神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
788 / 1,955

命を弄ぶ行為は禁止

しおりを挟む


 魔力を大量に持っているうえで、分け与える際に繊細な制御が必要になるらしいから、俺がやると酷い事になりかねない……というか、なる想像しかできない。
 できるのなら、誰かをツヴァイのように強力な魔法を使うようにできるのかもしれないけど、失敗する確率が高すぎるし、人の命をそんな実験に使いたくないからね。
 ちなみにだけど、ユノやエルサに確認したところ、魔力を与えてもその与えた分の魔力を使い終わったら、通常に戻るんじゃないかと思ったんだけど、どうやら違うみたいだ。
 なんでも、本来の魔力を包んで与えられた魔力がその人に根付くため、与えられた側が持っている魔力として総量が上がる……という事らしく、無理矢理魔力の入る器を大きくした状態になると言っていた。

 そりゃ、無理矢理広げた器だと、何かの拍子にこぼれてしまう事も考えられるから、暴走したら悲惨な事になるのは当然の事のように思えるね。
 本来あるはずがない魔力を与えられて、自分の魔力と反発する事だって考えられるし、危険な要素が多過ぎてちょっと試す……なんて、気軽にやっていい事じゃない。
 ツヴァイの場合、エルフだから元々の総量というか器が大きい事や、多くの魔力を制御するのに長けていた事が幸いして、暴走はしないのかもしれない。

「ともあれだ、人を実験に使うのは我が許さぬ。リクの魔力を他人に与えるというのは、許可できんな。もちろん、魔物の研究もだ……観察しての研究であればともかく、命を徒に弄ぶ行為は今後も禁止する。良いな?」
「「「「はっ!」」」」

 女王様モードの姉さんが、強めの口調で禁止する旨を徹底させるように通達する。
 ヴェンツェルさん、ハーロルトさん、エフライムと宰相さんの四人が短く返事をして頭を下げ、俺やフィリーナ、アルネは黙って頷く。
 この場では、国に直接所属している人が女王である姉さんの命令に従い、俺やアルネ達エルフは、国民ではあっても直属というわけではないから、恭しくする態度で示すだけなのが好ましいと教わったからね。
 一応、この場は畏まった会議で公式の場ではあるけど、参加人数が多いわけでもないし、ひとまず報告を聞いて話し合うだけなので、気軽に練習をさせてもらっている。
 大体は、姉さんとヒルダさんにそうしたらと提案された事だけどね。

「さて、では次にだが……報告では帝国が拘わっている可能性があると聞いた」
「はっ。先程話した、死んだ男から得た情報や他の情報を考えると、帝国が関与している可能性はかなり高いと思われます」
「……そうですな。私は直に見ておりませんが、今回突入した建物の規模はかなり大きかったと聞きます。それに、ルジナウム、ブハギムノングでの事にも拘っているとなると、個人やちょっとした組織ができる事ではないと考えます」
「うむ。……帝国が関与していると見せかけている、という事はないか?」

 次の議題というか話し合う事は、俺がヴェンツェルさんと一緒に男から聞き出した情報……帝国が拘わっている可能性があるという部分だ。
 正確には、帝国がというよりも、帝国に近い場所でツヴァイによって連れ去られた事、使っていた馬車などから帝国に拘わる事柄が多いからの推測ではあるけどね。
 とはいえ、ツヴァイはフィリーナが知らないエルフで、この国のエルフではない事や、アテトリア王国に対して何かしらの行動を起こそうとしているのだから、帝国しかあり得ないだろうとも考えられる。

「そこまでははっきりと言えませんが……あれだけの規模を、国が拘わらずに行う事は不可能でしょう。もちろん、我が国にいる良からぬ事を考えている者の可能性も考えましたが……」
「その先は私が。国内の情報を集積していると、不穏な者達の情報も集まります。ですが、バルテルの凶行に端を発し、そういった者達は縮小を余儀なくされている傾向でもあるのです。そして、残った者達では、同じ規模で何かを行う……といった事は不可能と考えられます」

 ヴェンツェルさんの言葉を継ぎ、ハーロルトさんが情報部隊からの観点を報告。
 ルジナウムでは魔物を集めるための道具……これはクォンツァイタを使った物だったけど、それとブハギムノングを繋ぐための仕掛けを使っていた……こんな事、個人でやるには大規模すぎる。
 さらに、ブハギムノングの鉱山ではモリーツさんが隠れてエクスブロジオンオーガの研究をしていたけど、研究に使う試験管のようなガラスなどを、作ったり運び込むにしても、小さい組織ではできない事だね。
 そのうえ、ツヴァイ達がいた地下研究施設とカモフラージュの建物……建物だけならなんとでもなるだろうけど、地下にあれだけの施設を作るのに、それなりの組織が拘わっていたとしてもできるとは思えない。

「つまり、国に寄らない組織や個人では不可能なために、帝国が関与しているという事だな」
「はっ、必ずしも帝国そのものが拘わっているという、証拠はありませんが……状況を考えれば間違いないかと存じます。帝国に関係しそうな状況や物が、多く見つけられましたので」
「そうか。宰相はどう思う?」
「陛下……これは我が国への明確な攻撃意思とも取れます。報告によれば、ツヴァイなる者は魔物を使って戦争をとも言っておったとか。帝国が我が国を使った実験をし、国力を削ぐとともに侵攻する前段階なのではないかと」
「確かに、そうとも考えられるな。バルテルの凶行があった際には、軍事行動を起こそうとしていた……いや、起こしていたと言うべきか。そうだな、ハーロルト?」
「はっ! 国境では、帝国側に軍が集結していたのは確実です。バルテルの凶行を、リク殿が早々に収めて下さらなければ、我が国は侵攻されていたでしょう」

 帝国がアテトリア王国に対して、攻撃する意思があるのは以前からわかっていた。
 バルテルの事が収まってからは、残党のような奴らがエフライムやレナを捕まえたままにしていたくらいで、明確な何かがあったわけではないけど……今回判明した事を含めて考えると、まだ諦めているわけではなく、虎視眈々とその機会を狙っているように感じるね。

「そうだな……あの時はさらに魔物の襲撃もあったからな。リクがいなければ我が国は帝国によって蹂躙されていた可能性も高いだろう」
「お爺様の子爵領も、私を人質にして動ける状態ではありませんでした。そして、魔物が王城に襲撃した際に大打撃を受けてしまっていれば……」
「その先は言わなくてもわかる。最悪、開戦から短期間で王城陥落すらあり得ただろうな」
「はっ……」

 姉さんにエフライムがクレメン子爵領の事も付け加える……その表情は、自分が人質にされたうえ、レナも巻き込まれているからか、悔しそうだ。
 自分では何もできなかったからだろう……妹思いというか、シスコンの気があるから尚更かな。
 こうして考えると、結構綱渡りというか、帝国の術中にはまりそうでなんとか事前に防げているから、侵攻されずにすんでいるという感じだね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...