796 / 1,955
リクのSランク昇格は検討中
しおりを挟む「冒険者ギルド、しかもギルドマスターの情報網を甘く見ない事ね? 全ての行動が筒抜けというわけではないけど、ある程度の大まかな情報は入手できるようにしているわ。まぁ、王都で統括ギルドマスターに上り詰めるというのは、それだけの事をしないといけなかったわけだけど」
こちらの方が、女狐と呼ばれる所以な気がしてきた。
冒険者ギルドは一つの国ではなく、様々な国で活動する組織ではあるけど、その中でもアテトリア王国の中心地、王都でさらに統括ギルドマスターになるには、優秀である以外にもやらないといけない事だってあるんだろう。
しかも、国の中心地にあるギルドを統括しているというだけで、かなりの情報が得られるだろうから……情報網はこの国で一番広く持っているのかもしれない。
いや、ハーロルトさんもいるから、どちらが上かとかまではわからないけどね。
「ま、ともかくリク君が参加した理由も、冒険者ギルドには誤魔化そうとしたのも、ある程度わかっているわ。立場上、軍の行動に率先して参加する事は難色を示すしかできないから、隠そうとするのも当然よね」
「……難色を示すだけ、なんですか?」
「そうよ。冒険者ギルドと冒険者は、基本的に自由を尊重するの。相手に何かを強制する事はほとんどないわ」
「ほとんど……?」
「えぇ。目に余る行動を続けたり、犯罪などを行ってしまった場合には、冒険者資格の剥奪などもあるから。諭したり指導する事で改善できそうなら、依頼を強制的に受けさせたりして、冒険者としての振る舞いを教え込ん事だってあるわよ。とはいえ、国に直接拘わってはいけないという決まりがあるわけでもないし、過去には戦争に参加した冒険者だっていたのよ」
「え、戦争にも参加したんですか?」
冒険者ギルドが、ほぼ強制をしないというのは納得できる。
強制しない代わりに、依頼を受けたりといった仕事をするかどうか、どんな依頼を受けるかも自由なので、やり方次第で低ランクでも稼げる事はあるし、逆にそこそこ高ランクであまり稼げない事だってある……らしい。
他にも、滞在している場所のギルドや周辺の状況にもよるけどね……ブハギムノングとか、稼ぎやすいとは決して言えないから。
ともあれ、そんな場所にずっと滞在せず他の場所へ行く事も自由だし、依頼のためにどこそこへ行け……というのがあったとしても、基本的に全て自由で本人達の意思にゆだねられるという事だろう。
犯罪を犯したり、暴れ回って周囲に迷惑をかけ続けたりしたら、さすがにお咎めがあるのは当然の事だね。
でもさすがに、戦争にまで参加するかどうかも自由なんだとは思っていなかった。
国に寄らない組織であるとともに、それぞれの国の内部では協力している事だってあるから、戦争した場合どちらかに加担するというのは咎められるものだとばかり……。
「もちろん少数だし、推奨はされないわ。参戦した際にも、冒険者にあるまじき行動をしたと判断された場合は、資格の剥奪もあり得るわね。それに、戦争の結果はともかく、相手国からしたら敵になるわけだから、敵対した国で冒険者としての活動はやりにくくなったりもするわね」
「まぁ、それはそうですね」
スポーツとかならまだしも、戦争とはつまり国同士の殺し合いとも言えるのだから、自分達の命を狙って来ていたはずの人を、快く思う事はほとんどないだろう。
それこそ、参戦した側の国が負けて占領されたりした場合、参加した冒険者はどこか関係のない国へ行かないと、まともに冒険者として活動できないという事まで考えられる……極端な例だけどね。
なんにせよ、推奨はされないし相談したらきっと止められたりはするんだろうけど、強制される事はないという事だ。
さすがに戦争に喜々として参加したい、という事は全く考えないけど……一応、覚えておく事にしよう。
「そんなわけで、文句は言ってもリク君に対してどうこうは、私もできないわ。まぁ、冒険者ギルドを誤魔化そうとした事に関しては、言わせてもらったわけよ。言いたくなくても、言わないといけない立場だからね。リク君はこの国では英雄だし、冒険者かどうかに拘わらず、誰かから何かしら頼まれてもおかしくないわ」
統括ギルドマスターという立場である以上、マティルデさんは言いたくなくても言わないといけない……というのが本音だったようだ。
お咎めなしとも言えるけど、文句ぐらいは甘んじて受けないといけないかな。
「……では、リク様のSランク推奨というのは、行われるので?」
「貴女は……?」
「あぁ、この人はフィネさん。子爵家に仕えているんだけど……冒険者でもあって、今はちょっとした理由で一緒にいます」
「フィネ……確かBランクの冒険者だったかしら? 直接会った事はないけど、ある程度高ランクの冒険者に関しては頭に入っているわ」
説教なり文句なりを受ける覚悟をしていると、フィネさんが何やらSランク推奨というのが気になったようで、マティルデさんに問いかけた。
そういえば初対面だったと、マティルデさんにフィネさんを紹介。
直接の対面はした事がなくても、Bランクのフィネさんの名前は知っていたようだ。
Bランク以上になると、それなりに数も少なくなるようだから、ギルドマスターであれば覚えておくくらいはしないといけないんだろう……マックスさんやマリーさんも、ヘルサルやセンテでは知られていたくらいだからね。
「私の事よりも、リク様をSランクに推奨するというのは、どうなるんでしょうか?」
少々前のめりなフィネさん。
見れば、ソフィーも興味深そうに聞いている……モニカさんは、少しマティルデさんを険呑な目で見ているけど、話自体には興味があるようだ。
興味なさそうなのは、エルサとユノくらいか……エルサは、饅頭とキューを食べて満足したのか、ぐっすり寝ているから興味がどうの以前の問題だけど。
というか、なぜ皆俺がSランクに推奨されるかどうかに興味があるのか……まだまだ未熟だと思っているから、Sランクにはなれないと思うんだけどなぁ。
技術ではユノやエアラハールさんに敵わないのはもとより、精神的にもまだまだだからね。
さすがに、魔力やドラゴンの魔法で単純な強さという意味では、不足しているとまでは考えていないけど……でも細かい調整が不慣れだから、そういう意味では魔法に関しても未熟だと思うんだよね。
「心配しなくても、これまでの活躍やルジナウムでの活躍で、Sランクへの昇格が検討されているわ。とは言っても、Aランクへの昇格と違ってギルドマスターが推奨したからすぐになれるものじゃないの」
「それじゃ、なぜさっきはあんな言い方を?」
「ちょっと文句を言いたかっただけよ。冒険者ギルドの言う事を聞かなければ……なんて言うつもりはないけど、Sランクになったら影響力も計り知れなくなるのよね。だから、一応言ってみただけ。特に深い意味はないわ」
「それなら、最初から言わなければいいのに……」
フィネさんの問いに答えるマティルデさんに、さらに問いかけるフィネさん。
まぁ、自分の言う事を聞かないとというよりは、冒険者ギルドを誤魔化そうとしないで欲しい、という思いから出てしまったんだろう。
そもそもに、ランク昇格を目指して活動しているわけじゃないので、マティルデさんがどういう考えで言ったにしろ、気にしていないんだけどね――。
8
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる