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第1章 リリアの巫女(いわやのはなのみこ)
第56話 迎撃
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「なぁ、どう思う?」
「何がよ?」
藪から棒にジャンが口を開き、リンがすかさず返事をする。
この二人は何かと息が合っている。
恋人か何かだろうか?
「町の連中の事だよ、何か感じ悪かったよな?」
「確かに歓迎されてる雰囲気じゃなかったわね」
ジャンが思い出したように首をふり、リンもジャンの意見に同調する。
「まぁ、そう言うなよ、単によそ者が珍しかったんだろ」
ダラが大人びた意見を口にする。
「あの女性さ」
「なかなかの別嬪さんだったよな」
俺の発言に被せてきたジャンの脇腹にリンの肘が突き刺さる。
「ごめんなさい、気にしないで」
悶絶するジャンを無視してリンが俺に続きを促す。
「馬車の中を覗き込んでいたよな」
「確かに積荷に興味あるみたいだったよな」
ジャンがコクコクと頷いた。
「何か知っているのかもしれないね」
「物珍しさという線も考えられるが、気には留めておくべきだろうな」
俺の意見にダラが言葉を選びながら答えてきた。
「儀式まで時間はあるし、明日調べてみましょ」
「よし」
「あんたは良いわ」
意気込むジャンにリンが素っ気なく言うとジャンがガクッと崩れ落ちる。
「俺だってそれくらい出来るんだぞ?」
「安心しろ、俺が行って来てやるから」
ダラがジャンの頭を軽く撫でる。
「うがー! 子供扱いすんなし!」
ジャンがダラに抗議する。
今まで彼らと交流する機会はほとんどなかったが、案外悪くないな。
そうこうしていると食事と酒が運び込まれてきた。
ローブのフードを深く被っている為あまり顔が見えないが、給仕係は3人組の女性の様だ。
口数少なく、そそくさと配膳を済ませると、逃げるように立ち去って行った。
料理はローストした肉、フリットした魚、炒めたポテトなど酒の肴にはちょうど良いものばかりだ。
ジャンが酒の瓶に手を伸ばし、栓を抜く。
『ポン』と小気味の良い音を立てて開いた瓶から強めのアルコール臭が漂ってきた。
「おい、呑む気か?」
「まさかだろ?」
ダラの問い掛けにジャンがすかさず答えた。
ジャンは酒の匂いを嗅ぐと、怪訝そうな顔をして栓を閉め直した。
テーブルに並んだ食事を見たリンが「あれ?」という顔をした。
「すみませーん、水は無いんですかー?」
リンが部屋の扉を開いて廊下に向かって問い掛けるが返事は無い。
こちらを振り返って首を傾げるリン。
「商隊長も戻ってこないし、先に食っちゃうか?」
「うぅーん」
ジャンは料理を目の前にして待ちきれない様子で、リンも少し悩んでいるが…
「リン! 扉から離れろ!」
俺はリンと入れ替わる様に扉の前に移動した。
ダラも気付いた様だ。
「リンとジャン、荷物と建物の中は任せた!」
ダラの指示に二人がうなずく。
「行くぞ!」
ダラの合図で俺とダラが廊下に飛び出す。
教会の中は人の気配はなく、静まり返っていた。
たった今食事を運んできた給仕係すら姿が見えない。
「分かりやすい罠を仕掛けたもんだな」
ダラを置いて、礼拝堂を突っ切り正面の扉に向けてダッシュする。
扉の外に気配を感じて扉を蹴り開けると薄暗い中、何かが動いているのが見える。
気配で分かったのは、オーガが商隊長を担いで連れ去ろうとしている所だという事だった。
扉から数歩出たところでダラが横に並んできた。
「アレは商隊長か!?」
ダラが駆けだそうとするがそうはさせない。
「颯竢!?」
ダラの腕を掴む俺に非難がましく声を掛けてくる。
商隊長を助けるべきなのは分かっているが…
「ダラ、囲まれてるよ」
俺の言葉を裏付けるように、教会の裏手側から大量の小人族が飛び出してきた。
散々見知ったモンスターだった。
「ゴブリンか!」
ダラは言うが早いか刀を抜く。
ゴブリンが振り下ろす錆びた剣を受け流しながら後退する。
「一度教会の中まで退こう」
ダラに声を掛けて教会の中に走り込む。
ダラもギリギリでゴブリンの攻撃を避けながら教会の中まで戻って来た。
「颯竢が止めてくれてなかったら死んでたな」
扉を閉めて鍵を掛けるとダラが息を荒げて言った。
「戦いはこれからだよ」
ダラに親指を立てて見せる。
「ジャン! ゴブリンの大群の襲撃だ! 建物の中に侵入して来る奴は任せる!」
ダラが今まで聞いた事の無い大声でジャンに呼びかけた。
『バーン!』と効果音がしそうな勢いでジャンが扉を開けて登場する。
「こっちは任せとけ!」
「それじゃ、あとはよろしくね」
格好よく登場したジャンの後ろでリンが静かに扉を閉めた。
「颯竢、その背中の剣は飾りで、もしかして拳闘士なのか?」
ダラが尋ねて来た。
ゴブリンの攻撃を剣も抜かずに切り抜けた様子を見ていたからだろう。
「いや、剣士だよ、剣よりカッコいい武器は他には無いからね」
「冗談を言ってるのか?」
「ゆっくり話をしている時間は無さそうだね」
ゴブリン達が扉に攻撃を仕掛けて来ていた。
木製の扉が破壊されるのは時間の問題だろう。
幸いステンドグラスを破壊して侵入するほど知恵は回らない様だ。
「それじゃ俺の剣術でも披露しようか」
背中に背負ったバスタードソードを抜くと、ダラに笑い掛けた。
『疾風!』
ゴブリン達が攻撃を続ける扉に向かって踏み込み
『朧!』
バスタードソードを左一文字斬りに高速で振り
『踏鳴!』
当たる瞬間に体重移動を行う。
扉どころか左右の壁も斬り裂きながら、扉の向こうのゴブリン達も真っ二つに斬り裂く。
そろそろこの一連の動きに技名を付けて登録しても良い頃だろう。
「嘘だろ…」
後方でジャンの唖然とした様な声が聞こえる。
崩れ落ちる扉の向こうから、荒れ狂う数匹のゴブリン達が礼拝堂に雪崩れ込んできた。
振った剣が仲間を傷付けても気にしないゴブリンの狂戦士ぶりに、ダラもドン引きした様子だが、冷静にゴブリンの首を刎ね飛ばしていく。
ダラの剣の腕前はなかなかのものだった。
これなら背中を任せて戦える。
ゴブリンの数が減り、扉の前に少しスペースが出来たのを確認すると、俺は無造作に外に飛び出した。
「お、おい!」
ダラが驚いたように声を掛けて来るがお構いなしだ。
怒り狂ったゴブリン達が一斉に襲い掛かって来るが…
「遅い!」
ゴブリン達の振るう剣を全て紙一重で避け、その剣より高速で、すれ違う様にバスタードソードでゴブリン達を斬り捨てていく。
一匹斬ると安全地帯が増える。
どのゴブリンを斬ればその後有利に戦えるか考えながら次々に斬り捨てていく。
それはパズルゲームに似た感覚だった。
自分でも惚れ惚れする手際で20匹のゴブリンを一瞬で斬り捨てた。
「攻撃を剣で受けないのかよ…」
ジャンが呆れたように呟くのが聞こえた。
体術で相手の攻撃を回避するスタイルはこっちの世界に来てから確立した俺の剣術だった。
転生して1カ月と少し。
既に親父とお袋に叩き込まれた戦闘術は自己流に改変されていた。
「マジかよ…」
ダラも俺の剣術を見てようやくそれだけ呟いた。
ゴブリンの死体の山が、新たなゴブリンの襲撃を防ぐバリケードの様に積み上げられていた。
すぐに消えてしまうが、少しの間は休息できる。
「さぁダラ、やろう」
差し出した俺の拳をダラがポカンとした顔で見ている。
「ゴブリン程度じゃ俺達を始末できないって事を見せてやろう」
「くそ! やってやるぜ!」
ダラはそう言うと、俺の拳に拳を当てて来た。
俺はゴブリンの剣戟を縫う様にすり抜けながら次々に斬り捨てていく。
一方ダラは、刀から真空刃を放つ『エリアスラッシュ』という剣技を駆使してゴブリンの群れを切り崩して行く。
前方5メートル程度の敵をカマイタチで斬り裂く風属性の範囲攻撃スキルの様だ。
剣で防げない為、ゴブリン達は成す術もなく消滅していくが…
「数が多すぎる…」
ダラのエリアスラッシュの威力が目に見えて落ちてきている。
教会の中からジャンの雄叫びが聞こえる。
教会の中もゴブリンが押し寄せてジャンが苦戦しているのが気配でわかる。
「ダラ、ここは引き受けるからジャンの応援を任せる!」
ダラの周囲のゴブリンを切り伏せて言った。
「済まない!」
ダラはそれだけ言うと教会の中へ飛び込んだ。
「さぁて…やるか!」
気合を入れ直し、迫り来るゴブリンの群れに突入した。
ゴブリンが教会の裏手から現れなくなり、その数が目に見えて減ってくると、ゴブリン達が騒ぎ始めた。
明らかに攻撃の手が緩んでいる。
勝ち目が無いと悟ったのだろう。
先頭で何かを叫んでいたゴブリンを取り巻き4匹と一緒に一文字斬りに斬り捨てると、それを見ていたゴブリン達が悲鳴を上げて逃げ出した。
ゴブリンに恐怖という感情がある事に逆に驚いたが、とりあえず無事に切り抜けられたようだ。
教会の中に戻ると、礼拝堂の中央に肩で息をするダラとジャンの姿があった。
こちらも無事に片付いた様だ。
「大丈夫?」
「あぁ、何とかな」
ダラが疲れ切った様子で手を挙げて答える。
「リンは?」
「あっちにはミジンコ一匹行かせてないぜ!」
ジャンが親指を立てて見せた。
「こいつらが妖精族だったのがせめての救いだな…」
徐々に消滅して行くゴブリンの姿を魂が抜けた様な目で見送るダラが言った。
今回のパーティメンバーには魔法使いがいない。
この数の死体を埋めるとなれば一晩では足りなかっただろう。
「ゴブリンの死体でキャンプファイヤーなんてしたくないもんな」
ジャンが何気に恐ろしい事を言ってきて、想像しただけで全身の毛が逆立った。
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藪から棒にジャンが口を開き、リンがすかさず返事をする。
この二人は何かと息が合っている。
恋人か何かだろうか?
「町の連中の事だよ、何か感じ悪かったよな?」
「確かに歓迎されてる雰囲気じゃなかったわね」
ジャンが思い出したように首をふり、リンもジャンの意見に同調する。
「まぁ、そう言うなよ、単によそ者が珍しかったんだろ」
ダラが大人びた意見を口にする。
「あの女性さ」
「なかなかの別嬪さんだったよな」
俺の発言に被せてきたジャンの脇腹にリンの肘が突き刺さる。
「ごめんなさい、気にしないで」
悶絶するジャンを無視してリンが俺に続きを促す。
「馬車の中を覗き込んでいたよな」
「確かに積荷に興味あるみたいだったよな」
ジャンがコクコクと頷いた。
「何か知っているのかもしれないね」
「物珍しさという線も考えられるが、気には留めておくべきだろうな」
俺の意見にダラが言葉を選びながら答えてきた。
「儀式まで時間はあるし、明日調べてみましょ」
「よし」
「あんたは良いわ」
意気込むジャンにリンが素っ気なく言うとジャンがガクッと崩れ落ちる。
「俺だってそれくらい出来るんだぞ?」
「安心しろ、俺が行って来てやるから」
ダラがジャンの頭を軽く撫でる。
「うがー! 子供扱いすんなし!」
ジャンがダラに抗議する。
今まで彼らと交流する機会はほとんどなかったが、案外悪くないな。
そうこうしていると食事と酒が運び込まれてきた。
ローブのフードを深く被っている為あまり顔が見えないが、給仕係は3人組の女性の様だ。
口数少なく、そそくさと配膳を済ませると、逃げるように立ち去って行った。
料理はローストした肉、フリットした魚、炒めたポテトなど酒の肴にはちょうど良いものばかりだ。
ジャンが酒の瓶に手を伸ばし、栓を抜く。
『ポン』と小気味の良い音を立てて開いた瓶から強めのアルコール臭が漂ってきた。
「おい、呑む気か?」
「まさかだろ?」
ダラの問い掛けにジャンがすかさず答えた。
ジャンは酒の匂いを嗅ぐと、怪訝そうな顔をして栓を閉め直した。
テーブルに並んだ食事を見たリンが「あれ?」という顔をした。
「すみませーん、水は無いんですかー?」
リンが部屋の扉を開いて廊下に向かって問い掛けるが返事は無い。
こちらを振り返って首を傾げるリン。
「商隊長も戻ってこないし、先に食っちゃうか?」
「うぅーん」
ジャンは料理を目の前にして待ちきれない様子で、リンも少し悩んでいるが…
「リン! 扉から離れろ!」
俺はリンと入れ替わる様に扉の前に移動した。
ダラも気付いた様だ。
「リンとジャン、荷物と建物の中は任せた!」
ダラの指示に二人がうなずく。
「行くぞ!」
ダラの合図で俺とダラが廊下に飛び出す。
教会の中は人の気配はなく、静まり返っていた。
たった今食事を運んできた給仕係すら姿が見えない。
「分かりやすい罠を仕掛けたもんだな」
ダラを置いて、礼拝堂を突っ切り正面の扉に向けてダッシュする。
扉の外に気配を感じて扉を蹴り開けると薄暗い中、何かが動いているのが見える。
気配で分かったのは、オーガが商隊長を担いで連れ去ろうとしている所だという事だった。
扉から数歩出たところでダラが横に並んできた。
「アレは商隊長か!?」
ダラが駆けだそうとするがそうはさせない。
「颯竢!?」
ダラの腕を掴む俺に非難がましく声を掛けてくる。
商隊長を助けるべきなのは分かっているが…
「ダラ、囲まれてるよ」
俺の言葉を裏付けるように、教会の裏手側から大量の小人族が飛び出してきた。
散々見知ったモンスターだった。
「ゴブリンか!」
ダラは言うが早いか刀を抜く。
ゴブリンが振り下ろす錆びた剣を受け流しながら後退する。
「一度教会の中まで退こう」
ダラに声を掛けて教会の中に走り込む。
ダラもギリギリでゴブリンの攻撃を避けながら教会の中まで戻って来た。
「颯竢が止めてくれてなかったら死んでたな」
扉を閉めて鍵を掛けるとダラが息を荒げて言った。
「戦いはこれからだよ」
ダラに親指を立てて見せる。
「ジャン! ゴブリンの大群の襲撃だ! 建物の中に侵入して来る奴は任せる!」
ダラが今まで聞いた事の無い大声でジャンに呼びかけた。
『バーン!』と効果音がしそうな勢いでジャンが扉を開けて登場する。
「こっちは任せとけ!」
「それじゃ、あとはよろしくね」
格好よく登場したジャンの後ろでリンが静かに扉を閉めた。
「颯竢、その背中の剣は飾りで、もしかして拳闘士なのか?」
ダラが尋ねて来た。
ゴブリンの攻撃を剣も抜かずに切り抜けた様子を見ていたからだろう。
「いや、剣士だよ、剣よりカッコいい武器は他には無いからね」
「冗談を言ってるのか?」
「ゆっくり話をしている時間は無さそうだね」
ゴブリン達が扉に攻撃を仕掛けて来ていた。
木製の扉が破壊されるのは時間の問題だろう。
幸いステンドグラスを破壊して侵入するほど知恵は回らない様だ。
「それじゃ俺の剣術でも披露しようか」
背中に背負ったバスタードソードを抜くと、ダラに笑い掛けた。
『疾風!』
ゴブリン達が攻撃を続ける扉に向かって踏み込み
『朧!』
バスタードソードを左一文字斬りに高速で振り
『踏鳴!』
当たる瞬間に体重移動を行う。
扉どころか左右の壁も斬り裂きながら、扉の向こうのゴブリン達も真っ二つに斬り裂く。
そろそろこの一連の動きに技名を付けて登録しても良い頃だろう。
「嘘だろ…」
後方でジャンの唖然とした様な声が聞こえる。
崩れ落ちる扉の向こうから、荒れ狂う数匹のゴブリン達が礼拝堂に雪崩れ込んできた。
振った剣が仲間を傷付けても気にしないゴブリンの狂戦士ぶりに、ダラもドン引きした様子だが、冷静にゴブリンの首を刎ね飛ばしていく。
ダラの剣の腕前はなかなかのものだった。
これなら背中を任せて戦える。
ゴブリンの数が減り、扉の前に少しスペースが出来たのを確認すると、俺は無造作に外に飛び出した。
「お、おい!」
ダラが驚いたように声を掛けて来るがお構いなしだ。
怒り狂ったゴブリン達が一斉に襲い掛かって来るが…
「遅い!」
ゴブリン達の振るう剣を全て紙一重で避け、その剣より高速で、すれ違う様にバスタードソードでゴブリン達を斬り捨てていく。
一匹斬ると安全地帯が増える。
どのゴブリンを斬ればその後有利に戦えるか考えながら次々に斬り捨てていく。
それはパズルゲームに似た感覚だった。
自分でも惚れ惚れする手際で20匹のゴブリンを一瞬で斬り捨てた。
「攻撃を剣で受けないのかよ…」
ジャンが呆れたように呟くのが聞こえた。
体術で相手の攻撃を回避するスタイルはこっちの世界に来てから確立した俺の剣術だった。
転生して1カ月と少し。
既に親父とお袋に叩き込まれた戦闘術は自己流に改変されていた。
「マジかよ…」
ダラも俺の剣術を見てようやくそれだけ呟いた。
ゴブリンの死体の山が、新たなゴブリンの襲撃を防ぐバリケードの様に積み上げられていた。
すぐに消えてしまうが、少しの間は休息できる。
「さぁダラ、やろう」
差し出した俺の拳をダラがポカンとした顔で見ている。
「ゴブリン程度じゃ俺達を始末できないって事を見せてやろう」
「くそ! やってやるぜ!」
ダラはそう言うと、俺の拳に拳を当てて来た。
俺はゴブリンの剣戟を縫う様にすり抜けながら次々に斬り捨てていく。
一方ダラは、刀から真空刃を放つ『エリアスラッシュ』という剣技を駆使してゴブリンの群れを切り崩して行く。
前方5メートル程度の敵をカマイタチで斬り裂く風属性の範囲攻撃スキルの様だ。
剣で防げない為、ゴブリン達は成す術もなく消滅していくが…
「数が多すぎる…」
ダラのエリアスラッシュの威力が目に見えて落ちてきている。
教会の中からジャンの雄叫びが聞こえる。
教会の中もゴブリンが押し寄せてジャンが苦戦しているのが気配でわかる。
「ダラ、ここは引き受けるからジャンの応援を任せる!」
ダラの周囲のゴブリンを切り伏せて言った。
「済まない!」
ダラはそれだけ言うと教会の中へ飛び込んだ。
「さぁて…やるか!」
気合を入れ直し、迫り来るゴブリンの群れに突入した。
ゴブリンが教会の裏手から現れなくなり、その数が目に見えて減ってくると、ゴブリン達が騒ぎ始めた。
明らかに攻撃の手が緩んでいる。
勝ち目が無いと悟ったのだろう。
先頭で何かを叫んでいたゴブリンを取り巻き4匹と一緒に一文字斬りに斬り捨てると、それを見ていたゴブリン達が悲鳴を上げて逃げ出した。
ゴブリンに恐怖という感情がある事に逆に驚いたが、とりあえず無事に切り抜けられたようだ。
教会の中に戻ると、礼拝堂の中央に肩で息をするダラとジャンの姿があった。
こちらも無事に片付いた様だ。
「大丈夫?」
「あぁ、何とかな」
ダラが疲れ切った様子で手を挙げて答える。
「リンは?」
「あっちにはミジンコ一匹行かせてないぜ!」
ジャンが親指を立てて見せた。
「こいつらが妖精族だったのがせめての救いだな…」
徐々に消滅して行くゴブリンの姿を魂が抜けた様な目で見送るダラが言った。
今回のパーティメンバーには魔法使いがいない。
この数の死体を埋めるとなれば一晩では足りなかっただろう。
「ゴブリンの死体でキャンプファイヤーなんてしたくないもんな」
ジャンが何気に恐ろしい事を言ってきて、想像しただけで全身の毛が逆立った。
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