神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
761 / 1,955

斧だけではないフィネさん

しおりを挟む


「ちぃ! せっ!」
「な!?」

 そのまま引っ張って引き倒そうと思っていたのに、咄嗟に俺を掴んでいた手を離して、後ろに飛んで距離を取られた。
 その際に、上半身を反らして地面に手を付き、さらに両足で俺を蹴る。
 蹴った勢いでバク転のような形で、体勢を整えた。
 中途半端な離れ方だったら、俺が追撃するチャンスだったけど、両足の蹴りを使って勢いを付けるだけでなく俺への牽制にもするとは……。


「……はぁ、ふぅ」
「斧だけじゃないんですね……ふぅ」

 向かい合って、お互いに息を吐く。
 俺は体勢が崩れ気味だったのを整え、全力で動き続けているフィネさんは息を整えているようだ。
 瞬間的な判断だけでなく、武器だけに頼らない攻撃法も、さすがとしか言いようがない……後ろに飛ぶ際に、叩き落した斧を二つ拾うのも忘れていないし……これ程とは……。
 というか、体や柔らかいなぁ……ブリッジのようになったと思ったら、蹴りからのバク転もどきとは。

 どこまで計算通りかはわからないけど、計算で動いているにしても、瞬時の判断で動いているにしても、驚異的な動きに見える。
 さすがにエアラハールさんのように、瞬間的に目で追えないような速度を出す……というような事はないけど、十分過ぎるくらいBランク冒険者の実力を見せられている。

「ふぅ……武器を投げても、戦えるようになる必要がありますから。もちろん武器を持っていた方がいいですが、素手でもそこらの魔物に負ける気はありませんよ。……リク様には、通用しませんでしたけど」
「十分通用してますよ。斧は最低でも一本は残すと思っていましたし、何度も蹴られました。力比べは、負けませんでしたけど……それだけですからね」

 意表を突かれた、というのはかなりあるけど、それだけでなく連続した動きでも捨てる攻撃というか、当たっても大した事がないと思える攻撃がないのは、さすがだね。
 距離を取る直前の蹴りは、移動のためだから仕方ないけど、他の攻撃は一つ一つがかなりの威力だ。
 斧の投擲は突き刺さるから当然だし、蹴りも痛みや息が詰まる衝撃を感じる程……多分だけど、オーガを悶絶させたりするくらいはできるんじゃないだろうか?
 武器を投げるという事は、最終的に自分の手元に一つは残さないと戦えない、なんて考えてしまっていた俺が悪いんだけど、とにかく使える武器を全て投げたうえでもちゃんと戦えるように鍛えているフィネさんには、感服する。

 素手で戦うという経験がないわけじゃないし、地下施設ではなんども武装した人間を殴り飛ばしたけど、そういう事ではなく、ちゃんと自分の戦い方に合わせて考えているんだなと。
 力任せに剣を振るだけだった、以前の自分が少しだけ恥ずかしく思えるくらいだ。

「あそこで引き倒して、斧を使って止め……というところだったんですけど、さすがです」
「いえ、力比べに勝っても、他では圧倒されっぱなしでしたからね。あまり褒められた事じゃないですよ。さて……それでは今度はこちらから……っ!」

 なんだろう、真剣に戦う者同士の共感なのかなんなのか……お互いニヤリと笑い合いながら、今度はこちらからと、木剣を振り上げてフィネさんに向かう。
 これが、拳を交えて友になるという感覚だろうか……? いや、違うか……俺が持っているのは木剣だし、殴り合っている喧嘩とかではないから。
 とはいえ、なんとなくフィネさんの事は今まで以上に理解できたような気がする。
 世の中には、色んな戦い方があるんだなぁ……と勉強になった――。


「はぁ……! ふぅ……!」
「ぜぇ……! はぁ……!」
「ふぅ……なんで、ソフィーとモニカさんまで……」
「リクさん……が……フィネさんと楽しそうに模擬戦をする……から……」
「そう……だ……ふぅ……私達も、体を動かしたくなった……はぁ……んだ……」

 フィネさんとの模擬戦、参考になる事が多く俺が木剣だったり、全体的に受けに回る事が多かったため、それなりに長い間戦っていたんだけど、それが終わった後は流れでモニカさんやソフィーとも模擬戦をする事になってしまった。
 なってしまったというか、有無を言わさぬ雰囲気でモニカさんとソフィーが、武器を持って対峙したからなんだけど。
 フィネさん相手は不慣れな部分も多かったけど、モニカさんとソフィーはここしばらく素振りやらで訓練をしているとはいえ、エアラハールさんの指導込みで何度も模擬戦をしていたからね。
 だから、フィネさん程の長期戦になる事はなく、二人の体力が尽きた時点で終了となった。

 武器を置き、地面に座り込んで荒い息を吐いているモニカさんとソフィーに対して、なぜか周囲の新兵さんから拍手が送られているけど、気にしないでおこう。
 ちなみにフィネさんは、俺との模擬戦による疲労が原因で、離れた場所で突っ伏した状態になっている……エルサ、フィネさんに乗っかって欠伸をしているんじゃない。
 というかフィネさん、もしかしなくても全力で攻撃し続けたのを俺が全て防いだから、落ち込んでいるのかも?
 いや、危ない場面も多くて何度も蹴られたり殴られたりしたし、怪我はしていないけど、斧がかすって服が斬れたりもしているから、俺の方もいっぱいいっぱいだったんだけど。

 ……多分、有効な一撃というのが決められなかったのが大きいのかもしれない。
 避けたと思った斧がブーメランのように戻って来て、後ろからとかかなり危なかったからね。
 どうやったらそんな事ができるのか、いつか聞いてみたい……俺にできるかはわからないけど――。

「はぁ……やっぱりリク様には全然敵わなかったですね……わかっていた事ではありますけど」
「しかも、あれで手加減しているのよ? ほんと、どうなっているのかわからないわ」
「いや……まぁ……自分でも不思議な時はあるけど、手加減という程までは……」
「リクは木剣。私達は使い慣れた武器……この時点で手加減になると思うがな」

 模擬戦が終わった後、焚き火を囲んで夕食を食べながら、なぜか責められる俺……。
 力任せに攻撃しないというのは意識していたけど、それだけで手加減したとまでは言えない気がするんだけど……と思っているのは俺だけで、木剣を使っている時点で手加減されているという事のようだ。
 まぁ、魔力を使う剣でやるわけにはいかないし……怪我させたり、皆の武器を破壊する可能性もあるから……それに木剣だからこそ、攻撃を受け止める際にも気を使ったりする必要があったのは確かだけどね。
 三人共冗談で言っているのは雰囲気からわかっているんだけど、こういう時やっぱり男一人というのは肩身が狭いような、それとは違う話のような。
 とりあえず、キューを食べているエルサのモフモフを撫でて癒されておこう。 

「リク、食べにくいのだわー」
「はい、すみません」

 エルサに食事を邪魔しないよう注意され、謝って仕方なく自分の食事に集中する……はぁ……。
 なにはともあれ、かなり激しめに体を動かしたおかげで、今日はいつもよりしっかり寝られそうだ――。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

処理中です...