神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
479 / 1,955

捕まるヴェンツェルさん

しおりを挟む


「そうですか。間に合って良かったです。俺達も今日戻って来たばかりなので、丁度良かったですね」
「そうだな。リク殿が遅れたら、陛下にも迷惑をかけてただろうしなぁ……」
「……」

 帰って来たその日から訓練、というのもできなくはないけど、今日くらいは休みたいと思うのが本音だ。
 お師匠さんも今日は休むようだし、タイミングが良かったと思って、今日はゆっくり休ませてもらおう。
 そう思っていたら、安心した様子になりながら、ヴェンツェルさんが顔をしかめる。
 マックスさんも、モニカさん達にお師匠さんに気を付けろと言っていたし……やっぱり何か問題があるのだろうか?

 ヴェンツェルさんの言葉を聞いて、ヒルダさんが顔を俯けているけど……ちょっと怒りのように思える雰囲気がにじみ出てて、少し怖い。
 以前にも、何か問題を起こした事があって、それでヒルダさんは知っているのかもしれない。

「ね……陛下にも迷惑というのは、何か問題を起こすんですか? マックスさんも言っていましたけど」
「いやぁ……問題というかなぁ……まぁ、明日に会えばわかるだろう。マックスから、注意されるような事は言われなかったか?」
「えーと、モニカさん達に言っていましたね。俺には特にありませんでしたが」
「そうだろうな。……口止めされているというわけではないが……前もって言うと、ヘソを曲げそうだからな。――ヒルダ、陛下には?」
「伝えてあります」
「なら、大丈夫だろう。すまないが、俺からは気を付けてくれとしか言えない。まぁ、主にリクではなくその他に対してだが」
「……わかりました」

 マックスさんやマリーさんからも気を付けろと言われたが、何をどう気を付ければいいのかは教えられていない。
 ヴェンツェルさんが確認したように、姉さんには伝えられているようだし、ヒルダさんが少し意気込むような雰囲気を見せている事から、あっちの警戒は十分っぽいね。
 ともかく、どんな人なのかはわからないけど、警戒しておくに越したことはないようだ。
 俺ではなく、モニカさん達の方を見ながら忠告をするヴェンツェルさんに、皆が不思議そうにしながらも頷く。

 それにしても、俺ではなく女性陣にばかり注意するのは、何故なんだろうか……?
 俺がエルサと契約してるから……というのは違うだろうし……ううん……。

「失礼します。ヴェンツェル様はこちらに……」
「あ……」

 ヴェンツェルさんと話していると、入ってきたまま半開きになっていた扉が開き、ハーロルトさんが顔を覗かせる。
 どうやらヴェンツェルさんを探しに来たみたいだ。
 そのヴェンツェルさんは、ハーロルトさんの方へ顔を向けて、小さく声を上げて気まずそうな表情になった。

「ヴェンツェル様! やはりここにいましたね! 今日は報告もあるのですから、途中で抜け出さないで下さい!」
「いやぁ……リク殿が帰って来たと聞いてな、師匠の事を伝えねばと……他の者に任せるよりも、私が伝えた方が確実だろう?」
「リク様に直接伝えたいのはわかりますが、せめて仕事が終わってからにして下さい!」

 顔を覗かせたハーロルトさんは、ヴェンツェルさんを見つけて叫び、怒り始める。
 ヴェンツェルさんは、俺が帰って来た事を知ってすぐに仕事を抜け出してきたらしい。
 姉さんといい、ヴェンツェルさんといい、国のトップ陣がこの様子で大丈夫なのだろうかと、少し心配になるが、ハーロルトさんやヒルダさんといった、優秀な人のおかげでなんとかなっているんだろう、ありがたい。

「いやぁ……それだと夜中になりそうだったからな……」
「それは、貴方が仕事を溜め込んでいるからでしょう!? まったく、行きますよ! ――リク様、失礼しました。ヴェンツェル様は回収して行きますので、ごゆっくりお休みください」
「あー……あははは、わかりました、お疲れ様です」

 言い訳しようとするヴェンツェルさんに、ハーロルトさんが一喝し、俺へと頭を下げる。
 他の皆もそうだろうけど、俺も苦笑するしかない。

「まったく、本当にお疲れですよ。それでは――ほら、行きますよ!」
「いたたたた! 抜け出したのは悪かったから、服を掴むな! 首が締まる!」
「もう逃がさないためですからね。まったく貴方という人は……」

 苦笑したり唖然としている俺達を余所に、愚痴を漏らすように言いながら、ハーロルトさんはヴェンツェルさんの服の襟を掴んで、引きずって行った。
 部屋を出ても、扉が閉まるまでの間、外からハーロルトさんとヴェンツェルさんが騒ぐ声が聞こえていた。
 あれはあれで、ある意味信頼関係なのかもしれないな……多分。
 巨漢と言っても差し支えない程、筋骨隆々で身の丈も2メートル近くありそうなヴェンツェルさんを引きずって行くハーロルトさんは、情報部隊であってもしっかり訓練された膂力があるようだ。

 細身だからあまり想像できないけど、軍所属なんだから、情報部隊とかは関係なく人を引きずるくらいの力を付ける訓練はするか。
 いや、人を引きずるためではないだろうけどね。

「嵐が過ぎ去ったような感覚ね……」
「伝えたい事を伝えて、すぐに引きずられて……体が大きい分迫力があったと言えるか」
「ヴェンツェル様も、リク様方が戻って来るのを楽しみにしていたのでしょう」

 ヴェンツェルさんを引きずって行ったハーロルトさんを見送り、一気に静かになった部屋で、モニカさん達が感想を漏らす。
 確かに、筋肉ダルマとも言えるヴェンツェルさんがいるだけで、若干圧迫感があるし、声量も大きいから圧倒される。
 さらにそのヴェンツェルさんを黙らせて連れて行くハーロルトさん……。
 俺達はほとんど見るだけしかできなかったが、なんとも騒がしい一幕だったなぁ。

 ヴェンツェルさんには失礼かもしれないけど、ヒルダさんがフォローするように言ったのを聞いて、ムキムキのオジサンがワクワクしながら帰りを待つ姿を想像してしまって、微妙な気分になってしまった……。
 レナなんて、目を白黒させてるし……クレメン子爵領で騎士団員と顔を合わせたりしていても、あぁいうのは慣れてないんだろう、俺も慣れてないし。
 ちなみにメイさんは、ヴェンツェルさんが入ってくる瞬間に飛び上がって、また天井に張り付いていた。
 警戒してるわけではないんだろうけど、虫みたいでこれまた微妙な気分。
 ……もしかしたら、天井が一番落ち着く場所なのかな?


 ヴェンツェルさん達が去った後、またしばらく談笑してゆっくりしていると、疲れた様子の姉さんとエフライムが部屋へと来て挨拶。
 談笑する中で、次に部屋へ来るのはアルネかなと予想してたんだけど、外れたみたいだ。
 アルネはまだ、書物に埋もれて夢中になってるらしい……何か面白そうな記述でも見つけたのかもしれないね。

「……リク様、数々の無礼……お許し下さい……」
「……えっと、急にどうしたの、エフライム?」

 姉さんに付き従うように、部屋へと入ってきたエフライムは、俺の顔を見るなり跪いて頭を垂れた。
 急なエフライムの行動に、俺だけでなくモニカさん達も首を傾げてる。
 レナはキョトンとして、よくわかっていない様子で、姉さんとヒルダさん、メイさんは苦笑してるね……。
 姉さん達は、何か知っているのかな?


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...