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エルサ試乗会1日目終了
しおりを挟む「はーい、落ちないように気を付けて降りて下さいねー! あ、ちゃんと乗れますから、慌てずにー!」
「リク様やエルサ様のご厚意です、無茶をしないよう慌てずゆっくりと交代して下さーい!」
兵士さん達の待つ場所へと戻り、エルサの体から落ちないように注意しながら声をかけて誘導する。
落ちたら結界を発動して受け止めようとは思うけど、空を飛んでいる時のように結界を常時発動しているわけじゃないし、高さがなくて地面に打ち付けられるまでに間に合わないかもしれないからね。
まぁ、乗っているのが兵士さんだから少々の事は大丈夫だろうけど、危険な事はない方がいい。
手伝ってくれるフィネさんと一緒に声を上げながら、最初に乗った兵士さんと次に乗る兵士さんの交代を見守る。
「いやぁ、リク様ありがとうございます。貴重な体験ができました」
「空を飛ぶのがここまで楽しい事だとは思いませんでした。聞いていた話では、恐怖を感じる事が多かったようなので……ですが、リク様やエルサ様のおかげで、新しい境地を知る事ができました」
「特に、途中で風を感じられたのは良かったですね。馬に乗っていては、あれ程ゆったりと風を感じることはできませんし、馬車だと馬に乗るだけよりも遅いので、風を感じられるという程ではありませんから」
兵士さん達は降りる際に、口々にお礼や感想を言っていたけど、皆楽しんでくれたようで何よりだね。
怖がる人がいないように気を付けていたのは確かだけど、せっかく空を飛ぶ体験ができたんだから、楽しい思い出になって欲しいから。
……エルサで空を飛んで運び屋とか、空を遊泳する観光地のアトラクションみたいな事をしたら、繁盛しそうだな……なんて一瞬思い浮かんだけど、エルサが大変になりそうだからすぐに却下しておいた。
エルサ自身は飛ぶのが好きそうだけど、さすがにそれをお金儲けに使うのは違うよね……お金に困っているわけでもないし。
「リク様、次の人達の準備が整ったようです」
「あ、ありがとうございます、フィネさん。って、フィネさんはもしかしてこのまま?」
「もちろんです。先に体験した者として、初めて乗る人達に空を飛んでいる際の注意などもしないといけませんから!」
「そ、そうですか……まぁ、いいか。――それじゃエルサ、さっきと同じように頼むよ。結界は俺が使うから」
「わかったのだわ、飛ぶのだわー!」
商売的な事を考えていたら、フィネさんが手際よく次の兵士さん達を乗せて座らせてくれていた。
こちらの兵士さん達も、先程と同じようにそれぞれエルサのモフモフの座り心地に感心したり、これから飛ぶのに緊張したりしている様子だ。
降りずに皆を誘導していたフィネさんは、また一緒に飛ぶつもりのようだけど、大丈夫だろう。
兵士さん達を乗せ過ぎないようにはしているけど、エルサの方はまだまだ余裕そうだし、乗るためのスペースはあるからね。
手伝いをするとなった事を利用して、連続でエルサに乗るとは……中々フィネさんもしっかりしているというか強かというか……まぁ、それだけ楽しんでくれたという事だろう。
苦笑しつつ、エルサに声をかけて結界を発動しながら、ふわりと浮かんで再び短時間の空の旅へと出発した――。
「お疲れ様、リクさん、エルサちゃん。あとフィネさんも」
「お疲れー……と言っても、俺はほとんどエルサに乗っていただけなんだけどね。フィネさんが頑張ってくれたから」
「いえ、私はそこまで大した事は……エルサ様に乗せてもらえるのですから、多少の事はしないといけませんし……」
「疲れたのだわー……キューを要求するのだわ!」
「エルサ、十分に元気だよね? まぁ、頑張ったのは確かだから、ちゃんとキューをあげないといけないか」
兵士さん達をエルサに乗せる試乗会を終えて、野営地に戻って来た時には日が落ち始めていた。
夕食の支度を始めていたモニカさんから労われるけど、頑張ったのはエルサとフィネさんだ。
兵士さん達は、新兵さんも混じってはいたけど基本的に訓練をしている人達だし、特に無茶な事をしたり統率が取れないなんて事はなく、フィネさんの誘導におとなしく従ってくれていたから、苦労する事なんてほとんどなかった……結界を使い続けた事の方が、疲労を感じるくらいだからね。
フィネさんの方は、二度目三度目問い数を重ねていくごとに手際が良くなっていき、最後の方は俺が兵士さんに呼びかけたりする事がなくなってしまっていた。
おかげで助かったんだけど、フィネさん自身はあれでもまだ十分に手伝えたとは思えていないらしい。
あとエルサの方は、あまり自由に飛ぶ感じじゃなかったから気疲れの方だろうけど……キューを要求する様子を見ると疲れを感じないくらいだ。
とはいえ、無理な飛び方をする事なくほとんどの兵士さん達に楽しんでもらえたようだったので、今日はキューを存分に食べてもらって、しっかり労っておかないとね。
明日も、また別の兵士さん達を乗せないといけないわけだし……。
「あ、テント直ったんだね……とは言っても、つぎはぎしているだけのようだけど」
「まぁ、この場でできる修復なんて、あれが限界だろうな。マルクス殿にも協力してもらったが……」
「マルスクさんに?」
「あちらの方で修復する時に備えて、丈夫な布を持って来ていたのよ」
穴だらけだったテントは、上から丈夫そうな布が縫い付けてあってつぎはぎだらけではあるけど、一応テントとして使える体裁を保っている……穴だらけの時は、いつ崩壊してもおかしくないような状態だったし。
ソフィーとフィリーナがマルクスさんに協力してもらったというのは、もしもに備えて持って来ていた修復用の布をもらったという事か。
俺達はテントを持っていても、荷物がかさむから修復用の布を持っていないからだろう……後でお礼を言っておかないとね。
「そういえば、兵士達は皆エルサに乗って喜んでいたのか?」
「うーん、まぁほとんどは? 一部、高く飛ぶ事そのものを怖がっていた人はいたよ」
「初めての事だからな。それも仕方ないか」
今回の試乗会では、フィネさんもそうだけどほとんどの兵士さんは喜んでくれていた。
だけど一部は、空を飛ぶ事と言うより、高い場所から見下ろすのに恐怖を覚えた人もいたみたいだから、単純に高所恐怖症なんだろう。
あれくらいの高さで怖がっていたら、櫓とか見張り台とかに上るのは辛いだろうに……と思うけど、こればっかりは仕方ないよね。
高い建物が少ないので、見下ろす事に慣れていないのもあるだろうし、櫓や見張り台は遠くを見るための物で、直下の地面を見る事はそうそうないし……上り下りする時くらいかな?
あと、移動している分不安定さを感じてという事もあるんだろう。
明日また別の兵士さん達も乗る事になるだろうけど、そっちでも同じような人が出るのは想像に難くない。
大丈夫だろうけど、変に暴れたりしないようにちゃんと見ておこうと思う。
そうして、夕食の準備を進めているモニカさんを手伝い、エルサにたっぷりキューをあげて明日に備え、今日は研究施設の方で兵士さん達に指示をしているヴェンツェルさんとマルクスさん達とは別に、夕食を頂いて、日課になりつつある素振りをして、つぎはぎのテントで就寝した――。
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