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第三四九話 シャルロッタ 一六歳 闇征く者 〇九
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「おおおっ!」
「クハハッ!」
わたくしが放った蹴りを闇征く者は腕を使って受け止めると、一気に前へと距離を詰め、顔面に向かって拳を叩きつける。
ドゴッ! という鈍い音を立てたその一撃は、肉体へと触れることはなく展開されている魔力による防御結界へと衝突してあと数ミリのところで静止するが、その衝撃で結界が揺らいだような気がした。
そりゃそうだ、欲する者との戦いから王城潜入、そして闇征く者までわたくしはほぼ休息なしで来てしまっている。
ぶっちゃけて言えば「疲れた」のが正直なところ……少しだけ休みたいとは思うが、余裕が全然ない状態であることは理解しているのでそう泣き言など言ってられないのだ。
「……クハハッ! 結界が揺らいでいるぞ!」
「目が悪いわね?! 全然防げてんのよ」
そして煽るような口調の闇征く者ですら今の一撃は最初の頃の迫力がすでにない……先ほど防御結界を使わずに腕で防御した、というのは少しでも攻撃に魔力を回そうという意識の表れだ。
同様の行動をわたくしも取りたいのだけど、残念ながら体格差がかなりあって拳を腕で受け止めようとすると、そのまま粉砕されちゃいそうなんだよね。
なのでこちらとしては防御結界を展開したままなんとか防いでいるという状況……これは正直めちゃくちゃ辛い。
わたくしの戦い方は圧倒的な魔力によって押し切るという脳筋戦法であり、これは自分がそれだけの余裕があると認識していたからできる戦い方なのだけど……疲労と連戦で今の魔力はかなり削られてきてしまっている。
ギアをあげて一気に勝負を決めようとしたのも今から考えたら悪手だったかもしれない……いやあの時はそれが正解だと思ったんだけどな。
「——我が拳にブチ抜けぬもの無し……ッ!」
「クハハッ! それではこちらも……カハッ!」
わたくしが拳に魔力を込めるのを見て、闇征く者は仮面についた嘴を留める金具を外すと大きく開いた。
その口内は漆黒の闇に覆われよく視認することができないが、その虚空の中に強大な混沌の魔力が渦を巻いて集約していくのが見える。
仮面の下の素顔がどんなものなのかまるで想像はつかないが、人間の形状を装っているだけで本質的にはもっと得体の知れない生物なのかも知れない。
十分に魔力を練り上げたわたくしと闇征く者は、ほぼ同時にその攻撃を撃ち放った。
「拳戦闘術……大砲拳撃ッ!」
「これぞ我が魔力……ッ! 根源たる咆哮ッ!」
ドゴオオオオッ! という爆音をあげてわたくしの放った拳による衝撃波と、彼の口内より放たれた漆黒の咆哮が空中で激突する。
お互いの魔力勝負……だが双方消耗し切っていることもあって、本来の威力には程遠い威力しか出力できていない気がする。
お互い一歩も引かない凄まじい破壊の術はほんの少しの間せめぎ合うが、行き場を失った魔力がまるで天空へと打ち上がるように上へと打ち上げられ、かろうじて崩れていなかった城の屋根をそのまま吹き飛ばしていった。
あーあ、オーヴァチュア城の再建費用が凄まじいことになりそうだな……と苦虫を噛み潰したような表情を見せたわたくしを見て、闇征く者の仮面の奥に光る瞳が咲う。
「クフフッ! ずいぶんと良い見晴らしになったものだ……!」
「青空見ながら政務も十分楽しいでしょうよ!」
そのままわたくしは前に出る……だめだ、ここで引き下がったら今までこいつらに殺された人たちがなんのために死んでしまったのかわからない。
この場で魔王と闇征く者は両方滅ぼさなければ……チラリと横目で魔王の方へと視線を送ると、そこにはクリスとユルが共同で触手を何本も生やした腫瘍にしか見えない塊と戦っている。
あれがこの世界の魔王……一般的に魔王というと人間と同じ形状を持つ魔族や、神族に近い姿をしているケースが多い。
レーヴェンティオラでわたくしが戦った魔王は、本当に巨大な翼や捩れた角などの異形を除けば人間と対して区別のつかない姿をしていた。
だがしかし……腫瘍の中にある黄金の瞳やいやらしく歪んだ口、そして莫大な魔力そのものがその物体を魔王として認めざるを得ない恐るべき存在感を醸し出している。
「……アンタをさっさと倒してクリスを助ける……ッ!」
「やってみせよッ!」
虚空より魔剣不滅を引き抜いたわたくしの斬撃を、同じようにどこからともなく漆黒の刀身を持つ死神の舞踏を抜き放った闇征く者は最も簡単に受け止める。
ギャイイイン! という甲高い音と共に刀身が擦れて火花を散らしていく……だがその膠着を破るかのように、彼の腹部からもう一本の腕が飛び出しわたくしへと迫った。
だがすでに一度この腕の存在は見ていて何度か攻撃を喰らっているわたくしは紙一重でその重い拳を首を逸らして回避するとそのまま鍔迫り合いとなっていた剣を滑らせるように流すと、反撃の一撃を相手へと叩き込む。
「はああッ!」
「……ぐ、お……! ぐああああっ!」
体格差が大きい相手であるからこそだが、うまく力を逃すことによって相手の体勢を大きく崩す……いわゆる柔道などで言われている「柔よく剛を制す」に近い技だ。
特に根本的な体格に落とすわたくしを力で持って押し切れると思っていただろう闇征く者はかなり押し込むように力を込めていたため、この動きに対応しきれなかった。
身を翻すような動きと共に、相手の顔面へとわたくしの一撃が食い込み、その鳥を模した仮面を切り裂き、破片とドス黒い血液が宙に舞う。
予想外の一撃だったのか闇征く者は悲鳴をあげて顔を抑えたまま何歩か後ずさると、顔を抑えたまま憎しみに満ちた赤い瞳をギラつかせて睨みつけてきた。
「仮面で隠してるってことは相当見られたなくない顔なんでしょ……」
「ぐ……ハハハッ! 予想外……いや俺の慢心だな……」
顔を抑える指の隙間からうねうねと動く漆黒の触手のようなものが伸びる……触手?! 顔に触手があるのか? とわたくしが怪訝な表情を浮かべると彼は残った仮面を片手で引き剥がして地面へと投げ捨てる。
そこに現れた顔は……もはやわたくし達が想像するような人間の姿とは程遠い、冒涜的な生物の顔だった……肌は漆黒に彩られ、まるで渦を巻くようにその色が蠢いている。
真紅の瞳はかろうじて人間に近いものだろうか? だがその瞳は爛々と輝く憎悪の色が浮かんでいる……それまで口だと思っていた部分にはいくつもの触手がうねうねと蠢いており、口らしきものは見当たらない。
頭の形状は人間に近いが、鼻に当たる部分は存在せず人間を模しただけの悪質な劇画のようにすら思える。
「……ひどい顔ね? 物も食べられないんじゃない?」
「そうでもない、食い物を食べる時はこうすれば良い」
そう答えた闇征く者の顔が縦に一本線が入ったかと思うと同時に、パックリと左右に割れ獰猛な牙だらけの口が姿を見せる……その口はまるで首や胸のあたりまで伸びているかのように、大きく開くと中から真紅の舌が何本も姿を見せて生贄を求めるかのようにベロリと己が肉体を舐め回す。
やはり人間を装っているだけで本質的にはまるで違う生物だな……生理的嫌悪感を感じて眉を顰めたわたくしを見て、闇征く者の瞳が笑うように歪む。
人間じゃない魔物とは何度も戦っているが、本当に混沌の眷属は生理的嫌悪感を誘発させるな……わたくしは黙って剣を構え直すと、地面を蹴って前へと飛び出す。
「切り捨てれば混沌だろうが、人間だろうが同じことッ!」
「……クハハッ! それは真理だなッ!」
大きく口を開いたままの闇征く者は剣を上段に構えると一気に振り下ろす……漆黒の刀身が迫る中、わたくしは再び地面を蹴るとほぼ直角に高速移動しそのまま空中へと飛び上がった。
空中で姿勢を制御しつつ剣を構え直す……こいつを切り捨てるならば、剣戦闘術で押し切るしかない。
剣に魔力を込めるとわたくしは再び空中を蹴り飛ばして一気に加速する……前世でこの技を使おうとした時はどんな名剣であっても、あまりの負荷に耐えきれず技を放った瞬間に砕け散っていた。
だが……魔剣不滅はその名の通り不滅の剣であり、決して折れず砕けず……その存在をこの世界に残し続けるという特殊な能力を有している。
おそらくわたくしが人間としての生を終え、神格を得て別の世界へと旅立った後も主人を変えこの美しい剣はこの世界を守るために残り続けるのだろう。
だからこそ……前世では決して使えなかったこの技を遠慮なく放つことができるに違いない。
「——我が白刃、切り裂けぬものなし」
「クハハッ! 剣戦闘術とやらか……! かかってこいっ!」
闇征く者はその手に握る漆黒の魔剣死神の舞踏を振りかざすと同じように前に出る。
魔法使いと剣士が正面からぶつかった際、魔法使いはその圧倒的な破壊力と範囲攻撃能力において剣士を上回るとされている。
当たり前だが剣士は手に持つ武器のみでしか相手を切り裂けない……それ故に速度と斬撃の強さをどれだけ磨くかが剣士の技量になっていた。
だが……剣士が圧倒的な破壊能力を有したらどうなるか? 魔法使いが放つ魔法の破壊力を凌駕し圧倒的な力で蹂躙する……浪漫と言われればそれまでの妄想。
しかし剣戦闘術はそれを可能にした……圧倒的な破壊力を生み出すためには、全力の一撃をどうやっても防げなければ良いのだ。
つまり……単純だが、全ての攻撃を全力で尚且つ超高速で振り抜き続けば相手の防御を粉砕し確実に死をもたらす絶望の斬撃を放つことができる。
それを可能にするには攻撃そのものを増加させてしまえば良い……わたくしの持つ剣がゆらりと揺れると、その斬撃が凄まじい数へと分裂し流星のように尾を引いて軌跡を作る。
魔力により次元を超えた多重分身攻撃……以前戦った猟犬と同じ同時着弾の斬撃が闇征く者へと迫った。
「剣戦闘術第六の秘剣……絶死乃太刀ッ!」
「クハハッ!」
わたくしが放った蹴りを闇征く者は腕を使って受け止めると、一気に前へと距離を詰め、顔面に向かって拳を叩きつける。
ドゴッ! という鈍い音を立てたその一撃は、肉体へと触れることはなく展開されている魔力による防御結界へと衝突してあと数ミリのところで静止するが、その衝撃で結界が揺らいだような気がした。
そりゃそうだ、欲する者との戦いから王城潜入、そして闇征く者までわたくしはほぼ休息なしで来てしまっている。
ぶっちゃけて言えば「疲れた」のが正直なところ……少しだけ休みたいとは思うが、余裕が全然ない状態であることは理解しているのでそう泣き言など言ってられないのだ。
「……クハハッ! 結界が揺らいでいるぞ!」
「目が悪いわね?! 全然防げてんのよ」
そして煽るような口調の闇征く者ですら今の一撃は最初の頃の迫力がすでにない……先ほど防御結界を使わずに腕で防御した、というのは少しでも攻撃に魔力を回そうという意識の表れだ。
同様の行動をわたくしも取りたいのだけど、残念ながら体格差がかなりあって拳を腕で受け止めようとすると、そのまま粉砕されちゃいそうなんだよね。
なのでこちらとしては防御結界を展開したままなんとか防いでいるという状況……これは正直めちゃくちゃ辛い。
わたくしの戦い方は圧倒的な魔力によって押し切るという脳筋戦法であり、これは自分がそれだけの余裕があると認識していたからできる戦い方なのだけど……疲労と連戦で今の魔力はかなり削られてきてしまっている。
ギアをあげて一気に勝負を決めようとしたのも今から考えたら悪手だったかもしれない……いやあの時はそれが正解だと思ったんだけどな。
「——我が拳にブチ抜けぬもの無し……ッ!」
「クハハッ! それではこちらも……カハッ!」
わたくしが拳に魔力を込めるのを見て、闇征く者は仮面についた嘴を留める金具を外すと大きく開いた。
その口内は漆黒の闇に覆われよく視認することができないが、その虚空の中に強大な混沌の魔力が渦を巻いて集約していくのが見える。
仮面の下の素顔がどんなものなのかまるで想像はつかないが、人間の形状を装っているだけで本質的にはもっと得体の知れない生物なのかも知れない。
十分に魔力を練り上げたわたくしと闇征く者は、ほぼ同時にその攻撃を撃ち放った。
「拳戦闘術……大砲拳撃ッ!」
「これぞ我が魔力……ッ! 根源たる咆哮ッ!」
ドゴオオオオッ! という爆音をあげてわたくしの放った拳による衝撃波と、彼の口内より放たれた漆黒の咆哮が空中で激突する。
お互いの魔力勝負……だが双方消耗し切っていることもあって、本来の威力には程遠い威力しか出力できていない気がする。
お互い一歩も引かない凄まじい破壊の術はほんの少しの間せめぎ合うが、行き場を失った魔力がまるで天空へと打ち上がるように上へと打ち上げられ、かろうじて崩れていなかった城の屋根をそのまま吹き飛ばしていった。
あーあ、オーヴァチュア城の再建費用が凄まじいことになりそうだな……と苦虫を噛み潰したような表情を見せたわたくしを見て、闇征く者の仮面の奥に光る瞳が咲う。
「クフフッ! ずいぶんと良い見晴らしになったものだ……!」
「青空見ながら政務も十分楽しいでしょうよ!」
そのままわたくしは前に出る……だめだ、ここで引き下がったら今までこいつらに殺された人たちがなんのために死んでしまったのかわからない。
この場で魔王と闇征く者は両方滅ぼさなければ……チラリと横目で魔王の方へと視線を送ると、そこにはクリスとユルが共同で触手を何本も生やした腫瘍にしか見えない塊と戦っている。
あれがこの世界の魔王……一般的に魔王というと人間と同じ形状を持つ魔族や、神族に近い姿をしているケースが多い。
レーヴェンティオラでわたくしが戦った魔王は、本当に巨大な翼や捩れた角などの異形を除けば人間と対して区別のつかない姿をしていた。
だがしかし……腫瘍の中にある黄金の瞳やいやらしく歪んだ口、そして莫大な魔力そのものがその物体を魔王として認めざるを得ない恐るべき存在感を醸し出している。
「……アンタをさっさと倒してクリスを助ける……ッ!」
「やってみせよッ!」
虚空より魔剣不滅を引き抜いたわたくしの斬撃を、同じようにどこからともなく漆黒の刀身を持つ死神の舞踏を抜き放った闇征く者は最も簡単に受け止める。
ギャイイイン! という甲高い音と共に刀身が擦れて火花を散らしていく……だがその膠着を破るかのように、彼の腹部からもう一本の腕が飛び出しわたくしへと迫った。
だがすでに一度この腕の存在は見ていて何度か攻撃を喰らっているわたくしは紙一重でその重い拳を首を逸らして回避するとそのまま鍔迫り合いとなっていた剣を滑らせるように流すと、反撃の一撃を相手へと叩き込む。
「はああッ!」
「……ぐ、お……! ぐああああっ!」
体格差が大きい相手であるからこそだが、うまく力を逃すことによって相手の体勢を大きく崩す……いわゆる柔道などで言われている「柔よく剛を制す」に近い技だ。
特に根本的な体格に落とすわたくしを力で持って押し切れると思っていただろう闇征く者はかなり押し込むように力を込めていたため、この動きに対応しきれなかった。
身を翻すような動きと共に、相手の顔面へとわたくしの一撃が食い込み、その鳥を模した仮面を切り裂き、破片とドス黒い血液が宙に舞う。
予想外の一撃だったのか闇征く者は悲鳴をあげて顔を抑えたまま何歩か後ずさると、顔を抑えたまま憎しみに満ちた赤い瞳をギラつかせて睨みつけてきた。
「仮面で隠してるってことは相当見られたなくない顔なんでしょ……」
「ぐ……ハハハッ! 予想外……いや俺の慢心だな……」
顔を抑える指の隙間からうねうねと動く漆黒の触手のようなものが伸びる……触手?! 顔に触手があるのか? とわたくしが怪訝な表情を浮かべると彼は残った仮面を片手で引き剥がして地面へと投げ捨てる。
そこに現れた顔は……もはやわたくし達が想像するような人間の姿とは程遠い、冒涜的な生物の顔だった……肌は漆黒に彩られ、まるで渦を巻くようにその色が蠢いている。
真紅の瞳はかろうじて人間に近いものだろうか? だがその瞳は爛々と輝く憎悪の色が浮かんでいる……それまで口だと思っていた部分にはいくつもの触手がうねうねと蠢いており、口らしきものは見当たらない。
頭の形状は人間に近いが、鼻に当たる部分は存在せず人間を模しただけの悪質な劇画のようにすら思える。
「……ひどい顔ね? 物も食べられないんじゃない?」
「そうでもない、食い物を食べる時はこうすれば良い」
そう答えた闇征く者の顔が縦に一本線が入ったかと思うと同時に、パックリと左右に割れ獰猛な牙だらけの口が姿を見せる……その口はまるで首や胸のあたりまで伸びているかのように、大きく開くと中から真紅の舌が何本も姿を見せて生贄を求めるかのようにベロリと己が肉体を舐め回す。
やはり人間を装っているだけで本質的にはまるで違う生物だな……生理的嫌悪感を感じて眉を顰めたわたくしを見て、闇征く者の瞳が笑うように歪む。
人間じゃない魔物とは何度も戦っているが、本当に混沌の眷属は生理的嫌悪感を誘発させるな……わたくしは黙って剣を構え直すと、地面を蹴って前へと飛び出す。
「切り捨てれば混沌だろうが、人間だろうが同じことッ!」
「……クハハッ! それは真理だなッ!」
大きく口を開いたままの闇征く者は剣を上段に構えると一気に振り下ろす……漆黒の刀身が迫る中、わたくしは再び地面を蹴るとほぼ直角に高速移動しそのまま空中へと飛び上がった。
空中で姿勢を制御しつつ剣を構え直す……こいつを切り捨てるならば、剣戦闘術で押し切るしかない。
剣に魔力を込めるとわたくしは再び空中を蹴り飛ばして一気に加速する……前世でこの技を使おうとした時はどんな名剣であっても、あまりの負荷に耐えきれず技を放った瞬間に砕け散っていた。
だが……魔剣不滅はその名の通り不滅の剣であり、決して折れず砕けず……その存在をこの世界に残し続けるという特殊な能力を有している。
おそらくわたくしが人間としての生を終え、神格を得て別の世界へと旅立った後も主人を変えこの美しい剣はこの世界を守るために残り続けるのだろう。
だからこそ……前世では決して使えなかったこの技を遠慮なく放つことができるに違いない。
「——我が白刃、切り裂けぬものなし」
「クハハッ! 剣戦闘術とやらか……! かかってこいっ!」
闇征く者はその手に握る漆黒の魔剣死神の舞踏を振りかざすと同じように前に出る。
魔法使いと剣士が正面からぶつかった際、魔法使いはその圧倒的な破壊力と範囲攻撃能力において剣士を上回るとされている。
当たり前だが剣士は手に持つ武器のみでしか相手を切り裂けない……それ故に速度と斬撃の強さをどれだけ磨くかが剣士の技量になっていた。
だが……剣士が圧倒的な破壊能力を有したらどうなるか? 魔法使いが放つ魔法の破壊力を凌駕し圧倒的な力で蹂躙する……浪漫と言われればそれまでの妄想。
しかし剣戦闘術はそれを可能にした……圧倒的な破壊力を生み出すためには、全力の一撃をどうやっても防げなければ良いのだ。
つまり……単純だが、全ての攻撃を全力で尚且つ超高速で振り抜き続けば相手の防御を粉砕し確実に死をもたらす絶望の斬撃を放つことができる。
それを可能にするには攻撃そのものを増加させてしまえば良い……わたくしの持つ剣がゆらりと揺れると、その斬撃が凄まじい数へと分裂し流星のように尾を引いて軌跡を作る。
魔力により次元を超えた多重分身攻撃……以前戦った猟犬と同じ同時着弾の斬撃が闇征く者へと迫った。
「剣戦闘術第六の秘剣……絶死乃太刀ッ!」
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