852 / 1,955
魔法具になったガラスの確認
しおりを挟む「ええ、まさに天職です。ほら、見て下さい……ふんっ! この鍛えられた筋肉を! ここで鍬を振るい始めて、冒険者だった頃よりもさらに体が鍛えられているんです。ふんっ、ふんっ……どうですリク様? 私の筋肉は! 素晴らしいでしょう!」
「あー……」
体に力を入れ、筋肉を盛り上がらせてポーズを取り始めた元ギルドマスターさん。
なんだろう、ここは「キレてるよ!」とか声をかけてあげた方が喜ぶんだろうか――。
「小屋からは、多少の魔力が漏れているようだが……魔法具化の影響と、ガラスに含まれている魔力が大きいから。それと、結界を維持するための魔力を放出しているからだろうな……」
魔力補充用のガラスが置かれている、掘っ立て小屋のうち一つを外から眺めて、アルネが呟く。
元ギルドマスターさんによる、即興で始まってしまった筋肉鑑賞会は、数分ほど眺めていたけどエルサにが突然「暑苦しいし、見苦しいのだわー!!」と叫びながらの両後ろ脚を使ったドロップキックが顔にめり込んで終了した。
まともに話せたようには思えないけど、とりあえず元気そうだったし、なんというか生き生きとしていたから問題はなさそうだから、ヤンさんにはそう伝えておこうと思う。
ちなみに、元ギルドマスターさんはドロップキックがめり込んだ事よりも、見苦しいと言われた事に少しだけ落ち込んでいた……暑苦しいの方はいいんだ、自覚があるのかも?
マックスさんとヴェンツェルさんだけでなく、フォルガットさん達鉱夫さんやノイッシュさんといい……別に筋肉好きじゃないし、俺は男なのに縁ができてしまうのは、エルサ以上に俺が叫びたかったんだけどね……はぁ……。
「ん、リク。どうした?」
「……いや、なんでもないよ。ちょっと自分が知り合う人の中に、特定の方向に特化した人が多いなぁと思っていただけだから」
小屋の事よりも先程の事を思い出していたら、アルネが首を傾げて声をかけられた。
そう言えば、エルフの集落にいるエヴァルトさんも、アルネやフィリーナとか他のエルフと違って、大柄だったというのを思い出した……まぁ、美形なのでアンバランスでも暑苦しい雰囲気が少しは緩和されているので、まだマシだけど。
ともあれ、縁があり過ぎて困る筋肉さん達は置いておいて、小屋にあるガラスの確認だね。
結界はちゃんと維持されているようだし、問題はなさそうだけど……とりあえず、さっさと確認を終えて戻って休みたい……。
「ふむふむ、成る程な……」
「どう? ガラスの方は大丈夫そう?」
小屋の中に入り、積まれているガラスをいろんな角度で見たり、手を近付けて見たりとして確認してしきりに頷いているアルネに、声をかけて聞いてみる。
一緒に小屋へと入ったクラウスさん達も気になるのか、アルネに視線を向けていた。
「問題という程ではないが、やはり即興で魔法具化をしたせいか、今一つな部分があるな」
「今一つな部分?」
「あぁ。さっき外で小屋を見た時にも感じたんだが、フィリーナの目がなくとも、漏れ出している魔力を感じた。あれは、少々多めに魔力が放出されているから、漏れていたようだな」
「漏れているって事は、無駄に魔力を放出しているって事になるから……場合によっては予想より早くガラスから魔力がなくなるんじゃ?」
俺は探査魔法で、魔力を調べていないからわからないけど、アルネとかエルフだからこそ感じ取れる微妙な違いみたいなのがあるようだ。
「いや、そこは問題ない。まぁ、当初の予定より早くガラスから魔力がなくなるかもしれないが……リクの魔力が多過ぎるのだろう、短くなっても一年とかその程度だ」
「確か……数十年は結界に補充する魔力があるっていう話だったね。数十年中の一年なら、そこまで大きな問題でもない……のかな?」
魔力が保たれる期間から考えると、一年程度なら何も問題はなさそうに感じる。
まぁ、クォンツァイタと違って、ガラスへ魔力を補充する事ができなさそうだから、少しでも期間が長いに越した事はないんだろうけど。
「期間そのものは、余裕があるのだからそれまでに、ガラスの魔力が尽きた場合の事を考えればいいだろう。別案はあれを使って既に考えているから、問題はないな」
「なら、大丈夫そうだね。でも、結局どうして魔力が漏れているんだろう?……聞いても、理解できるかはわからないけど」
別案と言うのは、多分クォンツァイタを使っての事だと思う。
でも、問題はないにしても今一つだったり魔力が漏れてしまっているのは、なぜなんだろうか?
魔法研究に詳しくないから、聞いてもわからないかもしれないけど……。
「フィリーナは即興で魔法具化したり、リクの膨大な魔力をと考えると、よくやっている方だろうけどな。ふむ……わかりやすく言うと、例えば管に水を流すとする。流すのはガラスで、流れていく先は結界だな。水は魔力だ」
「うん」
管に水……ホースを使って水をというイメージが近いかな。
流れるのは魔力、と。
「流れた先で使われる水に合わせるように、管が調節されて一定以上は流れないようになっているのだが、ガラスから流される水が多過ぎて必要以上に出てしまう圧力が発生しているみたいだな」
「管が調整されて狭いから、ガラスから水をもっと流したくても流せない状況で、根本で詰まっているって事?」
「そんな感じだ。そして、ガラスに繋がっている管は別に蓋の役目をしているわけではないから、余分に出そうとしている水はどうしても隙間から漏れてしまうわけだ」
ふむふむ、つまり蛇口から勢いよく水を出そうとしているけど、ホースの穴が小さすぎて容量以上に水を出してしまっている。
そのため、繋がっている元の蛇口から隙間を使って水が漏れ出しているって事だね……多分。
「それじゃ、それをなんとかしたら水……魔力が漏れだす事はないんだね?」
「その通りだ。まぁ、簡単な対処で十分そうだ」
「どうやればいいのかな、アルネ?」
「過剰に魔力を結界に流すわけにはいかないから、管は広げられない。ガラスの魔力は膨大だから、放出を少し控えめにしていてもあまり変わらないだろう……やるけどな。そこからさらに、結界へと繋がっている魔力の道の元部分で隙間を塞ぐわけだな」
「少しだけ魔力放出を控えめにしながら、隙間を塞げば漏れる魔力はほぼなくなるわけだね」
「まぁ、リクの魔力で膨大な量だから、フィリーナも私ももてあましてしまう。じっくりと研究できればいいのだが、既に機能している以上それくらいしかできないだろう。ともあれ、漏れる魔力がほぼなくなるから、その影響は大きいだろうな」
どうやるのか、詳しくはわからないけど……研究に時間をかける事もできないので、今対処できる方法という事だろう。
ともあれ、一年くらいと言ってもガラスが機能している期間が伸びるに越した事はないので、アルネの案で良さそうだ。
「……魔力が漏れる影響が大きいって、結界を維持する期間が減るのは一年くらいなんでしょ? それなら、影響が大きいとは言えないんじゃないかな?」
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる