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人ノ部 其之参 頽れる虚飾の王国と神々の復活
七. 鬼族の進化
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「そなたたち、騒がしいぞ。」
騒々しいまでの神々の音楽や歌を遮るように厳かな声が響いた。最後にアメノイワヤトから姿を見せたのは、兄弟神である月夜の神と大海原の神を率いた天地照らす大神であった。
三貴神と呼ばれる神々、ウズメ達神族の頂点に立つ三柱の御姿は畏怖の念を呼び起こすほどに神々しく、心の臓を抉るような美しさと恐怖を併せ持っていた。
大神の御姿がアメノイワヤトから露わになるごとに辺りがより一層明るく照らされていく。大神の神威が、周囲の穢れた瘴気を消し去ったのをミサキとイブキは目の当たりにし、息を呑む。
大神が完全に姿を現したその時、男神が大岩で以て岩屋戸を閉じた。
「タヂカラヲ、何を。」
見咎められた岩屋戸を閉じた男神は頭を垂れて言う。
「申し訳ございません。我々は長い間、この親神の産んだ国を離れておりました。もうこの国へ戻る時期かと思われますが故、扉を閉ざしてございます。」
「さようか。」
ふむ、と大神は男神の言葉に頷く。そうして周囲を見渡した。
三貴神を目の当たりにし、鬼も人も等しく言葉を失った。目を奪われたと言ってもいい。その姿に、神々しさに、一人残らず自然と膝をつき頭を垂れていた。ただ、ただ神々の御声を聴くだけだった。
「して、あれらは?」
大海原の神が鬼と人に視線を向け、問う。
「彼らがヒルコによる岩屋戸の封印を解いたそうです。」
ウズメが答え、先ほど受けた説明を彼らの代わりに奏上する。月夜の神と大海原の神が大神に問いかけるような視線を向けた。
「…結局、兄神は命を落とされたか。」
虚空を見詰めそう呟く声や、眉一つ動かぬ相貌からは、悲しんでいるのか蔑んでいるのかも読み取れない。
神が不在の間も、天は変わらずそこに在った。昼の出来事は太陽が、夜の出来事は月が見ていた。天地照らす大神は太陽から、月夜の神は当然に月からこれまでの出来事を共有し得るので、正しく状況を把握する。
三貴神はヒルコの最期も、その後の人族の業も僅かの間に認知し互いに共有し、ウズメから得た情報も加味して話し合う。
「鬼の子らよ。」
大神の目配せを受けた月夜の神がミサキとイブキに声をかけた。返事と共に二人はより一層頭を垂れた。
「苦しゅうないぞ、楽にせい。」
緊張に強張る二人に月夜の神はそう声をかけ、続ける。
「この度の封印の解除、大儀であった。そなたらはかつての氏神の言葉を良く守り、本文を全うしているようだ。故に、一族郎党全て鬼神として神化することを認めよう。」
「鬼神、ですか?」
思わず視線を上げ言葉をイブキは漏らしていた。声には出さなかったが、ミサキも同じ気持ちであった。亜人から神への進化、思いもよらないことに三貴神の御姿と、互いの顔とに何度も視線を行き来させる。
「うむ。思いの外荒れ果てたこの地の浄化には、神威が足りぬという事情もある。浄化と復興に力を貸して欲しい。」
「勿論でございます。」
大神の言葉に恭順の姿勢をイブキとミサキは示した。
浄化と復興、その言葉に鬼神への進化もすんなりと受け入れられると、お互いに頷き合った。
騒々しいまでの神々の音楽や歌を遮るように厳かな声が響いた。最後にアメノイワヤトから姿を見せたのは、兄弟神である月夜の神と大海原の神を率いた天地照らす大神であった。
三貴神と呼ばれる神々、ウズメ達神族の頂点に立つ三柱の御姿は畏怖の念を呼び起こすほどに神々しく、心の臓を抉るような美しさと恐怖を併せ持っていた。
大神の御姿がアメノイワヤトから露わになるごとに辺りがより一層明るく照らされていく。大神の神威が、周囲の穢れた瘴気を消し去ったのをミサキとイブキは目の当たりにし、息を呑む。
大神が完全に姿を現したその時、男神が大岩で以て岩屋戸を閉じた。
「タヂカラヲ、何を。」
見咎められた岩屋戸を閉じた男神は頭を垂れて言う。
「申し訳ございません。我々は長い間、この親神の産んだ国を離れておりました。もうこの国へ戻る時期かと思われますが故、扉を閉ざしてございます。」
「さようか。」
ふむ、と大神は男神の言葉に頷く。そうして周囲を見渡した。
三貴神を目の当たりにし、鬼も人も等しく言葉を失った。目を奪われたと言ってもいい。その姿に、神々しさに、一人残らず自然と膝をつき頭を垂れていた。ただ、ただ神々の御声を聴くだけだった。
「して、あれらは?」
大海原の神が鬼と人に視線を向け、問う。
「彼らがヒルコによる岩屋戸の封印を解いたそうです。」
ウズメが答え、先ほど受けた説明を彼らの代わりに奏上する。月夜の神と大海原の神が大神に問いかけるような視線を向けた。
「…結局、兄神は命を落とされたか。」
虚空を見詰めそう呟く声や、眉一つ動かぬ相貌からは、悲しんでいるのか蔑んでいるのかも読み取れない。
神が不在の間も、天は変わらずそこに在った。昼の出来事は太陽が、夜の出来事は月が見ていた。天地照らす大神は太陽から、月夜の神は当然に月からこれまでの出来事を共有し得るので、正しく状況を把握する。
三貴神はヒルコの最期も、その後の人族の業も僅かの間に認知し互いに共有し、ウズメから得た情報も加味して話し合う。
「鬼の子らよ。」
大神の目配せを受けた月夜の神がミサキとイブキに声をかけた。返事と共に二人はより一層頭を垂れた。
「苦しゅうないぞ、楽にせい。」
緊張に強張る二人に月夜の神はそう声をかけ、続ける。
「この度の封印の解除、大儀であった。そなたらはかつての氏神の言葉を良く守り、本文を全うしているようだ。故に、一族郎党全て鬼神として神化することを認めよう。」
「鬼神、ですか?」
思わず視線を上げ言葉をイブキは漏らしていた。声には出さなかったが、ミサキも同じ気持ちであった。亜人から神への進化、思いもよらないことに三貴神の御姿と、互いの顔とに何度も視線を行き来させる。
「うむ。思いの外荒れ果てたこの地の浄化には、神威が足りぬという事情もある。浄化と復興に力を貸して欲しい。」
「勿論でございます。」
大神の言葉に恭順の姿勢をイブキとミサキは示した。
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