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他国と別のエルフ
しおりを挟む「おかげで、私達の集落はこの国でも重要度が高いと言えるのだけど……これまで最低限のかかわりになっていたのは、長老達のせいね。だからこそ、魔物に襲われても周囲に防衛できるような戦力がなかったのだけど……」
「まぁ、そこに関してはこれから私達のような、比較的若いエルフが人間と交流をして改善して行くところだろう。それはともかく、我々は危険な魔法を人間に伝えるという事をしない。少なくとも、俺達のいた集落ではな」
「対象に魔力を注ぐなんて、研究をしなくても危険とわかるからね。さらに言うなら、この国が国民を大事にしているから、かしら?」
「国民を?」
「人間に限らず、エルフであれ獣人であれ、等しく国民と認められた他者の生命をもてあそぶ事を、良しとしないからな。魔物が相手となるとまた別だが……対象を魔物にしたら、危険な実験になってしまうからな」
「危険を伴う研究というのもあるけれど、通常は安全を考えてやるものよね」
「つまり、考え付いたとして、最初に実験対象となるとしたら、魔物ではなく人間だろう……って事だよね?」
「魔物だと襲われる危険があるが、人間ならそうではない……と考えればだがな。とにかく、他者の生命を……と考えが根付いている国なのだ、人間相手だけでなく魔物相手にも禁忌に触れるような忌避感はあるだろうな」
姉さんが女王である事が関係しているのか……いや、数年程度継続した決まりでは、根柢の考えに定着するとは思えないから、昔からこの国ではそういう方向性で統治してきたのだろう。
おかげで、人間を嫌っているエルフの長老達以外の、若いエルフ達は人間に対して交流を持とうという考えになって来ているのかもね。
まぁ、長老達は自分達が特別という考えに凝り固まっていて、種族間の問題以上に他者への考えそのものに問題があるように思えたけど……。
なんにせよ、エルフから魔法技術が提供されているうえ、他者を実験に使うという考えにならない人が多いこの国では、考え付かない可能性が高い事だというのはわかった。
「でも、その研究資料を作ったのは人間だった。エルフや獣人のような特徴もなかったし……」
モリーツさんは、確かに人間だったはずだ。
その監視をしていたイオスも同様で、二人ともエルフのように特徴的な耳ではなかったし、獣人のような尻尾も持っていなかった。
「この国ではな。だが、他国ではどうだ? それこそ、他国にもエルフはいるのだから、そちらから何か情報がもたらされたか、それとも……」
「その国が、人間を使って実験をする事に抵抗感を持たないか、ね。それこそ、自国の民を使いたくないから、他国で実験をとも考えられるわ。確か、組織だっての行動だろうという推測なのよね?」
「まぁ、そうだね。個人で実行するには無理があるように思うから」
「例えば、他国が実験の場としてこの国を選んだ……もしくは、この国を攻撃するためにという事も考えられるわ。失敗しても、自国ではないから自分達は何も被害を受けないのだから」
「……つまり、モリーツさん達は他国から、わざわざこの国を実験場に選んでいる、という事?」
「あくまで、もしかしたらという可能性だがなぁ。俺としては、この国の人間では魔物に魔力を注ぐ研究なんて、やり始めようとはしないだろうという考えだ」
「そうね。それに準ずる技術も、私達の集落から提供していないはずよ。……他国にいるエルフがどうかまでは、わからないけど」
「他国にも、やっぱりエルフっているのかな?」
「当然よ。エルフは全体数こそ人間や獣人に劣るけど、各地に散らばっているわ。まぁ、それぞれの場所で国や周辺地域と関わるかどうかというのは、そこに住むエルフが判断しているはずだけど」
「他国のエルフが技術提供をしたか、そもそも人間側が強制的に技術を求めたかは、わからんがな……考え方はともかく、研究の内容にはエルフの者が関わっているような記述が見られる」
「じゃあ……?」
「どこの国で、どこのエルフかはわからんが……何かしら関わっているのは間違いないな。その方法が、国からの強制か、エルフからの提供か……」
「……確証はないけど、少なくとも私達アテトリア王国に属するエルフは、提供していないと断言できるわ。だからこそ、余計に他国からの研究と推測できるのだけどね」
この国のエルフではないけど、別のエルフが関わっているのがほぼ確実なため、さっき言っていた他者をという考え以外にも、この国ではないと言えるわけか……。
もしかすると、帝国にエルフがいて……とかかな? アテトリア王国に対して、工作とかを仕掛けてきているわけだし。
いや、なんでもかんでも帝国のせいにするのもいけないか、証拠がないのだから、決めつけは良くないね。
だとしたら別の国の可能性も考えないといけないけど……生憎、他の国とこの国がどういう関係なのか俺は詳しくない。
「ヒルダさん、今の話は姉さんに伝えておいて下さい。緊急性が高いわけでもないので、明日俺が出発してからでお願いします」
「はい、畏まりました」
「明日またどこかへ行くの? リクが報告してもいいでしょうに」
「その研究資料を使ってそうな場所が、また別にあってね。そっちを調べるのも必要だし、それまでにブハギムノングやルジナウムの事もやっておかないといけないんだ……」
「いつも通りと言えばいつも通りだけど……忙しいわねぇ……」
「ほんとに……はぁ……」
姉さんに俺から話すと、会議だなんだと連れまわされる気がしたので、報告はヒルダさんにお任せする。
アメリさんが見たというオーガが出てきた家を調べるのは、ヴェンツェルさんの準備や移動があるため、数日後になるけど、それまでにブハギムノングやルジナウムの件を終わらせておきたい。
まぁ、ルジナウムは調査に時間がかかるだろうから、ちょっと無理かもしれないけど……最低でもブハギムノングの鉱山にいるエクスブロジオンオーガの排除は終わらせておかないとね。
「それなら、私も手伝おうかしら? いつまでもアルネと一緒に書庫にこもっているのも、飽きたのよねぇ……」
「フィリーナは、研究を主にするエルフではないからな。補助は欲しいが……」
「では、城の者から手配致しましょう」
「ヒルダさんが用意してくれるなら安心ね。それじゃリク、私もその研究施設らしき場所には、一緒に行くわよ?」
「まぁ、ヴェンツェルさんに同行するくらいだろうから、いいと思うよ」
研究はアルネが主にやっているらしく、フィリーナは補助程度らしい。
ヒルダさんが、アルネの補助をしてくれる人を手配してくれるなら大丈夫そうだから、そっちは任せる事にしよう。
フィリーナの同行も、研究に関係してそうな事や、さっき話した他国が……とかの内容から拒否される事はなさそうだし、むしろこちらから言わなくとも、ついて来てくれと請われそうだ。
「あ、そうだリク。書物を調べていて見つけたのだが……例の魔力を蓄えられる鉱石の事だがな?」
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