『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

文字の大きさ
9 / 103
第-1章 迷星の時量剣師(めいせいのときはかし)

第9話 地獄絵図

しおりを挟む
「オークとイノシシの見分け方を教えて貰えるだろうか?」
オルガがシドに尋ねる。
「外見で見分けるなら白目が青白くなる程度だが、獣の白目なんかいつでも見える訳ではないからな」
シドはそう言うと指を三本立てた。
「魔物化、俺たちは『魔堕ち』と呼んでいるが、そうなった時に起きる変化は、知能が上がる、力が強くなる、血液が少なくなる、の3点だ」
「体液が少なくなる?」
「魔落ちすると生命維持に必要な養分が酸素から魔力に変化する」
俺の問いにシドが答えた。
「血管を流れていた血液の変わりに魔力が流れるようになる、血液は魔力を流すために少量流れていれば良くなる訳だ」
「その魔力はどこから補給するの?」
ラナがシドに問い掛ける。
「それは大気から、さ」
「つまり呼吸そのものはしなくちゃならんって訳か」
「そういう事だ」
シドはオルガに向かって頷いた。
「しかしそれだとやっぱり分からんが、さっきのはどうやってオークだと見分けたんだ?」
オルガはまだ納得出来ていない様だったが
「仕草や動きで分かるようになる、そこは経験を積むしかないな」
シドの答えは初心者に優しくはなかった。

「ところでオークが厄介とはどういう意味なの?」
ユキがシドに尋ねると、シドは再び人差し指を立てて口元に寄せた。
林の中からガサゴソと音が聞こえてくる。
「イノシシの群れは埋められた死体を掘り起こして食う事があるんだ」
「えーっと、家族でお食事中だったと?」
シドの言葉の意味を理解出来ずにラナが尋ねる。
「群れになりやすい、という事だ」
「おいおい、いったい何頭いるんだ?」
林の中から現れたオークの群れを見たオルガの声は震えていた。
30頭以上はいそうだが、ゴチャゴチャと動き回るオークの数を数える事が出来なかった。
「魔堕ちすると好戦的になる傾向がある、本来臆病なイノシシが人前に堂々と姿を現すのもオークの特徴の一つだと言えるだろうな」
シドはそう言うと、腰に差したショートソードを抜いて構えた。

「この数はマズイ、俺が注意を引くから遠距離攻撃で1頭づつ仕留めてくれ」
俺たちを背後に庇い、シドはゆっくりとオークに近づく。
「アテンション!」
シドが短く叫ぶと、オークの群れが一斉にシドの方へ顔を向けた。
敵の注意を引く魔法の様だ。
「今だ!」
シドの声が聞こえる。

「エレクトリック・ショット!」
ユキがオークに先制攻撃を仕掛けた。
放電しながら飛んだ矢は、オークの首元に直撃した。
『ブエエェエェエ!』
激しい声を上げ、ユキの矢を受けたオークが倒れると、オークの群れが一斉に動き始めた。

「来い! 礫よ!」
オルガが叫ぶと、地面に転がっていた石が10個、盾の前に浮かんで一列に並んだ。
「行け!」
オルガの声と共に石がオーク目掛けて撃ち出された。
自動照準なのだろうが、石は10頭のオークに直撃した。
1頭は眼球を貫かれその場に倒れこんだが、他の9頭は顔や鼻にこそ当たり出血もしているが止まる事は無い。

「草よ、風よ、私の呼びかけに応えて!」
アイリスは足元に広がる草原にむけて、50センチ程度のワンドを振った。
「切り裂いて!」
アイリスの号令で風に舞う草がオークの群れを襲う。
しかし細かい傷をつけるものの、致命傷にはならない。
「これでは怯んでもくれないなんて…」
構わず突進してくるオークを前にアイリスがたじろぐ。

「震えろ!」
リュウが片手剣と短剣を目の前で打ち合わせると『キィィィィィィン』という感じの音が鳴り響く。
高周波ブレードの様な物か?
「行くぜ! イノシシ野郎!」
そう叫ぶとリュウはオークの群れに突進した。
「おい! 遠距離攻撃しろと!」
オルガの制止を振り切りシドの横に走り込んだリュウがオークの脳天に片手剣を叩き込む。
刀身60センチ程度とは言え、金属製の剣を初めて全力で振ったのだろう。
ぎこちない動作でへっぴり腰だったが、リュウの振った片手剣は鈍い音をたててオークの頭部を真っ二つに割った。
「うわあぁあ!」
飛び散る脳漿を全身に浴びたリュウは慌てて飛び退いた。
体液が少ないとはいえ、斬れば血も出れば内臓も飛び出すようだ。
「よ、寄るな! 気持ち悪いな!」
リュウが剣を振って牽制すると、オークは少し距離をおいて威嚇し始めた。

シドはすでに目の前にオーク7頭を斬り捨てていた。
リュウがオークに狙われているのを見て、左手を水平に挙げる。
「ファイアーボルド!」
魔法の過程を省略して叫んだシドの左手から撃ち出された火の玉がリュウを威嚇するオークの横腹に突き刺さる。
「爆ぜろ!」
シドが叫ぶとオークの腹の中で火の玉が爆発した。
次の瞬間、オークの突進を右脚に受けたシドの身体が宙に舞った。
シドの右脚が大きく切り裂かれているのが見えた。

「イノシシの体重と速度はバイクと同じくらいで、牙の切れ味は出刃包丁並み、この怖さが分かるか?」
オルガが震える声で言った。
「シド先生が…やられちゃった!」
ユキが絶望的な顔をした。
リュウが慌てて逃げ帰って来るのが見えた。
「シドを捨てて来たのか!?」
オルガがリュウを非難するが、リュウは構わず最後列まで下がった。
「俺には才能が、未来があるんだ! そうだ! 颯竢、お前が時間を稼げよ!」
リュウの言葉にアイリスが嫌そうな顔をするが、何かを言う余裕がある状況では無い。

「どうしよう!? オークがこっちに来るよ!」
ラナが言う通り、オークはシドへの興味を失いこちらに顔を向け始めた。
「分かった、俺が時間を稼ぐからオルガは皆を守りながら街まで逃げてくれ」
リュウの糞みたいな言い分には多少のイラつきを隠しきれなかったが、元々剣術家として育てられた俺としては、剣士として戦って死ぬのであれば文句は無かった。
「颯竢…」
何かを言いたげなアイリスに手を振るとバスタードソードを抜き払った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        是非↓の♥を押して応援して下さい
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

処理中です...