黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん

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27.訓練

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 あまりにも、色々なことがあった一日だった。
 アンジェリアはまだ気持ちの整理がうまくできず、ぼんやりとした夢の中にいるようだった。
 まさか自分に法力があるなど、予想だにしなかった。それも、訓練さえすれば、一人でこの地の結界を構築できるほどだというのだ。
 これでベルナルドの助けになれるのだと思うと、アンジェリアの心は晴れやかになっていく。
 早速、法力を扱う訓練も始めた。今日はめまぐるしい出来事の連続で、疲労感はあったのだが、少しでも早く、役に立てるようになりたかったのだ。

「アンジェリア、今日は疲れただろう」

 夜になり、やっとベルナルドとの時間を持つことができた。
 神殿に戻ってきたときは一緒だったが、その後は別々に行動していたため、数時間ぶりに会うこととなる。
 だが、ほんの数時間なのに、アンジェリアにとってはもう何日も過ぎているかのようだった。

「はい……でも、何だかまだ夢の中にいるようです。私に法力があったなんて……なかなか信じられなくて……」

 アンジェリアは疲れているものの、気が立っているのか、眠気はなかった。
 自分の手を眺めながら、しみじみと呟く。

「法力を扱う訓練を始めたそうだな。調子はどうだ?」
「はい、まずは法力を感じ取ることからだと、自分の法力の流れを探すというものをしました」
「そうか。流れは感じ取れたか?」
「なんとなく、そうなのかなっていう程度で……」

 アンジェリアは、答える声が小さくなっていく。
 昼間のような、大規模な法力の行使はそう簡単ではないとわかっていたが、それにしても遠すぎる道だと実感したのだ。
 やはり本当はろくな素質がないのだろうかという思いすら、ふつふつとわきあがってくる。
 だが、ベルナルドはアンジェリアを安心させるように、笑いかける。

「最初はそんなものだ。……そうだな、少し目を閉じてみろ」

 ベルナルドに言われたとおり、アンジェリアは素直に目を閉じる。
 すると、ややあって首筋を這っていく熱のようなものを感じた。くすぐったいような、むずがゆいような感触で、アンジェリアは思わず首を軽く振る。

「わかったようだな。法力を少し流した。慣れてくると、法力の質というか、色のようなものも感じ取れるようになってくるぞ」
「色……? 法力にも色があるのですか?」
「見えるというより、感じるものだがな。……よし、俺が法力を流すから、色を探ってみろ。目は閉じたままのほうが、わかりやすいぞ」
「は……はい……」

 アンジェリアは目を閉じたまま、法力を感じ取ろうと集中する。
 まず、頬にぼんやりとした熱を感じた。だが、温かいという感触くらいで、ベルナルドのいうような色まではわからない。
 頬に意識を集中させて色を探ろうとするが、今度は熱が首へと下がっていった。くすぐったさに、アンジェリアは身をすくめる。

「んっ……」
「ちなみに、コントロールが完全にできるようになると、こんなこともできるぞ。……手を使ったほうが楽だし早いから、実際にはろくに使うことなんてないんだが」

 ベルナルドの言葉と共に、首に留まっていた熱が、両肩へと分かれて降りていった。そこでぼんやりとした熱だったものが、はっきりとした形になる。
 はらり、とアンジェリアの服がはだけた。

「きゃっ……」
「今のは、法力を具現化させたわけだが、違いがわかったか?」
「い……いえ……形になったな、くらいしか……」

 つい小さく悲鳴をあげてしまったアンジェリアだが、冷静に問いかけられて、決まりが悪いような気分になる。
 しかも、違いにまで意識を向けていなかったのだ。うまく答えることができず、アンジェリアは申し訳なくなってきた。

「最初から全部わかるわけじゃない。焦る必要はない。意識を向けているうちに、だんだんわかるようになってくる。続けるぞ」
「は、はい……」

 今度こそと、アンジェリアは目をぎゅっと閉じて意識を集中する。
 肩や胸元を、羽でくすぐられているような感触が滑っていく。風のように、形はないけれど確かにそこにあることが感じられるものの、なかなかつかみきれない。

「あっ……だ、旦那様……」

 敏感な胸の先端にやわらかい刺激が走り、アンジェリアはぴくりと身を震わせる。

「どうだ、色はわかるか?」
「んっ……そ、そんな……色……あぁ……っ」

 法力の色を探ろうと意識を集中すれば、乳首を羽でくすぐられているような感触に、意識を向けることにもなってしまう。
 もどかしい熱が生じ、じわじわと全身に広がっていく。
 やわらかい刺激は、ひととおり胸をくすぐると、腹へと降りていった。臍の周囲をくすぐられ、さらに足の付け根から太ももの内側へと、敏感な場所をもどかしい刺激で満たしていく。
 アンジェリアはかすれた喘ぎを漏らしながら、体を震わせることしかできない。色を探るどころではなかった。

「やぁ……っ……そんなところまで……」

 両足の間を、熱せられた風が駆け抜けていく。
 秘裂を撫でられ、その上にある小さな突起で熱が止まる。
 指とは違う、触れているか触れていないかわからないほどの、もどかしい刺激が花芯をくすぐり続ける。

「あっ……あぁ……ん……」

 ゆっくり、ゆっくりと官能の波に押し上げられていく。
 もどかしさの中から快楽を拾い上げることに必死になり、アンジェリアは法力のことなど、すっかり忘れ去っていた。
 花弁は蜜に濡れ、高みに昇りつめるのを今か今かと待ちわびている。
 ところが、快感が体を貫きそうになったところで、刺激がすっと引いた。アンジェリアは中途半端なところに置き去りにされてしまう。

「やぁ……っ……旦那様、もっと……」

 涙をにじませながら、アンジェリアは更なる快楽をねだる。
 ベルナルドは苦笑して、再び法力を使って花芯をくすぐり、弄ぶ。

「アンジェリア、色はどうした?」
「やぁ……ん……も、もう……わかりません……あぁ……」

 じわじわと花芯から広がる甘い痺れに翻弄されながら、アンジェリアは腰を揺らす。
 早く昇りつめたいという欲望だけが、アンジェリアを支配していた。

「……これじゃあ、訓練にならないな」

 ベルナルドは困ったように呟きながら、アンジェリアの濡れそぼった花唇を指でなぞる。
 今までのおぼろげな感触とは違った、はっきりとした刺激に、アンジェリアはびくりと体を震わせた。

「あぁ……ご、ごめんな……さい……で、でも、もう……あぁん……」

 蜜口に指があてがわれ、そっと差し込まれた。
 だらだらと蜜を垂らす蜜口は悦びに痙攣し、ベルナルドの指を奥に誘いこむように、ひくひくと内壁を絡みつかせる。
 やっと望んだ刺激を与えられたが、まだ物足りない。

「物足りないか?」

 不満が顔に表れていたのか、ベルナルドが指をかき回しながら、問いかけてくる。

「だ、旦那様……旦那様が欲しいんです……あぁ……私の中に、旦那様をください……」

 すでに恥じらいは、昇りつめたいという欲望の前に消え去っていた。
 アンジェリアは腰を揺らしながら、ねだる。

「……仕方がないな」

 苦笑まじりの声と共に、蜜口に塊が押し付けられる。
 いよいよだという快楽の予感に、アンジェリアは気が遠くなっていくようだった。

「ああぁ……っ!」

 太く硬い雄が、アンジェリアを一気に貫いた。
 待ちわびた快楽に、アンジェリアは歓喜の声をあげて、ベルナルドにしがみつく。
 繋がった下肢から、甘い痺れが広がっていき、全身がとろけそうになる。
 アンジェリアは自らの足をベルナルドの腰に絡め、もっと奥へと受け入れようとする。

「あっ、あぁん……あああぁ……っ!」

 最奥までを灼熱の塊で埋め尽くされ、深い快楽の波が押し寄せてきた。
 意識が飛びそうになるほどの激しい快楽が全身を押し流し、アンジェリアは昇りつめる。
 ぎゅっと閉じた目の奥で、様々な色の光がはじけていく。鮮やかな色がたくさん絡まりあって、いつしかアンジェリアに感じられるのは、黒だけとなっていった。
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