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子育て始めました/テーマ:育てる
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悪魔という言葉から想像すると、怖いものをイメージしてしまうけど、ソロモン72柱を知り、その中のオリアスという悪魔の存在を知ってから、怖いものという認識は興味へと変わった。
先ずソロモン72柱というのは、古代イスラエルのソロモン王によって使役されたと伝えられている悪魔達のこと。
ここで気になるのが、ソロモン王と悪魔の関係だと思うが、そのことに関しての記述はなく謎。
そんなソロモン72柱を調べていく中で私が興味を持ったのは、72柱の一人、オリアス。
他の悪魔は生贄やら交渉やらを必要とするのに、この悪魔は見返りを求めない。
見た目は、強壮な馬に跨り、右手に二匹の大蛇を携えた蛇の尾を持つライオンの姿。
悪魔なんだから見た目は何となく想像できる。
でもそれは想像であって、真実は見てみないとわからない。
「他の悪魔の召喚には必要な生贄がいらないって、これは呼び出すしかないでしょ」
深く考えもしないまま、召喚の仕方などを調べていざ実行。
成功するかはわからないけど、私はオリアスに会ってみたかった。
「はあ……これも失敗。もしかして全部偽情報?」
あれからいくつかの召喚方法を試してみたが、見事失敗。
残された最後の召喚方法に望みをかけて試してみると、突然陣が光だし、眩しさから目を瞑る。
少しずつ光が弱まっていくのを感じながら、ゆっくり瞼を上げると、そこには、強壮な馬に跨り、右手に二匹の大蛇を携えた蛇の尾を持つライオンの姿。
ではなく、赤ちゃん。
「えーっと……よし」
「よしじゃねーよ!」
赤ちゃんからツッコミが入り、私は理解できない状況に頭を抱える。
私が見たかったのはオリアスであって赤ちゃんじゃない。
何より話せる赤ちゃんって何だ。
「おい、お前が俺を呼び出したのか」
「違うから。私が呼び出したかったのはオリアスだから」
見た目は赤ちゃんなのに、スラスラ言葉を話すのが違和感でしかない。
直ぐに帰したいところだけど、悪魔を召喚する方法は調べていたにも関わらず、帰す方法は一切調べていなかった。
このまま私が赤ちゃんを育てるなんてことになったら、大学生にして一児の母。
恋人もいないのにいきなり赤ちゃんなんて絶対に嫌。
今からでも帰す方法を調べたいけど、この子を家においていくわけにもいかない。
話せはしても一応赤ちゃんなわけだから。
だからといって連れて行くわけにもいかず再び頭を抱えていると、赤ちゃんが何やら私に話し出す。
「というわけだから、俺を育ててくれ」
「ちょーっと待って。今頭の中整理するから」
つまりこの赤ちゃんは、ソロモン72柱の一人、オリアス本人。
この姿で現れた原因は、陣が一部間違っていたから。
本来の姿なら自力で帰れるが、赤ちゃんの姿では力が使えず、成長して魔力が戻るのを待つしかない。
「つまり本来の姿まで育てろと?」
「そういうことだ」
なんともあっさりした返事だけど、人間の赤ちゃんだって成長には何十年も育てないと大人にならないのに、何千何億と生きてる悪魔が成長するまでって私は死んでいるのでは。
一目会いたかったオリアスの為だけに私の人生全てを捧げるって、生贄とか交渉ない代わりの尋常じゃないリスクみたいになっている。
私の人生終了を意識したとき「まあ、一年だな」という言葉に視線を向ける。
なんの数字か尋ねれば、オリアスが元の姿と魔力を取り戻すまでにかかる期間だと話す。
「でも、悪魔は長く生きてて、赤ちゃんから育てるには私の人生でも足りないんじゃ」
「陣の影響でこの姿になってるに過ぎないからな。見た目は赤子だが、実際は違う。今は魔力がなくて本来の姿になれないだけだ」
それを聞いてホッと一安心したのも束の間。
人生全てを捧げなくて済んだとはいえ、オリアスが魔力を取り戻すまでの一年間は私が育てなければいけない。
つまり、最初に想像していた大学生で一児の母決定。
後悔しても既に遅い。
生贄や交渉がいらない代わりに高くついたこの代償。
ニコニコと楽しそうな赤ちゃんの笑顔が悪魔に見えたのは、気のせいなんかじゃなく本物の悪魔だから。
「腹が空いたな。捧げ物をよこせ」
「オリアスって見返りとかいらないはずだよね!?」
悪魔もお腹は空くらしい。
当然と言えば当然だけど、悪魔の召喚は普通、生贄を捧げて願いを伝える。
オリアスはそれが必要ないから良かったんだけど、共に暮らすなら話は別。
「捧げものって、まさか動物の……」
「いや、トマトジュース」
意外に可愛いかもと思ったことは口にせず、先程まで絶望していた気持ちが少し軽くなるが、まだ私は気づいていなかった。
トマトジュースを手に入れるには、外へ出なければいけないこと。
それには、この悪魔も連れて行かなければいけないことに。
実際は私より遥かに年上だとしても、見た目が赤ちゃんな悪魔を家の中に一人残していくには抵抗がある。
その後、赤ちゃんを連れてスーパーへと向かった私は、不運にも家を出て直ぐ近所の人に見られ、スーパーでは大学の友達に出くわした。
誤解がないように説明したくても、私がひとりっ子なことは、友達も近所の人も知っているから直ぐに噂になるだろう。
こうなったら一年間耐えるしかないと腹を括り、悪魔の子育てがスタートした。
《完》
先ずソロモン72柱というのは、古代イスラエルのソロモン王によって使役されたと伝えられている悪魔達のこと。
ここで気になるのが、ソロモン王と悪魔の関係だと思うが、そのことに関しての記述はなく謎。
そんなソロモン72柱を調べていく中で私が興味を持ったのは、72柱の一人、オリアス。
他の悪魔は生贄やら交渉やらを必要とするのに、この悪魔は見返りを求めない。
見た目は、強壮な馬に跨り、右手に二匹の大蛇を携えた蛇の尾を持つライオンの姿。
悪魔なんだから見た目は何となく想像できる。
でもそれは想像であって、真実は見てみないとわからない。
「他の悪魔の召喚には必要な生贄がいらないって、これは呼び出すしかないでしょ」
深く考えもしないまま、召喚の仕方などを調べていざ実行。
成功するかはわからないけど、私はオリアスに会ってみたかった。
「はあ……これも失敗。もしかして全部偽情報?」
あれからいくつかの召喚方法を試してみたが、見事失敗。
残された最後の召喚方法に望みをかけて試してみると、突然陣が光だし、眩しさから目を瞑る。
少しずつ光が弱まっていくのを感じながら、ゆっくり瞼を上げると、そこには、強壮な馬に跨り、右手に二匹の大蛇を携えた蛇の尾を持つライオンの姿。
ではなく、赤ちゃん。
「えーっと……よし」
「よしじゃねーよ!」
赤ちゃんからツッコミが入り、私は理解できない状況に頭を抱える。
私が見たかったのはオリアスであって赤ちゃんじゃない。
何より話せる赤ちゃんって何だ。
「おい、お前が俺を呼び出したのか」
「違うから。私が呼び出したかったのはオリアスだから」
見た目は赤ちゃんなのに、スラスラ言葉を話すのが違和感でしかない。
直ぐに帰したいところだけど、悪魔を召喚する方法は調べていたにも関わらず、帰す方法は一切調べていなかった。
このまま私が赤ちゃんを育てるなんてことになったら、大学生にして一児の母。
恋人もいないのにいきなり赤ちゃんなんて絶対に嫌。
今からでも帰す方法を調べたいけど、この子を家においていくわけにもいかない。
話せはしても一応赤ちゃんなわけだから。
だからといって連れて行くわけにもいかず再び頭を抱えていると、赤ちゃんが何やら私に話し出す。
「というわけだから、俺を育ててくれ」
「ちょーっと待って。今頭の中整理するから」
つまりこの赤ちゃんは、ソロモン72柱の一人、オリアス本人。
この姿で現れた原因は、陣が一部間違っていたから。
本来の姿なら自力で帰れるが、赤ちゃんの姿では力が使えず、成長して魔力が戻るのを待つしかない。
「つまり本来の姿まで育てろと?」
「そういうことだ」
なんともあっさりした返事だけど、人間の赤ちゃんだって成長には何十年も育てないと大人にならないのに、何千何億と生きてる悪魔が成長するまでって私は死んでいるのでは。
一目会いたかったオリアスの為だけに私の人生全てを捧げるって、生贄とか交渉ない代わりの尋常じゃないリスクみたいになっている。
私の人生終了を意識したとき「まあ、一年だな」という言葉に視線を向ける。
なんの数字か尋ねれば、オリアスが元の姿と魔力を取り戻すまでにかかる期間だと話す。
「でも、悪魔は長く生きてて、赤ちゃんから育てるには私の人生でも足りないんじゃ」
「陣の影響でこの姿になってるに過ぎないからな。見た目は赤子だが、実際は違う。今は魔力がなくて本来の姿になれないだけだ」
それを聞いてホッと一安心したのも束の間。
人生全てを捧げなくて済んだとはいえ、オリアスが魔力を取り戻すまでの一年間は私が育てなければいけない。
つまり、最初に想像していた大学生で一児の母決定。
後悔しても既に遅い。
生贄や交渉がいらない代わりに高くついたこの代償。
ニコニコと楽しそうな赤ちゃんの笑顔が悪魔に見えたのは、気のせいなんかじゃなく本物の悪魔だから。
「腹が空いたな。捧げ物をよこせ」
「オリアスって見返りとかいらないはずだよね!?」
悪魔もお腹は空くらしい。
当然と言えば当然だけど、悪魔の召喚は普通、生贄を捧げて願いを伝える。
オリアスはそれが必要ないから良かったんだけど、共に暮らすなら話は別。
「捧げものって、まさか動物の……」
「いや、トマトジュース」
意外に可愛いかもと思ったことは口にせず、先程まで絶望していた気持ちが少し軽くなるが、まだ私は気づいていなかった。
トマトジュースを手に入れるには、外へ出なければいけないこと。
それには、この悪魔も連れて行かなければいけないことに。
実際は私より遥かに年上だとしても、見た目が赤ちゃんな悪魔を家の中に一人残していくには抵抗がある。
その後、赤ちゃんを連れてスーパーへと向かった私は、不運にも家を出て直ぐ近所の人に見られ、スーパーでは大学の友達に出くわした。
誤解がないように説明したくても、私がひとりっ子なことは、友達も近所の人も知っているから直ぐに噂になるだろう。
こうなったら一年間耐えるしかないと腹を括り、悪魔の子育てがスタートした。
《完》
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