190 / 1,955
ヴェンツェルさんと打ち合わせ
しおりを挟む「こやつは昨日、地下牢に入れられていたからな。バルテルの謀略だろう、兵舎の食事に痺れ薬が盛られていた」
「はっはっは! 出された食事をたらふく食べたら、体が動かなくなったのには驚きましたな!」
「……そう言えば、城の兵士達の半分くらいが戦闘に参加出来ないようにされてたんだっけ」
バルテルが連れていた私兵が手練れ揃いだったとは言え、城の兵士全てを相手には出来ないからね、食事に一服盛って戦力を削ったんだろう。
ヴェンツェルさんは、その策にまんまとはまったというわけだけど……将軍がそれで良いのかと思う。
「まぁ、裏での工作や、策を巡らせるのはハーロルトに任せているからな。私は来た敵をこの手で打ち砕くだけだ!」
「それで、重要な時に体が動かなくて役に立たなくなってるわけだ……ハーロルトに負担がかかり過ぎだろう」
どうやら頭を使う事はほとんどハーロルトさんに任せているようだ。
ハーロルトさん、自分の部隊もあるのに大忙しだな……そんな中ヘルサルまで伝達に来てくれたり、俺を迎えてくれたりと色々してくれて……苦労人なのかもしれない……お疲れ様です、ハーロルトさん。
姉さんの言った脳筋という言葉がぴったり当てはまるヴェンツェルさんは、とにかく戦闘で活躍するタイプのようだね。
「まぁ、そんな事よりだ、リク殿。手合わせの方、受けてくれないか?」
「はあ……まぁ、少しだけなら……」
「そうか! ありがたい! 英雄と剣を合わせる事が出来るとは、長生きはするものだな!」
どうしても俺と手合わせしたい様子のヴェンツェルさんに、承諾すると満面の笑みで喜んでいる。
40代に見えるヴェンツェルさんが、長生きとかいうのはまだ早すぎる気がするけどね。
「よし! そうと決まれば話は早い! 早速訓練場に行くぞ!」
「は? え?」
今すぐ手合わせをするのだと、ヴェンツェルさんは俺の手を掴み部屋から連れ出そうとする。
軍もある国の中心部だから、訓練場とかで兵士達が訓練をしていて十分な広さがあるんだろうなぁ……なんて今考えてる場合じゃない!
「ちょ、ちょっと待って下さい、ヴェンツェルさん」
「そうだ、待てヴェンツェル。今日はもうこんな時間だぞ。手合わせは明日……いや、明後日だ」
「むぅ……しかし陛下、体がうずいて仕方ないのですよ……」
「お前の状態等この際どうでも良い。昨日の戦闘等もあって、英雄殿は疲れているのだぞ? 万全の状態でない者と手合わせして、そなたは満足なのか?」
「む……それは……いやしかし……むぅ……」
俺がヴェンツェルさんを止める横から、姉さんも止めてくれた。
さすがに時間が時間だし、今からすぐってのはね……疲れはあんまりないんだけど。
姉さんは上手くヴェンツェルさんの脳筋……というより、騎士道精神? のようなものを刺激して思いとどまらせようとしている。
ヴェンツェルさんの方は、万全の俺と戦う事にこだわりたいらしく、頭の中で葛藤しているようだ。
「……ぬぅ……陛下……明日……明日にはなりませんか?」
「明日は貴族達を含めた重要な会議があるのだぞ? そなたが参加しなくてどうするというのだ」
「……会議はハーロルトに任せます。どうせ、私が会議に出ても置物となっているだけで、発言は出来ませんし、話し合われている内容もよくわかりませんから」
「ふむ……それは確かにな……」
姉さん、ヴェンツェルさんが会議の役に立たない事を認めちゃった。
ヴェンツェルさんが自分で言ってる事ではあるんだけど……軍で一番偉い人が、国の重要会議に参加しなくても良いのだろうかと思ってしまう。
「いや、しかし明日の会議には、リクも参加して欲しいのだ」
「え? 俺も……ですか?」
「そうだ。バルテルや魔物達と戦った功労者だからな」
「いやぁ、俺も会議に出るのはちょっと……あまり役に立たないと思うし……そんな堅苦しい場所に行くのも……」
「はぁ……この子は……んんっ!」
明日の会議、姉さんとしては俺にも参加して欲しいようだけど、俺としては何としても回避したい。
貴族を含め、国の偉い人が集まる所に俺が参加しても、何を言えば良いのかわからないしね。
そんな事をするくらいなら、ヴェンツェルさんと手合わせしていた方が、気分も楽だ。
溜め息を吐いて、一瞬だけ女王様モードを解いた姉さんを見ながら、何とか逃れる方法を考えた。
「……よし、ヴェンツェルさん、明日。明日手合わせしましょう!」
「うむ、そうだな。明日が良いだろう!」
「……はぁ……そなた達は……わかった。嫌がる者を無理に参加させるものでもないだろう……本来は重要な事なのだがな。まぁ、リクは仕方ないとしても、ヴェンツェル……そなたは後で色々とやってもらうからな」
「は……色々とはどのような……?」
「ふふふ、それはもう色々だ。楽しみにしているが良い。ヴェンツェルの名代はハーロルトだな。……あやつも情報部隊として参加するはずなのに、苦労をかけてしまう」
「……は。ハーロルトには、私からも労っておきます」
「そうしろ」
俺が無理矢理ヴェンツェルさんに明日手合わせするように言うと、それに同調したヴェンツェルさん。
姉さんの方は、俺が本気で嫌がっているのだと察したのだろう、すぐに諦めてくれた……ありがとう、姉さん。
しかし、すぐに姉さんは邪悪と言える笑みを浮かべて、ヴェンツェルさんに詰め寄った。
ヴェンツェルさんには、会議に参加しない事で何かしらペナルティというか、罰が待っているらしい……俺には無いようで良かった……こういう時の姉さんとは、出来るだけ関わらないに限る……というのは昔の経験則だ。
でも、実際これくらいで軍のトップが重要な会議に参加しないというのは、出来る事なんだろうか?
女王である姉さんが許可した事だから、例外なのかもしれないし、ヴェンツェルさんが会議なんかで役に立たないのは、俺が思っているよりも浸透しているのかもしれない。
それでも、将軍という地位に就けているのは、逆に凄い事かもね。
「では、リク殿。明日の朝にでも迎えに来るぞ」
「朝ですか?」
「時間は早い方が良いと思ってな。何か不都合があったか?」
「いえ……不都合はないんですが……」
でも出来れば、朝からこの暑苦しいテンションの人と手合わせするのは避けたい。
どうしようかと考えていると、ちょっとだけ良い考えが浮かんだ。
「ヴェンツェルさん、俺以外にも人を連れて来て良いですか?」
「それは構わんが……誰を連れて来るのだ? リク殿と見合う戦いをする者か?」
「いえ、戦闘の方はどうかわかりませんが……俺の冒険者仲間です。この際、一緒に訓練するのも悪くないかと思いまして」
「ほぉ、リク殿の冒険者仲間か……良いぞ、若者が強くなろうとする事は素晴らしい」
「ありがとうございます。では、皆を集めるのに少し時間がかかるので……明日の昼食後、手合わせするという事でどうでしょう?」
「……モニカ達を使ったわね、りっくん」
俺の考えというのは、皆を連れて来る時間が欲しいから、手合わせを昼からにするという事だ。
朝からヴェンツェルさんと手合わせというのを避けたいがためだけど、本当に皆を集めるなら、昼からになるだろう。
ソフィーさん辺りは、訓練とか好きだから、喜んで参加してくれそうだしね。
……とりあえず姉さんはボソっと呟かないでくれ、ヴェンツェルさんに聞こえてしまうから。
11
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる