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スイカは切って食べましょう
しおりを挟む「リク、これ切らないの?」
「あー、ここではそうみたいだけど……やっぱりスイカは切って中身を食べた方がいいよな?」
「もちろんなの! 本当は塩も欲しいけど……なくても切って中身を食べれば美味しいの!」
俺の隣に座ったユノは、スイカを見ながら切って食べると考えているようだ。
地球どころか、日本に遊びに来ていた元神様だから、スイカの食べ方や美味しさを知っているのも当然か。
日本じゃありふれたものだしね。
ちなみに、俺の頭にくっ付いたままのエルサは、俺の記憶から美味しいという事はわかってるはずだけど、キューと似ているので、どう判断した物か様子を窺っているみたいだ。
「えーと、すみません。切って食べてもいいですか? さすがに大きいので……」
「そうか? まぁ、確かに大きいか。わかった。えーと、包丁を……」
スイカは大の大人が抱える程の大きさがある。
それこそ、俺やユノの顔よりも大きいくらいだ。
なので、その大きさを理由に切って食べる事をおっちゃんに提案。
スイカを切る事を承諾したおっちゃんは、包丁を取りに店の中へ入ろうとしたが、それをユノが止めた。
「包丁がなくても大丈夫なの! 私が切るの!」
「ユノちゃんがか? 大丈夫なのか?」
「ユノちゃん、無理しなくていいのよ?」
椅子から立ち上がったユノが、手を上げてアピールする。
おっちゃん達や、奥さん方は、小さい女の子であるユノの見た目から、刃物を扱えるとは考えていないようだ。
でも、俺が剣や包丁を使って切るよりも、ちゃんと等分に切ってくれるんだろうな……。
どうでもいいけど、いつの間にかさらに他の店から店主さん達や、その奥さん達が集まって来てる。
ちょっとした人だかりができてて目立つけど……皆店の方は良いんだろうか?
皆、久しぶりにヘルサルに来た俺達の事を歓迎してくれてるようだから、ありがたい事なのかもしれないけどね。
「大丈夫なの。じゃあ、切るの!」
「あ、包丁は……」
「包丁なんていらないの! っ!」
「「「おぉ!」」」
心配するおっちゃん達や奥さん方に大丈夫と言い放ち、ユノが腰に下げていた剣に手を持って行く。
ユノが剣を使うとは思わず、包丁を用意しようとしたおっちゃんの言葉を否定して、全身から手、剣に対して流れるように力を移動させた。
居合とかそういうものに近いのか、ユノが一瞬で剣を抜き、スイカに向かって幾度か振り、最後に鞘へと戻す。
剣をしまった瞬間、スイカが綺麗な形で切られ、テーブルの上に並んだ。
……並んだと言っても、丸々としたスイカを切ったんだから、散らばったりテーブルから落ちるのを防ぐため、俺が手を動かして切られた傍から並べたんだけどね。
多分、ユノの剣も俺の手の動きも、周囲で歓声を上げながら見てる人達には見えてなかったかもしれない。
「動きが見えなかった気がするが……いつの間にか、野菜が切られてるぞ」
「綺麗に並んでるわね。ユノちゃん、凄いわ!」
「切った中は赤いのか……」
「アンタ、知らなかったのかい?」
「いや、珍しい物という事で仕入れたんだが、中身がどうか教えられなかったからな……女王陛下への献上品になるくらいだし、変な物じゃないと言うのはわかってたしなぁ」
ユノの剣技……というより動きから切られたスイカが並ぶまでを、目を丸くしたり驚いたりしながら見ている周囲の人達。
それとは別に、八百屋のおっちゃんは切られたスイカを初めて見て、中身が赤い事に驚いている様子だった。
奥さんにも言われてるけど、仕入れるのに中身を確認したりしてなかったのか……試食とかしなかったんだろうなぁ。
献上品、というブランド力のようなものがあるからこそ、信頼して仕入れたんだろうけど。
「リク、スイカ食べるの!」
「そうだな。えっと、皆さん! 切った物は多くあるので、一緒に食べましょう! 八百屋のおっちゃん、お金は払うから、いいですよね?」
「ん? あぁ、それは構わない。それに、リクさんに食べてもらおうと持って来た物だ、それをリクさんが皆に振る舞う事に何も言わねぇよ。金もいらないから、是非皆で食べてみてくれ! ……俺も頂くがな?」
「あはは……それじゃあ、皆で食べましょう!」
切られて並んでいるスイカを目の前に、ウズウズして堪え切れなくなったユノが、真っ先に手を伸ばす。
それを見ながら頷き、周囲に集まっている皆に声をかけた。
おっちゃんはお金はいらないと言うけど……いいのだろうか? まぁ、ヘルサルの大通りを歩くとこういう事がよくあるんだけどね。
ともあれ、許可をもらったので、俺や集まって来ていた人達もそれぞれスイカを手に取った。
大きなスイカだから、さすがに俺やユノだけで食べきれなかっただろうしなぁ。
エルサなら食べられたかもしれないけど、スイカ丸ごと一つとか、お腹壊しそうだし……ドラゴンがお腹を壊すのか知らないけど。
ユノが切ったスイカは、食べやすい三角の形に切られてる。
それをそれぞれの手に持ち、赤い果肉部分を皆で一斉に口へと運んだ。
「シャク……ん!」
「切ると汁が溢れて、手が濡れるんだな……ん!」
「シャク、シャク……おいおい、これは!」
「アンタ、これって!」
「シャクシャクシャク……美味しいの! ……もっと食べていい?」
「うん、甘みも多くて水分も多い。いいスイカだね。……ユノ、お腹を壊さない程度に食べるんだぞ?」
「……リク、私も食べるのだわ」
周囲に集まっている人達は、初めて食べる物だからか、意を決するようにスイカを齧る。
もちろん、テーブルに置かれていた下になってる皮部分ではなく、赤い果肉部分からだ。
齧った瞬間や咀嚼した瞬間、飲み込んだ瞬間とそれぞれに反応する瞬間は違うが、皆が皆、スイカの甘さや水分が多い中での美味しさに驚いている様子だ。
俺やユノはスイカを知ってるから、躊躇する事もなく食べる。
記憶にあるスイカよりも、甘みが強い気がしたけど……それはこのスイカが上等な物だからなのか、俺が以前食べた物があまり良くなかったのかはわからない。
まぁ、あまり高い物は買えなかったから、安売りしてるスイカとかばかりだったからかもしれないね。
すぐに一つを食べきったユノは、おかわりを要求。
まだまだ切ったスイカはあるし、量が多いからユノ一人で何個も食べたりしても問題無さそうだ。
朝食を頂いた後だし水分も多いので、お腹を壊さない程度にするよう注意しながら、次を食べさせる。
そんな俺やユノを見ていたエルサが、キューとの違いを判断しようと真剣な雰囲気を醸し出していたはずだけど、食欲は刺激されたのか、食べたいと要求してきた。
「もちろん、食べてもいいぞ。あ、ただ、頭の上は止めてくれよ? 汁でベトベトになりそうだから」
「わかったのだわ」
俺の頭にくっ付いたままスイカを食べたりしたら、汁でベトベトになること間違いなしだ。
俺の言葉を聞いたエルサは、素直に返事をして、俺の頭からふわりと飛んで、テーブルに降りた。
後ろ足だけで器用に座った状態になりながら、前足……手で三角のスイカを一つ取る。
小さい状態だから、エルサの体がほとんどスイカに隠れる状態だね……モフモフがスイカの汁でベトベトにならなければいいけど……。
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