164 / 1,955
ワイバーン一掃
しおりを挟む「……テンペスト・ブレイド!」
魔法名は、さっきエルサが使ったそのままだ。
見たばかりだから、イメージが固めやすかったからね。
「結界! なのだわ!」
エルサが俺の魔法が発動し始めた事を確認して、結界を発動。
その瞬間、俺達に近いワイバーンから順に、上へ下へ、左へ右へときりもみをしながら動き始めた。
吹き荒れる風に翻弄されてるんだろう。
きりもみしながら、手や足、翼や首が切り離されて行き、血や内臓も一緒に北へと飛んで行く。
「……ワイバーンが軽いゴミのようね……」
ワイバーンを見ながら、ポツリと呟く姉さん。
確かに吹き荒れる風に翻弄され、散り散りになって飛んで行く様は、魔物と言うよりは軽いゴミのように見えた。
「っ!」
「……っ……結構、こっちにも影響があるんだな」
「ちょっと威力が強すぎなのだわ……飛んでるのが精一杯なのだわ!」
ワイバーンがきりもみしている様子を暢気に眺めていた俺達だったけど、魔法の発動から数十秒、爆発的な風が吹き荒れて城を中心に周囲へ広がって行った。
結界を張ったエルサの周りにも、風が吹き荒れている。
何とか高度を維持してるけど、これが結界もなくエルサでもなかったら、俺達も巻き込まれてるところだったな……。
揺れるエルサの背中で、俺と姉さんはモフモフにしがみついて振り落とされないように気を付ける。
その間にも、俺の放った魔法はどんどん広がって行き、群れで周囲を囲んでいたワイバーンの群れ全てに到達した。
「っ……ふぅ……収まって来たわね」
「外側に広がるようにしたから、ここはもう大丈夫だと思う」
ワイバーンの群れは遠目だから見えにくいが……全てが縦横無尽に動き回り、途中で四肢が切り離され北の山へと飛ばされて行った。
動き回ってたのは、暴風に翻弄されてたからだね。
空を飛べるからといっても、上下左右の強い風には逆らえなかったんだろう。
「結界を解くのだわー」
「あぁ、ありがとう」
エルサが結界を解いて、ようやく周囲の音が聞こえ始める。
遠くの山から、ワイバーンだった物がぶつかる音が聞こえて来る気がするけど、それは気にしない。
……今は周囲の確認が先だからね。
地上にも、やっぱり風が吹き荒れてたみたいで、王都に来た時見た屋台の屋根だったり、商品っぽい物が散乱してるのが見えた。
一応、人が飛ばされたりしてないみたいで、安心した。
「地上の人達は無事みたいね」
「そうだね。高い場所で使ったからだと思うけど、被害が無くて何よりだよ」
「食べ物が飛んでたように見えたのだわ……リクはひどいのだわ」
食いしん坊ドラゴンだけあって、エルサは食べ物に関して気になったんだろう。
風に飛ばされた食べ物が飛散してる様子を思い浮かべようとして、止めた。
まぁ、命あっての物種とも言うしね……食べ物ぐらいなら被害としては少ないだろう。
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
地上の様子を窺ってると、色んな所から雄たけびにも聞こえる声が聞こえる。
「……何だ?」
「……兵士達が今のを見て鼓舞されたみたいね」
エルサの背中の端に移動して、真下を覗き込むようにして見ると、城門付近の兵士達が魔物を押し返そうと、声を張り上げて戦っていた。
それに呼応して、町側からも人が押し寄せ、魔物達を挟み撃ちにしてるようだ。
「りっくんの力を目の当たりにしたからでしょうね。自分達には英雄が付いている、と」
「英雄と呼ばれるのは慣れないけど、こういう効果があるのなら、悪くない……のかもね」
姉さんと話しながら、周囲の様子もうかがってみる。
もう俺の魔法の効果は完全に切れたらしく、上空に風が吹き荒れてる様子はない。
それと一緒に、城を取り囲んでいた無数のワイバーンの姿も一切なくなっていた。
「ワイバーンは全て取り除けたみたいだね」
「……ほんと、りっくんはすごいわね。あんなにいたワイバーンを一瞬で全て倒すなんて……英雄という呼び名だけじゃ収まりそうにないわ」
「英雄だけでも微妙な気分なのに、これ以上持ち上げるような呼び方は止めてよ」
一緒に周囲を見ていた姉さんがポツリと漏らしたけど、英雄と呼ばれる事自体、俺にはあまり相応しいと思って無いのに、これ以上変な呼び方が加わったら大変だ。
「……そろそろ疲れたのだわー。休みたいのだわー」
姉さんと話してたら、エルサがそんな事を言って来た。
まぁ、ずっと飛び回ってワイバーンを牽制したり、魔法をつかってたからね……俺から魔力が流れてるとはいえ、疲れても仕方ないか。
「それじゃ、城の中庭に戻ろうか」
「そうね。空の魔物はもう来ないでしょうからね」
「帰るのだわー」
城の中庭に降り立ったエルサは、俺と姉さんを降ろした後すぐに小さくなる。
「おっと、エルサ……俺の頭で休むのは少し待ってくれ」
「どうしてなのだわ?」
いつものように、俺の頭へと飛んで来たエルサを途中で止める。
「しばらく、姉さんにくっ付いてくれ。俺は城門の方へ行ってモニカさん達に加勢するから」
空の魔物がいなくなっても、まだ地上では魔物達と戦ってる最中だ。
空から見た様子だと、放っておいても魔物は掃討されて終わるだろうけど、出来るだけ早く終わらせた方が良いからね。
被害も少ない方が良いだろうし。
「エルサちゃんは私に付けるの?」
「まぁ、何かあった時のためだね。もしまだ城内にバルテルとかいう奴の手下がいれば、姉さんが狙われるかもしれないし……魔物が中に入り込む可能性もあるからね」
「そう、私のボディーガードという事ね」
「仕方ないのだわ……でも、疲れたからとりあえずは休むのだわー」
「あら、ここなのね」
念のためというだけだが、エルサは姉さんに付いて守ってもらいたい。
仕方なさそうに、エルサは俺から離れて姉さんの頭にくっ付いた。
……やっぱり人の頭にくっ付くのが好きなんだな、エルサ。
「……リクじゃ無いから、不満なのだわ。早く終わらせて来るのだわー」
「はいはい」
姉さんの頭で不満を漏らすエルサを適当にあしらう。
そう言えば、俺から流れる魔力があるから、頭にくっ付くのが一番良いって言ってたような気がするな……姉さんからはさすがに魔力が漏れて無いからな。
「じゃあ姉さん、言って来るよ」
「気を付けてね。りっくんの強さなら大丈夫だろうけど、怪我はしないでね。私は城内にいる者達の指揮をして来るわ」
姉さんに声をかけ、城門へと向かう。
女王様でもある姉さんは、他にもやる事は沢山あるのだろう。
兵士を鼓舞する事は、さっきの上空でやったから、それ以外の事だと思うけど。
そんな事を考えつつ、城の中を走り外へと急いだ。
「モニカさん!」
「リクさん! 来てくれたのね……はぁっ!」
城門に着いてすぐ、モニカさんを発見する。
俺に気付いたモニカさんは、声を上げながら目の前の魔物を槍で突き刺して倒す。
だが、その様子に少しだけ違和感を感じる。
いつもの動きよりも少しだけ鈍い気がした。
「モニカさん……疲れてる? 動きがいつもより鈍いけど……」
「そりゃずっと戦ってたら鈍くもなるわよ……それに……これだしね」
そう言って、モニカさんが見せて来たのは右の横腹。
服が浅く切れており、血が滲んでいるのが見えた。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる