492 / 1,955
ヒルダさんは警戒中
しおりを挟む「何度も言うようじゃが、ワシの専門は剣じゃ。槍の事を詳しく教えてやることはできん。それと、そちらの嬢ちゃん……ソフィーちゃんもじゃ。ワシはリクに戦い方を教えに来た。じゃから、常に相手をしてやれるとは限らん。それでもいいのであれば、教えてやろう。……若者が、無理をして身の丈に合わない依頼で命を落とすのは、しのびないからのう……」
「は、はい! わかりました! よろしくお願いします!」
「私も了解しました。お世話になります!」
「あ、えっと……よろしくお願いします!」
エアラハールさんからモニカさんとソフィーに、注意のような説明する。
真剣に話すエアラハールさんは、心から若い人間が志半ばで亡くなってしまう事を、憂いてるように見える。
……素直じゃないお爺さん……なのかな?
元Aランク冒険者であり、今は引退しているエアラハールさんは、結構な年だ。
これまでにも、無謀な挑戦をして、死んでしまった冒険者というのを数多く見て来たのかもしれない。
引退して、スケベ爺さんに見える振る舞いをしておきながらも、やはり心は人を助ける冒険者のまま……という事なんだろう。
こういう人に師事できる事、紹介してくれたヴェンツェルさんも含めて、感謝しないとな。
「うむ……そうじゃな、モニカ嬢ちゃんはマックスの娘という事もある。剣ではなく槍を使う事で、ワシから教える事は少ないかもしれんから、金貨三十枚にしておくからのう」
「あ、はい……」
「ひょっひょっひょ! これで若いおなごと遊び放題じゃ!」
モニカさんの授業料は俺やソフィーよりも安いようだけど、思わぬ臨時収入になったため、女性と遊ぶ算段をしてあまり人に見せられない表情で笑っているエアラハールさんに、さっきまでの真剣さや威厳も、ましてや冒険者魂のようなものは一切感じられない。
……やっぱり、ただのスケベ爺さんなのかもね――。
「ん?」
「ヒルダさんね、どうしたのかしら?」
話がまとまったところで、訓練場に入って来る女性がいた。
そちらに視線を向けると、後ろにいたモニカさんも入り口を見て、呟く。
確かに、訓練場に不釣り合いなメイド服を着ているその人物は、ヒルダさんだ。
入ってくるなり、広い訓練場を見渡して、真ん中付近で固まっている俺達に気付くと、足早にこちらへ来た。
「リク様、ご昼食の用意が整っておりますが、如何致しましょう? それと、アルネ様、フィリーナ様も部屋でお待ちです」
「呼びに来てくれたんですね、ありがとうございます。……アルネ達もいるのなら、一緒に昼食を頂きます。――エアラハールさんもどうですか?」
昼食のため、俺達を呼びに来てくれたみたいだね。
アルネとフィリーナも部屋にいるのか。
姉さんやエフライムはまだしも、レナも部屋を訪ねて来そうだし、戻って皆と一緒に食事をした方がいいだろう。
そう思って、ヒルダさんに戻る事を伝えつつ、エアラハールさんにも一緒にどうかと聞く。
城に来てくれてるのに、俺達だけ昼食を取って、エアラハールさんはどこか別の場所で……というのも何か違う気がするからね。
ちなみに、ヒルダさんはエアラハールさんを警戒しているため、いつもより少し離れた場所で止まった。
モニカさんやソフィーが被害に遭ったのを見ているから、当然の事だと思う。
「ワシもいいのかの?」
「人数が増えるけど、大丈夫ですか?」
「料理は多めに用意しておりますので、問題ございません」
「なら、ご馳走になろうかの。ひょっひょ、城の食事か……楽しみじゃのう」
首を傾げるエアラハールさんと一緒に、ヒルダさんに大丈夫かと聞き、問題ないと頷いてくれたので、全員で一緒に昼食を取る事になった。
食事をしながらでも、昔の冒険者をしていた時の事を聞いたり、マックスさんやヴェンツェルさんの事を聞いてみるのも、楽しいかな?
いや、アルネがいるんだ……多分ヘルサルでの事を聞きたがるだろうから、無理かもしれないなぁ……。
フィリーナでさえ、魔力圧縮に関して興奮気味だったんだし、アルネの反応は大体予想できる。
苦笑しつつも、ヒルダさんに連れられてエアラハールさんやモニカさん、ソフィーと一緒に部屋へと戻った。
先頭にヒルダさんで最後尾はエアラハールさん。
真ん中にいる俺に抱かれて、肩越しで後ろを見張っているエルサという、完全にエアラハールさんを警戒した布陣での移動となっている。
……ここまでしたら、さすがのエアラハールさんも変な事をしたりはできないだろうね……ドラゴンのエルサが見張ってる事は、一番大きいだろうけど。
「リク! どういう事だ!?」
「えっと……アルネ、どうしたの?」
「ちょっとアルネ、興奮し過ぎよ?」
部屋へと戻り、中へ入ると第一声がアルネの怒ったような叫び共に詰め寄られる。
その後ろには、そんなアルネを諌めるように声をかけるフィリーナもいた。
実際に怒っているわけではなく、興奮している様子なんだと思うけど……いきなりどういう事かと言われるとは思ってもみなかった。
俺の予想よりも、アルネの反応が上回ったかぁ……。
「とりあえず、座ろう。うん、その方が落ち着いて話せるし、ね?」
「落ち着いて話している場合では……」
「いいから! さっさと座りなさい!」
「おいフィリー……ぐえっ!」
とにかく落ち着かせるように話しかけ、座ってからとしたかったけど、興奮が収まらないアルネ。
尚も俺へと詰め寄って来るけど、フィリーナが大きな声で遮ってアルネを止め、襟首を掴んでソファーへと引っ張った。
いきなり掴んだもんだから、服で首が締まってるけど大丈夫かな? まぁ、ソファーに投げられて咳き込んでるだけだから大丈夫か。
アルネをフィリーナが制するのを見届けてから、モニカさん達と一緒にソファーへと座るけど、もちろんエアラハールさんは女性陣からは一番離れた場所になっている。
少しいじけ気味になったエアラハールさんだけど、エルフのフィリーナを見て気を取り直したようだ。
珍しいのと美人だからだろうな……アルネの方にはほとんど興味を示してないし。
ちなみに、ふて寝していたユノはもう起きていて、レナと一緒にいたんだけど、アルネが興奮して俺に詰め寄る姿をポカンと見ていた。
レナがいるのならメイさんも……と思い、天井に視線を送ると、両手両足で逆さにくっ付いてるメイさんと目が合い、器用に天井から会釈された。
……やっぱり天井が定位置なんですね。
エアラハールさんの事をヒルダさん辺りから聞いているのか、若干いつもより離れた天井にくっ付いている。
さすがにエアラハールさんでも、天井までお尻を触りに行ったりはしないと思う……いや、やりかねないか……。
「それでリク、魔力を練るというのはどういう事だ? 圧縮させるという事のようだが……」
「まぁまぁ、とりあえず昼食を頂きながらにしようよ。せっかく用意してくれてるんだしね?」
「そうよアルネ。聞きたい気持ちはわかるけど、他の皆の事も考えないといけないわよ? まったく、魔法の事になると周囲が見えなくなるんだから……だから研究に向いているのでしょうけど」
フィリーナに引っ張られて、首を絞めつけられた事で少し冷静になったアルネは、それでも興奮気味に待ちきれないとばかりに俺へ質問する。
それを抑えつつ、まずは昼食を頂く方を優先。
せっかく作ってくれたのに、料理そっちのけで話ばかりしてもいけないしね。
特にソフィーとエルサ、ユノ辺りからお腹が減ったと騒がれそうだからなぁ――。
1
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる