黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん

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28.調整役

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 アンジェリアの訓練は、ベルナルドの手ほどきもあってか、順調に進んでいった。
 徐々に法力をしっかり感じ取れるようになってくると、ベルナルドのいっていた色もわかるようになってきた。
 行使しようとする法力の内容によっても違うのだが、アンジェリアは青味が強いことが多い。
 そして、ベルナルドは黒だ。様々な能力がどれも強く、バランスが取れているために、混ざり合って黒に近くなるようだった。
 黒の神官という呼び名は、ここからきているのだろうかと、アンジェリアは漠然と考えていた。

「アンジェリア、いいか、受け取って流すような感覚だ。難しいことはない」
「……はい」

 いよいよ、調整役としての務めを果たすときがきた。
 ベルナルドに声をかけられ、緊張しながらアンジェリアは頷く。うまくできるだろうかという不安で、胸がぎゅっと締め付けられるようだ。
 力づけるように、ベルナルドがアンジェリアの手を握る。

「いくぞ」

 繋がれた手から、ベルナルドの法力が流れてくる。
 体の中を熱が駆け巡っていくような感覚は、夜の行為のときに似ている。ベルナルドで満たされ、熱いうねりが広がって行き、やがて高みへと昇りつめてはじける感覚だ。
 違うのは、翻弄されるのではなく、自らの意思で熱を集め、放出するところだ。
 アンジェリアは、受け取った熱を放つ。それは絶頂にも似た感覚で、全身を痺れのようなものが駆け回り、力が抜けていった。
 気だるい余韻が漂うところも、似ていた。

「よし、上出来だ」

 満足そうなベルナルドの声が響く。
 アンジェリアは余韻に浸りながら、結界が修復されているのを感じ取る。
 どうやら、無事に調整役として務められたようだ。ほっとすると、アンジェリアの体からは、さらに力が抜けていった。

「大丈夫か?」
「あぁん……」

 よろけそうになるアンジェリアを、ベルナルドが支えた。
 それだけの動作だったのに、触れられた場所からぞくぞくとした痺れが走り、アンジェリアの口からは甘い吐息が漏れてしまう。
 周囲には誰もいないとはいえ、ここは屋外で、しかも結界補修作業の真っ最中なのだ。何という声を出してしまったのかと、アンジェリアは顔から火が出るような思いで、口元を手で押さえて俯いた。

「ご、ごめんなさい……」
「いや……何があった?」

 いたたまれなくなりながらアンジェリアが謝ると、ベルナルドは心配そうにアンジェリアの様子を伺う。

「そ……その……旦那様の法力が流れてくるのが、夜のときと似ていて……」

 俯きながら、消え入りそうな声でアンジェリアは答える。
 体が敏感になっているようで、まだ痺れが残っていた。

「……調整役は、他人の法力が流れてくるから奇妙な感覚だと聞いたことはあるが、そういうのは初めて聞いたな。何回も体を重ねているせいか……?」

 不思議そうに呟きながら、ベルナルドはアンジェリアの下肢に手を伸ばす。
 スカートの中に手がもぐりこんできて、アンジェリアはびくりと身を震わせた。

「やっ……こんなところで……あぁ……っ」

 下着の上から秘裂をなぞられ、すでに潤み始めていた蜜口から、蜜があふれてくる。
 布越しに与えられる刺激がもどかしく、無意識のうちに更なる快楽を求めて、アンジェリアの腰が揺れた。

「ずいぶんと、いやらしくなったものだな」
「やぁ……ん……だって、旦那様が……あぁ……」

 からかうようなベルナルドの言葉に反論しようとするが、下着の隙間からぬるりと指が入り込み、蜜口に差し込まれた。アンジェリアは腰がとろけていくような快楽を感じ、指を咥えこむことに意識が向いてしまう。

「結界の修復状況は、予想以上だ。変換効率がとても高い。何回も体を繋げていると、法力がなじみやすくなるのかもしれないな」

 ベルナルドが推測を呟くが、アンジェリアには聞いているような余裕はなかった。
 もっと気持ちよくなりたいという欲望と、屋外で恥ずかしい行為をしているという羞恥が、アンジェリアを混乱させる。

「こ……こんなところで……旦那様……も、もっと、別なところで……」
「やめろ、ではなく、別なところで、か」

 アンジェリアがねだると、ベルナルドは愉快そうに笑う。
 一度火がついた体は、さらなる熱を欲していた。このまま、中途半端に終わらせてしまうのは、耐えられそうにない。

「そうだな……こういうのも、覚えておくといい。……場よ、閉じろ」

 ベルナルドが低く呟くと、アンジェリアは法力が周囲を取り囲むのを感じる。
 すると、四方に白い壁ができていた。完全に真っ白ではなく、向こう側の景色をぼんやりと映していて、うっすらとした色がついている。
 これも結界らしい。こうして目に見えるものは初めてだと、アンジェリアは一瞬、体の疼きも忘れて感心する。

「これなら大丈夫だろう?」

 そう言って、ベルナルドは指を二本に増やして、蜜壷をかき混ぜた。
 隘路を押し広げられ、にじみ出す愉悦にアンジェリアは酔う。
 さらに、二本の指は挿入されたまま、親指で花芽を撫でられる。

「あっ、あぁん……」

 指を締め付けながら、アンジェリアは甘い声を漏らす。
 いくら覆われているとはいえ、ここは屋外だ。しかも、服を着たままという背徳感が、よりアンジェリアを昂ぶらせる。
 蜜口はどろどろと蜜を垂らし続け、ベルナルドの指を濡らす。
 もっと中をかき回してほしいと腰を揺らすが、突然、指が引き抜かれた。

「んっ……」

 思わず不満の声がアンジェリアから漏れてしまう。
 するとベルナルドは、アンジェリアの後ろに回りこんだ。
 アンジェリアが戸惑っていると、下着を下ろされ、スカートをめくり上げた状態で、お尻をつかまれた。驚いて、アンジェリアは結界の壁に手をつく。
 だが、ベルナルドは構うことなく、熱くとろけた蜜口に自身をあてがう。

「えっ……あ、ああぁ……っ!」

 背後から一気に貫かれ、アンジェリアの目の前が真っ白に染まる。
 しかし、潤みきって刺激を待ち望んでいた内壁は、荒々しく押し入ってきたベルナルドを、抵抗もなく歓喜と共に迎え入れた。

「あぁん……ふ、深い……あっ……あぁ……っ」

 媚肉を深々と穿たれ、最奥まで何度も突かれる。そのたびにアンジェリアの口からはかすれた喘ぎが漏れ、動きに合わせるように腰が揺れた。
 背後から服越しに乳房をつかまれ、そこからもじれったいような快楽がにじみ出す。しかもその刺激で、己を貫く楔を締め付けてしまい、より深い快楽がアンジェリアに押し寄せてくる。

「はっ……あぁ……あ、あぁああ……っ!」

 息が止まるほどの愉悦が全身を駆け巡り、アンジェリアは昇りつめた。
 背を反らして、びくびくと体を震わせる。
 熱い奔流が奥に注ぎ込まれていく感覚は、やはり法力を受け入れたときと似ていた。

 こうして、ときには横道にそれることはあったものの、むしろそれが調整役としての親和性を高めることになったのか、結界補修作業は問題なく進んでいった。
 そして、予想よりも早く、無事に結界の補修が完了したのだった。
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