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初めての二日酔い
しおりを挟む「いやでも、エルサと出会ってから、ほとんどいつも一緒だったから……。寝る前の事を覚えていないけど、何かあったんだっけ? うーん……っ!」
どうしてエルサがここにいないのかを考えながらも、とにかく朝の支度をしようと体を起こす。
ソフィーやエアラハールさんに聞けば、何かわかるかもしれないし、もしかしたらそちらに言っているのかもしてないしね。
そう思ったんだけど、体を起こした途端に襲ってきた頭痛によって、頭を抑えて固まった。
「っぅ~……! なんだこれ、頭痛……風邪かな? でも、喉が痛かったり咳は出ていないし、熱もなさそう……かな……っ……はぁ~……んしょっ」
頭痛に耐えつつ、ゆっくりと体を動かしてベッドの淵に腰かける。
風邪かと思い、自分の体調を確かめてみるも、のどの痛みや咳はないし、熱があるような体の熱さも感じない。
断続的に襲って来る頭痛に、どうしたものかと思いつつ、地図の近くに置いてある水差しに気付いた。
「っ……っ……ん……ふぅ……」
頭痛がひどくならないよう、ゆっくりとした動きでテーブルまで移動し、水差しから一緒に置いてあるカップへと注いで一口飲む。
ほんの少しだけ、頭痛が収まった気がするね……ただ、内臓がムカムカするというか、吐き気に近い気持ち悪さも感じる。
とりあえず、残りの水を飲み干すと、まだ気持ち悪さや頭痛はあるにせよ、さっきまでよりはマシになった。
いつも通りとはいかないけど、これなんとか動けるかな。
「……リク、入るぞ?」
「……っ……ソフィー……?」
「リク、起きていたか。大丈夫か?」
エルサを探すため、少しだけ調子が上向いたので、部屋を出ようと考えていたらソフィーが部屋を訪ねて来てくれた。
その腕にはエルサが抱かれている。
良かった……エルサは昨日、ソフィーのところで寝ていたのか。
部屋へと入ってきたソフィーは、すぐに俺が起きていた事に気付くと、心配そうな面持ちになって大丈夫かどうか聞かれた。
「……うーん、ちょっと頭痛がするかな。あと気持ち悪さも。さっき水を飲んだら、少しだけマシにはなったけどね。でも、昨日何があったんだろう? こんなになる程、何かをしたようには思えないんだけど……というか、記憶にないし。ソフィー、何か覚えてる?」
「記憶にない、か。まぁ、あれだけ酔っていたら仕方ないのかもしれんな……」
「酔って? あぁ、そういえば、酒場でお酒を飲んだのは覚えてるね。でも、その後どうなったんだっけ……? あ、エルサ。昨日はソフィーの方へ行っていたんだな。とりあえずこっちに……」
「嫌なのだわ! リクにはしばらく近付かないのだわ!」
「っ~……! ちょっと、大きい声は止めてくれ……」
「……典型的な、二日酔いというやつだな」
一応、頭痛や気持ち悪さはあるけど、なんとか大丈夫とソフィーへ伝えながら、昨日何があったのかを聞く。
酔っていたと言われて、そういえば酒場に行っていた事を思い出した。
苦いエールを飲んだ事は覚えてるけど……あれ? 最後の方は結局慣れて美味しく感じていたような?
ともあれ、思い出せない記憶を探りながら、ソフィーが抱いているエルサに向かって手を伸ばし、モフモフを感じようとこちらへ来るように言ったら、大きな声を出して拒否された。
拒否された事自体もショックだけど、その声が頭に響いて痛みが増した事の方が辛かった。
ソフィーがやれやれといった様子で呟いている。
……二日酔い? これが二日酔いってやつなのかな?
確か、お酒を飲み過ぎた翌日とかに、頭痛や気持ち悪さが襲って来るとかなんとか……あぁ、今の俺の状況そのままじゃないか。
「これが二日酔いかぁ……って事は俺ってやっぱりあの後?」
「そ、そうだな。確かに酔ってはいた……というより、酔っていると考えないといつものリクとは違い過ぎてな……」
妙な関心をしながら、頭痛を堪えてソフィーに視線を向けると、何やら少し歯切れが悪そうにしていた。
俺が酔っていたというのは間違いなさそうだけど、何かあったんだろうか?
確か……体が熱くなって、頭が回らなくなってソフィーが分身したり、視界がぐるぐるしたりしていたような気がするのは、なんとなく覚えてる。
あと、妙に楽しい気分だったのもね。
「俺、酔っている時どうしてたんだっけ……っ……いててて……」
詳しい事を思い出そうと、首を傾げて頭を傾けるとまた襲って来る強烈な頭痛。
我慢できない程じゃないけど、急に来るとちょっと狼狽えてしまう。
「……案の定、苦しんでおるようじゃの。ほれ、新しい水じゃ。たっぷり飲めば多少は良くなるじゃろう。……それとも、迎え酒でもするかの?」
「エアラハールさん。……ありがとうございます。さすがにこの状態でお酒を飲もうとは思いませんよ。お水だけ頂きます」
「そうかのう……起きてすぐに飲む酒も上手いんじゃが……」
「エアラハールさん、またリクが酔っ払ったらどうするんですか!」
「そうなのだわ。昨日みたいな事はもう嫌なのだわ!」
「……んっ……ふぅ、さっきよりはまだマシかな? それでもまだ調子悪いけど……というより、昨日の俺って酔って何かしたの? エルサには避けられるし……」
いつの間に来ていたのか、部屋の入り口からエアラハールさんから声をかけられる。
そのまま、カップに並々と注がれた水をテーブルに置いてくれた。
さらに、迎え酒と言いながら別に持っていた、革袋を見せながら俺へと視線を向けた。
革袋の中身は見ずとかではなくお酒なのか……エアラハールさんは随分呑兵衛なんだな……。
迎え酒って言うのは、何となく聞いた事がある。
確か、お酒に酔っ払った翌日、襲って来る二日酔いを解消するためにまたお酒を飲むとかなんとか……。
効果があるのかは知らないけど、飲み過ぎたから二日酔いになっているのに、そのうえまたお酒を飲むなんて正気の沙汰じゃないと思うのは、俺がまだお酒に慣れていないためかもしれない。
ともあれ、お酒は断りつつ持って来てもらったお水をありがたく頂き、一気に飲み干す。
頭痛や気持ち悪さであまり感じなかったけど、喉も乾いていたようで、さっきは味わう余裕もなかった水が、今は美味しい。
俺が水を飲んでいるのとは別に、ソフィーとエルサが慌ててエアラハールさんがお酒を飲ませようとしているのを止めていた。
その反応って事は、昨日の俺は酔っ払って何かした様子のようにも思えるけど……何かしたんだろうか?
もしかしたら、記憶にない部分で俺が何かをしたから、エルサに避けられているのかもしれない。
「あー……そうだな。リクは酔っ払っていてな? まぁその……」
「中々面白かったぞ? まぁ、命の危険は感じたがの……」
「そんなにですか!? ……っ」
「落ち着けリク。ちゃんと説明するから……慌てると辛いだろう」
「しばらく、お酒は飲ませないのだわ。やっぱりドラゴンにとって、お酒は警戒するべき物なのだわ」
歯切れの悪い言い方をするソフィーに、何をしたのかと不安になった後、エアラハールさんが命の危険とまで言ったので驚いてしまった。
大きな声を出してしまい、頭に響いて激しい頭痛に襲われる。
ソフィーが宥めるように言ってくれて、なんとか落ち着いたけど……一体俺は何をしたんだろうか?
というか、エルサに禁止されるように言われているし、絶対何かやらかしてるよね、これ……。
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