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獅子亭の戦場をお手伝い
しおりを挟む「モニカさん、これ運んで!」
「了解したわリクさん!」
「ユノ、こっちのテーブルには私が。あっちの方は頼む!」
「わかったのー!」
ルギネさんに見つかって、数分後……俺とモニカさん、ソフィーとユノは獅子亭の店内でまだまだ続く注文と料理運びを手伝っていた。
俺だけは、多少慣れているからと厨房でマックスさんとルディさんの手伝いだけど。
今も、できあがった料理をお客さんに運ぶよう、モニカさんにお願いしたとこで、別の方ではソフィーとユノの声が聞こえた。
ルギネさんが俺達を見つけた拍子に、樽ジョッキを落としてからすぐ、とにかく注文をこなさないといけないので、お叱りはまた後とマリーさんが決めて片付け。
その途中で挨拶もほとんどする間もなく、俺達は手伝いに駆り出された。
エルサがお腹がすき過ぎて騒ぐ元気もないようで、俺の頭に爪を食い込ませて無言の抗議をしていたけど、仕方ないので住居の方にルギネさんと行ってもらい、キューを食べさせるようにお願いしておいた。
ルギネさんは、並々とお酒の入った樽ジョッキを落とした際に濡れたので、着替える必要があるからだ。
一緒に、カテリーネさんとフィネさん、アルネも行っている……アルネは、男性一人でちょっと肩身が狭そうだったけど、勝手を知らなくて手伝えないので仕方ない。
カテリーネさんが、久しぶりにエルサを見てモフモフしながら喜んで抱き上げていたので、キューを上げ過ぎないか少し心配だけど……一応、夕食が入らなくならない程度にとお願いはしておいたし、エルサだからなんとしてでも食べそうだけども。
「リク、次はこれを頼む! すまないな、戻って来たばかりなのに……」
「はい、わかりました!……いえ、お世話になっていますし、これくらいは」
大量の野菜をマックスさんから渡され、皮むきをするだけの装置と化す俺にバツが悪そうに謝るマックスさん。
皮をむく手を止めないようにしながら、気にしないように言ったけど……フィネさんを紹介したりルギネさん達を警戒するあまり、手伝わずに獅子亭に来る時間をずらしたので、申し訳なさを感じる。
結局こうなるなら、早めに戻って来ても良かったなぁ……。
ちなみに、皮むきとかの下ごしらえは本来、お店の準備中に済ませておくんだけど、お客さんがひっきりなしにやって来て注文をするので、足りなくなっているみたいだ。
ある程度は準備していたんだろうけど、それでも足りなくなって追加で作るって……マックスさんはあまり、売り切れだから注文を受け付けないというのはやりたくない方針のようだし、それも盛況の理由になっているのかもね。
「助かる。――ルディ、そっちはできているか?!」
「はい、大丈夫です! 出せます!」
「よし、モニカ……それとアンリ!」
「了解よ父さん」
「はぁい……」
「アンリはあっちで常連のおじさんが待っているから、そっちへ。マックスさん、私が!」
俺が皮むき器のように、ひたすら食材の皮をむいて手ごろなサイズにカットしているのとは別に、料理をマックスさんと一緒に担当しているルディさんも頑張って作っている。
ルディさんへ声をかけて確認した後、ホールに向かってモニカさんとアンリさんを呼んだ。
モニカさんは手が空いていてすぐ来たけど、アンリさんは相変わらずののんびりした返事をしながら、常連さんに呼ばれているようで、代わりにグリンデさんが来た。
フィネさんと同じくらいの小柄な体だけど、動きがてきぱきとしているので頼もしい……前回会った時は、敵視されてばかりでこんな印象はなかったんだけど、状況によって人への見方って変わるもんだね。
料理を運ぶ人達、着替えて戻ってきたルギネさんは、ソフィーではなくなぜか俺をチラチラと見ながらも、今は給仕に集中してくれた。
カテリーネさんは、妙に満足そうな表情をしながら戻って来たので、エルサのモフモフを存分に堪能したのだと思われる。
エルサはアルネやフィネさんと一緒だろう……申し訳ないけど、お客さんが少なくなるまでもう少し待っていてもらおう。
モニカさんは、ルギネさん達が戻ってきたので余裕が出るかなと思っていたら、満腹になったお客さんが帰る際のお会計でそちらにかかりきりになっていた。
皮むきから調理の補助、場合によっては俺も配膳に協力をして、マックスさんが言う戦場というのがよくわかる時間を過ごした――。
――大体、体感で一時間程度だろうか……? 盛況すぎる獅子亭がようやく落ち着くのにかかった時間だけど、集中していたから、もしかするともっと時間が経っていたかもしれない。
三人程度の、ゆっくり料理を食べているお客さんを除いて、客足がようやく途絶えてくれたので、なんとか一息がいれられるようになった。
「はぁ……想像以上に盛況でしたけど、今日は何かあったんですか?」
残っているお客さんに見えないよう、厨房の片隅に集まってマックスさんに聞く。
追加の注文があった際に対応するため、ルディさんはまだ鍋の前にいるけどね……俺の近くにいるのは、モニカさんとソフィー以外に、マックスさんとマリーさんやアンリさんがいる。
ルギネさん達は疲れたんだろう、こちらを気にする様子はあったけど、カテリーネさんと一緒に住居の方へ移動して休んでいる……アンリさんがいるのは、マリーさんと一緒に給仕が必要になった時に対応するためだね。
「いや、特に何もないんだがな……というよりだ、ここ最近……いや、以前リク達が戻ってまた王都へ行ってからすぐか。そのくらいから、今日と同じような状況が続いている」
「最初はアンリさん達が働き始めだったから、今日ほど上手く回らなかったけど、すぐに慣れてくれて助かったわ」
「マリーさん達の教え方が良かったからですよぉ。グリンデやミームも、マリーさんが一喝してくれて真面目に働くようになりましたしねぇ」
「父さんと母さんだけじゃなく、私がいた時よりも人が多いのにあれだけ忙しいって……私は初めて見たわ」
俺達が農場へ結界を張って戻ってから、ずっとこうだったのか……マリーさんの教え方がいいというのは、俺も教えてもらったからよくわかるけど、いきなりあんな忙しい状況で働き始めるのは、アンリさん達も大変だったと思う。
まぁ、必然的に早く慣れる事ができるから、良かった部分もあるのかもしれないけどね。
というか、グリンデさんとミームさん、最初は真面目に働いていなかったのか……以前の印象からするとなんとなくわからなくもないけど……マリーさん、時折鬼教官みたいになるからなぁ。
「俺だって初めてだ。今までは俺とマリーで厳しいくらいで、モニカやリク、ルディやカテリーネがいて少し余裕があったくらいだ。それが、アンリやルギネたち四人を加えてギリギリになるなんてなぁ」
「ちょっと、大変過ぎない? 父さんや母さんもそうだけど、皆も休まないと……」
「それはわかっているのよ。でも、わざわざ獅子亭に来てくれるお客さんを、休むからとがっかりさせるのもね……」
「だな。できるだけ多くに食べてもらいたい、というのもあるからなぁ。なんだかんだで続けているってわけだ。まぁ、まだまだモニカに心配される程じゃないからな、なんとかなるだろう」
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