神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
746 / 1,955

鎧を持っていた理由

しおりを挟む


 男やツヴァイが、もしもの際にオーガに対処する方法を用意していたのには納得するが、それが人間に使われたとなると、無事かどうかはちゃんと確かめないといけない。
 捕まえた人間の多さや、地下から外への道の数もあって、全てくまなく調べているとは言い難いため、ヴェンツェルさんが改めて男を見張っていた兵士さんの一人へ伝達させる。
 暗がりに人が隠されているなんて、考えていなかったからなぁ……それに、一度通って調べるくらいはしても、くまなく詳細にとまで行っていないのは、その兵士さんがまだ見つかっていない事からもわかる。
 見つかっていたら、こちらも同じくどうやって紛れ込んだからわかっていたはずだからね。

「それで、我々の内部へ紛れ込んだ方法はわかった。だが、逃げた時にお前が来ていた鎧はどうしたのだ? まさか、着ていた兵士を殺すなり、眠らせるなりして奪ったか?」
「あの鎧か……バレないよう他の兵士からどういう鎧か聞き出したが、まさかワイバーンの素材を使った鎧とは思わなかった。いくつか持って逃げたかったが、余裕がなかったからな。夜明け前に鎧を身に着けていた者が眠っている場所から盗み出しただけだ。少々、眠りが深くなってもらったくらいだがな」
「また、ここでも眠らせる薬か……」
「殺したりして、騒ぎになるような事はバレてしまう可能性が高いからな。それに、ワイバーンの鎧を着ている相手に、無防備な時以外挑んでも勝てるとは思えん。あれだけ上等な鎧だ……来ている兵士達は熟練の兵士だと想像が付くからな。まぁ、それにしては少々無防備に感じたが……」

 ワイバーンの鎧は全身鎧だ。
 だから、新兵さんという事もあるけど、隠し通路の捜索ではなく建物を囲んで見張る役目にしたんだけど……建物からオーガが出て来ても、ワイバーンの鎧がある以上防御面は完璧とも言えるからね。
 通常のフルプレートよりも軽いと言っても、全身鎧なのは間違いないから、歩き回る必要がある捜索の方だと不便だというのもあった。
 新兵さんだから以外にも、それなりに考えた配置だったんだけど……どうやらこの男は、上等な鎧を着ているのはベテラン兵士だからと考えていたらしい。

 まぁ、新兵とはいっても一応訓練はしているので、鎧の硬さや騒ぎを起こすわけにはいかないというのもあって、襲い掛かるというわけにはいかなかったんだろうけど、通常はそう考えるんだろうか?
 俺の考えとしては、未熟な新兵さん達を頑丈な鎧で守って、ベテランの兵士さんやヴェンツェルさんとかは、動きやすい鎧で自由に動いてもらった方が全体的な戦力は上がるんじゃないかと思う。
 このあたりは、考え方の違いだったりもするから、絶対こっちの方が……というのはないんだろうけどね。

「ふむ……盗まれた者も、後で厳しい訓練が必要だな。――おい、今度は兵士の確認だ。マルクスに言って、全ての兵士を確認しろ。突入後は慌ただしかったから、一部を除いて確認を怠っている部分もある。寝ている者がいれば、叩き起こせ!」
「はっ! 了解しました!」

 今度は新兵さんに厳しい訓練が課される様子……災難だなぁと思う反面、せっかくの鎧を盗まれたのは、もう少ししっか管理しておいて欲しかったとも思う。
 ……寝ている時に侵入されたんだから、仕方ないとも思うけどね。

「それと、リク殿もいて、建物の制圧も完了した事で緩んでいる者がいないかも確認しろ。そして引き締めさせろ! もし緩んでいる者がいたら、王都に戻った際に、私が直々に訓練をしてやるから、そのつもりでな? あと、代わりの者も呼んで来い」
「はっ! 直ちに!」

 作戦行動としては、突入して制圧した事で完了したから、気が緩んでも仕方ないのかもしれないけどね……実際、俺だけでなくモニカさんやソフィー、フィネさんなどの冒険者組はのんびりしているし……あれ、俺だけツヴァイや今目の前にいる男の取り調べとか、追いかけたりして緩む暇がないような……?
 ま、まぁ、気のせいだね……それ以外は建物内部を調べたりとか、拘束した人達の見張りとかは任せているから、十分緩められていると思う。
 とはいえ、大人数の軍隊には規律や気を引き締める事も必要だからなぁ……なんて考えながら、慌てて外へ向かう兵士さんを見送り、代わりの兵士さんが来るのを待つ。
 ほどなくして、今までとは別の三人の兵士さんが部屋へ入って来て、俺やヴェンツェルさんに挨拶をし、取り調べ再開となった。

「さて……次が本題だが……結局、この施設を作り、魔物の研究をするよう命じたのは誰だ? お前達の目的は?」
「俺は、目的までは知らされていない……元は冒険者をしていたんだが、この国に来てからは散々だ。冒険者としての心得だの、正し行いだの……元いた場所ではもっと自由に振る舞っても、何も文句は言われなかったんだがな……」
「冒険者?」
「あぁ。この国に来る前は、これでもBランクだったんだ。だが、もっと稼いでやろうとこの国に来たのが間違いだった。ある街に行けば素行が悪いとランクを落とされ、さらに他の場所へ行けば依頼の達成率が悪いと言われ……あれよと言ううちにDランクだ。そんな低いランクじゃ稼ぐどころじゃない。そのうえ、不満を冒険者ギルドでぶつけて、そこにいる他の冒険者達と争えば、最終的には資格剥奪だ……まったく、踏んだり蹴ったりだ」
「……それは、自業自得なのでは?」

 冒険者になったからって、なんでもしていいわけがないのは当然だ。
 この国の冒険者ギルドは、各地と連携を取って情報を共有したり、ギルド支部のある街の治安を国側と協力して維持したり、という役割もあったはず。
 まぁ、主な役割や稼げる依頼は、街や村の人に被害が出ないように魔物を討伐する事だけど、他にも必要な薬草だったり、商隊の護衛だったりもしている。
 そして依頼を託すために必要なのは、実力の他にも信用があってこそだ。

 依頼達成率が低かったり、素行の悪い冒険者に商隊護衛を任せたりはしないからね。
 この国に来る前がどうだったかはともかく、アテトリア王国で冒険者を続けてランクを上げようと思ったら、達成率を上げたりして信頼されるようにならないといけない……もちろん、実力も伴っていないといけないけど。
 以前は素行が悪くても問題視されなかったんだろうけど、ちゃんとした場所に来てランクが落とされて剥奪されて……と、その間に自分の行いを反省したり、悔い改めなかったこの男の自業自得だと言える。

「……元とはいえ、冒険者がなぜここで研究に加担していたのだ?」

 思わず漏らした俺の言葉は流して、話しの先を促すヴェンツェルさん。

「冒険者でなくなった後は、そこらを放浪するだけの生活だった。それなりに戦い慣れているから、野盗の真似事をしたりもしたが……腐っても俺には冒険者の矜持があるからな、野盗に加わったりはしなかったが……」

 真似事をしたって事は、旅行く人を襲って金品を奪ったとかだろう。
 相手の命まで取ったかはわからないけど、それはもう真似事ではなく完全な野党だ……冒険者の矜持が聞いて飽きれるなぁ。
 ツヴァイは自分以外を見下していて、どうしようもない相手と思ったけど、この男も同じようなものだと話を聞いていて感じた――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

処理中です...