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(幕間) 少女 〇二
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——その裏路地には一人の女性が事切れて倒れている……そんな状況の中、黒い巨体が音もなくそのそばへと降り立った。
「……ママ!」
ユーリは目の前で血を流して倒れている彼女の母親の姿を見つけて、慌ててユルの背中から飛び降りる……彼女が母親を揺さぶっても起きることはない、すでに命はなく事切れているからだ。
必死に起こそうと声を上げるユーリをよそに、ユルは母親の体に付着した匂いを嗅ぎ取る……致命傷となった腹部の傷はまだかろうじて熱を持っており、殺されたのはほんの少し前であることに気がつく。
そしてあまりいい匂いではないが、汗や何やらが混じった嫌な匂い……薬物まじりだろうか? ひどく不快感を感じさせる悪臭にユルは思わず咳き込む。
この匂いは……混沌の眷属もしくはその信奉者に付着している独特の香料のように思える……まずいな、少女をこのままここに居させるのは危険だ。
「ユーリ……お母さんのことは残念ですが、すぐにここを離れないと……衛兵にお願いしましょう」
「ママあ! ママ起きて……!」
ユーリは冷たくなり始めている母親の体に縋り付いて離れようとしない……ユルはどうするか迷っていたが、ユーリの泣き叫ぶ声に表通りの人間が気がついたのだろう。
ガシャガシャと音を立ててエスタデルの衛兵が路地へと入ってくるのに気がついた……そこに黒い巨体に赤い目をしたユルが少女のそばに立っていることに気がついてギョッとした表情を浮かべる。
だがその首にインテリペリ辺境伯家の紋章が付いていることに気がつくと、少し困惑したような表情を浮かべたのち衛兵の中でも中年に差し掛かった男性がユルへと声をかけてきた。
「……あ、ああ……貴方は辺境伯家の……ええとガルムのユル様ですか」
「はい、我はユル……シャルロッタ様の契約している幻獣です、この少女はユーリです」
「ど、どういう状況ですか? それに死人が出ているようですが……まさか?」
中年の衛兵の視線がユルをじっと突き刺すように見つめる……いやいや、そんな目を向けられてもと思いつつも、この状況は大変まずいことに改めて気がつく。
幻獣ガルムの扱い……この世界において神の使いであると同時にその凶悪な見た目から魔獣との区別がつきにくい存在でもある。
黒い毛皮に深紅の瞳……特にユルは年若いガルムでありながら体が非常に大きく立派であり、そしてその醸し出す雰囲気は強者のそれだ。
「い、いや……我はこのユーリの頼みで……」
「し、しかし……目の前に死体がある以上お話を詳しく聞かなければいけません」
「ママあ!」
衛兵の話はもっともだとユルは思った。
疑わしい状況にいるユルやユーリから話を聞かないことには捜査もできないのだから……目の前にいる衛兵は職務に忠実な行動をとっているに過ぎない。
エスタデルの衛兵は比較的優秀な人物が揃っているため最終的には犯人を捕えることも難しくはないだろう、むしろこのままユーリを引き渡して終わりという幕引きもできるはずだ。
だが……どうにも混沌の使徒がエスタデルに潜伏しているかもしれない、という可能性が心の片隅に残っている……それを探り当てないことには。
ユルは少し考えを巡らせたのち決意をしたのか、ユーリの側へと近寄ると彼女へと優しく語りかけた。
「ユーリ、我はお母さんを傷つけたものを探しにいきます、貴方は衛兵のおじさんと一緒にいてください」
「ユル……どこかいっちゃうの? ママは……」
「ママ殿は女神様の元へと向かわれています、一度女神様の元へ向かった人は帰ってきません」
「そんな……もう会えないの? 私どうしたらいい?」
「我が貴女を保護します、我の主人に頼めば色々と手助けしてくれるはず……」
そうだ、シャルロッタならなんとかしてくれるはずだ……インテリペリ辺境伯家では身寄りのない子供を引き取り、辺境伯家で働かせることもあったと聞いている。
現当主であるクレメント伯も慈愛に満ちた人物であることも知られているし、なんらかの赦しは得られるのではないか? と思うのだ。
ユルはそっとユーリの頭に前足を乗せて優しく撫でると、彼女の頬を軽く舌でペロリと舐めた……以前小さな子供が泣いた時にそうしたら泣き止んでくれたという経験からだった。
その想いが伝わったのか、ユーリはまだしゃくり上げてはいるものの、先ほどまでよりは随分落ち着いてみえる……それをみたユルは衛兵へと向き直って一度頭を下げたのち語りかけた。
「申し訳ないのですがユーリをシャルロッタ様の元へ事情を説明すれば預かってもらえます、それと我より伝言を……『想定外の事態が起きている』と」
「……わかりました、お伝えします」
「我はユーリの母親を殺めた犯人を探します、必ず衛兵隊に引き渡しますので遠吠えが起きたらその場所へと来てください」
ユルの言葉に中年の衛兵は黙って頷く……少なくとも暴れる素振りを見せないユルが本当に目の前の死体に関わっているとは考えにくかったのだろう。
衛兵は年若い部下たちに命令して、ユーリの母親を運ぶように告げるとユーリの側へとしゃがみ込んで何やら話しかけ始める。
それをみていたユルはすぐに地面へと鼻を近づけて匂いを探っていく……混沌の香料、これは人食い花などを乾燥させて作られるものが多いらしいが、その嫌な匂いが消えないうちに追いかけなければいけないからだ。
正直いえば嗅ぎたくない匂い……だが、追いかけるためにはやむをえまいとその方向を定めていく。
母親を襲ったのは人間大の生物……人間かどうかはわからないが、少なくとも複数人がここから立ち去っているのがわかる。
「こちらか……」
地面の匂いを追いかけながらゆっくりと歩き出すが、路地裏から黒い巨大な狼のような彼が出てきたことで、表通りにいた複数の人がギョッとした表情を浮かべる。
やはりユルの首につけられた紋章を見て、納得したかのような表情へと変わるのが少し面白い、と思った。
エスタデルの街は広く衛兵が定期的に巡回しているとはいえ、裏稼業に携わる人間が溜まり場にしている場所なども多い。
多くは取り決めがなされており、大きな犯罪に発展することは珍しい……これはインテリペリ辺境伯家の先祖が街を大きくしていくにあたって、盗賊組合との契約を結んでいるからだ。
それ故に重大な犯罪が起きたとしても衛兵が捕まえるよりも早く盗賊組合所属の盗賊たちが犯人を突き出してくることもあるのだ。
「……だが今回は難しいかもな……」
匂いはやはり混沌の眷属もしくは信徒……明らかに強い薬物の匂いが残っている。
追いかけていくに従って、シャルロッタから教えられていた盗賊組合管轄の地域ではない場所へと向かっているのがわかる。
最近エスタデルの郊外にできた新区画の少し見窄らしいあばら屋が立ち並ぶ地域の入口へと到着する。
この場所はまだ衛兵による立入捜査ができていない地域だ、と前にリヴォルヴァー男爵が話しているのを聞いている……そのうち検査を行い住民を別の地域へと移動させなければいけないという話だったはずだ。
左右を見渡して誰にも見られていないことを確認するとユルはその姿を影の中へと溶け込ませる……影から影へと別の空間を渡って移動していく。
こうやって移動することで、姿を見られずに一定の距離までは移動が可能だ……影移動と呼ばれる魔法の一種を使ってユルは次々と建物の影から影へと移動を繰り返していく。
「……この辺り……見つけた……」
ユルの鼻に先ほどまで追いかけていた強い混沌の薬物が放つツンとした刺激臭が感じられて、思わず咳き込みそうになるが……影の中からそっと顔だけを覗かせて彼の目の前に広がる小さな広場の様子を確認していく。
あばら屋が立ち並ぶ最中不自然なほどにひらけた場所には小さな井戸がポツンと設置されている……ちょうどこの区画の中心地に近い場所のため、おそらく住み着いた住人たちはこの井戸を中心に家を建てていったのだろう。
そして広場を観察している彼の目には強い魔力……井戸の中から異様とも言える雰囲気を持った魔力が立ち上っているのが見えた。
井戸はすでに水を引き上げるための道具が設置されておらず枯れ井戸になっていることがわかる……そして匂いの素は一直線にそこへと向かっているのだ。
「枯れ井戸の中か……」
のそり、と影の中から姿を現したユルは井戸の近くへと近づいていくが、よく見れば地面にははっきりと井戸へと向かう小さな足跡が続いていることに気がつく。
まるで爬虫類のような不気味な足跡……二足歩行、直立をした種族で考えるならリザードマンなどが考えられるが、それにしては尻尾を引きずったような跡がない。
それ以上にリザードマンはむやみやたらに犯罪を犯すような種族ではないはずだ……人間との取り決めによって彼らは定められた法を守る盟約を結んでいる上混沌に与することを恥として認識している。
もう一つ考えられるのは……混沌の眷属、だがそれにしては幾分か小さすぎる気がするが……とユルは悩みながらも井戸の中を覗き込む。
嫌な匂いだ……だがここで引き下がればエスタデルで起きた殺人事件の犠牲者が増えてしまう可能性もある……少し悩んだあと彼はそっと井戸の中へと少し小型化した肉体を滑り込ませるように入っていった。
「……仕方ない、後でお風呂に入ってもらって体を洗おう……この匂いは我慢ならん……」
「……ママ!」
ユーリは目の前で血を流して倒れている彼女の母親の姿を見つけて、慌ててユルの背中から飛び降りる……彼女が母親を揺さぶっても起きることはない、すでに命はなく事切れているからだ。
必死に起こそうと声を上げるユーリをよそに、ユルは母親の体に付着した匂いを嗅ぎ取る……致命傷となった腹部の傷はまだかろうじて熱を持っており、殺されたのはほんの少し前であることに気がつく。
そしてあまりいい匂いではないが、汗や何やらが混じった嫌な匂い……薬物まじりだろうか? ひどく不快感を感じさせる悪臭にユルは思わず咳き込む。
この匂いは……混沌の眷属もしくはその信奉者に付着している独特の香料のように思える……まずいな、少女をこのままここに居させるのは危険だ。
「ユーリ……お母さんのことは残念ですが、すぐにここを離れないと……衛兵にお願いしましょう」
「ママあ! ママ起きて……!」
ユーリは冷たくなり始めている母親の体に縋り付いて離れようとしない……ユルはどうするか迷っていたが、ユーリの泣き叫ぶ声に表通りの人間が気がついたのだろう。
ガシャガシャと音を立ててエスタデルの衛兵が路地へと入ってくるのに気がついた……そこに黒い巨体に赤い目をしたユルが少女のそばに立っていることに気がついてギョッとした表情を浮かべる。
だがその首にインテリペリ辺境伯家の紋章が付いていることに気がつくと、少し困惑したような表情を浮かべたのち衛兵の中でも中年に差し掛かった男性がユルへと声をかけてきた。
「……あ、ああ……貴方は辺境伯家の……ええとガルムのユル様ですか」
「はい、我はユル……シャルロッタ様の契約している幻獣です、この少女はユーリです」
「ど、どういう状況ですか? それに死人が出ているようですが……まさか?」
中年の衛兵の視線がユルをじっと突き刺すように見つめる……いやいや、そんな目を向けられてもと思いつつも、この状況は大変まずいことに改めて気がつく。
幻獣ガルムの扱い……この世界において神の使いであると同時にその凶悪な見た目から魔獣との区別がつきにくい存在でもある。
黒い毛皮に深紅の瞳……特にユルは年若いガルムでありながら体が非常に大きく立派であり、そしてその醸し出す雰囲気は強者のそれだ。
「い、いや……我はこのユーリの頼みで……」
「し、しかし……目の前に死体がある以上お話を詳しく聞かなければいけません」
「ママあ!」
衛兵の話はもっともだとユルは思った。
疑わしい状況にいるユルやユーリから話を聞かないことには捜査もできないのだから……目の前にいる衛兵は職務に忠実な行動をとっているに過ぎない。
エスタデルの衛兵は比較的優秀な人物が揃っているため最終的には犯人を捕えることも難しくはないだろう、むしろこのままユーリを引き渡して終わりという幕引きもできるはずだ。
だが……どうにも混沌の使徒がエスタデルに潜伏しているかもしれない、という可能性が心の片隅に残っている……それを探り当てないことには。
ユルは少し考えを巡らせたのち決意をしたのか、ユーリの側へと近寄ると彼女へと優しく語りかけた。
「ユーリ、我はお母さんを傷つけたものを探しにいきます、貴方は衛兵のおじさんと一緒にいてください」
「ユル……どこかいっちゃうの? ママは……」
「ママ殿は女神様の元へと向かわれています、一度女神様の元へ向かった人は帰ってきません」
「そんな……もう会えないの? 私どうしたらいい?」
「我が貴女を保護します、我の主人に頼めば色々と手助けしてくれるはず……」
そうだ、シャルロッタならなんとかしてくれるはずだ……インテリペリ辺境伯家では身寄りのない子供を引き取り、辺境伯家で働かせることもあったと聞いている。
現当主であるクレメント伯も慈愛に満ちた人物であることも知られているし、なんらかの赦しは得られるのではないか? と思うのだ。
ユルはそっとユーリの頭に前足を乗せて優しく撫でると、彼女の頬を軽く舌でペロリと舐めた……以前小さな子供が泣いた時にそうしたら泣き止んでくれたという経験からだった。
その想いが伝わったのか、ユーリはまだしゃくり上げてはいるものの、先ほどまでよりは随分落ち着いてみえる……それをみたユルは衛兵へと向き直って一度頭を下げたのち語りかけた。
「申し訳ないのですがユーリをシャルロッタ様の元へ事情を説明すれば預かってもらえます、それと我より伝言を……『想定外の事態が起きている』と」
「……わかりました、お伝えします」
「我はユーリの母親を殺めた犯人を探します、必ず衛兵隊に引き渡しますので遠吠えが起きたらその場所へと来てください」
ユルの言葉に中年の衛兵は黙って頷く……少なくとも暴れる素振りを見せないユルが本当に目の前の死体に関わっているとは考えにくかったのだろう。
衛兵は年若い部下たちに命令して、ユーリの母親を運ぶように告げるとユーリの側へとしゃがみ込んで何やら話しかけ始める。
それをみていたユルはすぐに地面へと鼻を近づけて匂いを探っていく……混沌の香料、これは人食い花などを乾燥させて作られるものが多いらしいが、その嫌な匂いが消えないうちに追いかけなければいけないからだ。
正直いえば嗅ぎたくない匂い……だが、追いかけるためにはやむをえまいとその方向を定めていく。
母親を襲ったのは人間大の生物……人間かどうかはわからないが、少なくとも複数人がここから立ち去っているのがわかる。
「こちらか……」
地面の匂いを追いかけながらゆっくりと歩き出すが、路地裏から黒い巨大な狼のような彼が出てきたことで、表通りにいた複数の人がギョッとした表情を浮かべる。
やはりユルの首につけられた紋章を見て、納得したかのような表情へと変わるのが少し面白い、と思った。
エスタデルの街は広く衛兵が定期的に巡回しているとはいえ、裏稼業に携わる人間が溜まり場にしている場所なども多い。
多くは取り決めがなされており、大きな犯罪に発展することは珍しい……これはインテリペリ辺境伯家の先祖が街を大きくしていくにあたって、盗賊組合との契約を結んでいるからだ。
それ故に重大な犯罪が起きたとしても衛兵が捕まえるよりも早く盗賊組合所属の盗賊たちが犯人を突き出してくることもあるのだ。
「……だが今回は難しいかもな……」
匂いはやはり混沌の眷属もしくは信徒……明らかに強い薬物の匂いが残っている。
追いかけていくに従って、シャルロッタから教えられていた盗賊組合管轄の地域ではない場所へと向かっているのがわかる。
最近エスタデルの郊外にできた新区画の少し見窄らしいあばら屋が立ち並ぶ地域の入口へと到着する。
この場所はまだ衛兵による立入捜査ができていない地域だ、と前にリヴォルヴァー男爵が話しているのを聞いている……そのうち検査を行い住民を別の地域へと移動させなければいけないという話だったはずだ。
左右を見渡して誰にも見られていないことを確認するとユルはその姿を影の中へと溶け込ませる……影から影へと別の空間を渡って移動していく。
こうやって移動することで、姿を見られずに一定の距離までは移動が可能だ……影移動と呼ばれる魔法の一種を使ってユルは次々と建物の影から影へと移動を繰り返していく。
「……この辺り……見つけた……」
ユルの鼻に先ほどまで追いかけていた強い混沌の薬物が放つツンとした刺激臭が感じられて、思わず咳き込みそうになるが……影の中からそっと顔だけを覗かせて彼の目の前に広がる小さな広場の様子を確認していく。
あばら屋が立ち並ぶ最中不自然なほどにひらけた場所には小さな井戸がポツンと設置されている……ちょうどこの区画の中心地に近い場所のため、おそらく住み着いた住人たちはこの井戸を中心に家を建てていったのだろう。
そして広場を観察している彼の目には強い魔力……井戸の中から異様とも言える雰囲気を持った魔力が立ち上っているのが見えた。
井戸はすでに水を引き上げるための道具が設置されておらず枯れ井戸になっていることがわかる……そして匂いの素は一直線にそこへと向かっているのだ。
「枯れ井戸の中か……」
のそり、と影の中から姿を現したユルは井戸の近くへと近づいていくが、よく見れば地面にははっきりと井戸へと向かう小さな足跡が続いていることに気がつく。
まるで爬虫類のような不気味な足跡……二足歩行、直立をした種族で考えるならリザードマンなどが考えられるが、それにしては尻尾を引きずったような跡がない。
それ以上にリザードマンはむやみやたらに犯罪を犯すような種族ではないはずだ……人間との取り決めによって彼らは定められた法を守る盟約を結んでいる上混沌に与することを恥として認識している。
もう一つ考えられるのは……混沌の眷属、だがそれにしては幾分か小さすぎる気がするが……とユルは悩みながらも井戸の中を覗き込む。
嫌な匂いだ……だがここで引き下がればエスタデルで起きた殺人事件の犠牲者が増えてしまう可能性もある……少し悩んだあと彼はそっと井戸の中へと少し小型化した肉体を滑り込ませるように入っていった。
「……仕方ない、後でお風呂に入ってもらって体を洗おう……この匂いは我慢ならん……」
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