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第三〇四話 シャルロッタ 一六歳 王都潜入 〇四
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——王都より伸びる地下水道の一つ……巨大な鉄格子の嵌った通路の前に数人の男女が立っていた。
「ここか……確かに奇妙な匂いがしてますわね」
わたくしと「赤竜の息吹」の面々は、王都に伸びる地下水道の出口……巨大な鉄格子にて封鎖されている放射水路の入り口前に立っていた。
イングウェイ王国王都の地下にある巨大な地下水路は放射状に伸びる第一層と、地下深くへと伸びる第二層以降の二つに分類されている。
放射状に伸びる第一層は第二層と連結している部分と、他と繋がらずに王都内から城壁の外へと伸びるものの二つがあり今わたくし達が立っているのは後者に該当している。
排水を主に流す地下水路はそれはもう凄まじい異臭がしているらしく、清掃などで冒険者が依頼を受けるケースがあるらしいが数日は匂いが取れないほど辛くキツい依頼だそうで、受けたがるものはいないのだとか。
魔物も流石にそういう場所は侵入経路には使わないらしく……低級冒険者が食うに困って受けたりする非常に安全な仕事として募集は常にかけられている。
第二層に接続する放射水路の中には魔物の侵入が行われているものもあるそうだが、今回わたくし達が使うのは完全に王都内のみに伸びている場所である。
「魔物の気配はありませんね」
「まあ、このあたりは直前まで警備が巡回してたそうですし……」
「王都の衛兵隊はまだ活動しているってことか、連中が無事だといいんだが」
ユルが軽く地面の匂いを嗅ぎつつ魔物の気配について報告してくるが、エミリオさんやエルネットさんも以前王都で活動しているときに何度か放射水路の魔物討伐をする衛兵隊の手伝いをしたことがあるらしく、その時の話をしている。
で、アイリーン様の書状には放射水路ではなく、第二層に繋がる地下水路で異変が起こっているということなので、放射水路を使って王都内に侵入、一度冒険者組合が指定している酒場を経由して地下水路の彼女達へと接触するという計画だ。
ちなみに以前疫病の悪魔を倒したのは第二層の浅い場所だったが、あそこからさらに奥へと進むとほぼ誰も立ち入らない第三層へと接続するらしい。
「第二層以降に立ち入らなければそこまで危険ではないでしょう」
「そうですね……駆け出しの頃に第二層に入って酷い目に遭うなんて話をよく聞いたけど……第三層か」
「今回はアイリーンさんと冒険者の援護だからそこまで奥には入らないのではないですかな」
「わからないわよ? ギルドマスター気が強いからねえ……」
リリーナさんが苦笑いを浮かべながらエミリオさんの考察に答えるが、アイリーン様はかなり気が強いというのは理解している……男勝りという言葉がしっくりくる女性ではある。
能力的には金級冒険者に匹敵すると言っても良いだろう……決して弱い人物ではなく、一線級で戦えるのは間違いないが、本来の仕事は前線に出張ってくるようなものではないので、負担をなんとか減らさなければいけない。
中の状況がまるでわからないので、そのあたりは実際に中に入ってみて対応するになっちゃう気がするけど。
「とりあえずここから入るのですから、まずは邪魔なものを排除しましょうか」
「しかしこの鉄格子は錆びてはいますが排除にはかなり時間がかかりそうですね……」
「そんなことないです、このように」
わたくしが鉄格子に手をかけてほんの少し力をこめると、まるで飴細工のようにぐにゃりと人が一人通れるくらいのサイズまで隙間が広がる。
その様子を見ていたエミリオさんがあんぐりと口を開けて驚いており、エルネットさんがギョッとした顔をした後少し困ったように首を振る。
何が良くないんだろうとわたくしが首を傾げていると、リリーナさんが再び苦笑しながらわたくしの肩をポンと叩いて他のメンバーに聞かれないような小さな声で囁いた。
「……あれでも連中は男だからさ、女性のシャルロッタ様が普通にそういうことするのに慣れてないのよ」
「そんなものですか?」
「そういうものよ、貴女も殿下の前でしちゃダメよ?」
にししと笑うとリリーナさんは率先して鉄格子にあいた隙間から体を滑り込ませると、放射水路の先をじっと目を細めて見つめる。
放射水路は一直線に伸びているわけではなく、ところどころ曲線を描いて伸びているそうだが今のところわたくし達が見ている先には暗闇と沈黙だけが支配しているように見える。
リリーナさんは地面に耳を当てて音を確認した後、そのままの格好で入ってこいと手を振る……まずはわたくしが隙間から体を滑り込ませて入ると、デヴィットさん、エミリオさん、ユル、そしてエルネットさんが少し鎧の端を引っ掛けながらもなんとか放射水路の中へと全員が入り込んだ。
「うーん……静かすぎるな……」
「小さな小動物の気配はしますが」
「魔力も特に感じないですわよ、おそらくこの放射水路にはほぼ何もいないかと思います」
わたくしがじっと視線を先に向けていくが、魔力で強化した視界には鼠とか虫とかそういう生物以外の気配はあまり感じない。
強いていうなら朽ち果てた何かの骨が転がってるのが気になるけど……どうやってここに入ったんだ? とは思う。
エルネットさんは少し考えると、懐から取り出した小さなシャッター付きのランタンに火をつけて腰へと下げると無言のまま「赤竜の息吹」の面々へと手で合図を出した。
それを見たリリーナさんは少し前のあたりに、続けてエルネットさん、わたくしとユル、デビットさん、エミリオさんという並びでぼんやりとしたランタンの明かりを頼りに放射水路の中を進み始める。
手際がいいな……とエルネットさんを見ていると彼は軽く微笑むと小声で呟いた。
「いつものことですから」
「そうだな、昔遺跡に入った時のことを思い出すね」
「あれは古代墳墓だったか、酷い目にあったよ……」
デヴィットさんがわたくしへと肩をすくめて苦笑しながら軽く説明をしてくれるが、駆け出しの頃にこの四人で古代墳墓へと探検に向かったことがあったそうで、その際慣れていなくて明るい光を放つ魔法を使って明かり取りをしたために魔物が押し寄せたことがあったそうだ。
下手をするとそのまま小規模な大暴走に直結したりする行為なので、先輩冒険者からこっぴどく叱られるケースだったりもするらしいが……それでも生き残っているあたり彼らは運も良いのだろう。
そんな昔話を聞きながら二度三度と通路状になった放射水路を進んでいく先で、急にリリーナさんが軽く口を鳴らしたことで、「赤竜の息吹」のメンバーは警戒態勢をとった。
「……何かいるよ」
「……お……お……」
「なんの声だ?」
「い……のち……ある……ああ……」
ぼんやりと光る淡い何かが通路の先で漂っている……それは人の姿をしているようにも見えるが、肌は皺くちゃで生気が感じられない。
生き物であれば足がついているはずだが、腿から先はぼんやりとして空気に溶け込んでおりそれが普通の生物ではないことが一発でわかる姿だ。
生霊と呼ばれる不死者の一つでわたくしが以前叩きのめした黒書の悪魔カトゥスが使役していた魔物だな。
正直ユルでも倒せるくらいで大した魔物ではないのだけど……と前に出ようとしたわたくしをエルネットさんが止めると、エミリオさんがそれを見て前に出ていく。
「……シャルロッタ様は力をお使いになられませんよう、ここは私が」
「……そうですか……まあお任せしますね」
「……迷える魂よ、其方は何をしている?」
エミリオさんが生霊へと語りかけるが、その声に反応した魔物はゆっくりとこちらを見るとふわりふわりと空中を舞うように移動しながらエミリオさんのそばへとやってきた。
本来生霊は無念や後悔を抱えた遺体から発生する魔物であり、強烈に凶暴な性格はしていない……カトゥスのように死霊術を使う者がいるとその意思に従って生者を襲うようになるが、本質的には攻撃的な対応は取らないとされているらしい。
エミリオさんの問いに生霊は何かを考えるように無言のままその場を漂うと、少しの間をおいて彼へと語りかけた。
「ここを通さない、と言われている……でもほとんど通らない……」
「通さない? 誰がそれを……」
「聖女……! あの娘がここを通してはダメだと……!」
生霊が何かを思い出したかのように叫び出すが、聖女だと……!? その言葉にわたくしの背筋が凍ったような気がした。
聖女ソフィーヤ・ハルフォードはすでに死んでいる……! 目の前でわたくしの目の前で死んだんだぞ? それなのにこの生霊は聖女に命じられたと話している。
その言葉が終わるか終わらないかと同時に生霊はその本性を表したかのように凄まじく凶暴な表情を浮かべて金切り声を上げ始めた。
目を見開くわたくしを見たエルネットさんはすぐに剣を引き抜くと、エミリオさんへと叫んだ。
「エミリオ! ……除霊術だ!」
「女神よ、迷える魂をその身元へッ!」
エミリオさんの言葉と同時に彼が持つ聖教のシンボルが輝き、その光にさらされた生霊は全身から白い煙をあげて苦しむ。
神に仕える神官や司祭が使う除霊術は不死者を浄化する光を放ち、高位術者になると一定範囲の不死者を一瞬にして消し去るという。
だが……生霊はその光に身を焼き焦がされながらも、エミリオさんへと襲い掛かろうと牙を剥き出しに飛びかかる。
「消えろっ!」
「おあああああっ!」
だが一気に飛び出したエルネットさんが振るう剣が生霊の仮初の肉体を切り裂く。
見事な一撃は不死者の肉体を真っ二つに切り裂き、一瞬生霊はビクン、と大きく痙攣した後悲鳴をあげながら次第にその存在を消滅させていく。
血を吹き出すわけでもなく、ただただその切り裂かれた肉体がボロボロと朽ちていくのに苦しみながら、生霊はまるで言葉にならない怨嗟に満ちた言葉を発しながら光を失っていくのが見える。
エルネットさんはふうっ、と軽く息を吐くと剣を鞘に戻しながら朽ち果てていった生霊の残骸へと軽く頭を下げた。
「……恨まないでくれよ、ここを通らないともっと多くの人が死んでしまうからな……」
「ここか……確かに奇妙な匂いがしてますわね」
わたくしと「赤竜の息吹」の面々は、王都に伸びる地下水道の出口……巨大な鉄格子にて封鎖されている放射水路の入り口前に立っていた。
イングウェイ王国王都の地下にある巨大な地下水路は放射状に伸びる第一層と、地下深くへと伸びる第二層以降の二つに分類されている。
放射状に伸びる第一層は第二層と連結している部分と、他と繋がらずに王都内から城壁の外へと伸びるものの二つがあり今わたくし達が立っているのは後者に該当している。
排水を主に流す地下水路はそれはもう凄まじい異臭がしているらしく、清掃などで冒険者が依頼を受けるケースがあるらしいが数日は匂いが取れないほど辛くキツい依頼だそうで、受けたがるものはいないのだとか。
魔物も流石にそういう場所は侵入経路には使わないらしく……低級冒険者が食うに困って受けたりする非常に安全な仕事として募集は常にかけられている。
第二層に接続する放射水路の中には魔物の侵入が行われているものもあるそうだが、今回わたくし達が使うのは完全に王都内のみに伸びている場所である。
「魔物の気配はありませんね」
「まあ、このあたりは直前まで警備が巡回してたそうですし……」
「王都の衛兵隊はまだ活動しているってことか、連中が無事だといいんだが」
ユルが軽く地面の匂いを嗅ぎつつ魔物の気配について報告してくるが、エミリオさんやエルネットさんも以前王都で活動しているときに何度か放射水路の魔物討伐をする衛兵隊の手伝いをしたことがあるらしく、その時の話をしている。
で、アイリーン様の書状には放射水路ではなく、第二層に繋がる地下水路で異変が起こっているということなので、放射水路を使って王都内に侵入、一度冒険者組合が指定している酒場を経由して地下水路の彼女達へと接触するという計画だ。
ちなみに以前疫病の悪魔を倒したのは第二層の浅い場所だったが、あそこからさらに奥へと進むとほぼ誰も立ち入らない第三層へと接続するらしい。
「第二層以降に立ち入らなければそこまで危険ではないでしょう」
「そうですね……駆け出しの頃に第二層に入って酷い目に遭うなんて話をよく聞いたけど……第三層か」
「今回はアイリーンさんと冒険者の援護だからそこまで奥には入らないのではないですかな」
「わからないわよ? ギルドマスター気が強いからねえ……」
リリーナさんが苦笑いを浮かべながらエミリオさんの考察に答えるが、アイリーン様はかなり気が強いというのは理解している……男勝りという言葉がしっくりくる女性ではある。
能力的には金級冒険者に匹敵すると言っても良いだろう……決して弱い人物ではなく、一線級で戦えるのは間違いないが、本来の仕事は前線に出張ってくるようなものではないので、負担をなんとか減らさなければいけない。
中の状況がまるでわからないので、そのあたりは実際に中に入ってみて対応するになっちゃう気がするけど。
「とりあえずここから入るのですから、まずは邪魔なものを排除しましょうか」
「しかしこの鉄格子は錆びてはいますが排除にはかなり時間がかかりそうですね……」
「そんなことないです、このように」
わたくしが鉄格子に手をかけてほんの少し力をこめると、まるで飴細工のようにぐにゃりと人が一人通れるくらいのサイズまで隙間が広がる。
その様子を見ていたエミリオさんがあんぐりと口を開けて驚いており、エルネットさんがギョッとした顔をした後少し困ったように首を振る。
何が良くないんだろうとわたくしが首を傾げていると、リリーナさんが再び苦笑しながらわたくしの肩をポンと叩いて他のメンバーに聞かれないような小さな声で囁いた。
「……あれでも連中は男だからさ、女性のシャルロッタ様が普通にそういうことするのに慣れてないのよ」
「そんなものですか?」
「そういうものよ、貴女も殿下の前でしちゃダメよ?」
にししと笑うとリリーナさんは率先して鉄格子にあいた隙間から体を滑り込ませると、放射水路の先をじっと目を細めて見つめる。
放射水路は一直線に伸びているわけではなく、ところどころ曲線を描いて伸びているそうだが今のところわたくし達が見ている先には暗闇と沈黙だけが支配しているように見える。
リリーナさんは地面に耳を当てて音を確認した後、そのままの格好で入ってこいと手を振る……まずはわたくしが隙間から体を滑り込ませて入ると、デヴィットさん、エミリオさん、ユル、そしてエルネットさんが少し鎧の端を引っ掛けながらもなんとか放射水路の中へと全員が入り込んだ。
「うーん……静かすぎるな……」
「小さな小動物の気配はしますが」
「魔力も特に感じないですわよ、おそらくこの放射水路にはほぼ何もいないかと思います」
わたくしがじっと視線を先に向けていくが、魔力で強化した視界には鼠とか虫とかそういう生物以外の気配はあまり感じない。
強いていうなら朽ち果てた何かの骨が転がってるのが気になるけど……どうやってここに入ったんだ? とは思う。
エルネットさんは少し考えると、懐から取り出した小さなシャッター付きのランタンに火をつけて腰へと下げると無言のまま「赤竜の息吹」の面々へと手で合図を出した。
それを見たリリーナさんは少し前のあたりに、続けてエルネットさん、わたくしとユル、デビットさん、エミリオさんという並びでぼんやりとしたランタンの明かりを頼りに放射水路の中を進み始める。
手際がいいな……とエルネットさんを見ていると彼は軽く微笑むと小声で呟いた。
「いつものことですから」
「そうだな、昔遺跡に入った時のことを思い出すね」
「あれは古代墳墓だったか、酷い目にあったよ……」
デヴィットさんがわたくしへと肩をすくめて苦笑しながら軽く説明をしてくれるが、駆け出しの頃にこの四人で古代墳墓へと探検に向かったことがあったそうで、その際慣れていなくて明るい光を放つ魔法を使って明かり取りをしたために魔物が押し寄せたことがあったそうだ。
下手をするとそのまま小規模な大暴走に直結したりする行為なので、先輩冒険者からこっぴどく叱られるケースだったりもするらしいが……それでも生き残っているあたり彼らは運も良いのだろう。
そんな昔話を聞きながら二度三度と通路状になった放射水路を進んでいく先で、急にリリーナさんが軽く口を鳴らしたことで、「赤竜の息吹」のメンバーは警戒態勢をとった。
「……何かいるよ」
「……お……お……」
「なんの声だ?」
「い……のち……ある……ああ……」
ぼんやりと光る淡い何かが通路の先で漂っている……それは人の姿をしているようにも見えるが、肌は皺くちゃで生気が感じられない。
生き物であれば足がついているはずだが、腿から先はぼんやりとして空気に溶け込んでおりそれが普通の生物ではないことが一発でわかる姿だ。
生霊と呼ばれる不死者の一つでわたくしが以前叩きのめした黒書の悪魔カトゥスが使役していた魔物だな。
正直ユルでも倒せるくらいで大した魔物ではないのだけど……と前に出ようとしたわたくしをエルネットさんが止めると、エミリオさんがそれを見て前に出ていく。
「……シャルロッタ様は力をお使いになられませんよう、ここは私が」
「……そうですか……まあお任せしますね」
「……迷える魂よ、其方は何をしている?」
エミリオさんが生霊へと語りかけるが、その声に反応した魔物はゆっくりとこちらを見るとふわりふわりと空中を舞うように移動しながらエミリオさんのそばへとやってきた。
本来生霊は無念や後悔を抱えた遺体から発生する魔物であり、強烈に凶暴な性格はしていない……カトゥスのように死霊術を使う者がいるとその意思に従って生者を襲うようになるが、本質的には攻撃的な対応は取らないとされているらしい。
エミリオさんの問いに生霊は何かを考えるように無言のままその場を漂うと、少しの間をおいて彼へと語りかけた。
「ここを通さない、と言われている……でもほとんど通らない……」
「通さない? 誰がそれを……」
「聖女……! あの娘がここを通してはダメだと……!」
生霊が何かを思い出したかのように叫び出すが、聖女だと……!? その言葉にわたくしの背筋が凍ったような気がした。
聖女ソフィーヤ・ハルフォードはすでに死んでいる……! 目の前でわたくしの目の前で死んだんだぞ? それなのにこの生霊は聖女に命じられたと話している。
その言葉が終わるか終わらないかと同時に生霊はその本性を表したかのように凄まじく凶暴な表情を浮かべて金切り声を上げ始めた。
目を見開くわたくしを見たエルネットさんはすぐに剣を引き抜くと、エミリオさんへと叫んだ。
「エミリオ! ……除霊術だ!」
「女神よ、迷える魂をその身元へッ!」
エミリオさんの言葉と同時に彼が持つ聖教のシンボルが輝き、その光にさらされた生霊は全身から白い煙をあげて苦しむ。
神に仕える神官や司祭が使う除霊術は不死者を浄化する光を放ち、高位術者になると一定範囲の不死者を一瞬にして消し去るという。
だが……生霊はその光に身を焼き焦がされながらも、エミリオさんへと襲い掛かろうと牙を剥き出しに飛びかかる。
「消えろっ!」
「おあああああっ!」
だが一気に飛び出したエルネットさんが振るう剣が生霊の仮初の肉体を切り裂く。
見事な一撃は不死者の肉体を真っ二つに切り裂き、一瞬生霊はビクン、と大きく痙攣した後悲鳴をあげながら次第にその存在を消滅させていく。
血を吹き出すわけでもなく、ただただその切り裂かれた肉体がボロボロと朽ちていくのに苦しみながら、生霊はまるで言葉にならない怨嗟に満ちた言葉を発しながら光を失っていくのが見える。
エルネットさんはふうっ、と軽く息を吐くと剣を鞘に戻しながら朽ち果てていった生霊の残骸へと軽く頭を下げた。
「……恨まないでくれよ、ここを通らないともっと多くの人が死んでしまうからな……」
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