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エルフからのお説教
しおりを挟む「さて、俺の方も休むか……」
皆がいなくなって静かになった部屋の中で、座っているソファーの対面から漂う雰囲気を無視するように呟いた。
満腹になり、お腹を見せてソファーの上に転がっているエルサを抱いて立ち上がった。
さっさと風呂に入って、今日はもう寝ようかな……寝たいなぁ。
「リク……まだ、話しは終わってないわよ?」
「そうだ。私達の事を忘れてもらっては困るな」
「……あー、えっと……うん、そうだね」
「はぁ……だわ」
エルサを連れて、ささと風呂場へ逃げようと思ったけど、失敗した。
エフライム達が部屋を出て行っても、動かず座っていたから、悪い予感がしてスルーしようとしてたんだけど、それは無理だったようだ。
姉さんが部屋を出る時、頑張ってと言い残してたのは、やっぱりこの事だったんだろうなぁ。
仕方なくソファーに座り直し、一度抱き上げたエルサを膝の上に乗せる。
この事を予想していたのか、溜め息を吐いたエルサは、諦めたように丸くなった。
若干、耳を塞ぐようにしてるのは、これから行われる会話を聞きたくないからか。
「それで、どうして私達を置いて行ったの?」
「どうぞ……」
「ありがとうございます。えぇっと……その……」
フィリーナがこちらを鋭く見ながら質問して来る。
そのタイミングで、話が長くなると感じたんだろう、ヒルダさんが新しいお茶を淹れてくれるのにお礼を言いつつ、何と言ったらいいのかを考える。
「その……ロータ……冒険者ギルドに来た子のさ、村の近くに魔物が出たんだ。被害が出てる状況じゃなかったけど、あまり猶予はないと思って。それで、フィリーナ達を待たずに出発したんだ……」
「その辺りの話は聞いたわ。もちろん、魔物が近くにいるという状況は、村に住む人たちにとってすごく不安な状況だと思うわ。いつ襲われるとも限らないしね」
「実際、俺達も似たような状況だったからな。まぁ、こちらは魔物が襲ってきている状況だったが」
フィリーナ達を置いて、オシグ村に行った時の事を話す。
あの時は実際、ロータの事情もあって、早く村に行かないと……と考えてたのは確かだ。
王都にの残された二人は、誰かから俺達が王都を出た理由を教えられたんだろう。
話を聞いて、エルフの集落と似たような状況だと、理解を示しつつも、二人は不満そうだ。
「魔物の脅威に晒されて、村に住む人達が危ないという状況で、リクがおとなしくしていられないのはわかるわ。そこがいい所だと思うしね。事実、それで私達エルフの集落は救われたのだし」
「そうだな。リクの強さありきだとは思うが、その考えがなければ、今頃私達の集落は魔物達によって壊滅していただろうしな」
「でも!」
「っ!」
フィリーナとアルネの二人が、エルフの集落であった事を考えて、村を助けに行った俺の事は理解してくれているようだ。
怒られるだけだと考えていた俺は、そんな二人に少し安心したところで、フィリーナが大きな声で流れを断ち切った。
油断していた事もあり、急に出された声に体がビクッと反応する。
「私達が城に来ないからといって、置いて行くのはないんじゃないかしら!? そりゃ、パレードの後の事があって、外へ出づらかったのはあるけど……でも、私達もリクと一緒に行きたかったのよ?」
「うむ。それに、王都とは離れた場所へ行けば、パレードを見ていない人間達が多いだろう。エルフという、人間の国にあって珍しい種族だという視線はなくならないだろうが、それでも王都とは違って外を自由に出歩けるはずだ」
「そう、だね」
エルフである二人は、特徴的な耳を隠さなければ、当然エルフだとすぐにわかる事になる。
人間が多い国だから、どこに行っても好奇の視線がある事にはなるけど、それは二人にとっていつもの事。
もし耳を隠したとしても、二人共目を引く美形だから、目立ってしまうしね。
ただ、王都だとパレードの事があって以来、外をあまり歩けなくなっていたから、閉塞感を感じていたのかもしれない。
オシグ村や子爵邸に行けば、見られる事になっても、人が集まり過ぎて自由に行動できないという事はなかっただろう。
それを考えると、何も言わずに置いて行ったのは申し訳ないと思う。
「それに、リクなら城の人を使って、私達に伝令を送る事もできたでしょ?」
「それは……確かに……」
便利な日本で育った弊害なのかもしれないけど、城の人達の誰かに頼んで、フィリーナ達に言伝を頼めば良かったんだと、今更ながらに気付く。
同じ王都、しかも城から近い場所で宿を取っているはずなので、時間もかからない。
そうした発想が出なかったのは、携帯だとかネットが発達した場所で育ったため、人に頼んで何かを伝えるという事に馴染みがなかったからなのかもしれない。
まぁ、人付き合いが少なかった俺だからというのもあるかもしれないし、誰か他の人が教えてくれれば……とも思ったけど、これは言い訳だね。
連絡を怠って、実際に置いて行くと言ったのは俺なんだから、怒られるべきは俺か。
「まったく……リクは優しいし、強い事も知ってるけど……」
「その通りだ。冒険者ではなくとも、ここにいる目的の多くは、エルフとして人間と共にいる経験を……」
「はい……はい……申し訳ありません……次からは気を付けます」
フィリーナとアルネの二人がかりで、説教をされて俺には何か言い訳をする事もできない。
まぁ、悪いのは俺だしね。
説教が長くなりそうな気配を感じ、俺の膝の上で丸くなっていたエルサが、途中でヒルダさんの方へ飛んで行き、お風呂をせがみ始めた。
目線だけでヒルダさんにエルサの事をお願いしておき、俺は一人でエルフ二人がかりの説教を聞く事に。
ヒルダさんがエルサを風呂に入れて出て来てからも、説教は続く。
ドライヤーもどきで毛を乾かせない事に、エルサは不満そうだったが、ヒルダさんにタオルでしっかり水気を取ってもらって、ベッドで寝る事にしたようだ。
我関せずでベッドで寝たエルサが羨ましかったけど、俺を逃してくれないエルフの二人による説教は、夜遅くまで続いた。
……明日、早くは起きれそうにないなぁ……。
今度から、周囲への連絡は怠らないように気を付けよう。
もう同じような説教を受けないために――。
――――――――――――――――――――
「リク様、おはようございます!」
「っ!」
「何なのだわ!?」
「何!?」
「何だ!?」
翌朝、昨日までの疲れもあり、熟睡していた俺は、部屋の入り口が開かれた大きな音と、それに続く声で起こされた。
体を起き上がらせ、部屋を見る。
突然の音と声に、俺以外にエルサやフィリーナ、アルネもびっくりして起きたようだ。
ちなみに、フィリーナとアルネは、説教が長くなり過ぎたおかげで、宿へ戻るタイミングを逃してソファーで横になって寝ていた。
まぁ、説教する事に疲れて、城を出るのも面倒だったんだろうと思うけど。
フィリーナなんて最後の方は、喉が枯れそうになってたからね……うん、ごめんなさい。
「ふむ……レナーテお嬢様、この方法は驚かせてしまうだけだったようです」
「そうなのですか?」
部屋の入り口を見ると、レナとメイさんが何やら話していた。
さっきの声は、レナの声か……。
朝から子供らしく元気だなと思う反面、昨日は遅くまで起きていたから、もう少し寝かせて欲しいとも思う。
さすがに、レナの方には悪気はないだろうから、怒ったり不満を言ったりはしないけどね。
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