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マティルデさんの情報網
しおりを挟む「リク様! お戻りになられていたのですね! ギルドマスターのいる部屋へ案内いたします」
「あ、はい……」
饅頭を食べながら移動し、エルサが追加のキューを完食する頃に冒険者ギルドに到着。
まずは受付でマティルデさんがいるかどうかを尋ねようとすると、こちらから何かを言うまでもなく、案内を始めようとしてくれる。
この受付の女性には初めて会ったと思うんだけど、俺の事は知っているようだし、何も言わなくても案内してくれてしまうから、自分からマティルデさんと話そうとしていて、正解だった。
避けようとしても、冒険者ギルドに来た途端これなら、絶対話さないといけなくなっただろうから……。
まぁ、徹底的に避けるなら、別の冒険者ギルドに行けばいいんだろうけど……そこまでする程じゃないからね。
「失礼します。リク様がお戻りになられましたので、お連れ致しました」
「リク君が!? ちょ、ちょっと待って、心の準備が……あ、いえ、それよりもお肌とかその他色々な準備が!」
「……ギルドマスター、もう手遅れです」
「あははは……マティルデさん、お久しぶりです」
案内された部屋の扉を、受付の女性が開けながら中へと声をかける。
本来はノックをして許可を得てからというのが、正しい入室の作法なんだろうけど、冒険者ギルドだとそういう部分を省略する事が多いらしい……なぜかは知らない。
緊急性の高い情報があった時、迅速に伝えるためとかかな? たんなる想像だけど。
とりあえず、椅子に座って書類と思われる紙束を、頬杖をつきながら見ていたマティルデさんが慌て出し、手櫛で髪を整えたりとしていたけど……同じく部屋にいた副ギルドマスターのミルダさんが、既に部屋へ入って来ていた俺達を見て、冷静に突っ込んでいた。
とりあえず、苦笑しながら挨拶をするくらいしか俺にはできないかな。
「くっ! あー、えっと……うん、よし! リク君、久しぶりね。活躍は……想像以上に活躍したようね?」
「まぁ、そうかもしれません。他の人の協力があってこそですけど……」
一度俯いた後、少しだけ唸るような声を漏らし、何事もなかったかのように姿勢を正して取り繕ったマティルデさんが、何事もなかったかのように話を始める。
ミルダさんに、マティルデさんの向かいにある椅子を勧められたので、そこへと座りつつ、俺も応じる。
マティルデさんが言っている活躍というのは多分、ルジナウムでの事だろうね。
キマイラやキュクロップス、マンティコラースなどの魔物の大群がルジナウムに押し寄せるのを食い止めてから、結構経っているので既にマティルデさんにも報告が来ているだろう。
もしかしたら、アメリさんを助けた頃にはすでに報告されていたかもしれないけど。
「正直、驚いたわ。ここ……城に向かって来た魔物の大群も、数は多かったけど、リク君の活躍以外にも兵士や他の冒険者だっていたのよね。でも、ルジナウムの報告を聞く限り、ほぼリク君一人で……しかも正確な数はともかく、強力な魔物が多い中だったわけでしょ? もう、報告を聞いて興奮しちゃったわぁ」
「はぁ……まぁ、俺一人で全てなんとかできたわけじゃないですけどね」
「……むぅ」
椅子に座りながら、器用に体をクネクネさせるマティルデさんに、なぜか唸って不満そうな表情をするモニカさん。
王城の時と違って、キマイラやキュクロップスなどの強力な魔物が多かったのは確かだ。
それに、兵士さんや冒険者さん達の協力もあったわけだから、ルジナウムの時程の絶望感は皆にもなかったと思う……マックスさんやマリーさんも、戦ってくれていたみたいだからね。
「ルジナウムもブハギムノングも、リク君のおかげで多くの人が救われたわ。最初に依頼を受けてもらった時は、これだけ大きな事になったり、あれ程の活躍をするとは思っていなかったわ。今すぐにでもSランクに推薦したいほどよ?」
「いやまぁ、俺だけじゃなく、モニカさん達も頑張ってくれましたし、向こうの街でも協力してくれた人もいましたから。俺だけの活躍じゃないですよ?」
マティルデさんは俺だけが活躍したように言うけど、モニカさんやユノがルジナウムでの調査を担当してくれたり、鉱山ではソフィーと手分けして調査をした事もった。
ノイッシュさんやフランクさん、ベルンタさんにフォルガットさん等々、それぞれの街で協力してくれた人達もいたからこそ、今回の成果だと思っているからね。
技術面では、確実にエアラハールさんやユノに敵わないとわかっているのに、Sランクに推薦されてもちょっとな……まぁ、簡単にランク昇格ができるとは思っていないけど。
Aランクにだって、複数のギルドマスターが承認しないといけないわけだし。
「まぁ、それも含めての英雄様なんでしょうね。でも、今すぐSランクに推薦しようと思っても……国に直接拘わるような事をしたらねぇ。それも、冒険者ギルドには誤魔化すようにして……」
「あー……えっと……」
やはりというかなんというか、マティルデさんはヴェンツェルさんの護衛としての依頼を、俺が受けたのは隠れ蓑なだけで、実質的には違う事を見抜いているようだ。
ノイッシュさんには話したけど、王都の冒険者ギルドをまとめる人だし、依頼はここから出ている事になっているから、バレてしまうのも無理はないか。
「国の軍、それもトップの地位にいる将軍に護衛だなんて……冒険者のやる事じゃないからね。そもそも必要かどうかも怪しいし、護衛を付けるなら同じ軍に所属している者がするのが通常よ。英雄であるリク君に頼ったとか、軍の内部が信用できないとか……他に何か特殊な事情があるなら別だけど。でも、今回はそうじゃない。冒険者ギルド側では、そういった情報を得ていないもの」
「えっと……ヴェンツェルさんとは、よく話をしたり訓練をしたりと、親しくさせてもらっているので……」
「それでもよ。むしろ、親しくしているからこそ、そういった相手に護衛を頼むのはあり得ないわね」
うーむ……誤魔化した事はともかく、なんとかしないと全ての事情を話さないといけなくなりそうだ。
仲良くしているから、その縁で偶然護衛を頼まれた、という線で誤魔化そうとしたんだけど、それも首を振って否定するマティルデさん。
これは、生半可な言い訳じゃ通じなさそうだ……。
「でも、リクさんがそうせざるを得ない理由が……」
「えぇ、その辺りの事もわかっているわ。もちろん、リク君が国に加担してギルドをないがしろにしているわけではない事も。できれば、ギルドに依頼をしてそれでリク君が受けて、調査から突入として欲しかったけれど……それも時間がかかってしまうからね」
「突入って……」
モニカさんも協力して誤魔化してくれようとしたけど、途中遮ってマティルデさんがこちらの事情をわかっている様子になった。
今までは、どちらかというと責めている雰囲気だったのに……。
というか、施設に突入した事を知っているという事は、ほとんどの事が知られていると考えて良さそうだ。
さすが、ノイッシュさん達が女狐なんて言うだけある……のかもしれない――。
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