇者の器、戦場の英雄であるクリストフェル・マルムスティーンが戦場で見せた英雄的な資質はある意味カリスマのようなものを感じさせており、兵士たちの中にも敵ながら尊敬や畏怖の念が生まれていると囁かれている。
そしてハーティの戦乙女、銀色の稲妻という異名が流れ始めた辺境の翡翠姫ことシャルロッタ・インテリペリ辺境伯令嬢の恐るべき戦闘能力は誇張されながらも数の劣勢を覆すだけの力を秘めているのだと言われている。
さらに……金級冒険者にして戦働きでも名を上げつつある「赤竜の息吹」リーダー、エルネット・ファイアーハウスなど新進気鋭の強者達が辺境伯家へと参陣しつつある。
一部の貴族は楽観的にすぐに戦は終わると思い込んでいるようだが、すでに初戦で二回も第一王子派は敗北を喫しているのだ。
この戦そう簡単に終わらないのではないか? という悲観的な見方も生まれつつあるのが実情だった。
「……代理はそうおっしゃるが、本当にこの内戦国土を荒廃させずに済むのか?」
「第二王子派の貴族達は結集できていない今が好機だとは思うが……それにしても不確定要素が多すぎる」
「聖女様が奇妙な一団を連れてきているらしい、本当にあれは……」
「そういえば代理が連れていた女は見なくなったな……飽きたのだろうか?」
「……いい視点よ、この戦は長引くの……どんどん人が死んで、恨みや苦しみそして怒りが充満して……ああ、もう我慢できなくなっちゃうわ」
こそこそ話しをする貴族達を見つつ、柱の影にひっそりと佇む女の姿がある。
目立たないように深くローブを着込んでフードを下ろしているが、その長く美しい黒髪が垂れ下がり、フードの奥には赤く輝く瞳が油断なく周りを観察している。
美しい造形とも言える白い磁器のような肌は滑らかで、歪んだように微笑む口元には紫色の舌が覗いている。
欲する者と呼ばれる混沌の眷属である彼女は、その存在感をまるで感じさせず近くを歩く兵士からも認識されない状態でそこに佇んでいる。
「筆頭はどう思われます?」
「……魂は我らが魔王様の復活に欠かせないからな、十分に死んでくれなければ困る」
その隣に立つ大柄な男……黒色のローブに身を包みその顔には鳥を模した不気味な仮面をつけ、その奥には鈍く光る赤い瞳が貴族達の様子をじっと見ている。
闇征く者……混沌の訓戒者達を束ねる筆頭たる男は、やはり周りの兵士にはまるで認識されないかのようにそこに立っていた。
彼らの仕込みはすでに終わっており、多忙を極めた仕事もある程度の終わりが見え始めていて、ようやく自由に活動をすることができていた。
「そうですねえ、目の前にいる兵士たちが死んで、死んで……絶望の中に泣き喚くのを見ながら致すのはどれほど美しいでしょうかねえ」
「欲望に忠実なのは良いが、本当にあの男大丈夫なのか?」
興奮によるものか上気した頬を片手でそっと撫でた欲する者は、そのまま手をローブの中にある彼女自身の肉体……神の造形に等しいグラマラスで肉感的な体を弄るように動かしていく。
その美しい唇から快楽を伝える艶かしい吐息が漏れはじめる、その声を聞いた人間はおそらく抵抗すらできずに彼女を求めるようになる強制力を持っている。
だが驚くほどに感情のない声で闇征く者は彼女へと話しかけたために、欲する者は少し不満げな表情を浮かべながら軽くため息をついてから応える。
「……つれない人ですわね……あのお馬鹿さんはすでに改造済み、それなりに戦えると思いますよ」
「肉体か? 精神か?」
「両方です、元々肉体的には頑強でしたし万が一負けそうになった時の対策も仕込んでいます、精神は元々欲望に忠実で、肥大化した自己顕示欲が抑えられない狂王とも言える人間になっているかと」
「なら戦場で死ぬことはないな」
「ま、辺境の翡翠姫が出てくればダメですね、人間では抗えない存在かと」
「だが王族を殺すというのはあの女が行なってしまってはいけないからな」
「そうですね、だからこそあの可愛い金髪の坊やがどこまでできるのか、楽しみです」
欲する者はクリストフェル・マルムスティーンの凛々しい顔を思い浮かべる……アンダースなどよりずっと清廉で、勇気を持ちそして慈愛の心を有した彼は素晴らしい王になるだろう。
だが彼自身が兄を打倒することがなければ、クリストフェルを王として認めないものも出てくるだろう……内戦において彼は自らの手で兄殺しを成さねばならず、それさえ防げれば混乱が長引くだけなのだ。
巨大な王国内における内戦、それは命の大量消費に他ならない……数が大きければ大きいほど、その後の儀式は成功確率を増すだろう。
「楽しみですねえ……本当に戦は楽しみ、使役する者には頑張って欲しいところですね」
「……王都で第一王子派による閲兵式が行われたようです」
エスタデルの中心に位置する城にある会議室、普段は領内における政務などに使われている場所なのだがその場所で今第二王子派の主だった貴族達による会議が行われていた。
ハーティへの二回の攻撃によりハーティ守備隊は全滅、指揮官であるレイジー男爵は戦死……実戦経験豊富な指揮官の戦死はインテリペリ辺境伯軍の戦力を確実に削いでいる。
だが……ここで引き下がるわけにはいかない、というこの辺境の地を治める貴族としての意地、そしてクリストフェルという英雄はイングウェイ王国の未来を担う人材だと信じているからこそ戦い続ける意志を固めていた。
「数万の軍勢とはいえ正面から押し込まれるような展開は難しいだろう」
「……とはいえ戦力差は大きいぞ?」
クレメント・インテリペリ辺境伯は目の前のテーブルにある地図に置かれた駒を眺めながら呟く……自分達を示す青い色のコマは七個。
対して敵を示す赤いコマは三〇個を超えている……これも想定の数でしかなく、斥候による偵察の報告から推測されている戦力だ。
元々辺境伯領軍は精強とはいえ絶対的な数については王国の法に則って構成されており、兵力数は制限されてしまっているのだ。
これまでは魔物との戦いが主で、国境紛争などで実戦経験は豊富とはいえ本来辺境伯領だけで国防を担ってきたわけではない。
議長席に座っているクリストフェルもこの数の差に眉を顰めて議論の行方を見守っているが……これは本当に勝てる戦なのだろうか?
「残念ながらこの場合やれることは限られますな」
「……意見をどうぞ伯爵」
クレメントの右隣に座っていたデイブ・フォン・メガデス伯爵が手を挙げると、クリストフェルが身振りで話すように促す……伯爵は一度頭を下げると地図上にあった第二王子派を示す青い駒を動かし、ひとまとめにしてしまう。
そしてエスタデルを示す城の前へと集めてしまった……それを見た貴族達はあっという声をあげる。
クリストフェルはそれが理解できなくてポカンとした顔をしていたが、それを見たメガデス伯爵はにっこりと笑ってからもう一度頭を下げた。
「……我々の兵力は限られていますので、全戦力を持って全ての戦いに勝利し、敵軍を削っていくしかありますまい」
「バカな! そんなことができるものなどいるまい!」
「メガデス伯爵は一戦にて滅べとでもいうのか!」
「第一全てに勝利するなど、机上の空論である!」
「では分散して各個撃破されろと? 元々兵力差では勝ち目のない戦いです、分散したところで負けるだけかと」
クリストフェルはニコニコと笑うメガデス伯爵の真意について考えた。
つまり……メガデス伯爵が言いたいのは戦略的にはすでに負けている状態でしかなく、それを覆すには戦術的な勝利を積み重ねていってひっくり返すしかないということに他ならない。
先日戦場に出て思った……絵本や物語に描かれるような心踊る戦いなどない、殺すか殺されるかの連続だった……自分が責任のある立場、そして自らが愛する者のために無心で剣を振るわないと生き残れないと思った。
それを何度もくり返す……それがどれだけ恐ろしいことなのか、クリストフェルは背筋が少しだけ寒くなった気がした……彼は取り繕うように一度息を吐くと貴族達に宣言した。
「……結論は明日、僕から伝えるよ……少し寒い、今日は早めに休ませて欲しい……」
両手を広げ城内の広場に集結した凄まじい数の兵士を見つめながら、アンダース・マルムスティーンは狂気を孕んだ笑顔で両手を広げながら高笑いを響かせる。
錚々たる軍勢……イングウェイ王国の主力とも言える第一王子派に所属する貴族連合軍総勢数万の兵士たちが一糸乱れぬ隊列を組み行進している。
冬が明け、王国には少しだけ早い春が訪れており、王都は次第に暖かな陽射しが訪れるようになってくると次第に貴族達の目はそれまで目を背けてきた辺境の地へと向き始めた。
「殿……いや陛下代理、この軍勢さえあればあの小癪な辺境伯家など一撃の元に屠れますな」
「そうですぞ、今こそ正義の鉄槌を!」
「陛下に勝利を!」
「戦争の時は近い!」
「そうだ、クリストフェルと辺境の翡翠姫の生首を城門に晒してやるぞ!」
取り巻きの貴族達はアンダース国王代理に媚を売るような目つきや仕草で勝利の戦を求めるが、少し離れた場所にいる第一王子派の中でも主戦派ではない貴族達はこの先に予想されている激しい内戦による国土荒廃の未来を予想し、表情が曇っている。
確かに第一王子派の戦力は大きく、インテリペリ辺境伯家がいくら精強とはいえ本来は対抗しようもない戦力差となっている。
これは王家と筆頭の高位貴族に与えられた特権のようなものだが、地方での反乱などを防ぐためにある程度軍勢の数が法律によって制限されていることにも起因している。
過去にも数回内戦となった歴史もあるが、ほとんどが辺境もしくは小勢による地域反乱程度の戦さにしかならず、結果的には王国全てに戦禍が波及したことはない。
だが……第二王子にして勇者の器、戦場の英雄であるクリストフェル・マルムスティーンが戦場で見せた英雄的な資質はある意味カリスマのようなものを感じさせており、兵士たちの中にも敵ながら尊敬や畏怖の念が生まれていると囁かれている。
そしてハーティの戦乙女、銀色の稲妻という異名が流れ始めた辺境の翡翠姫ことシャルロッタ・インテリペリ辺境伯令嬢の恐るべき戦闘能力は誇張されながらも数の劣勢を覆すだけの力を秘めているのだと言われている。
さらに……金級冒険者にして戦働きでも名を上げつつある「赤竜の息吹」リーダー、エルネット・ファイアーハウスなど新進気鋭の強者達が辺境伯家へと参陣しつつある。
一部の貴族は楽観的にすぐに戦は終わると思い込んでいるようだが、すでに初戦で二回も第一王子派は敗北を喫しているのだ。
この戦そう簡単に終わらないのではないか? という悲観的な見方も生まれつつあるのが実情だった。
「……代理はそうおっしゃるが、本当にこの内戦国土を荒廃させずに済むのか?」
「第二王子派の貴族達は結集できていない今が好機だとは思うが……それにしても不確定要素が多すぎる」
「聖女様が奇妙な一団を連れてきているらしい、本当にあれは……」
「そういえば代理が連れていた女は見なくなったな……飽きたのだろうか?」
「……いい視点よ、この戦は長引くの……どんどん人が死んで、恨みや苦しみそして怒りが充満して……ああ、もう我慢できなくなっちゃうわ」
こそこそ話しをする貴族達を見つつ、柱の影にひっそりと佇む女の姿がある。
目立たないように深くローブを着込んでフードを下ろしているが、その長く美しい黒髪が垂れ下がり、フードの奥には赤く輝く瞳が油断なく周りを観察している。
美しい造形とも言える白い磁器のような肌は滑らかで、歪んだように微笑む口元には紫色の舌が覗いている。
欲する者と呼ばれる混沌の眷属である彼女は、その存在感をまるで感じさせず近くを歩く兵士からも認識されない状態でそこに佇んでいる。
「筆頭はどう思われます?」
「……魂は我らが魔王様の復活に欠かせないからな、十分に死んでくれなければ困る」
その隣に立つ大柄な男……黒色のローブに身を包みその顔には鳥を模した不気味な仮面をつけ、その奥には鈍く光る赤い瞳が貴族達の様子をじっと見ている。
闇征く者……混沌の訓戒者達を束ねる筆頭たる男は、やはり周りの兵士にはまるで認識されないかのようにそこに立っていた。
彼らの仕込みはすでに終わっており、多忙を極めた仕事もある程度の終わりが見え始めていて、ようやく自由に活動をすることができていた。
「そうですねえ、目の前にいる兵士たちが死んで、死んで……絶望の中に泣き喚くのを見ながら致すのはどれほど美しいでしょうかねえ」
「欲望に忠実なのは良いが、本当にあの男大丈夫なのか?」
興奮によるものか上気した頬を片手でそっと撫でた欲する者は、そのまま手をローブの中にある彼女自身の肉体……神の造形に等しいグラマラスで肉感的な体を弄るように動かしていく。
その美しい唇から快楽を伝える艶かしい吐息が漏れはじめる、その声を聞いた人間はおそらく抵抗すらできずに彼女を求めるようになる強制力を持っている。
だが驚くほどに感情のない声で闇征く者は彼女へと話しかけたために、欲する者は少し不満げな表情を浮かべながら軽くため息をついてから応える。
「……つれない人ですわね……あのお馬鹿さんはすでに改造済み、それなりに戦えると思いますよ」
「肉体か? 精神か?」
「両方です、元々肉体的には頑強でしたし万が一負けそうになった時の対策も仕込んでいます、精神は元々欲望に忠実で、肥大化した自己顕示欲が抑えられない狂王とも言える人間になっているかと」
「なら戦場で死ぬことはないな」
「ま、辺境の翡翠姫が出てくればダメですね、人間では抗えない存在かと」
「だが王族を殺すというのはあの女が行なってしまってはいけないからな」
「そうですね、だからこそあの可愛い金髪の坊やがどこまでできるのか、楽しみです」
欲する者はクリストフェル・マルムスティーンの凛々しい顔を思い浮かべる……アンダースなどよりずっと清廉で、勇気を持ちそして慈愛の心を有した彼は素晴らしい王になるだろう。
だが彼自身が兄を打倒することがなければ、クリストフェルを王として認めないものも出てくるだろう……内戦において彼は自らの手で兄殺しを成さねばならず、それさえ防げれば混乱が長引くだけなのだ。
巨大な王国内における内戦、それは命の大量消費に他ならない……数が大きければ大きいほど、その後の儀式は成功確率を増すだろう。
「楽しみですねえ……本当に戦は楽しみ、使役する者には頑張って欲しいところですね」
「……王都で第一王子派による閲兵式が行われたようです」
エスタデルの中心に位置する城にある会議室、普段は領内における政務などに使われている場所なのだがその場所で今第二王子派の主だった貴族達による会議が行われていた。
ハーティへの二回の攻撃によりハーティ守備隊は全滅、指揮官であるレイジー男爵は戦死……実戦経験豊富な指揮官の戦死はインテリペリ辺境伯軍の戦力を確実に削いでいる。
だが……ここで引き下がるわけにはいかない、というこの辺境の地を治める貴族としての意地、そしてクリストフェルという英雄はイングウェイ王国の未来を担う人材だと信じているからこそ戦い続ける意志を固めていた。
「数万の軍勢とはいえ正面から押し込まれるような展開は難しいだろう」
「……とはいえ戦力差は大きいぞ?」
クレメント・インテリペリ辺境伯は目の前のテーブルにある地図に置かれた駒を眺めながら呟く……自分達を示す青い色のコマは七個。
対して敵を示す赤いコマは三〇個を超えている……これも想定の数でしかなく、斥候による偵察の報告から推測されている戦力だ。
元々辺境伯領軍は精強とはいえ絶対的な数については王国の法に則って構成されており、兵力数は制限されてしまっているのだ。
これまでは魔物との戦いが主で、国境紛争などで実戦経験は豊富とはいえ本来辺境伯領だけで国防を担ってきたわけではない。
議長席に座っているクリストフェルもこの数の差に眉を顰めて議論の行方を見守っているが……これは本当に勝てる戦なのだろうか?
「残念ながらこの場合やれることは限られますな」
「……意見をどうぞ伯爵」
クレメントの右隣に座っていたデイブ・フォン・メガデス伯爵が手を挙げると、クリストフェルが身振りで話すように促す……伯爵は一度頭を下げると地図上にあった第二王子派を示す青い駒を動かし、ひとまとめにしてしまう。
そしてエスタデルを示す城の前へと集めてしまった……それを見た貴族達はあっという声をあげる。
クリストフェルはそれが理解できなくてポカンとした顔をしていたが、それを見たメガデス伯爵はにっこりと笑ってからもう一度頭を下げた。
「……我々の兵力は限られていますので、全戦力を持って全ての戦いに勝利し、敵軍を削っていくしかありますまい」
「バカな! そんなことができるものなどいるまい!」
「メガデス伯爵は一戦にて滅べとでもいうのか!」
「第一全てに勝利するなど、机上の空論である!」
「では分散して各個撃破されろと? 元々兵力差では勝ち目のない戦いです、分散したところで負けるだけかと」
クリストフェルはニコニコと笑うメガデス伯爵の真意について考えた。
つまり……メガデス伯爵が言いたいのは戦略的にはすでに負けている状態でしかなく、それを覆すには戦術的な勝利を積み重ねていってひっくり返すしかないということに他ならない。
先日戦場に出て思った……絵本や物語に描かれるような心踊る戦いなどない、殺すか殺されるかの連続だった……自分が責任のある立場、そして自らが愛する者のために無心で剣を振るわないと生き残れないと思った。
それを何度もくり返す……それがどれだけ恐ろしいことなのか、クリストフェルは背筋が少しだけ寒くなった気がした……彼は取り繕うように一度息を吐くと貴族達に宣言した。
「……結論は明日、僕から伝えるよ……少し寒い、今日は早めに休ませて欲しい……」
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