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子供からの依頼
しおりを挟む「あははは、ちょっと気になる事があったので……」
「気になる事? 何かあったの?」
「リクさんが、騒いでる子供の事が気になったようなので。それで、ここで話を聞こうと思いまして」
「子供……ね……」
「まぁ、まれにある事です」
マティルデさんはギルドマスターだから、今までも同じような事があったのかもしれない。
何となく、子供が騒いでいる事に納得してる様子だ。
マティルデさんがソフィーの方を見て、同じく見た事のある様子のソフィーが答えた。
「まぁ、リク君が良いと言うのならいいんだけど……私は口を挟まないから、自由にしていいわよ」
「はい、ありがとうございます」
「……くっ……仕事や周囲の警戒が無ければ……」
「はぁ……リクさん、こっちに座って」
「え? うん」
マティルデさんに許可をもらい、笑顔でお礼を言うと、何かを堪えるようにマティルデさんが俯いた。
それを見て、モニカさんが目を細めながら俺の座る場所を指定。
マティルデさんから一番離れた場所だけど……何か理由があるんだろうか?
「お待たせしました。子供を連れて来ました」
「……えっと?」
「ありがとうございます」
モニカさんとマティルデさんの行動を不思議に思っていると、受け付けの女性が子供を連れて来てくれた。
子供はユノよりも小さい……小学校低学年くらいに見えた。
パレードの時と言い、このくらいの年の子と、最近は縁があるのかもしれないね。
「それじゃ、ここに座って? えっと、何故ギルドに来たか、話せる?」
「……うん」
受付の女性が、俺の向かいの場所に子供を座らせ、優しく声をかける。
子供と接するのに慣れてる感じだね、頼もしい。
子供の方は、戸惑いながらも椅子に座り、俺やモニカさん、ソフィーやマティルデさんを見たりと落ち着かない。
まぁ、いきなり連れて来られて、こんな人数に囲まれたんじゃ、それも仕方ないか。
さっきまで泣いているような声で叫んでいた子供は、少し目が赤くなっていた。
子供が泣くような事って、何があったのか……?
「えっと……依頼を受けて欲しいんだ! ……です」
「依頼を受け、それを冒険者に託すのがギルドの役目よ。それで、それはどんな依頼なの? 喋りやすい言い方で良いわよ」
「……うん」
おそらく、落ち着かない子供は今、頭の中で色々と考えが回ってしまってるんだろう。
意を決して声を上げたは良いけど、すぐに小さく丁寧な言葉にしようと呟く。
受付の女性が優しく声をかけ、小さく頷く。
「落ち着いて、ゆっくりで良いから、話してみて?」
「わかった」
俺からも声をかけ、もう一度頷いた子供は、自分を落ち着かせるように深呼吸をする。
偉いなぁ……俺がこの子のような年の頃は、姉さんに甘えてばかりで、見ず知らずの人達に囲まれたら、どうして良いかわからなかっただろうなぁ。
「えっと、僕の住んでる村を助けて欲しいんだ……」
「村を? その村は助けが必要なの?」
「うん。魔物がいっぱいいるんだ……」
「魔物が……」
男の子は、村を助けて欲しいと言う。
続けて受付の女性が理由を聞くと、魔物がいるという。
その言葉に、この場にいる全員が目を細めて男の子が言った事を考え始めた。
魔物か……王都の周囲の魔物は減ったけど、この子の村の方へ移動した……という事もあるのかもしれないね。
「……どんな魔物がいるのかわかる?」
「ううん、僕は見て無いからわからない。でも、村の人達が危険な魔物が多いって言ってた」
「その魔物を倒して欲しくて、ここに来たのね?」
「うん。冒険者さん達は、魔物と戦えるんでしょ? だから、村の近くにいる魔物を倒して欲しくて……」
「そう……」
男の子が言うには、村の近くに危険な魔物が多く来たという事らしい。
どんな魔物かはわからないけど、村人達で対処できないから、冒険者に依頼しようと考えたんだろう。
男の子の話を聞いて、特に難しい顔をしているマティルデさん。
「すまないね、ちょっと口を挟ませてもらうわ。……えーっと、どうして君だけがここに来たの? それに、他に誰か依頼に来れる人はいなかったの?」
口を挟まないと言っていたマティルデさんだけど、気になって質問をして来たようだ。
まぁその質問は、皆考えていた事だろうからね。
マティルデさんの質問を聞いて、男の子は何かを思い出したように顔を歪ませ、目に再び涙を滲ませ始めた。
「……本当は、父ちゃんと一緒に来てたんだ……だけど父ちゃんは……途中で……」
「「「「「…………」」」」」
涙をこぼし始め男の子に、誰もかける言葉が見つからない。
その後、落ち着くのを待ってから事情を詳しく聴いた。
男の子がいた村は王都から、馬で大体2.3日程南西に行った場所にあるとの事。
地理を考えても、確かにその場所に村があると、マティルデさんが言ってくれた。
村は農業をしていて、特に裕福でもないけど貧乏でもない、平凡な村だそうだ。
そんな村の近くに、多くの魔物が発見されたのは10日以上前の事らしい。
ある時、村で農業をしている人の一人が、魔物に襲われ、大きな怪我をして帰って来た。
その事で、村の近くに魔物がいる事を知った村人たちは、数人で様子を窺ったのだそう。
そして、そこで見たのは数多くの魔物達だった。
村の者だけではどうする事もできないと考えた村長が、冒険者ギルドへ魔物討伐の依頼をしようと男の子……ロータの父親に頼んだそうだ。
村では、魔物を見張る係と、収穫間近の作物を被害に合わないうちに収穫する人手がいるため、ロータとその父親に白羽の矢が立った。
魔物が村を目指して襲って来るなどの、万が一の際、すぐに村を放棄して逃げる準備にも人手が割かれてたらしい。
ロータの父親は元冒険者だったから、冒険者ギルドとの話もすぐにできるだろうとの考えもあったようだ。
まだ小さいため、農業に従事していないロータも、父親と一緒に行く事になった……王都まで行くだけなら、大きな問題も無く辿り着けるから、と皆考えていたらしい。
しかし、王都までの道すがら、数人の野盗に強襲され落馬。
その時に怪我をした父親が、満足に動けない状況で、襲って来た野盗達によって囲まれた。
二人揃って逃げ出す事が不可能と理解したロータの父親は、まだ動けそうなロータを急いで馬に乗せ、馬を叩いて王都に向けて走らせると同時、足を引きずって野盗達に挑み、ロ―タと馬が逃げる道を確保しした。
ロータが走る馬にしがみ付きながら最後に見たのは、囲まれた野盗達の剣や槍によって、体を突き刺された父親の姿……。
ロータの話を総合すると、そういう事らしい。
「……父ちゃんは……父ちゃんは……僕をここまで来させるために……うっ……うぁぁぁぁぁ!」
「……うんうん、よく我慢してたわね……」
父親の最後の姿を話したところで、思い出したロータが泣きじゃくり始めた。
慰めるように、受付の女性がロータの頭を抱き締め、落ち着かせるようにゆっくりと背中を撫でている。
「……魔物に野盗か……」
「マティルデさん、こういうことは多いんですか?」
「多いとは言えないが……少なくはないな。先代の国王陛下からの政策で、王都を始めとした国中の街の治安強化をしたの。でも、それで追い出された……捕まらなかった者達が、各地に散って野盗化しているらしいのよ。おかげで王都や街は住みやすくなったのだけど……陛下も、頭が痛いでしょうね」
「そうなんですね……」
先代の国王という事は、姉さんがこっちで生まれ変わる時の父親か……。
治安を良くして暮らしやすくし、住んでる人達に平和を……と考えるのは良い事だと思う。
それでも悪い事を止めず、街や村に定住せずに、隠れ住んで何の罪もない人達を襲っている野盗達……許せないね。
センテ近くの森にいた野盗も、そういう人達だったのかもしれないな……。
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