神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
832 / 1,955

ヘルサルは故郷のように歓迎してくれる雰囲気

しおりを挟む


「あ、エルサ。南側に行って降りてくれるか? いつものように西側だと、結界のある農場から飛んでいるのが見えるだろうから」
「わかったのだわー」

 とりあえずの予定を決め、少しずつヘルサルが近付いてきた頃、エルサに指示を出して南側に向かってもらう。
 農場の確認はしておきたいけど、エルサが飛んでいるのを見るのは驚かせてしまうからね……ヘルサルの人達なら、エルサの事を知っている人もおいから大丈夫かもしれないけど、念のため。
 農場は王都がある西側だし、覆っている結界は透明で見晴らしがいいから、かなり離れていないと飛んでいるのが見られてしまう……というより、目を凝らせば薄っすらと見えるかもしれない距離だ。
 そろそろ大きく南側に向かわないといけないだろう。


「リク様!? ようこそ……いえ、お帰りなさいませ!」
「えっと……戻りました」

 南側に迂回して離れた場所へ降り、ヘルサルの門へ入る際に衛兵さんによるチェック……と思ったんだけど、俺の事を知っている衛兵さんだったので、驚いた後敬礼しながら迎えてくれた。
 なんというか、ようこそと歓迎されるのも嬉しいけど、お帰りと言われるのもホームに帰ってきた感じがして嬉しいね。
 ヘルサル出身というわけじゃないけど、俺にとって始まりの街だから尚の事かな。
 とはいえ、さすがに詰所にいる衛兵さんが急いで整列までする必要はないんだけどね……最近入ったらしい新人さんは、俺の事を見て疑問顔だったし……隣にいる別の衛兵さんが教えていたけど。

「私はヘルサルで育ったから知っている人が多くて、確認されない事もあるけど……さすがにリクさんは別格ね」
「まぁ、今この街が何事もなく残っているのは、リクのおかげでもあるからな。さすが英雄といったところだろう」
「良きに計らえなの!」

 整列した衛兵さんの前を通って、南門から中へと入る際、後ろの方でモニカさんとソフィーがヒソヒソ話しているけど……聞こえているからね?
 まぁ、防衛戦準備の時や、ゴブリン達と戦った時の事もあって顔が知られていて、顔パスになっているのは楽でいいけど……。
 あとユノ、多分姉さん辺りから聞いて真似をしているんだろうけど、それは高貴な身分の人が言う言葉だからな? 衛兵さんのうち数人が不思議そうな表情を浮かべていたから、辞めような?
 ……神様だったという事を考えれば、確かに王族どころかこの世界で一番高貴とも言えなくもないけど、知っているのはほんの一部だけだから。

 ちなみにフィネさんとアルネは、ヘルサルが初めてだから特に何かを言う事はなく、周辺の様子を窺っているようだ……野生動物かな?
 いやまぁ、初めての場所だからヘルサルがどういう街なのかを観察しているんだろうけど――。


「よし、それじゃまずは冒険者ギルドに行こうか」
「そうね。まぁ依頼を受ける事はないにしても、一応ヘルサルにいるという事を言っておかないと」

 ヘルサルに入った後は、少しだけ懐かしい気もする街中を歩いて、アルネやフィネさんにそれとなく街の説明をしながら、中心部近くの宿に部屋を取って、併設されている……というより一階の酒場兼食堂で昼食を取ってから、冒険者ギルドへ向かって出発。
 昼食を取るなら、先に獅子亭に行ってマックスさんの料理を……とルギネさんとの天秤にかけて、料理が勝った様子のソフィーに言われたけど、結局先に済ませてしまう事になった。
 獅子亭に行ったら、丁度昼食時で混雑していそうで迷惑になりそうだし、ルギネさん達に絡まれる可能性だったり、マックスさんやマリーさんに掴まってしまいそうだったからね……特にモニカさんが、マリーさんに手伝わされると考えたようだ。

 挨拶したり、手伝う事はやぶさかではないんだけど、それで時間を取られたら冒険者ギルドに行くのが遅くなるか、明日になってしまいそうだからね。
 ちなみに街を移動した際に、冒険者ギルドへの報告義務というのはないんだけど、今はここに滞在していると言っておく方が好ましい。
 もしなんらかの依頼で、把握している冒険者に依頼を任せようとした時に、指名されたりもするから、基本的にはギルドのある街へ移動した際には、報告しておくようにしている。
 ヤンさんにも挨拶しようと思っていたし、ちょうどいいからね。

「途中でまたキューを買うのだわー」
「まだ食べるのか?」
「違うのだわ。リュックに入れておくだけなのだわ」
「俺も持っているから、また買う必要はないんだけど……まぁ、途中で買えばいいか」
「ほんと、エルサちゃんもユノちゃんも、そのリュックが気に入ったのね」
「うん、気に入っているの!」
「そ、そんなんじゃないのだわ……」

 宿を出て、冒険者ギルドへ移動を開始してすぐ、俺の頭にくっ付いているエルサからの主張。
 今は小さいから、再びがま口リュックを背負っているんだけど、その中身のキューはヘルサルに入る前に空を飛んだ自分へのご褒美として食べつくしていた。
 だから、中身はもうお菓子くらいしかないんだけど……とにかくリュックにキューを入れておきたいエルサは、昼食直後で満腹なのにもかかわらず、キューが欲しいんだろう。
 モニカさんがエルサとユノが背負っているがま口リュックを見ながら、少し感心するように言うと、素直に頷くユノと違い、まだ認めないエルサ。

 頭にくっ付いているから見えるわけじゃないけど、モニカさんから顔を背けたような動きを感じた。
 素直になれない女の子みたいな反応を……ツンデレさんかな?
 ともあれ、リュックに入れる分のキューはエルサが自分の小遣いで買うので、使い道を制限しているわけではないので自由だし、途中の店で買えばいいかと、改めて冒険者ギルドへと向かう道を歩き出した。

「えーっと、とりあえずいつも通りまずは受付に聞こうかな?」
「そうね」

 途中でキューを買ったり、ちょっとした寄り道をしながら冒険者ギルドに到着。
 ルジナウムやブハギムノング、王都の冒険者ギルドに寄る事が多かった最近では、少し懐かしさも感じる……長く来なかったわけでもないんだけどね。
 何人かの冒険者と思われる人達が、それぞれのグループで固まって依頼に関する相談をしているのを見かけるけど、新しく大勢で入ってきた俺達に視線を向けている人も結構いるようだ。
 中には、俺の事を知っていて驚いている人もいるみたいだけど……あぁ、防衛戦で一緒に戦った人だね、受付に向かいながらそっと手を振って簡単に挨拶しておいた。

「すみません。ヤンさんは今いますか?」
「はい? あ……リク様!?」

 もう何度目だろう……カウンターになっている、受付の向こう側に座っている女性に声をかけると、俺の事を見て驚かれるいつもの反応。
 ヘルサルの受付カウンターは、それなりに見晴らしのいい位置にあるんだけど、暇だったのか隣の受付をしている人と雑談していて、俺達が入って来た事に気付かなかったみたいだ。
 まぁ、この反応も慣れてきてしまっているけどね……最初は、呼び捨てだったり君やさんを付けられていたはずなのに、もうここでも様を付けられるようになってしまったなぁ……くらいの感想だ――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

処理中です...